【シリーズ:健康経営はじめました】健康宣言を策定。「真っ赤なトマトの実りのように人を大切に育んでいく」(Joyful喜一グループ②)
前回、キックオフミーティングに密着したJoyful喜一グループの健康経営。今回はプロジェクト名の決定、健康宣言と健康ビジョン策定の様子をお伝えします。「何のために健康経営に取り組むのか」「健康経営に取り組んだ結果、会社や従業員がどんな状態になりたいのか」。活発に意見を交わしながら、自分達の進むべき方向性を定めていきます。
目次
1.企業と働き手がWin-Winの関係になる
メンバーがまず取り組んだのが今回の健康経営プロジェクト名を決めること。各自が考えてきた案を発表します。『健康への架け橋プロジェクト』『ジョイライフプロジェクト』『健やか爽やかプロジェクト』など様々な案が出る中、小川善の関口さんの提案した『ミニトマト倶楽部』が一際、注目を浴びます。関口さんがその名前に込めた意味をこう説明します。

「実は、私は今、ベランダでミニトマトを育てています。最初は水さえ適当にやっていればいいのだろうと簡単に考えていました。でも、水のあげ過ぎもダメですし、肥料は何を使えばいいのか、害虫対策はどうするのかと何かと気を使います。でも、そうやって手間暇かけて実がなると、そのトマトがとても愛おしくなります。人の体もそれと似ており、食べ過ぎ、飲み過ぎは健康に悪いですし、しっかりケアしていく必要があります。みんなの健康をトマトのように大事に育んでいこうという想いを込め、この名前を考えました」
さまざまな栄養素が含まれるトマトは健康の象徴。その赤はJoyful喜一グループのロゴにも使われていることもあり、グループ名のJoyfulをつけた『Joyfulトマト』がプロジェクト名として決定しました。
続いてメンバーが取り組んだのが健康(経営)宣言と健康ビジョンの策定です。健康宣言は、企業や組織が従業員の健康づくりや病気予防に取り組むことを社内外に宣言すること。健康経営に取り組んだ成果として、会社や従業員がどうなりたいかを示すのが健康ビジョンです。
今回のJoyful喜一グループの伴走者を務めるIKIGAI WORKSの熊倉が言います。

「健康経営は、労働安全衛生(健康管理)がベースとしてあり、心と身体の健康づくり(ヘルスリテラシー)、働きやすさ(コンフォート&コミュニケーション)、働きがい(ワークエンゲージメント)、生きがい(ウェルビーイング)からなるピラミッドを形成します」
つまり健康経営は、心と体の健康づくりや職場環境や良好なコミュニケーションも含め、働きやすさ、働きがい、生きがいを感じながら仕事ができるようにするもの。その結果として生産性や従業員のエンゲージメントなどが向上し、企業と働き手がWin-Winの関係になるものだと言います。
「経営資源としてのヒト、モノ、カネ、情報のうち、特に人が大事だと考える経営者や企業であれば、健康経営に取り組むのは必然。その結果、人財がその企業の強みとなり、競業他社との差別化ポイントにもなります」と熊倉。
そして、ここでパーパスと言うワードが出てきます。
「最近よく耳にする言葉にパーパスがあります。パーパスとは、その会社が目指すべき姿や方向性のこと。仕切りに言われるようになった背景として、これまで株主やお客様に偏りがちだった企業経営を従業員はもちろん、地域、次世代のことまで広げ、その企業が何のために社会に存在しているのかを考えていく必要があるという認識が広まっているからです。そして、会社のパーパスと従業員の働きがい・生きがいが掛け合わされた時、社会に影響を与えるほどの大きな力が生まれます」
2.各企業の事業形態や年齢層に合った健康経営を
健康宣言、健康ビジョンを策定するに当たり、一つの疑問がメンバーたちに生まれました。それはJoyful喜一グループとして策定するのか、それともグループ各社ごとにするのか。
エスコの安達さんが言います。

「Joyful喜一グループのパーパスとして『人の手が支える世界を支える』があるので、そこは各社共通でいいと思います。ただ、事業内容は各社違いますので社会貢献の仕方も変わってきますし、健康宣言、健康ビジョンは独自のものを策定するのが自然ではないでしょうか」
熊倉はそれにこう答えます。
「前回のミーティングの時、小川善の従業員の年齢が高いという話をお聞きしました。社員の年齢構成や健康状態なども考えながら、健康宣言、健康ビジョンを考えていけばいいのではないでしょうか」
「なるほど。各社の事業内容、従業員の年齢層や健康状態などの現状も把握し、独自のものを作っていくということですね」と田中社長
「おっしゃる通りです。ただ、いきなりその会社らしさを表現するのは難しいかもしれませんので、一つ一つ階段を登っていけばいいのではないでしょうか。例えば、今年は、何のために健康経営に取り組むのか、健康経営をすることで会社や従業員がどんな状態になりたいのか、という各社共通の認識を持ち、足並みを揃える。そして、2年目、3年目から各社らしさをどんどん打ち出していく形でもいいと思います。その際、先行して健康経営に取り組んでいる喜一工具さんの例や意見が参考になると思います」と熊倉。
喜一工具の石川さんが応えます。

