個人の健康度を可視化できる「健康関数」、事業化への期待と課題

1.健康関数の事業化

健康関数の事業化
理化学研究所 健康“生き活き”羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム 事業化グ
ループ 連携促進コーディネーター 千田修治氏
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セッション1「健康関数の利活用モデル」の開始に当たり、まず座長の千田修治氏が、「康関数の事業化」をテーマに、健康関数のビジネスの広がりについて解説しました。
健康“生き活き”羅針盤リサーチコンプレックスへの参加企業様が、どういうふうなビジネスを考えておられるか、少しご紹介をさせていただきます。健康関数を当てはめると次のようなビジネスが考えられます。

1番目、健康関数を開発するための技術・機器の開発、販売、
2番目、健康関数を使ったアプリ、システムの開発、販売
3番目、計測データを抽出する
4番目、集積したデータを利活用する
5番目、計測データを基にして対策をアドバイス、提案する
6番目、対策や予防のためのサービスを開発する

もう一つ、健康関数の場合、測定にノウハウが必要ですので、計測することが事業になる
かもしれません。

健康サービスというと、いろいろなビジネスが消費者に直接つながる形をイメージします。しかし、これはそれだけではなく、健康サービス事業をカットしていろいろサービスを提供する形も考えられます。健康関数をどういう場所で、誰に対してどういう形で使うかによって異なってきます。

例えば、BtoC、BtoB、BtoG、さらに真ん中の企業がさらにそれを消費者のために使ったとすると、BtoBtoC、企業のために使ったとするとBtoBtoBということになります。
参加企業の分類ですが133機関。そのうち72%95社がございます。95社の企業のうち3分の2ぐらいの企業はコーディネーターが直接伺って、いろいろお聞きしています。残る3分の1の企業は我々がホームページを参照し、分類をさせていただきました。

その結果、BtoBのビジネスを考えている企業が半数以上を占めました。中でも対策や予防の製品を考えているところが最も多い結果でした。
次に多かったのがBtoBtoC。これは企業がお客様や自社の社員に健康関数を使われる例で、最も多様なビジネスが考えられている一番面白いところです。また、保険会社もこの分野でいろいろと考えられていらっしゃるようです。

セッション1では、BtoBの事業をか考えている2社、BtoBtoCを考えている2社が講演いたします。特に健康関数を使うことの課題は何かということを中心にお話をしていただくようにお願いしています。

2.健康と食

健康と食
株式会社カネカ Pharma & Supplemental Nutrition SV 幹部職 藤井健志
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セッション1「健康関数の利活用モデル」では、まずカネカの藤井健志氏が登壇し、「健康と食」をテーマに講演しました。カネカはサプリメントなどに使われる還元型コエンザイムQ10のメーカーでもあります。
コエンザイムQ10の生理活性は、エネルギー生産と抗酸化作用ですが、これの問題点は体の中で作られるだけでは不十分で、食事から十分な量を取る必要があるということです。

これは牛肉や豚肉などの肉にたくさん含まれています。歳を取って肉を食べなくなるとそ
れだけで口から入ってこなくなりますので、体の中からどんどん減ってしまいます。歳をとっても元気に生きておられるお年寄りは、何がお好きですかと聞くと、肉と答えることが多いです。

作ったエネルギーは、だいたい6割が臓器、残りの4割が筋肉で使われます。そして臓器で使われエネルギーの3分の1を脳が占めています。脳とは非常にエネルギーを消費する臓器なのです。4割を使う筋肉でも、生産が落ちると肉体的な影響が出てきます。歳をとって筋肉が落ちるのは運動不足ではなく、単純に筋肉を維持するエネルギーを作れなくなっているからです。

血中のコエンザイムQ10の量の多い人は脳疾患のリスクが低いことが分かっています。量が平均的な人たちは、少ない人たちと比べて認知症になるリスクは変わりません。ところがこれの1.5倍ぐらいある人たちは認知症のリスクが半分になります。

