【座談会:ホワイト企業×大学生】自分の心の奥の声に耳を傾けて仕事を選ぶ

2022年11月24日に開かれたブライト500企業と大学(院)生の座談会。就職や健康に関する意識の変化や、個人の生きがいと企業のパーパスとの関係など、とても深く、熱い話が飛び出しました。

〔ブライト500企業〕

西沢頼母(エーオーエーアオバ 専務取締役 健康経営推進 室長)

菊地公信(NSK 執行役員 本部長)

坂本武治(NSK 企画・総務部 人事担当)

〔大学生/大学院生〕

松本和士(東京大学大学院 修士2年)

野口竜之介(東洋大学 3年)

〔司会進行〕

青柳凌汰(IKIGAI WORKS 営業マネージャー)

1.コロナ禍での就活と新卒採用

菊地:お二人は今、就活中ですか? コロナの影響などはありましたか?

松本:私は今、大学院の修士2年です。就活はすでに終えており、2023年4月から金融系の企業に就職します。就活には1年くらいかけて取り組みましたが、コロナ禍で逆に恩恵を受けた部分もありました。例えば、通常、会社訪問する場合、移動などにも時間がかかりますが、オンラインになった分、多くの企業を受けることができました。

菊地:確かに企業側から見ても、今までとは違ったタイプの学生さんの応募も多かったですね。特にNSKは営業所が全国にありますので一堂に集まるのが大変です。そういう意味でも当社にとってオンライン面接にはいい面がありましたね。

松本:ただ、そうしたメリットを感じた一方、オンラインで30分くらい話しただけで本当に相手のことが分かるのかといった疑問も残りました。

菊地:確かにオンラインで話していた人でも、実際にお会いすると印象が大分違い、「こういう人だったのか」と初めて分かることがありました。ですから最終面接では、できるだけ会社に来てもらうようにしていました。

西沢:エーオーエーアオバの場合、35年くらいの歴史があるのですが、今まで新卒採用をしたことがほとんどありません。ある程度の経験や知識のある人を採用することが多く、新入社員に対して手取り足取り教えるというより、自分自身で先輩などに聞きながら学んでいくというやり方をとってきました。そのやり方が合わなくて辞めてしまう人もいるのですが、逆に残った人は長くいるので、みんな家族のような関係になりますね。

2.禁煙対策と健康に対する意識の変化

青柳:西沢さんのインタビュー動画を拝見しましたが、エーオーエーアオバさんでは禁煙を徹底されているようですね。

西沢:はい。喫煙は自分の体を傷つけ、健康を害する行為です。当社は健康関係の製品を扱っていますので、自分ができないのに健康のためになる製品を売ることはできないという考えがあり、非喫煙者が採用の条件になっています。

松本:お酒はどうですか?

西沢:お酒は楽しく飲みます(笑)。社内にワインセラーやサロンのように集まれる場所があり、夜はみんなでお酒を飲みながら楽しく過ごしたりします。お酒は飲み過ぎなければいいですが、タバコは百害あって一利なしと考えています。

菊地:当社も減ってきたとはいえ、建設業ということもあり、依然タバコを吸う人が多いのが悩みです。

西沢:私自身、禁煙のためのカウンセリングをしたことがあるのですが、その時、「手持ち無沙汰だから吸うということはやめて、吸うのなら思いっきり吸う、吸わないなら吸わないと決めましょう」という話をしました。すると、タバコを減らすことに成功する人も出てきました。

松本:NSKさんでは何か喫煙対策をしていますか?

坂本:お酒やお菓子でもそうですが、その人が好きなものを体に悪いからやめろというのは難しい部分があります。ただタバコは吸わなくてもいいものですから、何か別なもので置き換えられるのではないかとも感じています。

西沢:人は変えられないので、結局、本人が気づくしかないのではないでしょうか。その気づきをサポートしていくことが私たちの役割だと思っています。

坂本:そうですね。きっかけも必要かもしれません。例えば、タバコ代が値上げして家計に響くようになったとか、体調が悪くなって吸わない期間ができ、「あれ、吸わなくても平気だぞ」とわかれば、やめてくれることでしょう。

菊地:最近の若い世代はタバコを吸う人が少ないですよね。

松本:はい。建築学部などですと吸う人が多いですが、全体的に喫煙者は少ないと思います。

青柳:昔はタバコを吸うことがカッコいいという価値観がありました。今は、タバコは周りにも迷惑をかけるのでカッコ悪いと思う人が増えているのではないでしょうか。

3.コミュニケーションとメンタルヘルスとの関係

松本:私は来年から外資系企業で働きますが、外資系の場合、仕事は仕事、プライベートはプライベートで人間関係をきっちり分けるイメージを持っています。ですが、個人的には日本企業の古き良き家族的な雰囲気が好きです。皆さんの会社の雰囲気はどうですか?

