今日から始めよう!「健康経営」実践アドバイス vol.1 ~なぜいま健康経営なのか

自社の経営に健康経営を取り入れ、大企業・中小企業の健康経営の体制構築コンサルティング実績のあるセルメスタの熊倉(健康経営アドバイザー)が、健康経営に取り組む企業のみなさまに向けて健康経営のイロハやコツをご紹介します。第1回目は、なぜいま健康経営が注目されているのか、なぜ企業にとってメリットがあるのかを解説します。

1.なぜ企業が健康経営に取り組まなければならないのか

健康経営とは、1980年代にアメリカの経営心理学者であるロバート・ローゼンが提唱した、「健康な従業員こそが収益性の高い会社をつくる」という考え方に端を発するものです。
日本では2006年にNPO法人健康経営研究会が設立され、健康経営の研究や普及活動を進めています。

このように、健康経営という考え方は数十年前からあるものなのです。それなのになぜ近年日本で注目を集めているのでしょうか。原因を探ってみると、日本が抱えるさまざまな社会問題が見えてきます。

まずは、労働力になる人口の減少があげられます。

<引用>平成29年版高齢社会白書(内閣府)

このように、2010年をピークに総人口は減少の一途をたどり、人口が減少する一方で日本は深刻な高齢化社会の問題を抱えています。

・高齢者人口は、いわゆる「団塊の世代」(昭和22(1947)~24(1949)年に生まれた人)が65歳以上となった平成27(2015)年には3,387万人となり、その後も増加傾向。54(2042)年に3,935万人でピークを迎え、その後は減少に転じるが高齢化率は上昇傾向にあると推計される。

・平成77(2065)年には高齢化率は38.4%に達し、約2.6人に1人が65歳以上。

出典 http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_1.html

<引用>平成29年版高齢社会白書(内閣府)

このような人口減少や高齢化に伴い、日本の労働力人口も急減することが見込まれています。
健康経営は、従業員一人ひとりの健康を増進することにより、企業のパフォーマンスを向上させるという考え方です。この日本の状況においても、健康経営が非常に有効と考えられるでしょう。

また、日本社会が抱える問題として見逃せないのが、生活習慣病の増加です。

<引用>平成28年人口動態統計月報年計(厚生労働省)

生活習慣病とは、食事や運動・喫煙・飲酒・ストレスなどの生活習慣が関与して発症の原因となる疾患の総称です。日本人の三大死因であるがん・脳血管疾患・心疾患にくわえ、脳血管疾患・心疾患を引き起こす動脈硬化症・糖尿病・高血圧症・脂質異常症なども、生活習慣病とされています。
上記の図を見ると、戦後から現在にかけて死因構成は変化しており、なかでも生活習慣病によって亡くなる割合が上昇していることがわかります。

生活習慣病に関わる医療費は年々増加の一途をたどり、医療費全体の約3割を占めています。医療費が増加すると徴収される保険料が増加し、企業収益を圧迫したり個人収入の減少につながったりする恐れがあります。

しかし、このような状況も健康経営で打破することが期待できます。それぞれの企業が健康経営に力を入れて従業員の健康が増進されれば、ロングスパンでの企業収益の改善や個人収入の増加が見込めます。
労働人口の減少や生活習慣病の増加など、さまざまな問題を抱える日本にとって、健康経営が果たす役割は大きいと考えられます。

2.従業員が健康になると業績もアップする

まず、従業員が健康になるとなぜ会社にとっていい影響があるのかについてですが、近年アメリカで研究が進んでおり、実際従業員が健康になると企業の業績が上がるという相関が取れているのです。

日本の上場企業でも、健康経営銘柄に選ばれたことで株価が上がったというケースもあります。また健康経営を進めることで、M&A(合併・買収)がやりやすくなるというメリットもあります。

健康経営を始めるにあたって最初にやるべきは、全従業員に健康診断を受けてもらい、各々の状態を把握すること。その結果を受け、メタボリックシンドロームの人、休みが多い人、休んでいないけれど働いているときの体調が悪い人……この3層に対策を打っていくことが大切と言われています。

