健康経営の取組み事例:田辺三菱製薬株式会社(前編)

健康経営の取組み事例:田辺三菱製薬株式会社(前編)

2017年2月に、「健康経営優良法人~ホワイト500~」に認定された、田辺三菱製薬株式会社人事部健康推進グループマネージャーの四方 邦宗さんにお話を伺いました。インタビュアー:株式会社セルメスタ 代表 熊倉 利和


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1.ホワイト500申請の経緯

─ まずは、ホワイト500に申請されるまでの経緯を教えてください。

四方 邦宗さん(以下、四方さん):もともと地道な取り組みを続けていましたが、2016年の4月に社長自ら全社グループの健康方針を、全従業員に向けて発信したのが第一歩だと思います。

─ 以前から健康経営に関して取り組まれていたとのことですが、産業医や看護職の方はいつごろからいらっしゃったんでしょうか。

四方さん:旧田辺製薬のころに遡りますと、大規模事業所(研究所・工場・本社機能)に看護職を配置し、拠点の健康管理業務に特化して診療所を設置していたので従業員の福利厚生的な側面から従業員の健康支援を行っていました。その後、診療業務より労働安全衛生法に基づく安全配慮義務遵守を重要視した体制となりましたが、まだ、拠点毎に運用が任されている体制でした。本格的には2011年頃から人事部内にも看護職を配置し、全社施策を展開していましたが、産業保健スタッフ部門は拠点ごと、人事部門は拠点をまたがる組織体制であり、全社施策の浸透には課題がありました。ようやく2014年頃から健康経営を意識した動きとなってきましたが、まだまだ経営層を巻き込んでまでの体制ではありませんでした。そこで、今年の4月から、人事部内に健康推進グループが新設され、企画職事務職と看護職からなる組織がスタートしました。

─ 健康推進グループは何人構成ですか?

四方さん:わたしを含めて9名です。埼玉や横浜にある研究所、東京本社、加島の看護職の方と本社のスタッフで構成しています。定期的に会社と健保組合は情報を共有し、相互の施策を検証し進めています。

─ いままで明確な部署がなかったところに、健康推進グループをつくって横串を指したかたちでしょうか。

四方さん:そうですね。これまで各拠点にいらっしゃる看護職の方は、連携してなにかをするというわけではなく(連携を模索する方もおられましたが)、それぞれが自分の城を守るような位置づけでした。そこで各々拠点を守りつつ横串を指し、全社で進めていく施策については連携できるようにしました。

─ 四方さんがグループ9名を統括されているんですか?

四方さん:はい、主に全社健康施策に関して一緒に取り組んでいます。グループにはわたしのほかにも同じく非医療職の研究部門出身のスタッフがいたり、元看護職の企画スタッフもいたりします。この部署は4月に新設されたばかりですが、4月末に健康経営施策を策定し、経営執行会議にて承認され実行フェーズに移るなど、非常にスピーディーに進みました。

─ ホワイト500の調査票にも、「誰にどれだけ報告をするか」といった項目がありますね。そういった意味で自然とレポートすることが求められるのではないでしょうか。

四方さん:はい。健康経営の推進を目的とした部署を設置し、その上位階層に人事部長や担当執行役員を設定したことで、ホワイト500の評価基準に則ったレポートラインができあがりました。以前から働いている看護職の方にも、4月以降、健康施策に関する社内の意思決定のスピードが上がったと言われています。

2.ホワイト500認定後、社内外の反応は

─ いざホワイト500に認定されてから、社内でどのような反応がありましたか。

四方さん:先ほどもお話したとおり、2016年4月にイントラで健康経営の方針が発信されたときは、良くも悪くも従業員のみなさんは「ふーん」といった反応だったと思います。ただ、今年4月に健康推進グループが立ち上がり、社長に再度メッセージを発信してもらって、従業員向けの健康白書も創刊したり、生活習慣病対策の一環でICTを活用した健康サポートシステムを導入し、希望者にウェアラブルデバイスを配布したりということで、「最近、けっこう力入れていますよね」と従業員の方から言われるようになりました。

─ 健康白書とウェアラブルデバイスについては、後ほど詳しく聞かせてください。では、社外からはなにか反応がありましたか。

四方さん:今年8月に行われた日本ヘルスサポート学会の第12回学術集会・総会にて、実践企業賞をいただきました。日本ヘルスサポート学会が企業と健保組合のコラボヘルスを研究していて、うまくコラボして取り組んでいる企業を表彰しているんです。企業と健保組合の両方の視点から施策を策定している点を評価されました。

─ 御社は健保組合を独自で持っていらっしゃるし、定期的に交流しているとのことなので、コラボヘルスも盛んなのでしょうね。

四方さん:はい。定例会でさまざまな話をしています。この7月には、先ほど述べた健康白書を健保組合と共同でつくって創刊しました。

─ 健康白書の中身を拝見しましたが、健康に関する詳しい知識を持っていない人でもパッとわかる白書に仕上がっていてすばらしいですね。

四方さん:読みやすさや親しみやすさを前面に打ち出しました。デザインもあえてアウトソースしています。弊社のキャラクターの「たなみん」を使うことで、生活習慣や飲酒・喫煙に関する従業員への注意喚起といった、該当者にとって耳の痛い言葉もきちっと届くようにしています。やはり健康が一番ですから、これに目を通すことで少しでも従業員の意識が高まればと願っています。

