ワーク・ライフ・バランスが注目される背景 ホワイト企業を目指して
目次
いま、ワークスタイル変革が求められている
ワーク・ライフ・バランスと経済成長は車の両輪
なぜいま、仕事(ワーク)と生活(ライフ)の調和を目指すワーク・ライフ・バランスが注目されているのでしょうか。
ワーク・ライフ・バランスを実現した社会を、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」では以下のように定めています。
仕事と生活の調和と経済成長は車の両輪であり、若者が経済的に自立し、性や年齢などに関わらず誰もが意欲と能力を発揮して労働市場に参加することは、我が国の活力と成長力を高め、ひいては、少子化の流れを変え、持続可能な社会の実現にも資することとなる。
出典 http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html
<引用>仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章 | ワーク・ライフ・バランス| 内閣府男女共同参画局
社会経済構造の変化に適応するために
「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」では、ワーク・ライフ・バランスに取り組む背景として「いまの日本社会では、働き方に関する意識・環境が、社会経済構造の変化に適応しきれておらず、仕事と生活の両立が厳しい」としています。
・安定した仕事に就けず、経済的に自立することができない、
・仕事に追われ、心身の疲労から健康を害しかねない、
・仕事と子育てや老親の介護との両立に悩む
など仕事と生活の間で問題を抱える人が多く見られる。出典 http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html
<引用>仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章 | ワーク・ライフ・バランス| 内閣府男女共同参画局
次項から、日本における仕事と生活のアンバランスについて、主な問題点を挙げていきます。ワーク・ライフ・バランスを向上させるにあたって、これらの是正に官民一体となって取り組むことが急務です。
人々の生き方が変化 多様な働き方の模索
多様な人材をいかすために
かつては夫が働き、妻が家庭で家事育児を担うという役割分担が一般的でした。現在でもこのような役割分担を前提とした仕組みが多く残っています。
しかし、現在は女性の社会参加が進み、勤労者世帯の過半数が共働きであるなど、世帯の姿は変化しています。それにもかかわらず、企業の仕組みや働き方、家庭での役割分担意識がこの変化に追いついていないのが現状です。このような社会では、結婚や子育てが実現しにくく、それは少子化にもつながっています。
また、OECD(経済協力開発機構)によれば、日本は働く男女の格差がほかの OECD 諸国にくらべて大きいとしています。
日本では男女の格差は比較的大きく、OCED 平均より目立った格差がみられる。例えば、女性の賃金は男性より40%近く低く、低賃金の仕事に就く確率は男性の3倍である。
出典 http://www.oecd.org/statistics/Better-Life-Initiative-country-note-Japan-in-Japanese.pdf
<引用>OECD 2016年版 日本に関する資料(日本語)
少子高齢化の現代では、女性や高齢者の就業参加は不可欠です。また、正社員以外の労働者も大幅に増加しています。多様な人材をいかすためにも、ワーク・ライフ・バランスの向上、ワークスタイル変革を推し進めていく必要があります。
育児・介護のダブルケア フォローはホワイト企業化に必須
ダブルケアとは、育児と介護という2つのケアを同じ人が同時期に行うことを指します。夫婦の結婚や出産の年齡が上がってきたため、かつては時期が重ならなかった2つのライフイベントが重なるようになったのです。
ワーク・ライフ・バランスという視点、生産性向上や労働時間の自由度を広げるなどの施策を行い、ダブルケアにあたる人々が働ける職場環境づくりが求められています。
参考記事:
将来への不安、幸福度の低迷
ワーク・ライフ・バランスだけでなく、健康経営、メンタルヘルスなどの言葉が注目されており、これは前述した問題点のほかに「安定した仕事に就けない」「仕事に追われるあまり、心身の健康を害しかねない」という将来への不安が反映されているためと考えられます。
OECDが提供する『より良い暮らし指標(BLI)』は、暮らしの11の分野(住宅、収入、雇用、共同体、教育、環境、ガバナンス、医療、生活の満足度、安全、ワーク・ライフ・バランス)について38カ国間で比較を行っており、2017年11月には、日本を以下のように分析しています。
・雇用率は74%で、OECD加盟国中最も雇用が安定している国のひとつ
・しかし仕事のストレスは高く、平均所得・家計の調整済み可処分純所得平均ともにOECD平均を下回っている(2016、2015年)
・健康状態の認識を「良好」または「非常に良好」と する人口の割合は OECD平均は半分であるのに対し、日本では 35%に過ぎない。
(ただし、日本では大半の OECD 諸国より多い、49%が「まずまず」と考えている)
ワーク・ライフ・バランス、働き方改革でもたらされる企業のメリット
従来の働き方を見直さなくてはならないワーク・ライフ・バランスの取り組みは、企業にとっては「回収できないコスト」と考えられがちです。しかし、上で述べたように、働く人々のワーク・ライフ・バランスの向上が企業にもたらすメリットには多大なものがあります。
超高齢化社会となったいま、企業にとってワーク・ライフ・バランスの向上、職場の意識や職場風土の改革は、「投資」と考え積極的に取り組むべき課題となっています。