【シリーズ:健康経営と大学連携】中小企業と学生の壁を壊す(かちぞうzemi2024 第2回)

【シリーズ:健康経営と大学連携】試行錯誤しながらも中小企業と学生の間にある壁を壊していく秋庭ゼミ生たち(かちぞうzemi2024 第2回)

今年(2024年)で10回目を迎える産学連携かちぞうzemi(※1)。IKIGAI WORKSは、龍谷大学経済学部の秋庭ゼミと取り組んでいきます。テーマは『日本全国IKIGAI企業化!!きれい事で食べられる社会にしたい』-学生とIKIGAI企業で社会を変えよう-。今回は中間報告会の様子をお届けます。

〔龍谷大学〕

秋庭ゼミ生12名

1.自分を知り、幸せを感じられる仕事と出会う

IKIGAI WORKSと龍谷大学の秋庭ゼミによる中間発表会。まず秋庭ゼミの中川が会場の参加者に問いかけます。

「皆さんは、仕事を選ぶときに何を重視していますか? 給料や福利厚生、あるいは仕事内容を重視する方もいらっしゃると思います。今回、私たちは“自分の幸せを大切にした仕事”選びについて考えてみました」

秋庭ゼミ生がまず取り組んだのが現状の確認です。従業員の働きがい、生きがいを大事にしている素敵な中小企業、いわゆるIKIGAI企業(※2)は、全国にたくさんあるのにその存在や魅力が知られておらず、新卒採用などでもあまり人気がない。

一方、学生側としては「中小企業は仕事が大変なのではないか」「就職するならテレビCMを打てるような誰もが知る大手企業がいいのではないか」と漠然と考えてはいるものの、そもそも自分が本当にやりたいこと、仕事や会社に求めているものが何かをわかっていない。

これでは仮に学生が、仕事は生活のために我慢しながら働くもの(ライスワーク)ではなく、自分のやりがいや幸せを実現するためのもの(ライフワーク)だと理解し、働きがい・生きがいを重視する企業に入りたいと思ったとしても、そんな会社がどこにあるのかさえ分からない。IKIGAI企業(中小企業)もせっかく従業員を大切にする経営をしているのに外部に伝わらず、求人でも人が集まりにくいという状況が続いてしまいます。

この状況を打破しようと、秋庭ゼミ生たちが活動目標としたのが「働きやすさ・働きがいを大事にする中小企業(IKIGAI企業)を知ってもらう」です。

IKIGAI企業を知ってもらう前に秋庭ゼミ生が取り組んだのが「自分を知る」。

「あなたの生きがいは何ですか? と聞かれて即答できる人ってなかなかいないのではないでしょうか? そのため、私たちは自分という人間を知るということから始めてみました」と中川。

何に働きがい、生きがいを感じるかは一人ひとり違います。そこで秋庭ゼミ生は、マイプロジェクト(※3)を使い、これまでの人生を振り返りながら、自分が心の奥底から大切にしている価値観や、それを実現する仕事とは何かを探求していきました。マイプロジェクトによって自分の価値観を理解し、仕事を選ぶ上での軸がある程度できた段階で「企業を知る」に移ります。

吉田が続けます。

「私たちはIKIGAI 企業を知るために、IKIGAI WORKSさんが主催する『ウェルビーイング共創サミット in名古屋』に参加しました」

ここでIKIGAI企業と学生が交流するイベント『ウェルビーイング共創サミット in名古屋』の様子を撮影した動画が映し出されます。そこでは学生たちの「このイベントに参加してみて、その仕事が好きで会社に入るのではなく、入った後にその会社を好きになる人もいることを知り、学びになりました」「大手企業ではなく、魅力的な中小企業の存在を知り、会社選びの選択肢が増えました」といった声が聞こえてきます。

2. IKIGAI企業と学生の間にある認識のギャップ

一見、順調に見えた秋庭ゼミ生の活動ですが、課題も見つかります。『ウェルビーイング共創サミット in名古屋』の動画インタビュー時ではIKIGAI企業に対してポジティブな意見が聞かれたのですが、匿名のアンケートを分析した結果、中小企業へのマイナスな意見も少なからず見受けられたのです。