坂本:NSKの場合、仕事が終わったらすぐに帰る人もいますし、フットサルやボルダリング、ランニングなど同じ趣味を持つ人たちが集まって楽しむということもしています。飲み会なども同じで強制することはありませんし、社員一人一人の意志を尊重する企業風土がありますね。

松本:部下を強く注意した時など飲みに誘ってフォローしたり、本音で話しあったりということも少なくなっていますか?

菊地:特にコロナ禍で飲みに行く機会自体がなくなって、そういうコミュニケーションをどうすればいいのか迷っている部分はあります。そのため、最近は一対一のミーティングなどを増やしています。

西沢:当社では、会社がお昼を用意してみんな一緒に食べています。社長は83歳なのですが、料理が趣味。お客様から魚を送っていただくと、それをみんなの前でさばいて刺身にしてくれたり、大きな鍋でカレーを作ったりして振る舞ってくれます。

菊地:魚をさばくのはすごいですね。

西沢:ですから、普通の会社の給湯室にない本格的な包丁やまな板も置いてあります(笑)。また、ムードボードが会社の壁に張られていて、「ハッピー」「ワクワク」「忙しい」「傷ついている」など自分の状態を可愛らしいデザインのポストイットを貼って伝えるようにしています。「ワクワク」を貼っている人には「何かいいことあったの?」。「傷ついている」を貼った人に対しては「どうしたの?」と周りの人が声をかけるので、それもいいコミュニケーションツールになっています。

青柳:特に若手社員などは言いたいことがあってもなかなか言えないということもあるでしょうから、そういうツールがあると一人で抱え込まなくてもいいですね。私も上司に取り入れてもらえるように話してみます(笑)。

菊地:以前、事務所の引っ越しをよくしていて、仕事柄レイアウトや電源の設置などは自分達でできますし、お客様にいただいたお酒を飲みながらみんなでワイワイやっていましたね。

松本:そういうものがあると、文化祭みたいなノリで仲良くなれそうですね。なぜコミュニケーションについてお聞きしたかというと、健康経営では、体の健康だけでなく、メンタル面がとても大きいと思っているからです。例えば、勉強や仕事ができる人でも、コミュニケーションに問題があると能力が発揮できなくなると思ったので、どんなコミュニケーションを取られているのか気になりお聞きしました。

野口:みなさんは仕事でコミュニケーションがうまくいかず、メンタルを病んでしまったという経験はありますか?

坂本:マイナス思考となり、自分を追い込んでしまうとメンタルを病んでしまうかもしれません。私も若いうちは経験も少なく、気持ちの部分で追い込まれてしまうということがありました。そんな時も知り合いとお酒を飲みにいくだけでも気持ちが楽になったりしますし、自分なりの発散の方法を見つけることでメンタルの健康を保つようにしてきました。

例えば、疲れている時はマイナス思考になりがちなので、そういう時は思いっきり寝る。体を使わずデスクワークばかりしていると頭だけが疲れた状態になり、眠りが浅くなります。そういう時に運動すると眠りも深くなり、疲れも取れます。それと私は食べることが好きなので、美味しいものを食べることで幸せな気持ちになります。趣味もいいですし、自分なりの発散法を見つけることが大事。健康経営を担当していると、そういったノウハウに触れる機会も多いですね。

4.パーパス経営と個人の生きがい

松本:西沢さんはお仕事の話をされる時、とても楽しそうですね。楽しく働くコツなどがあれば教えてください。

西沢:一つの理由として、エーオーエーアオバが生きがいの創造を目的にパーパス経営をしていることがあると思います。私自身「人は何のために生きるのか」ということを追求したいタイプ。会社のパーパスと個人の生きがいが交わっている部分が多いので楽しく働けているのだと思います。

