健康経営の取組み事例:塩野義製薬株式会社(前編)

健康経営の取組み事例:塩野義製薬株式会社(前編)

2年連続で「健康経営銘柄」に選定された、塩野義製薬株式会社。人事総務部 EHS推進室長 樺木 幹雄さんにお話を伺いました。インタビュアー:株式会社セルメスタ 代表 熊倉 利和


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1.古くから続く健康経営の歴史

─ 御社は製薬会社でいらっしゃるので、当然工場もありますし、安全や健康などを大切にされてきたことと思います。100年以上の歴史がありますが、古くから安全衛生委員会の設置やCQ活動などを行われていたのでしょうか。

樺木 幹雄さん(以下、樺木さん):EHS(環境・安全衛生)や労働安全衛生法などさまざまありますが、弊社はまず患者様に対しての安全という意味が強く、昔は主に品質保証などの観点で捉えていました。今では実際工場などで薬品を扱っている社員に対しての安全性や環境への影響などまで視野を広げています。さらに、外部委託の従業員の安全性も大切だと考えています。ただ商品を安くつくれればいいということではなく、CSR的にも自社とサプライチェーンが安全や環境に対して適切に取り組んでいくこと。加えて倫理面や労働条件などまできちんと基準を満たしている会社さんと優先的に付き合っていくことを意識しています。自社だけでなく、サプライチェーンも含めて安全や環境に対して取り組んでいくことが大切だと思っていることを、メッセージに出しています。

─ 労働条件まで含めて、というのはなかなか聞かないですね。

樺木さん:労働条件というのは、例えば児童労働をさせないとか強制労働させないとか、一般的な項目も入っています。2017年8月に、世界の製薬企業20社以上が参画し、医薬品業界におけるCSR調達の推進を目的とする非営利団体「PSCI」に参画したのですが、そこでも委託先への要求項目として設定されています。

─ 全社的な取り組みについては、後ほど詳しくお伺いします。先ほど薬品を扱う社員の安全や健康のお話がありましたが、工場ではどのように取り組まれているのでしょうか。

樺木さん:当然工場や研究所は労働安全衛生法に則って、産業医出席のもとで安全衛生委員会を開催しています。従業員が業務を遂行するために安全な環境であるかなど、毎月チェックを続けてきた歴史があります。

─ 安衛法に則ってというと、工場に診療所もあるのでしょうか。

樺木さん:そうですね、何十年も前からあります。ある意味それが普通だと思っていました。大きな事業所は7つあり、それぞれ看護師が常駐しています。産業医については、メンタルの産業医も各事業所に配置しています。健康経営の考え方が、昔から脈々と続いていることは間違いないです。ただ、書面化して表向きに言えるようになったのは、2014年に社長が健康宣言を出してからです。健康宣言には、従業員だけでなくその家族も健康であるからこそ業務がしっかりできる、という弊社の考え方が反映されています。

─ 樺木さんは今EHS推進室長でいらっしゃいますが、この組織ができた経緯を教えてください。

樺木さん:EHS推進室は、2016年に立ち上がった組織です。それまでは、環境に関しては全社を束ねる組織がありましたが、安全衛生に関しては各組織が各々で動き、会社としての一体感がなかったため、全体をまとめて動かしていこうということで新設されました。健康経営銘柄を取るにしても、会社として一体感がないといけませんし、健保とのコラボヘルスも必要です。会社さんによっては、安全と環境は別の部署がやって、健康は人事がやるところも多いですが、弊社は一緒にやっています。

─ 昔から脈々と受け継がれてきた健康への取り組みが、健康経営銘柄の認定につながったんですね。

樺木さん:はい。基本的に今までやっていることを出しただけで、プラスアルファの特別なことはやっていません。このような制度があったので、ディスクローズしたというかたちです。

2.健康保険組合との結びつきやコラボヘルスについて

─ 2014年に健康宣言を出されたということですが、なにかきっかけがあったのでしょうか。

樺木さん:健保がデータヘルス計画を策定するにあたって、健康宣言を具現化するための計画としてデータヘルス計画を位置づけ、共同で実施することにしました。社長はもともと健康を非常に大切だと考えており、経営理念基本方針を遂げるためには自分や家族が健康でなければいけないという意志がとても強いです。

─ 健康宣言のなかに、「会社・健保・従業員それぞれが健康保持・増進にコミットする」という記載があります。ここで健保が出てくるんですね。

樺木さん:健保とはきっちりコラボして、情報交換をしながらやっています。例えば健康ウォーク(ウォーキング大会)などで目標を達成した人たちの血液情報などから特定保健指導対象者に改善効果があったといったデータを健保が持っています。そういった数値には説得力がありますので、施策参加の後押しができます。単に行事をやっているだけではなく効果が出ているのも、大きなところかと思います。

─ 健保との密なコミュニケーションはいつごろから行われていたのですか?