「IKIGAI企業(中小企業)のアピールポイント」と「学生の意見」を比較してみても、例えば、IKIGAI 企業側の「会社を好きな社員が多い」というアピールポイントに対して、学生側からは「会社のことは好きでも、仕事自体を好きになれているのかは疑問」といった意見が出てきました。

「企業自身が考えている自社の良さと、学生が良いと思っていることのギャップは簡単には埋められないと感じました。このままでは、どれだけいい中小企業があっても学生に響くことはありません」と吉田。

危機感を抱いた秋庭ゼミ生は、もっと本気でIKIGAI企業の魅力を自分自身で体感していく必要があると感じました。そこで、今後の活動として次の3つに重点を置くことにしました。

1つ目は「イベントでの交流だけではなく、働きやすさを大事にする中小企業を訪問し、学生が求めている福利厚生やワークライフバランスの取り組みを伝える」。2つ目は「従業員の働きがいを大切にしているIKIGAI企業を体感するためにコラボを試みる」。3つ目は「全国の学生とIKIGAI 企業が交流を持てる機会を設ける」です。

3.会場全体を巻き込み、率直な意見交換

秋庭ゼミ生の発表が終わり、質疑応答に移ります。参加者の学生から「名古屋のイベントでは具体的にどのようなことがなされたんですか?」と質問があります。

鶴谷が答えます。

「IKIGAI WORKSさんが主催した『ウェルビーイング共創サミット in名古屋』は、学生とIKIGAI企業の交流の場です。学生は僕ら龍谷大のほかに名古屋学院大学の人たちが参加。企業側は、従業員の働きがいや幸せを重視するIKIGAI企業の皆さん。学生と企業が一緒になってグループワークなどを行いました」

畠中が続けます。

「特に各企業さんが抱えている課題を僕たち学生にぶつけ、一緒に解決策を考えていくリバースメンタリングがとても面白かったですね。僕たち学生もズバズバ企業の皆さんに意見を出しましたし、企業の人たちと本音で話し合う機会など滅多にないのでとても貴重な経験となりました」

別の学生が質問します。

「学生と企業の間に認識のギャップがあったとのことですが、イベントなどを通じて中小企業さんと実際に触れ合ったことで学生側の印象が変わった面もありましたか?」

吉田が答えます。「はい。実際に中小企業の方と話すことで、思ったより福利厚生や給料も良く、休みもしっかりとれるという話が一番多く出てきました。あまり良くない印象としては、ファミリー的な社風の会社が多いが、休みの日もみんなで集まってイベントをするなど距離感が近いのはどうなのか?と抵抗を感じる学生もいました」

ここで参加している企業からも質問がありました。

「素朴な疑問なのですが、ファミリー感や絆が強い、というのは良いことだと思うのですが、嫌がる学生もいるのですか?」

中川が答えます。「そうですね。仕事とプライベートはきっちり分けたいという意見も多く、仕事以外でのコミュニケーションは求めていないという声もありました」

その後も本音をぶつけ合う率直な質疑応答は続き、会場全体を巻き込みながら秋庭ゼミ生の中間報告会は終わりを迎えました。

【取材後記】

まだまだ残るIKIGAI企業と学生との認識の壁。IKIGAI企業(中小企業)と学生を結びつけることは簡単ではありません。それでも秋庭ゼミ生は前を向き、どうすればIKIGAI 企業の魅力を広く知ってもらえるかを模索し、壁を壊そうとしていきます。果たして彼らは最後にどんな答を出すのでしょうか。次回の最終報告会が楽しみです。

(※1)産学連携かちぞうzemiは、一般社団法人そばくりラボ主催の「かちぞう企画」の一つで、産学連携で価値創造にチャレンジする実践的なPBL活動(PBL:Problem Based Learning)。より良い社会の構築を目指して価値創造するための実践的な調査研究活動に、学生がチーム単位で半年間かけて取り組む。

(※2 )IKIGAI企業とは、一人ひとりが働きがい、生きがいを探求、実践することで、働くことを通して社会とのつながりや幸せ(社会的健康)を感じ、身体的・心理的に健康で、結果的に生産性や創造性の高い働き方を実現している企業のこと。 (※3 )マイプロジェクトとは、働きがい、生きがいを探求していく手法の一つ。その名の通り自分自身の心と対話し、自分がしたいこと、感じていることを知った上で「私のプロジェクト」を創りだしていく。

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