【IKIGAI企業交流会①】健康経営は新しいフェーズに突入。採用やエンゲージメント向上などに活かす時が来た

2024年3月5日に開催されたIKIGAI企業交流会のその1。ブライト500認定などを含む近況、実感しているメリットや課題について話し合いながら、採用やエンゲージメントの向上など健康経営をいかに企業経営に活かしていくかという、今まさに聞いておきたい話題満載の交流会となりました。

〔進行〕

熊倉 利和(健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役 )

〔参加者〕

笠間 力(株式会社カサマ 代表取締役)

西沢 頼母(株式会社エーオーエーアオバ 専務取締役 健康経営推進室長)

中嶋 洋子(株式会社トップライン 代表取締役) 

玉腰 純平(株式会社トップライン 係長)

稲田 礼子(I-QUON株式会社 代表取締役)

岩井 健治(ティ・アイ・エス株式会社 代表取締役)

篠原 英良(社会的健康戦略研究所)

1.学生の言葉がエンゲージメント向上のヒントに

熊倉:本日の交流会の参加者は、昨年夏の名古屋でのスタディツアー、関西大学のアントレプレナーシップ講座にご参加いただくなど大変お世話になっている方々。お会いできるのを楽しみにしていました。ところでブライト500認定はどうでした?

稲田(I-QUON):昨年はダメだったのですが、今年は認定を受けることができました。

熊倉:それはおめでとうございます。どのあたりが評価されたと思われますか?

稲田(I-QUON):そうですね。当社は社員が30代と若く、あまり健康について切実な問題を感じていないんですね。そんな状況の中、会社で野菜を自家栽培したり、握力アップのための体操などをイベントとしてワイワイ楽しみながら取り組みました。その結果、VDT (パソコンなどの画面表示装置)健診の数値が大幅に改善するなどの成果を出すことができました。

みなさんにも特に野菜の栽培をお奨めしたいですね。実はこれは私たちの地元、高槻市にある企業さんとのコラボなんです。その企業さんにご協力いただき、会社に簡易な水耕栽培キットを設置。レタスやベビーリーフを育ててお昼にサラダにしてみんなで食べています。その様子をブログにアップして社外にも発信しました。

中嶋(トップライン):社内菜園はいいですよね。実は、当社も一昨年から始めました。稲田さんのI-QUONは若い社員が多いとのことですが、当社は逆に年齢は高めで50歳オーバーが多いんです。そのため健康についての取り組みは必須でした。70歳になってもみんなが健康で元気に働くことができれば、まさにそれが健康経営の成果だと思って取り組んでいます。

熊倉:トップラインさんも実に素晴らしい取り組みをなされているので、それを外部に発信したり、大勢の人に知ってもらいたいですよね。最近ホームページをリニューアルしたとお聞きしましたが反応はどうですか?

玉腰(トップライン):はい。お陰様でホームページからお仕事のご依頼、求職者の方からのご連絡もいただいています。

中嶋(トップライン):それと新規の営業をかける際も、ホームページで健康経営の取り組みを見てもらえると会社としての信頼感に繋がります。今、密かに考えているのは、人事評価の査定方法をホームページで公開すること。そう考えるようになったきっかけは、昨年夏のIKIGAI WORKSさんのイベント『スタディツアー』である学生さんから「自分がやった仕事を正当に評価してくれ、給与体系も明確なら、やりがいを感じると思う」と聞いたことです。

運輸業界は人事評価が曖昧な部分がありますし、本人は「こんなに頑張っているのに給与がこれしか上がらないのか」といったギャップを感じる場合もあるかもしれません。査定方法が明確なら頑張ろうというモチベーションになります。そのことに学生さんの言葉で気付かされました。

熊倉:なるほど。笠間さんはエンゲージメント向上の施策についてどうお考えですか?

笠間(カサマ):今年はそこが一番ホットになると思っていますし、当社も実際にエンゲージメント向上に力を入れています。というのも、これまでは働きやすさの整備に注力してきましたが、これからは働きやすい環境を土台とし、働きがい、生きがいを仕事で実現する段階になっていると思います。

2.今、感じている健康経営のメリットと課題

篠原(社会的健康戦略研究所):これまで健康経営を実践されてきて、こういうことが経営にとって良かったと感じている点や課題について改めてお聞かせいただけますか?

