健康経営 中小企業の事例:株式会社セルメスタ(マインドフルネス編)

1.マインドフルネスセミナーとは

- 健康経営を推進する中で「マインドフルネスセミナー」「マインドフルネス実践ルーム」という取り組みをされているそうですが、どのようなきっかけで始めたのでしょうか?

佐藤 琢也さん(以下、佐藤さん):2015年に、企業にストレスチェックが義務付けられたことがきっかけで始まりました。ストレスチェックは従業員に対して、自身の職場の人間関係や仕事でのプレッシャーなどメンタルに関する質問に答えていただき、各人のストレス度合いを判定する仕組みです。メンタルヘルスについては社会問題になってきているので、会社としてもきちんと対応していきたいと考えていました。

- 会社側は、ストレスチェックをしたところで高ストレス者が何名いるか、ということしか分からないのですよね?

佐藤さん:仰る通りです。あくまでも高ストレス者が何名いるかという自社の状態が分かるだけでその本人の特定ができませんので、それだけでは具体的な心のストレスを取り除くことが難しいと考えました。そこで弊社では、特定の個人を対象とせずストレスの対処方法として効果が高く、宗教色もない「マインドフルネス」というものを取り入れることになりました。科学的なエビデンスも出ていますし、宗教色がないからこそグーグルさんなどの大手企業でも取り入れているという事実が、後押しになりました。

<マインドフルネスセミナー発表資料より抜粋>

- 高ストレス者がいることはやはり会社としては気になりますか?

進藤 高光さん(以下、進藤さん):そうですね。実際に弊社の高ストレス者は去年が3人、今年は2人いましたので、やはり気になります。人数だけが分かっても答えにはならないですから、健康経営推進プロジェクトとしても何かいいものがあれば取り入れていきたいという思いで「マインドフルネス」への取り組みを始めました。

- 「マインドフルネス」とは最近よく耳にしますが、具体的にどんなことをするのでしょう?

並木 一徳さん(以下、並木さん):弊社では「マインドフルネス」を「心のエクササイズ」と銘打って取り組んでいます。社長の熊倉は瞑想の指導者の資格を持っていますので、社長が講師となり、まずは「心のエクササイズセミナー」というものを従業員向けに開催しました。現在は就業前などに「マインドフルネス実践ルーム」に希望者が集まって、週に3回程度取り組んでいるところです。一言で言えば「瞑想」です。複数人で取り組んだ方が効果が高いそうなので、会社でこのような場所を提供しています。

<マインドフルネスセミナー発表資料より抜粋>

2.体験者の声

- では実際に体験されたご感想を伺っていきたいと思います。「瞑想」というとかなり訓練をしないとできないものでしょうか?

並木さん:無意識に、今何分くらい経ったのだろう、などと考えてしまいますね。何もしないというのは案外難しいものだと個人的には思っています。しかし毎日続けていくとすっきりした状態で仕事に取り組めるということなので、その境地を目指しているところです。コツは、余計な考えが浮かばないように数分間自分の呼吸だけに意識を向ける、ということです。色々と思考が繋がっていきますが、何か浮かんだら呼吸に戻る、ということを繰り返します。

- 何もしない、というのは難しそうですよね。

佐藤さん:最初はいろいろなことを考えてしまいましたが、だんだん慣れていきます。本当に頭がすっきりして仕事がしやすくなったと感じています。私自身は「マインドフルネス実践ルーム」に参加して3~4回くらいでコツを掴みました。

進藤さん:呼吸に集中していると、不思議と雑音やほかに散っていた意識がなくなっていく感覚があります。朝は8:40に集合しているのですが、社長が海の音、森の音などをかけながら取り組みやすい環境を整えてくださったのでありがたいですね。

- 環境づくりも呼吸に集中する大切なポイントなのでしょうね。「マインドフルネス実践ルーム」は基本的に朝の就業前にのみ実施しているのですか?

並木さん:朝が辛いという人、時間の都合がつかない人もいるので、11時からの回も追加で設けました。

- 自宅でも出来るのでしょうか?

