ラインケアにおける管理監督者の役割:職場のメンタルヘルス対策

「ラインケア」とは、職場の4つのメンタルヘルスケアのひとつ

ラインケアとは、職場における管理監督者による下位者へのメンタルヘルスケアです。管理監督者は、メンタルヘルスケア不調者を早期発見し、適切な対応をすることが求められています。

厚生労働省の「労働者の心の健康保持増進のための指針」のなかで示されているメンタルヘルスケアは「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」と4つに分けられています。

職場の管理監督者とは?

管理監督者は、使用者(事業主)から「労働者(従業員)に対して、指揮命令を行える権限」を委譲されています。さらに、管理監督者には部下である従業員の健康を守る義務も課されており、不調者を専門家へつなぐこと、職場復帰者の支援、職場環境等の改善を通じたストレスの軽減なども、管理監督者による役割です。

メンタルヘルスを含む、不調の早期発見・対応を

ラインケアで大切なのは、管理監督者が「いつもと違う」部下にいち早く気づくことです。日ごろから部下の行動や人間関係を把握し、変わったところはないか気をつけるようにしましょう。

<「いつもと違う」部下の様子>

○ 遅刻、早退、欠勤が増える
○ 休みの連絡がない(無断欠勤がある)
○ 残業、休日出勤が不釣合いに増える
○ 仕事の能率が悪くなる。思考力・判断力が低下する
○ 業務の結果がなかなかでてこない
○ 報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆)
○ 表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆)
○ 不自然な言動が目立つ
○ ミスや事故が目立つ
○ 服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする

出典 http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-3.pdf

<引用>職場におけるこころの健康づくり(厚生労働省)P14

職場の管理監督者による、部下からの相談への対応

「いつもと違う」部下に対して、管理監督者は何らかの対応をすることが求められます。部下の話を聴き(積極的傾聴)、産業医のところへ行かせる、あるいは管理監督者自身が産業医のところへ(本人にその旨を伝えた上で)相談に行ける仕組みを作っておくことが望まれます。

職場の管理監督者は、常日ごろから部下の自発的な相談に対応するよう努め、また、相談しやすい環境や雰囲気を整えることも必要です。

職場によっては、保健師や看護師、産業カウンセラーなどの事業場内産業保健スタッフが、産業医との仲介を果たす形をとることもあります。

ストレス要因の把握と、職場環境等の改善5つのステップ

ストレス要因の把握

ストレス要因には、職場環境が大きく影響します。仕事のしにくさで受けるストレスは疲労感を増大させ、健康問題だけでなく生産性の低下や事故にもつながるリスクがあります。

職場環境とは仕事の内容や負荷などのほかに、職場の照明や温度湿度、作業スペースのレイアウト、情報の流れ方、指揮命令系統なども含まれています。「職場環境」をさまざまな角度から観察し、着手できる問題点からすぐに改善するという努力を続けることが大事です。

ストレス要因の改善 5つのステップ

職場環境の改善は、産業医や衛生管理者だけでなく、職場全体(人事・労務担当者、管理監督者、労働者)で取り組むことで、効果的に実施できます。厚生労働省が運営する、メンタルヘルスのポータルサイト「こころの耳」が提供する、“e-ラーニングで学ぶ「15分でわかるラインによるケア」”では、効果的な職場環境等改善の手順を、図のように5つのステップでまとめています。

職場環境等の改善には、専門家の指導を受ける、あるいは職場上司や労働者による自主的な活動など、さまざまな進め方があります。職場の管理監督者は、積極的に協力し取り組んでいきましょう。

<引用>e-ラーニングで学ぶ「15分でわかるラインによるケア」|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(P15)

部下の職場復帰への支援7つのポイント 管理監督者の役割とは

復職者はさまざまな不安や心配を抱えて出社してきます。管理監督者はそうした復職者の気持ちを受け止め、緊張をやわらげることが望まれます。そうすることで、同じ職場で働くほかの部下たちの緊張もやわらげることができるのです。

このように部下の職場復帰支援では、直属の管理監督者が中心人物となります。管理監督者が知っておきたい、「職場復帰支援7つのポイント」は以下のとおりです。

<職場復帰支援7つのポイント>

1. 特別な理由がないかぎり元の職場に戻す。
2. 他の部下と同様に処遇し、特別扱いをしない。
3. 作業内容は元の職場に比較して単純なものを労働時間に見合った量だけ与える。納期の厳しい作業は避ける。
4. 復職者の心理状態には波があるので、良好な状態、低下した状態、平均的な状態に区分し、それぞれのレベルと接続時間を総合して回復状況を把握する。
5. 順調に回復しているようにみえる場合でも、3〜6か月後に再燃することがある。
6. 長時間にわたる定期的な通院が必要な者が多いが、「通院することはよいことだ」と支持する。
7. 医師から出されている薬を飲むことに対する否定的な発言をしない。

出典 http://kokoro.mhlw.go.jp/e-learning/linecare/

<引用>e-ラーニングで学ぶ「15分でわかるラインによるケア」|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(P19)

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