「ホワイト500」認定企業:凸版印刷株式会社 トッパングループ健康保険組合(後編)

「ホワイト500」認定企業:凸版印刷株式会社 トッパングループ健康保険組合(後編)

従業員の健康づくりやヘルスケアビジネスに力を入れている凸版印刷株式会社。人事労政本部で労政部長を務める吉田 竜二さんと、凸版印刷グループ企業78事業所が加入しているトッパングループ健康保険組合のヘルスケアチーム課長を務める梅木 稔さんにお話を伺いました。インタビュアー:株式会社セルメスタ 代表 熊倉 利和


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前編では、トッパングループの健康経営の特徴や健康経営推進協議会などについてお伺いしました。後編となる本記事では、被扶養者の特定保健指導とICTの推進や今後のビジョンなどについてお話しいただきます。

3.被扶養者の特定保健指導とICTの推進について

─ 社員と被扶養者の特定健診受診率はどのくらいですか。

梅木さん:社員はほぼ100%、被扶養者の受診率は2016年で74%でした。やはり家族が倒れてしまうと、負担がかかって仕事にも影響が出てしまいます。早期発見・早期治療での健康維持が大切ですので、被扶養者の受診率はもっと上げていきたいです。

─ 被扶養者の受診率が74%というのは、とても高い数字ですね! 特定健診の受診率を上げるのは健保組合のミッションですが、事業主の協力が得られない健保組合も多く、受診率としては20〜30%くらいまでしか上がらず悩んでいる……という話も多く耳にします。

梅木さん:トッパンの場合は会社と健保組合が密な関係なので、事業所経由で通達してもらっています。また、受診勧奨については、トッパングループのヘルスケアビジネスのソリューションを活用しています。例えば若い世代には案内冊子ではなくダイレクトメールを送ったり、年配の方には少し表現を変えてアプローチしてみたりと、通信販売の領域のようにセグメント化して受診勧奨しています。

吉田さん:健康経営宣言でヘルスケアビジネスを打ち出したことですし、そういったトッパングループのサービスなりソリューションなりを使いやすくなったのかな、と思っています。

梅木さん:我々健保組合も、組合単体で孤軍奮闘するというよりは、健康経営推進協議会から学ぶところが多かったので、従業員や家族の健康づくりに加え、ヘルスケアビジネスを推進するという2軸にしてよかったなと思います。

─ 受診率向上を課題にしている健保組合さんが多いなか、御組合はすでにそこをクリアして、特定保健指導や重症化予防を課題にしているということですね。

梅木さん:被扶養者の特定保健指導がなかなかできていなかったんです。来年から国が保健指導の実施実績を公表するということで、その実績値を上げるために家族の特定保健指導を強化しています。

─ 具体的にどのように特定保健指導をされていますか?

梅木さん:従業員については診療所医療職が指導しますが、家族については外部委託をしています。また、直営診療所がない事業所などについては、タブレットを使った遠隔指導を外部委託で行っています。管理栄養士などと顔を見ながら遠隔で面談できるというもので、ゆくゆくはこれをトッパンソリューションで行い、家族の特定保健指導にも適用したいと考えています。

─ なるほど、これがICTの推進ということですね。ちなみに、社員食堂の食事記録の自動化も検討されているのだとか。

梅木さん:いま一部の社員食堂では、主食やおかずなどそれぞれにタグが付いていて、それを読み込むことで精算できるようになっています。今回、トライアルでこのタグに、食べた内容や三大栄養素にカロリー、塩分量などの情報を組み込みました。これを特定保健指導の対象者に反映すれば、保健指導もやりやすくなると考えています。

─ 栄養素のバランスや塩分量などが表示されれば、どんな食事をすればバランスよく栄養を摂れるかなど、利用者も自ずと学ぶことができますね。

梅木さん:去年から、社員食堂事業者との連携プロジェクトをはじめています。各社の管理栄養士に集まってもらって、共通のメニューを提案したり、メニューのテーマを決めたり。また、複数の事業所でBMI値が高い社員数名を選抜していただき、社員食堂を2カ月利用した場合に、どれくらい減量できるかなども調べました。およそ2%の減量率がありました。

─ 社員食堂の利用率はどれくらいなのでしょうか。

吉田さん:事業所によってバラつきがありますね。近くに飲食店が少なければ自ずと利用率が上がりますし、飲食店が多い地域ですと、社員食堂の利用率は50%くらいではないでしょうか。「社員食堂を使えば、食べたものの栄養素やカロリーがわかり、履歴の管理もできる」という仕組みが確立すれば、利用率もさらに上がるのではないかと考えています。

梅木さん:なかには、朝昼晩3食社員食堂という方もいます。

4.ヘルスケア推進委員について

─ 健康経営のもう一つの推進ドライバーである、ヘルスケア推進委員について教えてください。

梅木さん:企業トップの想いを具体的な施策に落とし込む役割を果たしているのが、「健康経営推進協議会」である一方、協議会で決定された施策をそれぞれの事業所における健康づくりの施策として落とし込む役割を担っているのが、「ヘルスケア推進委員」です。健保組合では、事業所に健康づくりを促進するために、健保組合の施策として「ヘルスケア推進委員」を立ち上げ、定期的に研修会を行っています。今年度は各事業所の年間計画を発表してもらったり、ライザップの方に来ていただいてライザップメソッドを教えてもらったり。見える化推進をすることで、ほかの事業所がどのような取り組みをしているかわかるようになったという声もいただいています。