並木さん:基本的には椅子に座って15分程度呼吸に意識を集中させるだけなので自宅でも取り組みはできます。しかし複数人でやることに効果があるということで、弊社では会社での実施を推奨しています。

佐藤さん:「マインドフルネスセミナー」では参加者全員で「マインドフルネス」を体験する機会がありましたが、少人数でやるのとは違いを感じました。2人より3人、3人より4人の方がいいような気がしました。

- 参加前に不安はありませんでしたか?洗脳や、心をコントロールされるのではないか?というような。

佐藤さん:私自身マインドフルネスをもともと知っていたこともありますし、不安はなかったですね。「マインドフルネスセミナー」を実施した当初は、社員たちからは宗教的なものなのか?というような不安の声は出てきましたが、そうじゃないんですよということを私たちは伝えていました。

進藤さん:私も抵抗はなかったですね。会社の取り組みとしてやるとなると、スピリチュアル的な部分を排除しないとお話しするのが難しいですから、セミナーの実施前にはリハーサルを入念に行いました。

- 万人に受け入れてもらうための工夫をされたのですね。

並木さん:はい。実際に「マインドフルネス」に取り組んでいる大企業や有名人のことを紹介して、親しみやすくなる工夫をしました。また、プレセミナーをこのプロジェクト内で実施して初見の人がどう感じるだろうかと考え、その後幹部にも入ってもらって、2回くらいブラッシュアップした上でセミナーを実施しました。社員の不安が掻き立てられる部分は排除して取り組んだつもりです。

- スピリチュアル的なことに対する姿勢や宗教観が日本は独特ですからね。かなり綿密にやられたのですね。
並木さん:そうですね。どうやったら受け入れられるか、定着するか、を考えました。

3.今後の展開について

- それでは「マインドフルネスセミナー」「マインドフルネス実践ルーム」の今後の展開についてお聞かせください。

佐藤さん:弊社では健康経営推進の一環としてすでに食育セミナーやダイエットウィークというものに取り組んでいますが、「マインドフルネス」は食育セミナー以上に定着化が難しいと感じています。セミナーの内容のさらなるブラッシュアップや、実践ルームの実施時間、実施期間の見直しなどもしていかなければと思っています。先ほど話があったように就業前だと参加しづらい人向けに11時の実施を増やしましたが、業務が落ち着きやすい夕方頃の実施なども検討が必要かと思います。

- 定着化のための策を講じていくということですね。

佐藤さん:はい。更に、社長が講師をやるだけでなく、他の講師を呼ぶことでアプローチが変わって新たな関心を呼び込めるかもしれないという期待もしています。習慣にしていかなければ効果がないので、まずは「マインドフルネス」をやってもらいたいですし、続けるほど効果があるということをわかってもらうまでの流れを作っていきたいです。「食べる断食」「ミネラルファスティング」だと数値で結果が出ますが、マインドフルネスは目に見える効果が出ないので、第一歩を踏み出してもらうこと、継続してもらうことのハードルが高いですね。

- 以前実は私の会社で朝礼の時に15秒だけ目を閉じるということを取り組んでいたのですが、たったそれだけで効果がありました。短時間でできることを見つけるというのもひとつのアイディアかもしれないですね。

佐藤さん:そうですね、時間や場所などの工夫で更に参加しやすく、取り組みやすくしていくことも必要かもしれません。

- 定着していくことを願っております。本日はありがとうございました。

<企業データ>

会社名:株式会社 セルメスタ(Selmesta CO.,LTD.)
事業内容:1.一般用医薬品、救急医薬品セット、介護用品、防災用品、健康食品の販売
     2.郵送検診事業の受託
     3.郵送検診キットの販売
     4.インターネットを利用した各種情報提供サービス及び販売
     5.医療費抑制事業
     6.不動産管理事務の受託
所在地:〒130-8671 東京都墨田区石原4丁目25番12号
資本金:9,900万円
従業員数:約60名

会社名:アスマン株式会社 代表 藤澤市郎
プロフィール:経営コンサルタント/健康管理士/ファスティングマイスター/足利5S学校正会員
政府系金融機関出身。人材育成の視点から企業の3つの健康~1.社員の健康(食事、生活習慣)、2.現場の健康(5S、カイゼン)、3.組織の健康(感謝と改革の風土つくり)~を独自の手法でサポートしている。
所在地:〒103-0027 東京都中央区日本橋3-2-14日本橋KNビル ウィズスクエア内

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