西沢(エーオーエーアオバ):はい。当社は元々、健康に関連した事業を展開しているので、従業員の健康に対する意識も高いと思っていたのですが、案外そうでもありませんでした。それが健康経営をすることで従業員の意識が健康に向いていき、例えば、お酒を飲み過ぎない、無理をし過ぎないなど行動が変わっていったのは良かったですね。

課題だったのは社内の説得です。当社の社長は85歳で役員も70代が多いんです。その世代は昔ながらの働き方に価値観を置いている部分がありますので、健康経営を認めてもらうことは大変な作業でした。でも、やれることから取り組み、徐々に定着していきました。

岩井(ティ・アイ・エス):一つには、健康経営の認知がまだ学生に広まっていないと感じています。健康経営に興味を持ってもらい、学生さんと繋がりが持てればいいなと思っています。

稲田(I-QUON):社内的には、健康経営をすることで社員の一体感やコミュニケーションが活性化し、それがエンゲージメントの向上に繋がっていると思います。

それと同時に当社は他社さんに健康経営をお薦めし、プロデュースする立場でもあります。まずは自社で実践し、その成果をデータ化し、エビデンスとしてクライアントへのプレゼン時の説得材料にも使いたい。ただ、当社は社員6名ですし、みんな若く、健康診断などの数値も元々悪くないので、健康経営をしたからといって数値がぐんと改善することはあまりありません。そのため社内でデータ化することが難しい面があり、そこが課題と言えば課題になります。

熊倉:なるほど。健康経営をすることで営業にも良い影響は出ていますか?

稲田(I-QUON):はい。まず会社の名前を知っていただいたり、信頼を得るために役立っています。商工会議所にも取り上げてもらえましたし、元々関西地区で産業医顧問をしていますので、地域に対しての営業活動の一環になっています。

3.健康経営でボトムアップの企業風土を醸成

玉腰(トップライン):健康経営を進めている中で二つの課題に直面しています。一つ目はアウトプット。今、社内菜園であったり、管理栄養士を採用し、献立を考えてもらったり、睡眠を促進するためのアイマスクを支給したりと様々な取り組みを行っています。

それらをどうやって外部に発信すればいいのか。現在もインスタグラムに投稿するなどしていますが、もっと効果的にアウトプットできないかと模索しているところです。もう一つは、当社は健康のテーマとして身体、精神、経済的健康を掲げているのですが、この中で踏み込みづらいのが精神的健康です。

中嶋(トップライン):そうなんです。身体の健康と経済の健康は、会社としてバックアップしやすいのですが、メンタルに関することはなかなか話しづらい面があります。「どうすればいいか」と社内でアンケートをとったところ、社員から「こうするのはどうか?」「こんなふうに思っている」という声が上がるようになってきたのですが、これがとても良いと感じています。

というのも、これまで当社の健康経営は、経営陣や担当者からドライバーさんなどの現場で働く人たちに働きかけていました。今までは言われたから仕方なくやっている部分もあったかと思います。それが現在では役職のない社員から「会社をこうしていこう」「こう変えていこう」という声が上がるようになってきました。健康経営を始めてから8年目になりますが、人財育成の底上げにも繋がり、それが経営にとってもとても良い影響を生み出しています。

4.IKIGAI WORKSが課題解決のために動き出す

熊倉:皆さんのお話を聞き、健康経営が単なる健康管理ではなく、社員のモチベーションやエンゲージメントの向上、採用、営業活動にも効果が出るフェーズに入ったのが素晴らしいと感じています。ただまだ十分ではない。この流れを加速するためにもIKIGAI WORKSでは新しい取り組みを始めています。

その一つがプラットフォームとしてホームページを開設しました。https://ikigai-works.co.jp/ ここに各企業のPRページを設けるなどしてIKIGAI企業の情報発信基地にしていきます。

さらにIKIGAIフェスなどのリアルなイベント(エシカルエキスポ等)https://kenkoukeiei-media.com/articles/repo-bayline も開き、学生やZ世代のインフルエンサーとともにIKIGAI企業の存在を広くアピールしていきます。

そして篠原さんがおられる社会的健康戦略研究所さんが主催する『健康×マーケティングピッチコンペティション』https://kenkoukeiei-media.com/articles/pitch-competition1

にも皆さんと一緒に参加したいと考えています。このピッチコンペについては篠原さんからご説明いただきましょう。

篠原(社会的健康戦略研究所):はい。我々はこれまで5回に渡って産学連携のピッチコンペティションを開催してきました。このピッチコンペは企業だけでなく、社会に健康経営を浸透させていくことを目的としたものです。

5回目となる今回は、過去4回よりブラッシュアップさせ、健康経営に取り組む企業の皆さんと学生とが産学連携でSDGs、エシカルなども含む社会的健康をテーマに共に考え、共に創造するコンペになります。