3.注力している施策について

─ 御社がいま注力している施策を教えてください。

四方さん:まず健康施策における検証(PDCA)について、会社だけでなく従業員自らも自身の健康状態のPDCAができるような取り組みを行っています。人事における健康施策というと、残業時間削減などの働き方改革が主になります。数値目標を打ち上げ花火的に出したものの、「実際、人事施策の効果や影響はどうなの?」という従業員の声もあろうかと思います。それに応えられるようi² Healthcareというシステムを導入し、Fitbit社のウェアラブルデバイスを従業員に配布することにしました。さまざまな製品があるなか、Fitbitを活用した医学的論文の投稿数はFitbitが一番多いらしいんですね。PCのUSBから簡単に充電でき、フル充電2時間で1週間持つので便利です。

─ 全従業員に配布しているんですか?

四方さん:はい。9月からシステムで管理する情報や本施策の趣旨等に同意いただける方に対して配布しています(11月時点で従業員カバー率70%)。i² Healthcareシステムやウェアラブルデバイスに関する説明会も定期的に行っています。従業員の方からは「GPS機能がついていて会社に管理されるのでは?」という不安の声もありますが、実際はこのデバイスにGPS機能はついていません。健康施策を行うのに場所は関係ないので……と説明して誤解を解き、本施策の理解を得るようにしています。

─ ウェアラブルデバイスで具体的にどういった数値がわかるんですか?

四方さん:歩数、距離、消費カロリー、心拍数、睡眠の質などです。摂取カロリーは手入力していただくかたちです。やはり、「会社に心拍数や睡眠まで管理されたくない」という従業員もいますが、看護職や産業医、健保組合が見られる情報は、歩数、距離などだけ。心拍数や睡眠の質などは個人を特定しての閲覧することはできない仕組みにしており、本施策の効果検証のために会社全体のマクロデータとして扱います。

Fitbit社のウェアラブルデバイスとスマートフォン用アプリ

─ 従業員の方はどのように自分の情報を確認するんですか?

四方さん:Fitbitで得られる情報のほかに、会社PCから、i² Healthcareの個人ページにアクセスして閲覧してもらいます。ひとつのクラウドのなかに、デバイスから得られる従業員の活動量と、会社が保有している健康診断のデータや働き方データ(勤怠管理システムから得られる情報)を入れて、従業員一人ひとりのマイページで確認できるようになっています。会社全体だけじゃなく、従業員にも自身の健康状態や、働き方のPDCAを回し、健康経営施策がどう当社の集団に対して効いているのか検証が必要だと考えています。PDCAのCに相当するのが健康診断結果で、これは車で言うところの車検のようなもの。加えてi² Healthcareでは、Fitbitから得られる日々のアクティブデータが記録されます。車で言うと毎日のアイドリングやエンジンの調子がどうかという情報も入ってきて、日々の健康情報が一目で確認できるというしくみです。

─ それだけの情報がi² Healthcareに集まると、アブセンティズムやプレゼンティズムもわかりますね。

四方さん:はい。日常の歩数や睡眠、心拍数、残業時間などが可視化されることで、自分の状態に気づき、意識を変えていただく。会社側から声高に「健康は大事だから日々意識してください!」だけではなく、まず自分で気づいてもらうことで健康に関する行動変容につながると考えています。「あなた、いい人になりなさい!」という道徳論的なアプローチだけでは人の行動は変わりません。日々の健康状態を可視化し普段の生活を意識して過ごすこと、普段の積み重ねが次の年の健康診断結果にどう反映されているかという方が、現実的で取り組みやすいと思います。

─ 健康診断のデータは御社が持っているんですか?

四方さん:はい、定期健康診断のデータは会社が持っています。特定健診については健保組合が持っているので現状では反映されていませんが、いずれ連携を拡大し、特定健診の結果も閲覧できるようコラボヘルスを進めていければと思っています。ウェアラブルデバイスとi² Healthcareというインフラが整ったことで、健康経営施策として古典的なハイリスクアプローチだけでなく、集団全体に対するポピュレーションアプローチもカバーすることが可能になりました。

─ ちなみにこのようなウェアラブルデバイスを使っている企業をほかにご存じですか?

四方さん:わたしが把握している限り、医薬品企業で、部分的なトライアルではなく全社的に導入したのは弊社が初めてではないでしょうか。これはホールディングスグループ全体での取り組みですが、なかでも生命関連企業としてまずは弊社が先行して開始しました。

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後編では、ストレスチェックとの連携や今後のコラボヘルスについてお話しいただきます。

<企業データ>

会社名:田辺三菱製薬株式会社
    Mitsubishi Tanabe Pharma Corporation
事業内容:医療用医薬品を中心とする医薬品の製造・販売
本社所在地:〒541-8505 大阪市中央区道修町3-2-10
資本金:500億円
連結従業員数:約8,457人

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