日経電子版オンラインセミナー ~ワーク・エンゲイジメントを実現する健康経営とは~

【講演レポート】健康経営に取り組まないのは企業にとって大きな損出

2020年10月5日に開かれた『日経電子版オンラインセミナー 健康経営大会議 supported by アクサ生命』。基調講演 として鶴光太郎氏(慶應義塾大学大学院商学研究科 教授)が登壇。「従業員のワーク・エンゲイジメント向上にむけた健康経営」というテーマでお話をいただきました。

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1.企業業績に直接結びつく健康経営

国を挙げて推し進めている働き方改革。当初は、長時間労働の削減と非正規雇用の待遇改善に焦点が当てられていました。それが、3、4年くらい前からは、「残業時間を減らすだけでなく、生産性を向上させる必要がある」というふうに変わってきていると言います。

「ですが、様々な施策を実施してみても、企業業績に反映されていないことも少なくありません。それは、働き方改革が従業員のやりがいに繋がっておらず、ウェルビーイング(肉体的、精神的、社会的に良好な状態)の重要性に対する理解が足りていないからです」と鶴光太郎教授(慶應義塾大学大学院商学研究科)は指摘します。

そして、ウェルビーイングを向上させるものこそが健康経営であり、健康経営は企業業績に直接良い影響をもたらすものであると言います。

健康経営の定義は、「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、従業員の活力や生産性を向上させ、企業の活性化や業績の向上をもたらすもの」ですが、実際にデータやエビデンスとして健康経営の効果が証明できるようになっているとのこと。

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例えば、山本勲教授(慶應義塾大学商学部)やスマートワーク経営研究会の調査研究によれば、『ダイバーシティの推進』『柔軟な働き方の推進』『健康経営』といった働き方改革のうち、特に健康経営に強い効果が認められると言います。

「ダイバーシティや柔軟な働き方の推進では、利益率(ROA)への影響は小さい、あるいは明確な差は出ませんでした。ところが健康経営を推進した企業においては、実施後に利益率が向上する傾向があることがはっきりと見て取れます」

また、どのような働き方改革が従業員のウェルビーングを高めるかということでも、健康経営が良い影響を与え、仕事のやりがいや従業員の定着率を高めることに強い効果があることがわかっていると言います。

「つまり、健康経営は、企業の利益率を引き上げ、従業員の仕事へのやりがい、定着率を高めるものです」と鶴光教授。

また、健康経営は、日本企業の特徴である長期雇用、メンバーシップ型雇用とも親和性が高いもの。ですから、健康経営をベースとして、様々な働き方改革や生産性を向上させるための施策に取り組むべきであると言います。

今、新型コロナウイルス感染症の影響でようやく浸透してきましたが、リモートワーク、テレワークも本学が創業当時から取り組んできたことの一つです。リモートワークならば、子育て中の女性などもより働きやすくなりますので、早い段階から積極的に活用してきました。

私たちが始めた頃は、テレビ会議システムを導入するのにも何百万円もかかりましたが、今はオンライン会議などのツールも進化し、費用もあまりかからない。リモートワークには便利な時代になっていますね。

2.プライベートの充実とデータ分析

企業の業績を高めるためにも、プライベートの時間の充実が大切だと鶴光教授は言います。例えば、長期休暇を取得して徹底的に心身ともにリフレッシュすれば、健康維持や促進はもちろんのこと、生産性が高まったり、創造性豊かな仕事ができるようになるとのこと。

また、残業時間が減少し、プライベートの時間が増加することは、副次的な効果もあると言います。例えば、運動を習慣的にしている人ほど、その他の自己研鑽にもより積極的に取り組んでいることがわかっています。

つまり、会社が健康経営に取り組めば、意識の高い従業員ほどポジティブさが増し、仕事においても新たな挑戦をし、イノベーションを起こす人材として活躍が期待できるようになると言うのです。

健康経営を推進する上で大事になるのがデータ分析。「その取り組みが従業員の健康改善にどの程度結びついたのか」「ウェルビーングを高めたのかどうか」といったことをデータ収集し、分析。メリットを明確にする必要があるとのこと。

そのためには、従業員のプライバシーに十分配慮しながら、ウェアラブル・デバイス、AIなどを活用しながらデータを収集・分析し、その成果をステークスホルダーにもアピールすべきだと言います。

3. Withコロナ時代の健康経営とは

ますます高齢化社会が進行していく日本。65歳、さらに70歳以上へと定年の延長も予想されるように、シニア雇用の促進は大きなテーマ。

「高齢者は、特に健康状態の個人差が大きい。年齢の早い段階から従業員の健康に配慮する企業が増えていけば、高齢になっても元気で生き生きと働ける人が増えることにも繋がりますし、社会全体に及ぼす影響もとても大きい。ですから、国の活力を高めるためにも、各企業だけでなく、日本全体の将来を見据えながら、広い視野で健康経営を推進すべきです」

コロナ禍における新たな課題としては、在宅勤務での運動不足、メンタルヘルスの悪化(孤独感、不安、疎外感、特に新入社員)が問題になっています。

「これについても個人差が大きいものです。問題を抱える人がいる一方、テレワーク、リモートワークにより時間に余裕ができたことで食事改善や運動に取り組み、生き生きと時間を過ごしている人も多くいます」

そういう意味も含め、コロナ禍においては、健康経営の重要性がさらに高まっているとともに、健康経営を押し進める絶好のチャンスでもあると言います。その一方、企業間の格差が大きくなり、やらない企業は大きな損出に繋がるリスクがあると鶴光教授は警鐘を鳴らします。

セミナー:日経電子版オンラインセミナー

開催日時:2020年10月5日 13:00~14:50

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