「そうですね。例えば、ブライト500に認定されているある長距離バス会社の会社さんは、従業員の睡眠にとても力を入れています。なぜかというと、バスを安全に運転するためにです。同じ理由で別の運送会社さんは、食生活についての取り組みをされています。
喜一工具でなぜヨガやマインドフルネスを取り入れているかと言うと、デスクワークが多いから。腰痛や肩こりなどになりがちなので、その解消にヨガは最適です。また、考える仕事も多いので、マインドフルネスで脳を一旦、真っ白にして休憩させることもとても有効。これらの具体的な施策については、健康宣言をした後、各社の状況に合わせ、考えていくことになるでしょう」
3.社員のQOLを高めることがホールディングスの責任
メンバーたちは時間をかけて健康宣言、健康ビジョンの策定に取り組み、各社から発表する日がきました。まずグループのまとめ役となるホールディングスの田中社長が話します。

「今回、健康宣言、健康ビジョンを策定するにあたり、私たちホールディングスの責任って何なんだろうと改めて考えました。その結果、一番重要なのはグループ全社員のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めることだと思い至りました。QOLには、身体的領域、心理的領域、社会的関係、環境領域がありますが、心身の健康や社員同士の繋がり、働く環境を高め、社員のQOLを向上させることがホールディングスの一番重要な責任だと言うことです。
例えば、心理的領域一つとっても様々なことが関連してくるでしょう。職場の人間関係が悪かったり、汚い、狭いなど働く環境に問題があると、心理的な健康にも影響します。ですから、今回の健康経営プロジェクト(Joyfulトマト)は、健康診断に行きましょう、悪いところがあれば治しましょう、というだけの話ではありません。様々な側面に配慮しながら、我々として何ができるかを考えていく必要があります。
もう一つは、BCP(事業継続計画)。財務的に赤字で事業が継続できないということがあってはなりません。社員の生活を守ることはもちろん、お客様に対してもそうです。例えば、震災があったときなどでも必要とされる商品をしっかり供給していくといった社会的な責任が私たちのグループにはあります。今回のプロジェクトは健康経営ですが、心身の健康だけではなく、私たちのパーパスや社会的責任にも繋がっていくものです」
熊倉が言います。
「まさに田中社長の言う通りです。健康宣言、健康ビジョンの策定では、健康経営を通して何を実現させたいかをしっかり考える必要があります。それがないと、単なる健康管理になってしまいます」
4.「ミドルシニアの活躍」「工具愛」などを宣言
そしてグループ各社から健康宣言と健康ビジョンの発表がなされました。どれも会社の事業内容や従業員の年齢、健康、社会的なミッションを見据えた見事なものとなりました。
例えば、工具の販売や設置などを行なっている小川善が掲げたのが「現場主義」「ミドルシニアの活躍」。小川善の特徴の一つとして、平均年齢が50歳ほどで社員の高齢化が進んでいることがあります。年齢的に健康に不安を抱える人も増えている中、夏の猛暑、冬の寒さの中でも重い商品を持って工場などを訪問します。
そうした状況を踏まえて、小川善は健康宣言の中に「FACE TO FACEで現場でしか解決できないお客様のニーズに沿った課題を『安心・安全・環境・快適』をテーマに解決して貢献します」「現場で元気にお役に立つには、我々自身が健康で最高のパフォーマンスを発揮するための取り組みを推進します」「我々ミドルシニアが健康でいることで世界を支えます」という言葉を入れました。