3.足を引っ張っている!?注意したい3つの層

先に述べた3つの層は、組織の生産性や健康リスクという側面から、いわば企業の足を引っ張っているともいえる人たち。どのような状態なのか、詳しく説明しましょう。

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームの従業員を多く抱える会社にどんなリスクがあるかというと、ずばりチャンスロスです。メタボリックシンドロームの場合、糖尿病やがん、脳梗塞や心筋梗塞など、発症すると長期離脱を余儀なくされる病気にかかる可能性が非常に高いもの。もし長期離脱となると仕事のチャンスを逃すだけでなく、引き継ぎをしたり代わりの人を雇ったりと、残業代や採用コストなどが企業に降り掛かってきます。
いわゆるメタボ健診(特定健康診査)の対象者は、40歳以上。会社でも働き盛りの層に当たります。第1線の従業員が戦線離脱してしまうのは、会社にとって大打撃。生活習慣病なので、すぐに治るわけでもありません。
このように頼りになる戦力が長期離脱することは、会社にとって大きなリスクといえます。

アブセンティズム

アブセンティズムとは、病気などの理由で欠勤してしまうことを指します。慢性期で休む場合もありますが、メンタルが原因で休むこともあり、これもメタボリックシンドロームと同じく長期離脱になりがちです。
メンタルの健康診断のようなものとして、厚生労働省が50名以上の企業に対して2015年から義務付けているストレスチェックが挙げられます。弊社の企業パートナ―による約250社のストレスチェック実施企業の調査結果を見てみると、高ストレス判定者が平均して13%強もいることがわかりました。(ストレスチェックの調査結果報告書の資料をご希望の方はこちらよりご連絡ください)

およそ10人に1人は高いストレスを抱えており、忙しい時期だけでなく慢性的にそのような状態になっている人もいます。言い換えてみれば、10人に1人は長期離脱する可能性があるということ。
そのほか、メンタルの不調で休みがちな従業員や、インフルエンザの流行による急性の病気なども会社にとっては損失です。事業継続という意味で安定的に経営していくために、どのような対策を取るかが大切です。

プレゼンティズム

プレゼンティズムは、出社して働いてはいるけれど、いまいち効率や生産性が上がらない状況を指します。プレゼンティイズムでよく言われているのが花粉症。花粉症の従業員とそうでない従業員を比べると、明らかに仕事の生産性が違ってきます。

そのほかにも、二日酔いで出社してぐったりしている従業員や、寝不足でウトウトしながら働いている従業員などもプレゼンティズムですね。生産性が上がらず定時までに仕事が終わらなくて、残業を長くしているとか。出社して働いてはいるけれど、企業の業績に悪影響を及ぼしてしまうことになります。

上記の3層が、企業の足を引っ張っていると考えられます。健康経営はリスクヘッジになるため、自社の経営を守るためにも健康経営は有効な手段なのです。
人手不足で黒字倒産する会社も多い昨今、今いる人材の健康を守るとともに自社の経営も守っていきましょう。

4.セルメスタで行っている対策とは

セルメスタでは、メタボリックシンドロームの従業員に対して健康保険組合を通じて特定保健指導を受けさせるようにしています。対象の従業員は、健康保険組合の指定する診療所へ訪問し、適切な食事と運動などの指導を3カ月から6カ月間受けています。なかなか半年間で簡単に正常値に戻るわけではありませんが、できる範囲で生活習慣を変えていくことが大切です。

アブセンティズムに対しては、「職場復帰プログラム」を行っています。内容としては、メンタルで長期離脱した従業員がなるべく両者(会社と従業員)納得したかたちで復帰できるように支援するもの。職場復帰する際は本人と人事がよく話し合って、3カ月くらいの慣らし運転から始めるようにしています。もちろん休職中のフォローも欠かしません。

プレゼンティズムに対しては、マインドフルネス(今この瞬間のみに意識を向け、雑念や思考にとらわれない状態で行うストレス対策のひとつ)を行っています。週3回、朝の15分間を使って会議室で行い、高ストレスにならないための対策としています。ストレスチェックを行っても、企業側はどの従業員が高ストレスかどうかは把握できません。何人分時限爆弾がセットされている、ということしかわからないのです。
高ストレス判定の従業員が参加してくれるかどうかはわからないけれど、全社的にマインドフルネスを行うことによって、対象者に関心を持ってもらうことを祈るような気持ちです。地道な取り組みを続け、根付かせることで対応していくしかありませんからね。

次回は、中小企業こそ健康経営をやるべき理由についてお話します。お楽しみに!

<企業データ>

会社名:株式会社 セルメスタ
事業内容:1.一般用医薬品、救急医薬品セット、介護用品、防災用品、健康食品の販売
2.郵送検診事業の受託
3.郵送検診キットの販売
4.インターネットを利用した各種情報提供サービス及び販売
5.医療費抑制事業
6.不動産管理事務の受託
所在地:〒130-8671 東京都墨田区石原4丁目25番12号
資本金:9,900万円