樺木さん:具体的な時期は明言できませんが、ずっと以前からですね。もともとコミュニケーションが取れていたこともあり、速やかに健康宣言につながった側面もあります。本社のすぐ近くに健保があり、月に1回会社と健保で会議を行っていて、どうタッグを組んで健康を推進していくか、また施策の効果などを協議しています。

3.心身に対する健康施策

─ 具体的にどのような施策を行っているか教えてください。

樺木さん:特別なことは行っていないのですが、健康ウォークの推進には力を入れています。多くの社員に参加してもらい、実際に健康状態の改善がデータとして得られています。健康ウォークについては、健康管理事業推進委員会で話し合い、各事業所・組織の安全衛生委員会に計画を立ててもらっていました。会社としても参加率を40%以上に上げようということになったのですが、ただ参加率を上げるだけじゃなく、実際に効果が出ているかどうかも知りたいと。そこで健保にデータを出してもらったところ、驚くほどいい結果が出ていました。積極的支援者のうち、1日8,000歩以上および5,000歩以上といったように毎日一定以上歩かれる方が、要支援程度に改善した率がとても高かったんです。不参加の20%に対して、61.75%が改善し、動機付け支援者についても、悪化が不参加の20%に対して、14.7%と大きな効果が見られました。

健康宣言を具現化するに際し、各事業所の衛生委員会もしくは安全衛生委員会に、それぞれ具現化策を考えてもらいました。健康ウォークのほかにメンタルヘルスと禁煙もポイントにして、各安全衛生委員会で議論して目標を立案してもらっています。健康ウォークについては毎年3カ月間のターンで春秋の計2回実施しており、2009年は20数%でしたがじわじわと参加者が増え、2017年に初めて参加率が40%を超え、目標を達成しました。参加率アップの要因としましては、EHS推進室から全責任者に参加率アップを推進する連絡を入れたことも含めてだと考えています。

EHS推進室ができる前までは、それぞれの事業所に任せていたので、会社としての傘がない状態でした。できた後は、それぞれ責任者をおいて組織をつくって、その組織経由で実際の参加者数などがわかるので、「あなたのところは参加者数少ないからもう少し発破かけてよ」という感じで後押しできるようになり、徐々に参加率が上がってきました。

─ こういったウォーキング施策は、だんだん参加率が低下して最終的に止めてしまうという会社も多いです。そこをEHS推進室がバックアップしながら、時には背中を押して参加率の引き上げに貢献しているところがすばらしいですね。

樺木さん:ちなみに2013年には、健康ウォークに対して「もっと歩いて健康になろう」と、社長自らトップメッセージを出しています。もちろん、実際に社長も健康ウォークに参加しています。

─ 先ほどポイントとして「健康ウォーク」「メンタルヘルス」「禁煙」とおっしゃっていましたが、メンタルヘルス対策について詳しく教えてください。

樺木さん:メンタルヘルスの不調が原因で休職した社員数は、一番多くて2011年の44名です。2015年には半分近くに減り、24名にまで下がりました。以降も、さらに徐々に減ってきています。わたしたちの強みとして、復職支援がしっかりしていることも後押しになっていると思いますね。各事業所に配置している産業医と、看護師、さらに本人と人事担当者と上司……この5名で十分なコミュニケーションをとるようにしています。もちろん復職プログラムもありますし、復帰後も産業医と連絡が取り合えるようになっています。

─ 一番多かったという44名にしても、一般的にはとても少ない数字です。ストレスチェックの高ストレス判定者の割合はどうですか?

樺木さん:一般的な数値と比べて少ないと思います。今年は塩野義製薬単体で3.0%、シオノギグループ全体で3.5%でした。

─ 一般的に12%と言われていますから、これはとても低い数値ですね! この数値の要因にもなるかと思いますが、社員に対してのメンタルケアはどのように行っているのでしょうか。

樺木さん:精神科の産業医が各事業所にいることに加え、管理職用と全社員用に分けて年に1回Webでメンタルヘルスの教育をしたり、各事業所でメンタルセミナーを行ったりしています。産業医や看護師のいない営業所は、2012年よりEAPの会社と提携し、電話やメールで相談ができたり、自宅の近くまでカウンセラーが来て話ができたりというサービスでカバーするようにしています。

─ ストレスチェックが義務付けられたのは2015年ですが、それより前に始められていたんですね。

樺木さん:はい、法制化される前は、2012年と2014年に行っています。やはりメンタルヘルス対策については、精神科の産業医が各事業所にいることが一番大きいのではないでしょうか。

後編はこちら

後編では、禁煙、重症化予防の施策や今後の展望についてお話しいただきます。

<企業データ>

会社名:塩野義製薬株式会社
事業内容:医薬品、臨床検査薬・機器などの製造・販売
本社所在地:〒541-0045 大阪市中央区道修町3丁目1番8号
資本金:212億7,974万2,717円
連結従業員数:合計 5,511名

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