─ ヘルスケア推進委員は何名くらいいるのでしょうか。

梅木さん:全国で150名ほどです。事業所でそれぞれにひとりは立ててもらっています。担当される方は、やはり従業員と接する機会の多い総務セクションの人がほとんど。健康推進協議会というレベルとはまた別の取り組みです。

ヘルスケア推進委員の研修会の様子

吉田さん:人事労政の総務部長会が定期的にあるので、そこで施策の話を説明します。各事業所が持ち帰って従業員に説明することもあれば、ヘルスケア推進委員に話を入れることもあります。いずれにしても全社的な組織で施策の話が共有されるようにしています。

梅木さん:150名という人数もちょうどいいですね。健康経営の実行部隊として、しっかり整った感があります。今年からは表彰制度を設け、健康づくり活動において積極的に奨励・普及してくれた事業所を表彰する「第1回トッパングループ健保 ヘルスケアアワード」を開催しました。

─ 健康経営をどうやって社員に普及させていくかという点で悩んでいる事業主さんが多いなか、表彰制度は非常にいいですね。

梅木さん:例えば今年受賞した事業所ですと、毎朝のラジオ体操に第1だけでなく第2を加えていたり、朝礼で片足立ちをしてバランス感覚を養うことで転倒防止などに役立てたり、毎日職場で血圧を測って健康管理をしたり。

吉田さん:ヘルスケア推進委員が現場の産業医や医療職に相談して、その事業所に適した取り組みを考えています。業務の延長線上でやってもらっているので、特段の手当などはありません。「自分が事業所のヘルスケアを引っ張っていく存在」という意識付けをするためにも、定期的に研修会を行ったり、表彰制度でモチベーションを上げたりと工夫しています。

─ 御社ならではの、会社と健保組合の連携の強さが大きく活かされた施策ですね。

5.今後の課題

─ 今後の課題を教えてください。

吉田さん:診療所がない地方営業所などの健康管理強化が課題です。ひとつは既に進めている健診後のフォローですね。健康診断を受けたあと、診療所がある事業所は看護師や保健師がフォローできます。しかし、直営診療所がない営業所の場合は、フォローがしにくい。近隣の看護師が直接出向いて面談したり、先ほども申し上げたタブレットを使った遠隔指導を行ったり、なるべく多くの従業員をフォローできるよう進めています。

梅木さん:また、歯周病予防に力を入れたいと思っています。全国に診療所は57カ所ありますが、診療科目に歯科があるところはそのうち10カ所ほど。誕生月健診など定期歯科健診も行っています。歯周病と糖尿病には因果関係がありますので、糖尿病に起因するものをケアしていこうという観点から課題に上げています。

─ 具体的にどのような取り組みをはじめていますか?

梅木さん:一部の地区で定期健診にあわせて歯科医師による歯周病チェックを行ったり、歯周病予防につながる正しいブラッシングが学べる磨き方講習会を開いたりしています。自己流で歯磨きをしている方が多いですが、正しい磨き方を覚えるだけでも違うものです。また、咀嚼や噛み合わせも重要ですので、咀嚼度がチェックできるガムを噛んでもらったりもします。

吉田さん:磨き方講習会は、安全衛生委員会で案内するようにしています。安全衛生委員会には診療所のスタッフも入りますので、そこも会社と健保組合の連携を活かしていますね。

─ 重症化予防に力を入れていくのと同時に、正しい磨き方といった入り口の部分もカバーしていくということですね。2次予防から1次予防にシフトしていることがよくわかります。

─ さまざまな健康経営の施策の浸透度合いや効果について、どのように検証していかれますか?

吉田さん:健康経営に関する具体的なKPIの設置を検討しています。ひとつは法制化されたストレスチェックについて。高ストレス者の割合を減らす部分で、数字を上げていきたいです。次に、健康経営と直接連動するかはわかりませんが、休暇の取得日数についても調べてみたいですね。あとは、休職者や喫煙率についてなども。どんな施策をしたらどれだけ減ったか、というのは徐々に明確に数値化していきたいです。

─ 御社は、事業主と健康保険組合のコラボヘルスがほかの企業と比較して2歩も3歩も進んでいます。事業主の健康経営施策が健康保険組合の医療費支出削減に寄与したといった成果が、将来的には報告できそうですね。

吉田さん:今年の10月には、冒頭でお話した全社横断型スポーツイベントを行います。これはひとつのアイデアなのですが、例えば9月を「aruku&(あるくと)」月間にして、各事業所の歩数に応じてポイント化し、当日の運動会の点数にプラスする……なんてことをしてもおもしろいな、と思っています。※

─ それはいいですね、まさにヘルスケアビジネスとして、ほかの企業でも取り入れやすい施策だと思います。

吉田さん:健康経営宣言で打ち出しているとおり、これからも「社員とその家族のさらなる健康づくり」と「健康関連事業を通じ、世の中すべての人々の健康づくりを支援し、社会に貢献」という2軸をしっかり進めていきたいと思います。

─ 本日はありがとうございました。

※インタビューは2017年7月に実施

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<企業データ>

会社名:凸版印刷株式会社
事業内容:トッパンは、「印刷テクノロジー」をベースに「情報コミュニケーション事業分野」、「生活・産業事業分野」および「エレクトロニクス事業分野」の3分野にわたり幅広い事業活動を展開。
本社事務所:〒101-0024 東京都千代田区神田和泉町1番地
資本金:104,986(百万円)
連結従業員数:約51,000人

名称:トッパングループ健康保険組合
本部所在地:〒110-8560 東京都台東区台東1-5-1
加入事業所数:78事業所
被保険者数:41,251人
被扶養者数:39,580人

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