エスコの事業は、企業ごとに最適なMRO(メンテナンス、リペア、オペレーション)商品を提供すること。そんなエスコが今回、焦点を当てたのがまさに商品の特性とダイレクトにつながる「持続可能性」。
昔のように人口が増え、経済成長を続ける時代ではなくなっています。使い捨てではなく、今あるものを長く使っていくために、壊れた部分をしっかり修理すること、壊れないために定期的なメンテナンスを丁寧に施すことが大事になってきている中、そこを支えるのがエスコの商品であり、サービスだということです。
また、東日本大震災の際、サプライチェーンが崩壊しましたが、あのような経験は二度としたくないという気持ちがお客様であるユーザー企業側に色濃く残っていると言います。その不安を解消し、商品を継続して安定供給できるサプライヤーとして、まず社員自身が健康で長く、イキイキと働ける状態である必要があるという答をエスコは導き出しました。
そして、その想いを健康宣言の『私たちはエスコのミッションである「MRO商品に“便利”と“安心”を添えてお届けします。」を通して企業のメンテナンス、リペアを支えることで、持続可能な社会に貢献します。』という一文に込めました。
目利きバイヤーがセレクトした国内外の一流ブランドを取り揃えているJoyfulインポートツールは、「工具愛」と「かっこよさ」を打ち出しました。
まずショップである自分達の役割、どういう行動が必要かを考えた結果、「気軽に相談できる」「退屈しない場の提供(工具選び自体を楽しめる)」「男心をくすぐるかっこよさ」「マニアックでこだわりを持った人たちの期待に応える」ことを挙げました。そして、それを健康宣言の中で『「間違いない工具で、メンテナンスライフを支える」のテーマのもとに、私たちはバリバリの工具愛で、かっこよくて、とんがった、間違いのない工具を提供します』と表現しました。
5.見事な成果を残しながら第一フェーズが終了
全ての発表を聞き終え、熊倉は感嘆した表情で言います。

「みなさんの策定された健康宣言、健康ビジョン、どれも素晴らしく感動しました。他社さんの場合、ありきたりな言葉を並べていると感じてしまう健康宣言も多い中、Joyful喜一グループの皆さんは、会社の独自性を考え、想いの詰まった素晴らしいものを作られました。健康宣言の時点で、すでに他の優良法人認定企業でさえ届いていない水準にまで達しています」
田中社長が続けます。
「これまでの数回に渡るミーティングは、なぜ我々は健康になる必要があるのか、といった基礎を固めるのに非常に有意義な時間だったと思います。本日の健康宣言、健康ビジョンでそれらが固まったので、今後、それをどう具体的なアクションに変えていくのか非常に楽しみにしています」
【取材後記】

皆さんの想いを込めたプロジェクト名の決定後、「現場でミドルシニアが活躍するために」「どんな時もお客様に商品を安定提供するために」「工具愛に裏打ちされた、かっこよさを表現するために」は、「まず社員自身が健康である必要がある」と各グループ会社が堂々と健康宣言。通常「健康経営宣言」とするところをあえて経営を抜き「健康宣言」としたのも、会社がどうありたいか以上に、社員一人一人がどうあるかが重要だと考えたから。ここにもJoyful喜一グループの独自性が表れています。
実に見事な成果を残しながら第一フェーズが終了しました。次回からは経営陣が一旦ミーティングの場から離れ、メンバーだけで現在の社員の健康状態や労働時間などの状況を把握し、どういう施策をしていけばいいかといったことを話し合う第二フェーズに入っていきます。どんどん形になっていくJoyful喜一グループの健康経営。その動きからますます目が離せなくなっています。
<企業データ>
会社名:Joyful喜一ホールディングス株式会社
事業内容:国内外有名機械工具等の卸販売及び輸出入業務
所在地:〒578-0965 東大阪市本庄西2-6-11
資本金:9,500万円
社員数:231名(男子155名・女子76名)
会社名:喜一工具株式会社
事業内容:国内外有名機械工具等の卸販売及び輸出入業務
所在地:〒578-0965 東大阪市本庄西2-6-11
資本金:2,000万円
社員数:108名(男子74名・女子34名)
会社名:株式会社エスコ
事業内容:工場・工事現場・オフィス・ビル等施設で使用する工具、機器、部品、消耗品、備品類の卸売り業及び 自社製品の企画開発。
所在地:〒550-0012 大阪府大阪市西区立売堀3丁目8番14号(本社建替工事中)
※仮本社所在地:〒550-0013 大阪府大阪市西区新町4丁目14番12号
資本金:2,000万円
社員数:67人(男子45名・女子22名)
会社名:小川善株式会社
事業内容:国内機械工具および輸入工具の販売、機械器具設置業、建設工事業
所在地:〒578-0965 東大阪市本庄西2-6-11
資本金:2,000万円
社員数:14人(男子13名・女子1名)
会社名:Joyfulインポートツールズ株式会社
事業内容:国内外メーカーやブランドの工具の販売
所在地:〒224-0007 神奈川県横浜市都筑区荏田南1-17-4
資本金:1000万円
社員数:7人(男子5名・女子2名)