ヘルスケアIT セミナー12選:⑤健康経営と働き方改革の根本について
健康経営と働き方改革。
現代社会において、様々な所で使われる様になった言葉ですが、その本質や意味をしっかりと理解た上で取り組んでいますでしょうか。
言葉が先行し、形骸化が起こらない様、健康経営と働き方改革の原点に立ち返り、効率の良い取り組みを行う助けになれたらと思います。
目次
グラフに見る健康経営の結果
2009年ぐらいから、健康経営みたいなことをやらなければいけないと思い活動を始めました。
その当時、健康経営という言葉はメジャーではなかったのですが、正式に健康経営に取り組み始めたのは2010年。
ただインフラがなく、自社で開発をしながら進めた事もあり、本格的な取り組みは2013年から始めました。
この年から藤倉という会社の中で健康経営をしている訳ですが、まずは事業成績をご覧下さい。
赤が売上で、青が営業利益率のラインになります。
このグラフを出すと「健康経営をやったからV字回復した」という風に見てしまいがちですが、その中身は健康経営をやったからだけではない。ということを、まずは申し上げておきます。
ただ、健康経営をやることによって、このV字回復の加速を促した。と、私達は実感しており、実績で言うと、営業利益率は540%、営業利益率は360%アップとなっております。
健康経営働き方改革の位置付け
まず最初に、一般的に語られる項目を上げてみたいと思います。
健康経営では、生活習慣病、メンタル疾患、肩こり、腰痛、月経不順などの予防対策としての健康活動の促進、環境改善セミナー開催、プログラム提供など。
もう一方の、働き方改革では、長時間労働削減、テレワーク、育児休暇、短時間勤務制度、フレックスタイム制度などが挙げられ、どちらも目的は生産性の向上になります。
この2つについて、どう住み分けていくのか、機能的な比較だけで良いのか、など、まずは見方・捉え方について考えていきたいと思います。
健康経営と働き方改革は何が違うのか
今、私達の耳に入ってくる情報としては、政府系の方々が発信している事が多いかと思います。先程挙げた項目と絡めて、どう解釈していくべきなのか。考え方の1つとして対になる概念を挙げていきたいと思います。
この様に
健康経営は、健康無視経営
働き方改革は、働き方固定
ダイバーシティは、均質性
ワークライフバランスは、仕事一筋、生活第一
この様な感じになってくるかと思います。
例えば、健康経営については、健康方針について。働き方については、個人の働く選択肢を増やそうとしている訳ですから、結局、その会社にとって、「どちらがいいのか」を選ぶだけです。
ただ、今までの日本では、均質性の高い日本人を新卒一括採用して教育する。その方法が強かったから、その時代に合わせて行っていただけで、今は時代が変わったので、ダイバーシティーにしようか。という手段の話をしており
・経営方針実現のための手段
・個人の選択
・働き方の選択肢
などを考えていく事が今の社会の流れに沿っている。という背景になります。
その上で、企業にとっての生産性向上の意味とは何か。企業にとっての医療費削減の意味とは何か。というのを考えていかなければならないのですが、その為には、まず政府がどう思っているのかを考えていかなければなりません。
このグラフは医療費の伸びを年度ごとにまとめたものになります。
年齢階級ごとの医療費のグラフになっていて上の青いところが生まれてから死ぬまでの各々の年齢の時にどの位の医療費を使っているかという平均値になっており、ここの面積が医療費期待を表しており、その下の赤い小さい部分を病院で払う個人負担、緑の領域が健康保険で賄っている部分になります
これらが税金で賄われており、今現在、医療費が40兆を超えているのはご存知かと思いますが、このまま突き抜けて70兆を超えていくとも言われており、そうなった時にどこから補うのかという話になってしまうのでなので、どうしても政府は医療費を削減したいのです。何かしらの対策を講じないと、社会保障で破綻する国になりかねないのですから。
企業が目指している場所とは
この様な背景の中に於いて、果たして、企業は医療費削減というところに意思を持って取り組んでいるのでしょうか
残念ながら、それをミッションとしている企業というのは普通の企業では殆どみられないかと思いますし、医療費削減が企業の目的になることは、まずありえないだろうなと考えられます。(もしかしたら医療機関ではあるかもしれませんが)
生産性に関して企業は、常に労働・資産というインプットがあり、インプットを加工することによってアウトプットを生み出し、そこに市場価値があるから利益を生む事ができ、加工の効率が高ければ高いほど生産性が高く、利益が大きくなります。
この利益の最大化は、生産効率の向上に当たりますので、何をもってしても企業の命題であり、自由競争社会では永遠の課題になります。
つまり、利益を上げ続けていく事は、企業の一つの役目にあたります。
そこをゴールとするならば、生産性向上について、どこの視点で、何を重視するか。つまり、短期的な生産性を上げるのか長期的な生産性を上げるのか、もしくは製造装置を改造して生産性を上げていくのか、もしくは人を訓練して、もしくは健康にして生産性を上げていくのか。などは経営方針にあたり、どこに手を打ったら一番生産性が上がるのかについては正解が存在しないのです。