もちろん仕事をする上でぶつかることもあります。ですが、みんな目指すところは一緒。根本のところで繋がっていると、苦労も苦労に感じられず、前向きに仕事ができます。自分の生きる目的と会社のパーパスの交わりがどれくらいあるのかが重要であり、交わりがなければ、いくらたくさんお給料をもらえたとしても、その会社で働くことはやめた方がいいかもしれません。

松本:なるほど。個人の生きがいと会社のパーパスが一致できれば楽しく働け、幸せを感じられるということですね。

西沢:はい。個人の生きがいと会社のパーパスの交わる部分を増やし、こうすれば楽しくできるという方向に会社や仕事を持っていくという努力はずっとしてきました。

5.他人軸ではなく、自分軸で仕事を決める

野口:みなさんは、それぞれの会社で何年か働いてこられました。もし、その経験をした上で大学生に戻ったとしても今の会社を選ぶのか、それとも別の道に進むのか?

菊地:私はもう一度NSKに入りたいですね。ただ、同じことをするにしても、もっと上手くできたのではないか。やり直してみたいとは強く思います。好きにやってきた方だとは思うのですが、あの時こうしていればよかった、ああすればよかったとは考えます。もっと仕事をうまくやれば、会社を大きくすることに貢献できたのではないかと後悔することがありますね。

青柳:NSKという会社のことがお好きなんですね。

菊地:はい。プライベートより仕事をする時間のほうが長いので、つまらない仕事をするのは不幸なことです。日曜日のサザエさんが始まる頃には明日の仕事のことを考えて憂鬱になるというのはいただけません。

野口:私はこれから社会に出ていきます。皆さんから何かアドバイスをいただけないでしょうか?

菊地:やりたいことをやるのが一番です。ただ、やりたいことは途中で変わるかもしれない。ですから、決めつけないで、やりたいことが変わったらそこからまた新しいスタートを切ればいいのではないでしょうか。当社にもそういう人がたくさんいます。まず自分がやりたいことを見つけるために、様々なことにトライしてください。やってみないとわからないことがたくさんありますから。

坂本:就活中は不安ですし、焦ることもあるでしょう。でも、失敗しても死ぬわけではありません。いくらでもやり直しはききます。仮に希望の会社に就職できなくても、この世には実に様々な仕事があります。数多くの会社を見て回れば、必ず自分にピッタリな会社や仕事が見つかるはず。会社も人と同じで縁が大事。ですから、あまり自分を追い込まず、肩の力を抜いてやっていってほしいと思います。

西沢:この世に生まれてきて、一人一人みんな誰にも代れない役割を持っているのではないでしょうか。それは小さいことかもしれません。でも、自分以外は誰にも代れない役割は何なのか考えてほしい。「これをやれば他の人から褒められるのではないか」といった他人の目線ではなく、自分が心の奥底からやりたいと思うことを追求してほしいですね。他人からカッコよく思ってもらえる、親が喜んでくれるなど他の人の目線で行うと必ず後悔します。不思議なもので、この世の中で自分だけが持つ価値を追求しようとすると、必ずサポートしてくれる人が現れます。

【取材後記】

ざっくばらんにとても楽しい雰囲気の中、進んでいったブライト500企業と学生との座談会。コロナ禍での就活事情、健康に対する意識の変化、さらにはコミュニケーションとメンタルヘルスとの関係、パーパス経営と個人の生きがいといった深いテーマにまで踏み込み、意識や見識の高さに驚かされました。今回の座談会のメンバーは、日本の健康経営を先に進める役割を果たしていってくれるのではないでしょうか。

<企業データ>

会社名:株式会社エーオーエーアオバ

事業内容:健康食品、自然食品の販売/環境浄化機器システムの開発及び販売/医薬品、医療機器、化粧品の輸入販売/企業経営コンサルタント業 他

所在地:〒112-0015 東京都文京区目白台3−4−11 ジーエフビル

資本金:1億円

社員数:12名

会社名:NSK株式会社

事業内容:電気・通信設備、内装設備、その他設備全般の企画・設計・施工/ネットワークの企画・設計・構築・保守・監視業務/カメラシステム、入退室管理システムの企画・設計・構築/オフィス移転・新設に伴うレイアウト設計、デザイン

所在地:〒102-0074 東京都千代田区九段南2-3-1 青葉第一ビル

資本金:1億円

社員数:249名(2023/01/01現在)

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