健康経営優良法人認定企業:株式会社セルメスタ 取組み事例

1.申請のきっかけ・経緯

- この度、健康経営優良法人認定に申請されることになったきっかけや経緯を教えてください。

佐藤 琢也さん(以下、佐藤さん):はい、2015年秋に私共が所属する東京薬業健康保険組合から従業員の健診結果のフィードバックを受け、従業員の8割が有所見者(要再検査以上)だったことが、きっかけとなった大きな要因です。

- 8割ですか。

佐藤さん:東京薬業健保の加入事業所で比較すると、ほかの事業所は大体6割程度なのに対して当社は8割でした。

- 医薬品や郵送検診キットを販売している会社さんなので意外な気がします(苦笑)。

佐藤さん:はい。これではいけないということで、社長の熊倉と相談しまして、一念発起しました。2015年の冬には社内で食育セミナーというものを開催し、2016年春に、社長が健康経営の実施を宣言しました。2017年のホワイト認定を目指しましたが、この時は手続きが間に合わず断念し、晴れて2018年に認定していただくことができました。

2.特徴的な施策・注力している施策について

- 御社の健康経営施策の中で、特徴的な施策や注力していることについて教えてください。

進藤 高光さん(以下、進藤さん):はい、まずはさまざまな施策を実行していくにあたり、現在我々が所属している「健康経営推進プロジェクト」というものが発足されました。そのプロジェクトが主催となり、「食育セミナー」「ダイエットウィーク」「ストレスチェック」「マインドフルネスセミナー」「ウォーキング大会」などのイベント実施・参加の奨励をしました。

- すでに多くの取り組みをされているのですね。

進藤さん:「食育セミナー」とは弊社代表の熊倉自らが講師となり、従業員向けに食に関する講義を行うものです。熊倉は食事に関する全般的な知識を問われる一般社団法人日本健康食育協会 シニアマスターという資格と、断食に関しての専門的な資格である一般社団法人分子整合医学美容食育協会 プロフェッショナルファスティングマイスターという資格を持っていますので、そういった知識が健康経営に活きていると思いますし、弊社の特徴的な部分ではないかと思います。

- 社長とは私は杏林予防医学研究所の同期生ですが、社長はとても熱心に勉強されておられましたし、その後いろいろと実践されていますから、とても心強い後ろ盾だったでしょうね。

並木 一徳さん(以下、並木さん):はい。さらにセミナーで学んだ知識をすぐに実践に活かせるよう食育セミナーの参加者を対象に、「ダイエットウィーク」というイベントを告知しました。このイベントでは「食べる断食」「ファスティング」の2種類のコースを用意し、普段の食生活を見直すことで身体を整えることができるプログラムを準備しました。

- 健康経営の社員向けプログラムというと運動系をすぐにイメージしますが、食事にアプローチしたのはセルメスタさんならではですね。

進藤さん:我々もそう思います。社長の熊倉がよく口にすることですが、普段から運動習慣のある人は10人に1人。ところが、誰もが食事は毎日欠かさずするもの。この食習慣を正しく見直せるきっかけを提供できたら、従業員も実践しやすいのではないかと。

- 確かにそうかもしれませんね。ところで「食べる断食」「ファスティング」とはどういったプログラムなのでしょうか?

並木さん:「食べる断食」というのは玄米とお味噌汁のみを10日間食べるという方法で、ファスティングは酵素ジュースだけを3日間(5日間・7日間と選択可能)飲むという方法です。「ダイエットウィーク」期間中については、かかる費用を一部会社で負担して、より参加しやすくしています。

- 「ダイエットウィーク」もユニークですね。他の企業ではあまり聞いたことがありませんが、これも社長のアイディアですか。

佐藤さん:どちらのプログラムも社長の熊倉が取得した資格団体の公式プログラムです。なので我々も安心して従業員に勧めることができました。

並木さん:福利厚生に断食の補助、というのは聞いたことがないですからね(笑)。

- 健康増進のために断食を取り入れるという発想は実践者でないと湧いてこないと思います。ちなみにどのくらいの方が参加したのでしょうか?

並木さん:「食育セミナー」には全従業員が参加し、「ダイエットウィーク」には延べ20名ほど参加しました。従業員は全体で約60名いますので、かなりの人数が参加しています。また、リピーターも多くいます。

- 2015年に企業に義務付けられた「ストレスチェック」についてはどういった取り組みをされていますか?

佐藤さん:「ストレスチェック」は従業員に対して、自身の職場の人間関係や仕事でのプレッシャーなどメンタルに関する質問に答えていただき、各人のストレス度合いを判定する仕組みです。企業としてはその結果、高ストレス者が何名いる、という自社の状態が分かるだけで高ストレス者本人の特定ができませんので、具体的な心のストレスを取り除くことが難しいと考えました。そこで弊社では、特定の個人を対象とせずストレスの対処方法として効果が高く、宗教色もない「マインドフルネスセミナー」を取り入れることになりました。

- 「マインドフルネス」ですか。最近耳にしますが、具体的にどんなことをするのでしょう?

並木さん:「マインドフルネス」を「心のエクササイズ」と銘打って取り組んでいます。社長の熊倉は瞑想の指導者の資格を持っています。こちらも社長が講師となり、まずは「心のエクササイズセミナー」というものを従業員向けに開催しました。現在は就業前などに「マインドフルネス実践ルーム」に希望者が集まって、週3回程度取り組んでいるところです。一言で言えば「瞑想」なのですが、何も考えない境地に行くのは少し難しいものです。複数人で取り組んだ方が効果も高いそうなので、会社でこのような場所を提供しています。

- 「ダイエットウィーク」や「マインドフルネス」、を企業活動として取り組んでおられるのはとても先進的だと思います。「ウォーキング大会」はどのようなことをされたのでしょうか?

