健康経営インタビュー:凸版印刷株式会社 トッパングループ健康保険組合(前編)

健康経営インタビュー:凸版印刷株式会社 トッパングループ健康保険組合(前編)

従業員の健康づくりやヘルスケアビジネスに力を入れている凸版印刷株式会社。人事労政本部で労政部長を務める吉田 竜二さんと、凸版印刷グループ企業78事業所が加入しているトッパングループ健康保険組合のヘルスケアチーム課長を務める梅木 稔さんにお話を伺いました。インタビュアー:株式会社セルメスタ 代表 熊倉 利和


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1.トッパングループの健康経営の特徴とは

─ トッパングループの健康経営の特徴を教えてください。

吉田 竜二さん(以下、吉田さん):まず、トッパングループが健康経営宣言を打ち出すまでの流れについてご説明します。トッパンは、1900年の創業以来、「人間尊重」の基本理念に基づいて、従業員の健康に関するさまざまな取り組みを進めてきました。従業員のさらなる健康の保持と増進に向けて、2015年の10月に健康経営宣言を発表しました。健康経営という視点から、会社と健保組合のそれぞれが行っている取り組みや計画を見える化・体系化するとともに、今後の方針を明確化したものです。

─ 健康経営宣言の内容を具体的に教えてください。

吉田さん:トッパンの健康経営宣言の特徴は、従業員やその家族の健康づくりはもちろん、ヘルスケアビジネスを通じて世の中すべての人々の健康づくりを支援して社会に貢献するという、2つの軸を打ち出していることにあります。

─ たしかに、健康経営宣言のなかでヘルスケアビジネスにまで言及している企業は珍しいですね。まずはトッパンソリューションを自社の社員で試してみて事例にした後に、ビジネスとして水平展開いくということでしょうか。

吉田さん:トッパンがやっていることをお客様にご案内して、「御社でもこういった取り組みを役立てられるのでは?」と紹介ができますからね。逆に営業サイドから、「他社さんのこんな取り組みをトッパンでもやれませんか?」といった意見や要望をもらうこともあります。

─ ヘルスケアビジネスはどの部門が担当されているんですか?

吉田さん:ヘルスケアビジネスの関連部門はさまざまで、主に情報コミュニケーション事業分野でヘルスケアビジネスを行っています。グループ会社でいうと、株式会社マピオンの「aruku&(あるくと)」(スマートフォンを持って歩くだけで地域名産品が当たるウォーキングアプリ)であるとか、株式会社芸術造形研究所の協力のもとに実施している臨床美術を用いたワークショップ「アートサロン」であるとか。アートサロンでは、芸術的創作活動を行うことで五感を刺激し脳を活性化させることができます。働く世代のストレス緩和はもちろん、新しいコミュニケーションの創出も狙えます。

─ グループ全体で、ヘルスケア関連の大きなイベントを行ったりもするんでしょうか。

吉田さん:隔年で、全社横断型スポーツイベント(運動会)を行っています。企画から当日の運営まですべて社員が手づくりしており、経営層から一般層、さらに家族も含め、約4,000名が参加しています。コミュニケーションを促進する場にもなりますし、グループとしての一体感の醸成にも大変役立っています。運動会のほかにも、クラブ活動や各事業所でのレクリエーションなども盛んです。

労使共催TOPPAN SPORTS FESTIVAL 2015 in 幕張メッセの様子

─ また、安全衛生の面で「安全道場」というものがあるそうですね。

吉田さん:はい。もともとが紙に印刷をする製造業ですので、工場で働く従業員も多いですから。従業員の安全への意識を高め、ケガなく健康に仕事ができるよう、「安全道場」という体験型教育施設をつくりました。機械にはさまれたり巻き込まれたりするとどうなるか、割り箸などを使って体験できるようになっています。安全道場は社外からも評価をいただいており、トッパングループだけでなく社外からの教育依頼も増加しています。

─ こういった御社の取り組みは、健康経営宣言の前から続けられていたんですね。

吉田さん:はい。先ほども申し上げたように、創立からずっと、社員の健康に関する取り組みを会社と健保組合が連携して行ってきました。2010年に、安全が第一であること、そして社員の安全・衛生・健康が、会社として最優先事項だということを掲げた「安全衛生基本方針」を策定しています。この流れで健康経営宣言が生まれました。ですので、決して「健康経営宣言を出すために」「ホワイト500を取得するために」はじめた取り組みではなく、もともとやっていたことなんです。アンケートなどに答えたところ、弊社の取り組みが高く評価され、結果的にホワイト500の認定をいただいた……という流れです。

─ 御社のような取り組みを実践するには、従業員の健康や安全に対する意識を高めることも大切です。どういった工夫をされていますか?