これらを踏まえた上で、どう位置付ければいいか。という事ですが、例えば、労働安全衛生法に従って会社は労働衛生活動をしていますが、これは個人の健康を担保するということであったり、労働契約法に基づいての健康配慮義務は、働いている人達の健康に配慮した活動を法律としてやっています。
この事から、どの企業においても、健康については、きちんと従業員に提供してる。と言え、法律以上にやっている健康経営・働き方改革・ダイバーシティという話は形として必要だからやるのです。
もう少し整理をすると安全衛生とか健康配慮というのはそもそも法律でやるものなので、実施は必須なわけですね。目的は法律が決めているのです。
これは社会のルールであって企業運営経営をするための前提なわけです。
では働き方改革と健康経営は実施するか否か目的を何にするかは経営者が決めることなのです自由競争市場での競争領域なのです。
ここに視点がないと、健康経営をやらなきゃいけないとか、何をやったらいいんだ、そういう視点に行ってしまいます。
やらなきゃいけないということはないんですよ。ということがまず第1にあること。
そして、やると決めた時には、その目的は何か。という事は、自分たちで決めなければならないのです。
そして、その目的は生産性向上や医療費削減だけでなく、違うところにあってもいい。ということなのです。
何のための健康経営なのか
とはいえ健康経営がブームだから。とか、社長の方に、お前健康経営をやれ、働き方改革考えろ、とか言われてやらされる場合もあるかと思います。
その様な方々からすると、そうは言っても、なかなか自分1人では変えるのが難しい。。。
その様に捉えてしまうかもしれません。そんな時には、是非
何のために健康経営をするんですか、社長。
と一言いってみて頂きたいのです。
仕事は何事でもそうだと思うのですけれど、目的をしっかりと聞き直すということです。
目的がないと、どんな仕事でも、きちんとしたミッションは遂行できないできませんし、
そこに方針があるからこそ、経営に対してきちんと成果を出せるというのが元々の構図になりますから、まずは聞いて、成果を出せる形を整えましょう。という事です。
冒頭の言葉で言えば、健康経営とか、働き方改革でやることですね。
どっちをやるのが世の中的にいいのか。とか、その様な視点ではない。という事が、そもそものスタート地点になります。というのが一つの答えになります。
ここからは、今回は海外の事例から、ジョンソン、アンドジョンソンの健康経営の考え方について学んでいきたいと思います。
ジョンソン&ジョンソンからの学び
ジョンソン&ジョンソンの具体的な例
日本の健康経営銘柄にあたる米国職業環境医学会が行うコーポレートヘルスアチーブメント、アワードCHHAという最も代表的な表象を1998年2012年の2回受賞している企業がジョンソン&ジョンソンになります。
アメリカの企業では、医療費が直接的な企業のコストになるので、従業員が病気にならなければ、経営コストがダイレクトに費用が下がる。という事で、アメリカで健康経営的な事が流行りました。
ただ、日本では健康保険組合があるので、企業がいくら頑張ったところで自分達にあまり跳ね返ってきません。
この背景が、まず1つ違うというところで、もう一つは文化的な違いがあります。
私達は健康というものを当たり前だと思っている節がありますし、守ってもらっているという意識があるかと思います。
一方で、アメリカでは、守るのは自分の権利だという背景があるかと思います。
このように色々と視点が違うのですが、学ぶべきところは、非常に合理的に物事を進めているという事で、日本はどちらかというと、根性論や精神論で頑張れ的な話が多いかと思いますが、この合理性を経営手法として学んでいくということが必要かと思っています。
どうやって、何回も受賞が取れているのか。
経営目標があって、経営目標を達成する為の戦略があって、その戦略を実現するための人材がどうあるべきか。ということを考えて、その人材になってもらうために、どの様なことが必要か。という事が合理性に繋がっていく。という事です。
例えば、経営戦略であれば、マーケットシェアの維持、新製品開発スピードの向上であったり、あるべき人材像としては、心身ともに十分に健康で仕事にとことん熱中し人生を楽しみ尽くすことであったり、健康経営の施策としては、メンタルヘルスとウェルビーイング、生活習慣改善プログラム、職種に合った健康疾病マネジメント、健康教育と気づき、アッププログラムなどが挙げられます。
そのなかで、どの様なことをしていくのか。という事が、例えば、メンタル相談、カウンセリング、コーチング、ヨガ・瞑想教室などで心を整える事であったり、健康相談センターなどリアルの場を通じて健康づくりの相談に乗る事であったり、生活カウンセリングデジタルヘルスコーチング歩数チャレンジ人生のミッションを明確にし自分の持つエネルギーを使うことを学ぶ事であったり、ファミリーヘルス、健康記録、ニュース、掲示板、乳がんデイなどで健康への気づきを高める事があるのです。
もう1つ需要なポイントが、以下の5つの5つのキーで
・推進者のリーダーシップとコミットメント
・会社の目的に合ったプログラム
・手順と進め方
・参加率の向上と継続コミュニケーション
・評価
これらを正しく行うことがとても重要になっている。
特に評価の部分は重要で、先程の言葉で言うならば精神論になっていないということが重要でしっかりと評価ができるからこそ改善ができる