並木さん:この「ウォーキング大会」とは、東京薬業健保が用意した専用フォームに、一定期間毎日歩数を入力して記録するもので、歩数の合計を他の参加者と競っていくというイベントです。

進藤さん:「ウォーキング大会」だけでなく、さきのイベントもすべてこのようなポスターを社内に掲示して告知するようにしていますし、社内のイントラネットでも告知しています。

並木さん:これは、弊社オリジナルのイベントというわけではなく、私共が所属する東京薬業健保が毎年開催している「ウォーキング大会」への参加を奨励するというものなので、プロジェクトメンバーとしては参加を促すための広報誌などを作成しています。

- 加盟している健康保険組合の力を借りることで、活動の幅が広がったと言えますね。

3.健康経営宣言をしてからの社内外の様子の変化

- 多くのユニークな活動について、さまざまな工夫をされていることが分かりました。社内外ではどんな変化やリアクションがありましたか。

進藤さん:そうですね、例えばウォーキング大会の期間中などは「昨日は何歩だった?」など従業員同士で話題になっていたりして、そういった声が聞こえてくると嬉しいですね。冒頭にご説明したように有所見者数が多いので、身近で取り入れやすい健康に関することを今後も提供していけたらと思います。

4.健康経営宣言後、苦労している点・モチベーション維持のために努力していること

- こういった取り組みの中で、プロジェクトメンバーとして苦労されたことは何ですか。

佐藤さん:全てが初めての取り組みなので、まず従業員に周知すること、そして理解を得ることが大変でした。壁にポスターを貼ったりチラシを作ったりしてイベントの案内を行いましたが、それだけでは巻き込むことができませんでした。今でこそ、ダイエットウィークは年3回の定番イベントとして定着化していますが、最初の参加者は2名でした。実際に自分たちが体験して口コミで伝えるなどの工夫もしました。

- 健康経営優良法人に申請するにあたってのご苦労はありましたか?

佐藤さん:健康経営宣言の申請をするにあたり、健診の受診率を100%にすることが総務・人事部としては大変でした。必ず受けてね、と直接声掛けをするなどこれまで以上の働きかけが必要でした。藤澤さんがおっしゃる通り、健康経営を推進するにあたり社内だけで何もかも行うことは難しかったので、現実的にできることを選択して、健康保険組合のウォーキング大会に相乗りさせてもらうなど外部のイベントもうまく利用しました。

- この認定制度は毎年更新ですから現状を維持していくことも大変ですよね。ちなみに喫煙はどのようにされているのでしょうか?

佐藤さん:屋上が喫煙スペースとなっているので、受動喫煙はなく完全分煙になっています。自社ビルなのでその点はやりやすいですね。

5.今後注力したいこと

- それでは最後に、健康経営優良法人に認定された企業として、これからどのようなことに力を入れていきたいか教えてください。

佐藤さん:保健指導対象者への徹底介入ということで、健診結果の有所見者である8割の従業員に対して直接声掛けをするなどアプローチに注力します。また、被扶養者については、費用を会社負担で受診勧奨を行ったり、従業員の奥様向けの食育セミナーなども検討したりしています。また弊社ではISOの認証もありますので、ISOの仕組みの中で顧客満足と従業員満足の両方を目指していきたいと思っています。

- それは非常に斬新なアイディアですね。進藤さん、並木さんはいかがでしょうか。

進藤さん:ご説明してきたようにさまざまな取り組みをしていますが、セミナーやイベントなどは8割の有所見者に対する直接の働きかけにはなっていなかったように感じています。しかしこうして土台作りをしていますので、今後の直接アプローチをしやすい環境にはなってきているのではないかと思います。これからもそういった環境整備をプロジェクトとしてできればと思っています。

並木さん:有所見者の方々が、自分が健康になることが自分にとっても会社にとってもプラスなのだと気付いてもらえたらいいなと思います。また、弊社には20代の従業員も多くいますので、若者目線を活かして今後もプロジェクトに貢献できるよう努めていきたいと思います。

佐藤さん:健康経営優良法人は一度認定されておしまいというものではなくレベルを上げていくことが大切だと思いますので、PDCAサイクルを回して今後もスムーズにプロジェクトを進行していけたらと思います。

- 御社が今後どのような取り組みをされるのか非常に楽しみです。本日はありがとうございました。

<企業データ>

会社名:株式会社 セルメスタ(Selmesta CO.,LTD.)
事業内容:1.一般用医薬品、救急医薬品セット、介護用品、防災用品、健康食品の販売
2.郵送検診事業の受託
3.郵送検診キットの販売
4.インターネットを利用した各種情報提供サービス及び販売
5.医療費抑制事業
6.不動産管理事務の受託
所在地:〒130-8671 東京都墨田区石原4丁目25番12号
資本金:9,900万円
従業員数:約60名

インタビュアー

会社名:アスマン株式会社 代表 藤澤市郎
プロフィール:経営コンサルタント/健康管理士/ファスティングマイスター/足利5S学校正会員
政府系金融機関出身。人材育成の視点から企業の3つの健康~1.社員の健康(食事、生活習慣)、2.現場の健康(5S、カイゼン)、3.組織の健康(感謝と改革の風土つくり)~を独自の手法でサポートしている。
所在地:〒103-0027 東京都中央区日本橋3-2-14日本橋KNビル ウィズスクエア内

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