【社会的健康ピッチコンペ・オリエンテーション編】企業が抱える課題の解決に学生たちが挑む
社会的健康戦略研究所が主催する『社会的健康ピッチコンペティション』は、大学・大学生と企業による産学連携プロジェクト。今回のテーマは「健康経営を通じていかに企業や社会の課題を解決していくか」。IKIGAI WORKSは今年、共同プロジェクト事務局企業として参画。このピッチコンペにさらに深くコミットし、学生と企業を結びながら、働きがい・生きがいを広める役割を担っていきます。
〔社会的健康戦略研究所&IKIGAI WORKS共同プロジェクト参加企業〕
ベイラインエクスプレス株式会社
都築電気株式会社
三幸土木株式会社
株式会社ハンナ
〔参加学生ゼミ〕
小樽商科大学 鈴木ゼミ
山形大学 兼子ゼミ
専修大学 大崎ゼミ
和光大学 大野ゼミ
神奈川大学 中見ゼミ
西南学院大学 三井ゼミ
九州産業大学 藤井ゼミ
〔事務局〕
浅野健一郎(一般社団法人 社会的健康戦略研究所 代表理事)
熊倉利和(IKIGAI WORKS株式会社 代表取締役社長/健康経営の広場 編集長)
須子善彦(IKIGAI WORKS株式会社 取締役・CIO・CTO)
〔司会進行〕
篠原英良(一般社団法人 社会的健康戦略研究所)
1.魅力的な中小企業と意欲ある学生をつなげていきたい
2024年6月21日に開催されたオリエンテーションでは、社会的健康戦略研究所の浅野代表理事による今回のピッチコンペの背景についてのレクチャーの後、熊倉からIKIGAI WORKSの果たす役割やプロジェクトの狙いについての説明がありました。

「私たちは、人を大切にする企業、つまり健康・働きやすさ・働きがいのための取り組みを積極的に行っている企業のことを“IKIGAI企業”と名づけて世の中に広めていきたいと考えています。
昨年は、このピッチコンペに学生さんへの課題提出企業として参加させていただきました。その時の1つ目の課題は『学生とIKIGAI企業の広報、啓蒙、交流の仕組みづくり』。イベント、サイト、アプリなどを利用してIKIGAI企業を広く、世の中に伝えていく広報活動や、学生と企業のマッチングの仕組みづくりの提案をお願いしました。
2つ目の課題は『学生の学生による学生のための働きがいの“マイモノサシ”(自分が働きがい・生きがいを感じられる企業の判断基準)づくり』で、学生の視点から、企業を選ぶ際の指標づくりなどに取り組んでもらいました。
その結果、西南学院の三井ゼミの皆さんからは、マイモノサシが明確になり、自分に合った仕事や企業を探せるアプリのご提案をいただきました。大阪経済大学の江島ゼミの皆さんとは、『IKIGAI企業スタディツアー』https://kenkoukeiei-media.com/articles/studytour というIKIGAI企業と学生が交流し、じっくり語り合うイベントを行うことができました。
IKIGAI WORKSは今年、『エシカルエキスポ』(※)の中で『IKIGAI企業サミット』https://kenkoukeiei-media.com/articles/ikigai-ethical2024 を開催。今回のピッチコンペに課題を出されている企業さんなどと学生が一丸となって人を幸せにする企業のティーアップ(魅力がより伝わる表現や手段)を考えてもらう企画をしました。
参加した学生からは“中小企業のイメージが変わり、魅力的な会社や経営者を知ることができた” “こんなに社員の健康や働きがいのための取り組みをしている企業があることに感動した”という声が聞かれました。また、参加企業からも“自分達の会社の良さを理解してもらえて自信になった” “意欲ある学生と早い段階で出会えることができた”という言葉をいただきました。

今年、IKIGAI WOKRSは社会的健康戦略研究所さんとの共同プロジェクト事務局企業としてこのピッチコンペに参画することになり、私たちの呼びかけに賛同してくれたIKIGAI企業4社(ベイラインエクスプレス、都築電気、三幸土木、ハンナ)も新たに課題提出企業として参加してくれています。そういった状況の中、昨年以上の盛り上がりや成果を出せるように尽力していきたいと考えています」
IKIGAI WORKSの須子が続けます。
「IKIGAI WORKSは、今回のピッチコンペに企業と学生の間を取り持つ役割として参加しています。コンペティションではありますが、競うだけでなく、学生と企業が協力しあい、働きがい・生きがいとは何か? それをどうやって見つけ、実現すればいいかを考えていくサポートをしていきたいと思っています」
2.「ここで働きたい」と思ってもらうための施策(ベイラインエクスプレス)
そして参加企業4社から学生たちへの課題が発表されます。ベイラインエクスプレスさんの発表者は、宮澤秀和さん(運輸部マネージャー)です。
「みなさん、こんにちは。私たちベイラインエクスプレスは、神奈川県川崎市に本社を置くバス会社です。東京と地方都市(名古屋、島根など)を結ぶ高速路線バス16台と、観光バス12台で事業を展開しており、社員は約40名の運転士と約20名の内勤で構成されています」
まず宮澤さんは、これまでベイラインエクスプレスさんが取り組んできた健康経営について説明します。