還元型Q10を開発したときに、最初に東京女子医大の先生とともに高齢者施設で、飲んでいただきました。高齢者がよく外に出るとか、疲労感や憂鬱感が改善したという結果がでてきました。そのときにケアマネージャーさんから世話が楽になったという、ありがたいお言葉をいただきました。

そこでこれをいろいろな地域で行いました。瀬戸内海の島、愛媛県の上島町で行った結果では、毎日飲むことでだいたい4倍ぐらいに増えてきます。知覚的な疲労感、憂鬱感なもの精神的なものも上がってきます。

精神的な疲労感が改善すると、隣の家に行きたいだとか、人と話をしたいだとか、そういうことが改善します。まず疲れが治り、エネルギーが十分に作れるようになりますと、まず疲れが治って社会的な活動ができるようになるのです。

ところが残念ながら肉体的なものについては、4年間ずっと飲んでいただきましたけれど改善はありませんでした。4年間飲んでいただいて衰えないだけでもいいのかな、とは思っています。

飲んでいないとどうなるかという申し訳ない研究もさせていただきました。すると、社会生活機能が下がってきました。先ほど精神がよくなって社会が広くなると言いましたが、飲むのを止めると社会性も落ちてきます。

弊社が行っているこういう活動で、自覚的なものはをどうかとか、自律神経機能はどうかとか、機能年齢が低かった人が改善してくるとかが分かっています。

しかし、やはり単体の結果なのです。複合的なものではありません。そういうことが今回の健康関数では、弊社の場合は還元型Q10を持っておりますので、それをもって改善策として取り組ませていただいています。

3,健康と空間

健康と空間
ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター テクノロジー・イノベ
ーション戦略室 課長 武田信明氏
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「空気で答えを出す会社」。こう掲げるのが空調機器メーカーのダイキン工業。テクノロジー・イノベーション戦略室の武田信明氏が登壇し、「環境と空間」をテーマに講演しました。

当社は「空気で答えを出す会社」というビジョンを打ち出していまして、世界中をふさわしい空気で満たしたいというコンセプトでビジネスを進めています。

「環境と空間」というテーマで言えば、ヒューマンコンディショナーという方向に取り組んでいこうと考えています。もっと頭が冴える空気とか、よく眠れる空気とか、おいしい空気とか、懐かしい空気とか、ほっとする空気とか、こういうことを考えていきたいと思っています。

社会課題として健康や快適性を阻害する因子がたくさんあります。当社では、不眠であるとか、疲労であるとか、こういうものを社外の方々と連携して課題設定していきたいと思っています。

例えば、認知症というのは一定の快適な温度でいいのかというと、認知症が進んでしまいます。やはり肌感覚では、暑い、寒い、もっと汗をかくようにするとか、たまには霧を当てるなど、こういうことで認知症を抑えられるのではないかと考えています。

リサーチコンプレックスでの連携では、2016年に快適で健康な空間作りで新たな価値の送出を目指すということで、健康空間連携プログラムというのを走らせています。翌年には連携センターを立ち上げ、試験室を設けています。

この一つとして疲れにくい空気を考えましょうということで設定させていただきました。もう少し具体的な目標では、一晩寝たら疲れが取れる、といった空気を作りたいなと思っています。

実験室には4部屋ありまして温度を0.1度単位で設定できます。湿度も1%単位で設定可能です。こういうところで暑い夏や寒い冬を実現できるかたちを取っています。

具体的な試験は、被験者に1時間ほど作業をしてもらいます。その中でいろいろな環境因子をふりまして評価をさせていただいています。当然、高温高湿度が疲労度が高いという結果が出ました。さらに、客観的なものと主観的なものが一致してきました。男性と女性で2度ほど体感の差があります。特に若い女性が寒さの感性が高いことが分かりました。

また、それから快適な空間を作るよりも、少し温度の低いところに生産性が高いところがあることもわかりました。その具体的な温度や湿度の指標ができたことが非常な大きな成果です。これを来年さ来年、空調機に利活用しようと思っています。

