食育基本法とは? 食生活からヘルスケアや文化継承を考える
目次
健全な食生活を実践するための食育、そして「食育基本法」
農林水産省によると、「食育」は下記のように定義されています。
食育は、生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるものであり 、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実現することができる人間を育てることです。
出典: 農林水産省:食育の推進
そして、平成17年7月に施行された「食育基本法」は、食育について基本理念を明らかにしてその方向性を示し、国、地方公共団体及び国民の食育の推進に関する取組を総合的かつ計画的に推進するための法律です。施行以来、毎年6月は「食育月間」としてさまざまなイベントが催されています。
栄養面の視点からのヘルスケア対策が食育推進のきっかけに
こうして食育が推進されるようになった背景には、現代の食生活や、それを取り巻く社会環境の変化があり、従来通りの取り組み方では「健全な食生活を実現する人間を育てる」ことが難しくなってきていることがあります。
厚生労働省「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)」の「栄養・食生活」の項に、その一端をみることができます。
日本人の食生活が、第二次世界大戦以降約50年間に高塩分・高炭水化物・低動物性たんぱく質という旧来の食事パターンから、動物性たんぱく質や脂質の増加等、大きな変化を遂げたことは、感染症や脳出血などの減少の一因1)となった。しかし一方で、現在、がん、心疾患、脳卒中、糖尿病等の生活習慣病の増加が深刻な問題となってきており、これらの発症に栄養・食生活の関連がみられるものも多い。従って、栄養対策も従来の栄養欠乏から過剰栄養に焦点をあてたものへと転換を図ることが求められている。
また食生活を取り巻く社会環境の変化に伴い、朝食欠食率の増加、加工食品や特定食品への過度の依存、過度のダイエット志向、食卓を中心とした家族の団らんの喪失などが見受けられ、身体的、精神的な健康への影響が懸念される現状にある。人々の健康で良好な食生活の実現のためには、個人の行動変容とともに、それを支援する環境づくりを含めた総合的な取り組みが求められている。<引用>厚生労働省:健康日本21(栄養・食生活 )
「食育推進基本計画」と「食育推進会議」とは
「食育推進基本計画」は、食育基本法第 16 条に基づき、「食育の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため」に作成されている計画で、平成 18年3月に最初の計画を作成、現在は平成 28 年度から32 年度までの5年間について定めた「第3次食育推進基本計画」が掲げられています。
「食育推進会議」もまた、食育基本法に基づき内閣府に設置されたもので、関係閣僚や民間有識者で構成されています。食育推進基本計画を作成、その実施を推進するほか、食育の推進に関する重要事項について審議し、食育の推進に関する施策の実施を推進しています。
「第3次食育推進基本計画」はどのような計画なのか
「第3次食育推進基本計画」では、「実践の環を広げよう」がコンセプトとして掲げられ、重点課題として次の5点が挙げられています。
■ (コンセプト)「実践の環を広げよう」
■ 「第1 食育の推進に関する施策についての基本的な方針」に5つの「重点課題」を掲げる
① 若い世代を中心とした食育の推進
② 多様な暮らしに対応した食育の推進
③ 健康寿命の延伸につながる食育の推進
④ 食の循環や環境を意識した食育の推進
⑤ 食文化の継承に向けた食育の推進出典: 農林水産省:第3次食育推進基本計画(概要)
これらを実践するため、定量的な指標として「朝食又は夕食を家族と一緒に食べる『共食』の回数の増加」「朝食を欠食する国民の割合の減少」「学校給食における地場産物等を使用する割合の増加」「生活習慣病の予防や改善のためにふだんから適正体重の維持や減塩等に気をつけた食生活を実践している国民の割合の増加」「食品ロス削減のために何らかの行動をしている国民の割合の増加」など、15の項目で目標値を定めています。
また、「食育の総合的な促進に関する事項」や、「食育の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項」もリストアップされています。
「食育基本法」の示す理念を実践するのは国民一人ひとり
「食育基本法」とは、食育の基本理念を示すもの。その具体的な目標は「食育推進基本計画」が担っています。しかし、国がどれだけ環境づくりをしても、食育を実践するのは国民一人ひとりです。
子どもはもちろん、大人も含めて「健全な食生活を実現する人間を育てる」ことを意識し、食育に向き合ってみてはいかがでしょうか。
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