そのことで「健康経営のせっかくの成果を、もっと有効活用したい」「自社らしい健康経営の改良案をなかなか見出せない」「人財の採用、定着、育成に活かしたいが、まだ不十分だと思う」といった課題の解決策を学生と企業が一緒になって考えていきます。これらの活動や交流を通じ、今の学生の価値観の理解や採用にも繋がることでしょう。

5.学生が触媒になり、IKIGAI企業の魅力を発信

熊倉:これらのイベントやプログラムを聞いて感じることや、「こんなふうに行うといいのではないか」といったご意見やアイデアをいただけると嬉しいのですが、何かありますか。

笠間(カサマ):私は昨年、関西大学ソーシャル・アントレプレナーシップ プログラムに協力させていただきました。その時に感じたのは、仕事を抜きにしても、人の成長を見るのは根源的な喜びであるということ。個人的にも、人の生きがいをエンカレッジするということは、私のライフワークみたいな部分があります。これからも同じような形で参画させていただき、健康経営に限定せず、学生さんやZ世代の皆さんと広いテーマで話してみたいですね。

稲田(I-QUON):私も関西大学のソーシャル・アントレプレナーシッププログラムに参加させてもらいました。『IKIGAIマイプロジェクト(内的世界の深耕) 』プログラムの一貫で学生さんからインタビューを受けたのですが、起業時の思いを振り返ることもでき、今後の事業展開の方向性を再確認することができました。

取材してくれた学生さんからも、社会に対する想いや将来のビジョンを聞かせてもらえ、とても楽しく、関われて本当に良かった。少し残念だったのが、企業同士が会話する機会があまりなかったこと。学生さん、企業がみんな参加し、ワイワイと話をするイベントは興味があります。

熊倉:そうですね。学生さんが触媒となり、企業同士も繋いでくれますよね。IKIGAI WORKSがプラットフォームとなることで、これからも皆さんのお役に立てることが必ずあるはずだと思っています。今日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

【取材後記】

日頃から健康経営に取り組み、従業員の幸せや生きがいを第一に考えているIKIGAI企業の経営者や従業員の皆さんが集まった交流会。健康経営によって社員が働きやすい環境が整備されてきており、その成果をいかに経営に活かしていくかが今の大きなテーマになっているようです。そこでIKIGAI WORKSが提案したのが、IKIGAI企業の情報発信基地となるホームページ、IKIGAIフェスなどのイベント、産学連携のプログラム『健康×マーケティングピッチコンペティション』。これらを通じ、学生とIKIGAI企業が一緒になってその企業の課題解決の方法を考えたり、魅力を発信していきます。なお、この交流会はその2、その3へと続いていきますのでそちらの記事も併せてお読みください。

<企業データ>

会社名:株式会社カサマ

事業内容:健康食品の通信販売/健康経営のコンサルティング/DM事業(販促サポート)

所在地:〒536-0008 大阪市城東区関目6丁目13-24 ヘッドビル3階

資本金:1,000万円

社員数:30名

 

会社名:株式会社エーオーエーアオバ

事業内容:健康食品、自然食品の販売

所在地:〒112-0015 東京都文京区目白台3−4−11 ジーエフビル

資本金:1億円

社員数:10名

 

会社名:株式会社トップライン

事業内容:一般貨物自動車運送業/貨物軽自動車運送業/貨物利用運送事業/特別管理産業廃棄物収集運搬業/PCB廃棄物収集運搬

所在地:〒485-0082 愛知県小牧市村中葭池1244-1

資本金:1,000万円

社員数:31名

 

会社名:I-QUON株式会社

事業内容:企業・団体等におけるメンタルヘルス、安全衛生管理、労務管理などに関するコンサルティングの実施/  メンタルヘルス、安全衛生管理、労務管理などに関する研修の実施/産業医、精神科担当産業医等の受託/精神科医、臨床心理士、精神保健福祉士等によるカウンセリング、認知行動療法の実施/休業中の勤労者に対する復職支援の実施

所在地:〒569-0071大阪府高槻市城北町2丁目9-34 1F・2F

資本金:2100万円

社員数:5名

 

会社名:ティ・アイ・エス株式会社

事業内容:ファイナンシャルプランニング業務/ライフプランニング業務/リスクマネジメント業務/事業継承対策プランニング業務/役員退職金プランニング業務/保険無料相談サービス/保険を活用した資産運用相談/保険を活用した「中小企業の事業継続力強化」の提案業務など

所在地:〒920-0022 石川県金沢市北安江2-24-8 信開北安江ビル1F

資本金:2,500万円

社員数:41名

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