実際に事業としてどういうものが考えられるのかというと、ストレス、疲労度が低い空間です。今検討していますのが、入眠誘導モードのようなものを作って、入眠しやすい、眠たくなるような形にして睡眠してもらうエアコンです。

それのもっと先でいうと環境センシングだとか、生体センシングをするなかで、その人の疲労をできるだけ抑えるような機能を作っていけるのではないかと思っています。理化学研究所は、人のデータを深く取られていますので、これを当社の空気空間と結びつけることによって、非常に広いビジネスの可能性があると考えています。

健康関数は簡易計測で健康度を正確に評価して未病群を判別できると聞いています。これはすごく大事で、当社は高機能であるとか、省エネというところで研究開発を行ってきました。

もしかすると、健康関数を利活用することで疾病予防もそうですし、治療にまでダイキン工業が入っていけるのではないかと考えています。それから健康関数が、もしかしたら省エネに代わる環境指標になるかもしれないと思っています。

例えば今町で売られているエアコンは、省エネ度を「★」で表示されています。これにリサーチコンプレックスの「R」マークが付いて、何個付いたらエアコンが売れるといったところまで、健康関数を利活用できたらなと期待しています。

4.健康とおでかけ ~羅針盤アプリ×健康関数による行動喚起~

健康とおでかけ ~羅針盤アプリ×健康関数による行動喚起~
阪急阪神ホールディングス株式会社 グループ開発室 部長 西水卓矢氏
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鉄道事業を中心にさまざまなビジネスを展開する阪急阪神ホールディングス。利用者との接点との多さを活かし、ヘルスケアにも乗り出しています。グループ開発室の西水卓矢氏が登壇し、「健康とおでかけ」をテーマに講演しました。

これまで当社は、お客さまが喜ぶことをやっていこうということで、戦略とはまったく関係なく、脈絡なしにやって参りました。ただ、2025年を境に人口が少子高齢化を伴って確実に減っていきます。健康寿命への関心がこれからさらに高まります。そこで、沿線の住民がいつまでも生き生きと暮らせることを目指して進めています。

具体的に取り組んでいるのは、生活習慣病予防サービスです。阪急阪神ホールディングスがいろいろな住民接点を提供させていただき、そこでリサーチコンプレックスが1万人の健康計測を行い、健康な人には予防、リスクのある人には重症化予防サービスを提供させていただくというものです。

我々が健康ポイントというものを提供して計測を受けたらポイント、継続したらポイントということで進めています。加えて、成果報酬型のソーシャルインパクトボンドの導入のお手伝いをさせていただき、自治体とも連携を深めていこうというものです。

お出かけと健康計測ということでは、2016年の経産省の健康寿命延伸事業に参加し、グループカード会員から1000名以上のモニターをいただきまして、ウォーキングを核とする健康づくりを推奨して、1日最大10ポイントを提供いたしました。

その結果、行楽への関心が増したとか、山への関心が増したとか、お出かけするのが楽しくなった、あるいは筋力がついてきた、ストレスが解消された、そしてやはり自分の住んでいる町がこんなにいいところだとは知らなかったという声をたくさんいただきました。

このモニターのうち254名、約4分の1の方には9月、10月、11月の3回、健康ラボステーションが実施しているセルフ健康チェックに参加いただきました。この健康セルフチェックを受けられた方と受けられなかった方では歩数に明確な差が出てきました。

まさに健康セルフチェックという簡易検診に、科学的な根拠を与えるのが健康関数です。それによってお出かけの成果を確認、実感していただければ、個人のお出かけをはじめとする健康改善行動の継続と健康計測を強化していくお手伝いができるのではないかと考えています。

現在は広島大学が開発された発症予測AIで、阪急阪神社員2万7000名のデータを解析しております。それで、糖尿病と循環器疾患、メンタル、ロコモの4つの類型リスク者を抽出して症例別のモニタリングを実施しています。

並行してデータ収集機能拡充ということで健康関数、健康指標に関しては理化学研究所と共同開発、歩行姿勢、歩行機能に関しては政府系研究機関、ベンヂャート、問診機能に関しては広島大学と連携、このアプリに乗せていこうとしています。