「仕事柄、夜間運転するドライバーも多いため、まず身体的な健康増進に力を入れ、血圧計の導入をはじめ、社内にフィットネスジムや健康食品を扱う小さなコンビニを作りました。また、脳ドックの受診を必須化したほか、従業員の疲れを癒し、ゆったり過ごせるように酸素カプセル、カフェなどを設置しています。
コロナ禍により業績が下がったことを機に、精神的な健康への取り組みも強化。その一つが“つながる”をキーワードにした従業員同士や会社とのコミュニケーションの活性化です。たとえば、社内SNSを導入し、仕事柄ほかの従業員と接する機会が少ない運転士も、いつでもチャットでみんなと交流できたり、会社に伝えたいことも気軽に届けられる環境を整備しました。
さらに仕事ぶりをしっかり評価できる仕組みを構築。社歴が浅くてもリーダー職に就くことができるなど運転士のモチベーションアップにつながる評価システムを整備しています」
このように積極的に様々なことに取り組んでいるベイラインエクスプレスさんですが、課題があると言います。それが人員不足。特にZ世代や若手ドライバーの採用です。
「運輸自体、人手不足に悩まされている業界です。特に高速路線バスは夜間の運転も多く、一泊二日の仕事もあります。その中で“ここで働きたい”と思ってもらえる会社にしていくために何をすればいいのか。みなさんのような若い世代から見て魅力的な会社だと思ってもらうための斬新なアイデアや提案をお聞かせください」
3.健康経営を社会に広げる戦略ストーリーを描いてほしい(都築電気)
創業から90年以上経ち、業界の中でも老舗である都築電気さん。課題発表者は、奥野洋子さん(総務人事統括部ヘルスマネジメントチーム チームマネージャー)が務めます。
「私たち都築電気のことを一口で説明すると、ICTを通してお客様の企業価値向上および社会課題解決を行う企業。具体的に言えば、コンビニエンスストアに商品を配送する運行管理、映画館のチケット予約、自治体・官公庁、病院といった流通やエンターテイメント、社会基盤を支える様々なネットワークや情報システムを提供しています」

奥野さんは、健康経営の取り組みとその成果について説明します。
「以前は残業も多く、健康など度外視でモーレツに働く社風でした。2017年から健康経営や働き方改革に取り組み、2022年度までに年間の総実労働時間も100時間あまり減らすことに成功しました。現在では多様な働き方が浸透し、心身ともに健康であることへの意欲が会社全体でさらに高まっています」

今回、そんな都築電気さんが学生の皆さんに考えてほしい課題は、自社内で成果を出すことができている健康経営の取り組みの対象を広げていくこと。そしてそれによって会社の知名度をアップさせ、就職希望者なども増やしたいという狙いがあると言います。
「健康経営の取り組みを広げる対象としてまず挙げられるのは、従業員の家族ですが、そこに留まらず、お客様や社会全般、地球・未来へと広げていきたいと考えています。例えば、今、当社ではお客様に対して健康増進セルフケアシステムを提供するといったことをしています。地球・未来に対しては、健康寿命延伸の取り組みが医療費の抑制などにつながるといったことを念頭に置いています。
大切なのは戦略ストーリーです。みなさんなら当社のお客様、社会全般、地球・未来のためにどのような健康経営を提案しますか? 都築電気の健康経営推進チームの一員になったつもりで、ぜひ企画立案してください。フレッシュな観点での提案をお待ちしています」
4.若手社員の成長を促し、文系学生にアピールしたい(三幸土木)
ジブリパークの整備工事にも携わった三幸土木さんは、愛知県日進市に本社を置く創業59年の企業。学校や病院といった建物の土台づくりを担っています。課題発表をするのは宮路浩貴さん(企画業務部 部長)です。
「当社は“社員の健康は会社の健康。会社の健康は社会の健康につながる”をモットーに10年ほど前から健康経営に取り組んでおり、健康経営優良法人にも8年連続で認定されています」
一人暮らしの若手社員が家でもバランスのとれた食事ができるようにと元イタリアンシェフの専務による自社農園の野菜を使った調理実習。ウォーキング大会やラジオ体操講座。睡眠に関するリテラシー向上など健康経営の施策の数は30以上にも及ぶそうです。そんな三幸土木さんが現在抱えている課題は何でしょうか。