吉田さん:健康経営宣言などのポスターを張り出すことはもちろん、具体的にどんなことをやっているかを知ってもらうため、「トッパンの健康経営ハンドブック」というものをつくって全従業員に配布しました。このハンドブックでは、現状のトッパングループにおける健康の課題や、会社や健保組合で取り組んでいる施策をまとめるとともに、トッパンが手がけるヘルスケアビジネスにも触れ、従業員とその家族の健康への意識の向上や、行動の変容を促すことを目的としています。これにより、健康経営の状況や健康の課題、安全衛生の取り組みなどを従業員に徹底することが見込めます。

─ 健康経営宣言の文面のなかに、健保組合、さらには労働組合まで巻き込んで取り組みを行う旨を明記している企業はなかなか見ませんね。「ヘルスケア領域の事業を推進する」という宣言については、健保組合や労働組合の反応はどうだったんでしょう。

吉田さん:もともと健康経営宣言に健保組合や労働組合のフレーズを入れることについては、「一番大切なのは従業員の健康と安全」という共通認識があるため、歓迎してもらえました。

梅木 稔さん(以下、梅木さん):従業員の健康につながるという意味では、ヘルスケアビジネスも会社と健保組合が一緒にやっていかねばならないもの。会社にとっても従業員にとってもいいことですから。ヘルスケア領域のビジネスチャンスにつながります。健康経営もマネジメントサイクルとしてとらえた場合、企業、健保組合、労働組合が連携することでいいスパイラルができますよね。

─ その考え方がとても積極的ですね。

吉田さん:他社さんにお話を聞くと、健保組合がここまで絡んでいるのはすごいと言われることも多いです。でも我々はあまりそこを意識したことはありません。もちろんグループ健保ということもありますが、従業員の健康について会社と健保組合が一緒に取り組むということについては、従業員も当たり前と捉えています。トッパンは各事業所に診療所を設けていて、それも会社と健保組合が費用を按分して運営しています。診療所のスタッフも、会社と健保組合を分けることを考えていないので、非常にやりやすいです。

─ 直営の診療所は全国にいくつあるんですか?

梅木さん:55カ所です。診療所の医師は、会社の産業医も兼ねています。ですから、健康診断の結果を受けて、産業医の立場で対応することもできますし、結果が悪ければ診察医として治療に入ることもできます。もちろん産業医としてメンタルのケアも行っています。

トッパングループ健康保険組合提供資料より

吉田さん:大正時代からの歴史ある健保組合なので、気がついたときには直営診療所がありました。大きな病院施設などをお持ちの企業さんもありますが、弊社の場合はそれぞれの事業所や工場内に、診療所を設置しています。社員にとって診療所が身近な存在であるため、家の近くの病院に行くのではなく、なんとか出社して診療所の診察医に診てもらうという人も(笑)。産業医がまるで主治医と患者のような、密接な関係にあります。

梅木さん:また、一部の工場では、ベトナム人やタイ人の方に技能実習生として働いていただいています。そこでは、看護師がベトナム語などを覚えて、意欲的にフォローしてくれています。

ベトナム人実習生への健康講話風景

─ 直営診療所がある事業所であれば、特定健診のあとの保健指導の受診率を上げる取り組みも進めやすいですね。

2.健康経営推進協議会の設置

─ 健康経営の取り組みについて、会社と健保組合がどのように連携しているのか教えてください。

吉田さん:会社の人事労政本部の担当役員は健保組合の理事長も兼ねています。健康経営というのは、上層部がしっかり意識を持っていないとなかなか遂行できません。従業員の「やる気」と「元気」があって、はじめて「本気」で仕事に取り組める……それが健康だ、と我々も仕事面でずっと教えられてきました。健康経営をグループ内に強力に推進するためにつくった「健康経営推進協議会」は、人事労政と経営企画、健保組合のメンバーに加えて、健保組合の現場の職員からの立候補で構成されています。事務局というか、プロジェクト的な位置づけですね。誰がやっているのか、を提示するためにも、組織をつくるのは大切です。

─ ここに一同が集まるので、そのなかで自ずと役割分担ができるんですね。

吉田さん:会社と健保組合は、ビルは違えど敷地が近いので、日々さまざまな打ち合わせをしています。健康経営推進協議会のメンバー宛に、営業職の社員から「他社さんのこんな施策がおもしろいけどトッパンでもやれないか」などの提案を直接受けることもあります。先ほど申し上げた「トッパンの健康経営ハンドブック」は、営業が得意先に渡すツールにもなっています。

─ 健康経営推進協議会には何名いるのでしょうか。

吉田さん:約10名です。この人数で施策の企画や検討を進め、実際に実行する際には、各事業所の総務セクションや産業医などと連携しています。ヘルスケアビジネス関連部門はもちろん、経営企画や広報、労組や安全衛生委員会などとも連携しています。2015年に健康経営宣言を打ち出し、昨年はまだ模索状態が続いていました。正直、これからはもっと具体的なアクションを起こしていかなくてはならないと思っています。

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後編では、被扶養者の特定保健指導とICTの推進などについてお話しいただきます。

<企業データ>

会社名:凸版印刷株式会社
事業内容:トッパンは、「印刷テクノロジー」をベースに「情報コミュニケーション事業分野」、「生活・産業事業分野」および「エレクトロニクス事業分野」の3分野にわたり幅広い事業活動を展開。
本社事務所:〒101-0024 東京都千代田区神田和泉町1番地
資本金:104,986(百万円)
連結従業員数:約51,000人

名称:トッパングループ健康保険組合
本部所在地:〒110-8560 東京都台東区台東1-5-1
加入事業所数:78事業所
被保険者数:41,251人
被扶養者数:39,580人

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