健康経営で企業風土を変え、想いを未来に繋ぐ(都築電気)【後編】

昭和7年(1932年)創立という長い歴史と伝統を誇る都築電気ですが、2008年を境に、従業員一人一人が考え、行動する企業へと転換。その際、新しい経営理念に血を通わせ、社員を活気づかせるツールともなったのが健康経営でした。今回は、健康経営の推進役となった副社長の吉井さんと奥野さんにたっぷりとお話を伺いました。(インタビュアー:健康経営の広場/セルメスタ代表  熊倉 利和)

1.効果を分析し、社員へフィードバック

――御社はホワイト500の認定も4年連続で受けられています。健康経営を推進することで社内外に何か変化はありましたか? 

奥野さん:はい。当社の2大健康課題は、睡眠不足リスクと大量飲酒リスクでした。テレワークや残業削減など働き方を変えることと同時に、新型コロナウイルス感染予防に伴う新しい生活様式の推奨により、それらの生活習慣リスクは改善傾向にあります。特に睡眠の質・量ともにとても良くなったと回答する人は、過半数に近づいています。飲酒については、増えた人と減った人がいますが、全体的には減少傾向にありますね。

それと、ホワイト500認定を受けることで、PDCAサイクルを回せるようになったのも大きい。というのも、調査表に書き込むことで改めてどこまで基準をクリアできているかといったことの確認にもなりますし、それを支店の皆さんに伝えることで目標設定が明確にもなります。

毎年、社員へのアンケートも実施。ワークエンゲージメントや労働生産性といった一般的なものだけでなく、創造生産性や幸福度を定点観測し、変化や効果を分析し、それを社員にフィードバックしています。

単に、タバコを止めましょう、お酒を控えましょうという言い方ですと逆に反感を買ってしまう場合もあるので、「こういうデータが出ています。働き方や生活習慣の見直しが必要です」としっかりとエビデンスに基づいたメッセージを送るようにしています。

吉井さん:それと、対外的に大きく変わったことの一つが採用面。「御社の健康経営の取り組み、働き方に対する考え方に共感を覚えました」と言って、入社希望者が増えました。

そして、社内の雰囲気や文化も変わってきていますね。ベテラン社員は職人気質の人も多いのですが、健康経営を取り入れたことで、若い世代との足並みも揃ってきたかなと考えています。

また、昔は本当に男社会で女性の採用を始めてからまだ10年くらいしか経っていません。それが、健康経営推進の中心を担ってくれている奥野をはじめ、女性社員が会社を変える推進力になってくれていますし、さらに女性の活躍の場を増やしていきたいですね。

奥野さん:それと、健康でイキイキと働き続けることは、性別や年齢にかかわらず、社員全員が対象になりますから、みんなに当事者意識を持ってもらえます。健康経営によって共通のビジョンを描き、目標に向かっていけるところもいいですね。

2.健康経営と事業戦略のシナジー

――先程お聞きしたウェルネスチェックなども、自社で開発した技術を健康経営のツールとしても活用しているということですか?

奥野さん:はい。ウェルネスチェックは、東京都健康長寿医療センターと共同研究をし、健康長寿に向けたソリューションが元になっています。それを当社のDX推進に向けたイノベーション推進室のメンバーが、社内の健康経営のツールとして提供してくれています。

――なるほど。事業戦略と健康経営が見事にマッチングしていますね。中期経営計画を拝見しますと、「お客様のDX対応や競争力強化を実現するイノベーション・サービス・プロバイダーを目指す」と謳われていますが、 その技術の活用を自社から始めていることになりますものね。

吉井さん:そうですね。ただ、今回のウェルネスチェックなどの取り組みをDXと呼ぶにはあまりにも初歩的過ぎるかとも思っていました。ですが、社内への浸透具合を見ると、まずは初歩的なところから始めて徐々にDXを進めていくのは効果的であるとも思い直しました。

自社の取り組みで感じたこと、得られた効果をお客様にもっと発信していってもいいのではないかと考えています。それはDXだけでなく、SDGsなど他のことでも一緒です。

3.健康経営で全てが繋がっていく

――インタビューの冒頭で、当社はこれまでずっと“繋ぐ”ことを仕事にしてきたと吉井さんはおっしゃっていました。未来に向けて会社をどのように繋いでいきますか?

吉井さん:イノベーションといっても、伝統や今ある大切なものを捨て去ってしまうと、未来へは繋がっていかないと思っています。

それに関連して、とても嬉しいことがありました。それは、奥野などの若い世代が創業家のお墓参りをしたいと言ってくれたこと。奥野はSDGsの担当でもありますので会社の原点を知りたいんです、と。それを聞いて、経営者の一人としてこれほど嬉しいことはありませんでした。

――素晴らしいお話ですね。健康の定義として、体と心だけでなく、社会的な健康があります。自分はコミュニティーの一員である、仲間のために貢献できているということは、社会的な健康にとってとても大切なことです。

吉井さん:本当にそうですね。当社にはたくさんの技術者がいますが、技術者であっても、技は一番後に来るもの。まずは体があり、心があってこその技。まさに心技体ですね。

そのためにも、コミュニケーションが非常に大事であると考えています。特に今はコロナ禍でテレワークとなり、社員と顔を合わせる機会が少なくなっている。そこで、社長と私と管理本部長で、家庭訪問ではありませんが、社員とできるだけ会うようにしているんです。

奥野さん:『経営層と話してみよう座談会』といったものを企画し、全社員から参加を募りました。今回は52名から応募がありましたが、さらにブラッシュアップさせ、経営陣と社員とのコミュニケーション活性化の施策に取り組んでいきたいと考えています。

吉井さん:それと同時に、応募してくるのは元気のある人たちですから、ある意味それほど心配はしていません。私の方では、何か悩みを抱えているのではないかといった少し心配な人たちと、一対一で会うようにしています。

この間も、あるキャリア採用で入った社員と会いましたが、入社してすぐにコロナの影響で在宅勤務になってしまい、今後の環境など不安を抱えていました。会って本音を話せて良かったと言ってくれました。これからも、少しでも社員の不安を解消したり、元気になってもらえるきっかけになれたらいいと思っています。

――御社の企業規模で経営陣が社員一人一人に話を聞くというのは、なかなかできないことです。感動しました。

ありがとうございます。社員の話を聞くことは、経営をする上でも欠かせません。中期経営計画でも「SDGs/ESG活動を通して、豊かな社会の実現に向けて取り組んでいく」と謳っていますが、SDGsやサスティナブルって何だろう?と改めて考えたとき、「あ、これは企業理念の中にある“つなぐ”のことじゃないかと気づきました。

若い社員に作ってもらった企業理念を見た時、私自身、正直、腹落ちできていない部分がありました。それが健康経営に取り組むことで本当の意味を理解でき、一つに繋がっていったのだと思います。

<インタビュー後記>

健康経営は、単に社員を健康にするだけではない。社員がイキイキと仕事に取り組むことで生産性や創造性を高めるもの。さらには、新しいことに挑戦する際のツールにもなり、企業文化を浸透させたり、事業との相乗効果をもたらすことができるものである。都築電気さんの取り組みは、それを教えてくれています。そして、都築電気さんの健康経営の根底には、人と人の温もりある繋がりを大切にするという伝統が息づいていることに深い感動を覚えるインタビューとなりました。

<企業データ>

会社名:都築電気株式会社

事業内容:ネットワークシステムおよび情報システムの設計、開発、施工、保守/電子デバイス、

情報機器の販売ならびに受託設計開発

本社所在地:東京都港区新橋6−19−15 東京美術倶楽部ビル

従業員数:1,510名(2020年3月)