基本的に大阪人、食べる物が食べられないなら死んだら良いという方々が多いので、やはり食べる物は食べてください。その代わり運動を一生懸命やりましょう、ということで運動機能に関していろいろなデータを取っていこうというのが考え方です。

こちらはテストフライトということで、当面クローズドでの機能検証ですが、今後公開していく予定です。

5.健康増進に向けた取組み

健康増進に向けた取組み
株式会社アシックス スポーツ工学研究所 インキュベーション機能推進部 部長 勝 真
理氏
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セッション1の最後はスポーツ用品メーカー、アシックスの勝真理氏が登壇、「健康増進に向けた取組み」と題して、同社が開発した健康増進プログラム「アシックスヘルスケアチェック」について解説しました。

今、日本の抱える問題として、医療費の適正化と健康寿命の延伸という課題があります。アシックスは、スポーツ用品メーカーですので、そういう課題に対していろいろアプローチできるのではないかと考えています。

そこで最近、健康経営が非常に注目されているのを受け、企業向けの健康増進プログラム「アシックスヘルスケアチェック」を開発いたしました。この目的は、体力測定、診断を通じて健康社会に貢献するというものです。

私たちは学生の頃は体力測定を毎年受けていましたが、社会人になった途端にそういうものはやらずに健康診断だけになっています。健康診断の結果は示されるものの、どのような運動をどれぐらい行えばよいのか、食事はどうしたらいいのか、という個別のアドバイスはなかなかいただけません。

というのも、健康診断だけではアドバイスするための情報が少ないと感じています。それにプラスして必要な情報を得るために、体力測定を企業で行ってはどうかと考えた次第です。

開発したプログラムの特徴は、大きく三つあります。一つ目はまず歩行能力を中心として体組成、体力、ストレス、認知機能この5つの要素を10段階で評価します。二つ目の特徴として、将来の健康寿命を予測します。歩けなくなるまでの期間とか、転倒・疼痛リスクなども見ていきます。

三つ目は、一番ポイントになるのですが、健康を増進するためにどういった運動をしたらよいか、またどういった用具を使えばいいのか、といった個別の運動プログラムを提供いたします。

体力測定は当社が企業に出向いて行います。測定項目としては健康経営が着目されていますので、ストレスとか認知機能をチェックいたします。それにプラスして体力指数、平衡性、体組成、持久力、柔軟性、筋力などの項目を計測して提供します。これについては一人だいたい30分ぐらいで計測できる予定です。

結果は、計測項目が38項目ありますが、そちらの評価を10段階で評価し、1カ月後ぐらいに診断書と運動プログラムといったものを提供する予定です。

ただ、運動の嫌いな方はなかなか運動に取り組んでいただけません。それに対しては将来どうなりますよといったリスクを示すのと、運動をするのであればこうした用品を提供します、といったインセンティブを提供する形を考えています。

また、その人が本当に健康になったかどうか、データを出す必要があると思っています。なかなか個人の健康診断の結果は出していただけませんので、今はアシックスの社員400名ぐらいのデータがありますので、当面、そちらのデータを分析しようとっかんが得ています。

将来的には、年に1回か多くて2回、体力測定を行っていきます。その人が普段どういった生活をしているのか、運動を含めて情報がないとなかなか適切な運動プログラムは提供できないので、こうした人の生活習慣のログをいかに蓄積するかというのが課題です。

もう一つは運動メニューだけを提供しても健康にならないということも分かっていますので、そこで食事であるとかリカバリーを含めた睡眠であるとか、そういったものも運動プログラムとともに提供しないと、なかなか健康にはならないかなとも感じています。

当社は健康経営に着目してこうした取り組みを始めましたが、今見える健康の指標としては健康診断の各数値しかありません。そうした数値ではなく、総合的にその人の健康度を見るうえで健康関数が非常に有効です。運動することで個人の健康度がどう変わるのか、研究を一緒に進めさせていただきたいと考えています。

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