「1つ目の課題は、若手社員のエンゲージメントと定着率を高めるにはどうすればいいか。というのも、当社では30代、40代の社員が少なく、若手社員に早く成長してもらう必要があります。つまり若手社員のエンゲージメントを高めて離職することなく、中核を担ってくれる社員になってもらうために何をすればいいかということです」
2つ目の課題は、文系学生へのアプローチだと言います。

「インターン参加率を見ても、土木・建築系など専門学科の学生が多く、それに比べ文系学生が少ないのが現状です。インターンシップやオープンカンパニーの案内を自社ホームページやや就職情報サイト、SNSなどで告知していますが、学生さんに届いていないか、届いていてもあまり刺さっていないのではないかと感じています。そこで、より広く、効果的に文系学生に当社をアピールできる方法は何かをみなさんに考えていただきたいと思います」
5.トラックドライバーを「なりたい職業」にするためには(ハンナ)
ハンナの課題発表者は取締役の西岡徳行さんです。
「私たちハンナは奈良県奈良市に本社を置き、近畿2府4県を主なフィールドとする運送会社です。現代は誰もが物流システムの恩恵を受けていると思いますし、この便利で豊かな生活を支えているラストランナーはトラックドライバーであると自負しています」
そんなハンナさんは、健康経営に2017年から取り組み、健康経営優良法人に8年連続、ブライト500に4年連続で認定されています。特に身体的な健康だけでなく、メンタルの部分を重視し、働きがいを追及。モチベーションを上げるための評価制度、“女性が働きにくい環境の壁” “免許の壁”などを壊すための施策、さらには社会貢献を通して社員のモチベーションを上げたい、地元のコミュニティーにハンナのことを知ってもらいたいという想いから自社でラジオ番組制作も行っています。

人材から人財へと社員が働きやすく、自己成長を促す経営をしているハンナさんですが、少子高齢化や運転免許を取得しない若者の増加、業界の認知度や社会的地位の低さなどから、トラックドライバーの仕事が敬遠されがちであるという問題に直面しています。
「このままではトラックドライバーが減ってしまう可能性もあり、便利で豊かな生活を支えるラストランナーとしての役割を十分に果たせなくなる恐れがあります。そこで、どうすればトラックドライバーがなりたい職業の上位に位置付けされるようになるのか。そのためのトラックドライバーという職業の魅力や使命の伝え方、ブランディングをみなさんにぜひ考えていただきたいと思います」
【取材後記】

今回のキックオフオリエンテーションでは、「学生やZ世代に仕事や会社の魅力をどうやってアピールし、採用につなげるか」「健康経営を自社だけでなく、社会に広げるためにはどうすればいいか」「職業自体をブランディング化するためには」といった課題が企業側から発表されました。それに対して学生たちは、真剣な表情で聞きいっており、企業の皆さんも大きな期待を寄せているようでした。
これから学生たちは、産学共同で課題に取り組んでいきます。健康経営を企業が抱える課題解決にいかに結びつけるのか。その発表の場となるのが10月に開かれる社会的健康ピッチコンペティションです。その様子も記事にしていきますのでお楽しみに!
(※)エシカルエキスポは、持続可能な社会を目指す様々な学生団体、起業家、クリエイター、企業が一堂に会する複合型フェスティバル。
会社名:ベイラインエクスプレス株式会社
事業内容:高速バス・夜行バスの運行/企業送迎バスの運行/人材紹介
所在地:神奈川県川崎市川崎区塩浜2-10-1
資本金:2,000万円
社員数:42名
会社名:都築電気株式会社
事業内容:ネットワークシステムおよび情報システムの設計、開発、施工、保守
所在地:東京都港区新橋6丁目19番15号(東京美術倶楽部ビル)
資本金:98億1,293万円
社員数:1,239名(2024年3月、単体)
会社名:三幸土木株式会社
事業内容:土木建築一式工事/建築資材の販売/砕石、砂利の採取及び販売/産業廃棄物収集運搬業/前各号に付帯関連する一切の業務
所在地:(日進本店)〒470-0103 愛知県日進市北新町北鶯91-5
資本金:3,000万円
社員数:103名
会社名:株式会社ハンナ
事業内容:一般貨物自動車運送事業・貨物利用運送・通過型倉庫・車輌整備
所在地:〒630-8442 奈良県奈良市北永井町372番地
資本金:1,000万円
社員数:社員数 147名(2023年4月現在)