という事は、やり続ける仕組みというのは評価が入っていない限り絶対に続かないのです。
やってどうだったか分からないという政策はイベントで終わってしまうだけなんです
そのためにも何を目的として何をゴールにしてというのが明確にないと何を評価していいかわからない。
それを作るということだけでも全く違うということです。
なので、評価という所を軸に考えないと、行う意味が見出せなかったりしてしまいますので、社長を含め、みんなが何のためにやっているのかという話にならないようにしなければいけない。
海外の事例を踏まえてた上で、どう検討していくべきか
先程のジョンソンアンドジョンソンを踏まえると経営目標、経営課題、人材課題、人材強化政策の四つを考えていくべきかと考えます。
やはり、経営の為に役立たない限りは、生産性とか意味がないとなってしまうので、ここを軸に考えましょうということです。
これはアプローチ軸としての例ですが、新規事業を創出し新たな収入源を得たい。となれば、新規創出が経営課題としてできてないとか、そこに阻害要因というのがある訳なので、このようなところをきっちり見つけていくことが必要になってきます。
またそのような阻害要因を見つけた時に、その人材が達成するための課題とは何か、といったところをフィジカル面やメンタル面、環境をきっちりと見つけていかなければなりません。
そして見つけたものをどのように強化していくのかという視点で施策を選定していくということになるかと
自分ごと化という重要なポイント
社長だけやる気になっても仕方がないのです。
結局、健康という人材に落ちた時に、1人1人の従業員の方がやる気になっていなかったら、なんの意味もないということだと思います。
また、このようなことを検討していく際に
世の中的にこんなことが言われているから
周りが、こんな事をしているから
という理由では、自分の中に落とし込めないというのがよく起こりがちです。
そして重要である評価軸ですが
この様な施策をやる訳ですから人材強化の実行度合いとか継続度合いといったものをそもそも見ていかないといけない。
それを見た上で人材の課題、というところをクリアしていくかどうか、クリアして強化されていくかどうかというのを見ていかなければなりません。
ここの成果が出てきたら、ここの成果によって経営の課題というところが達成されているのかどうか、というところを見なければならないし、それによって目標に到達しているのか。
ここまで見ていく、描いていくということが健康経営、働き方改革に取り組んでいる中で必要になってきます。
ここまでの話を聞いて先程のジョンソンアンドジョンソンの例を聞くと、大手さんじゃないとできないのかなと思う方がいらっしゃいます実際このような企業でないとできないとかはありますか
逆に大手だと、ものすごいやりにくいと思っていて、大手がやるためにはものすごい力をかけなければならないと思っていますが、小さい企業はものすごいやりやすいと思っています。
こちらの資料は経産省で出されているものですけれども健康経営の目的が企業によって違いますよね、といった経営目標と課題から見つけていくことが重要だと。
大手さんが大変ですねと言った時に、中小企業という視点に立った時にこのようなことが言われている中で、まず、自分達がどのような取り組みをどのようにしようか
というところを紹介させていただきます。
町工場における、小さくて大きな結果
リスク軽減という切り口
これは実際に県から依頼を受けた、従業員が2.30人しかいない町工場の例です。
経営目標は、高い技術で安定的に製造を行うことであり、発注元の信頼を得続け、他社に奪われないように受けた時に必ずすぐ返す。そこを自分達のポリシーにしてる会社です。
こちらの会社につきましては、まず、このポリシーを達成する為の経営課題について健康で解決できるところをあぶり出し、対象者の健康課題を見つけ、改善し経営目標を達成できることを評価していきました。
経営課題については、人が倒れてしまったら実現できなくなってしまう。特に長期休暇の様な事になってしまうと、物凄いダメージを受けてしまうので、どうやって改善していけばいいか。という所になります。
ちなみに、私たちが入る前は、経営者の方は、その様な手段は自分たちは持っていないと仰っていました。また、多くの分析とかは財政上できないので、持ち合わせていた健康診断結果から判断をし、ターゲットを決め、原因が何なのかということを考えていきました。
具体的には、食堂に置いてある醤油がかなり干上がっていて塩分濃度が高いということが分かったので、醤油を撤廃し、社長がポケットマネーで血圧を測る家庭用機械を設置。
また、弁当を仕出しで頼んでいたのですが、社長に直談判し弁当業者を変えたことで、結果として高血圧リスクを減らす事ができました。
たったこれだけですが、従業員を巻き込んで、全体として健康経営を行ない、結果として経営目標を達成したという例になります。
町工場という、ならではのところを見つけて、まずそこに注力するということが重要なのです。
経営なのでリソースが限られていますから、取捨選択をせざるを得ない。なので、どこに集中するか優先順位をどうするかを決めるのです。全部をやろうとすることは無理がありますから。
経営課題から逆算し、今できる事をやるだけでも、効果が見込めるのです。