労働安全衛生について~メンタルヘルスと安全配慮義務の関係

安全配慮義務の「安全」には心の安全も含まれている

「安全配慮義務(健康配慮義務)」と聞くと、まずは建設現場や工場などで「事故や怪我を防ぐための配慮」というイメージが浮かびやすいかもしれません。

しかし、労働者がメンタルヘルスを著しく損なうと、事故に遭ったり、怪我をしたりするのと同じように、仕事や日常生活に支障が出てしまいます。つまり、どちらも等しく配慮されるべき事柄なのです。

とくに経営者は、「安全配慮義務(健康配慮義務)の中には、そこで働く者たちのメンタルヘルスへの配慮も義務として含まれている」ということをしっかりと認識している必要があります。

安全配慮義務(健康配慮義務)とはどのようなものか

安全配慮義務(健康配慮義務)については、労働安全衛生法と、労働契約法にそれぞれ下記のように規定されています。

事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

出典 http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=347AC0000000057&openerCode=1

<引用>労働安全衛生法 第三条

平成20年3月に施行された労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と、使用者の労働者に対する安全配慮義務(健康配慮義務)を明文化しています。
危険作業や有害物質への対策はもちろんですが、メンタルヘルス対策も使用者の安全配慮義務に当然含まれると解釈されています。
労働契約法には罰則がありませんが、安全配慮義務を怠った場合、民法第709条(不法行為責任)、民法第715条(使用者責任)、民法第415条(債務不履行)等を根拠に、使用者に多額の損害賠償を命じる判例が多数存在します。

出典 http://www.kenkou-hataraku.metro.tokyo.jp/mental/line_care/law/abor.html

<引用>東京労働相談情報センター「使用者の安全配慮義務」

メンタルヘルス対策としては、社員が心の健康を害することが会社側で予測できたにもかかわらず、手段を講じない、もしくは回避する方法があるのにそれを採用しなかったとなれば、安全配慮義務違反とみなされます。

メンタルヘルスの安全に配慮すべきなのはどのようなときか

たとえば、働き方が主な原因でメンタルに不調をきたすケースがあります。
長時間の残業やハラスメント行為(パワハラ・セクハラなど)、他にも何らかの原因でストレスが過度にかかってしまうといったことです。

そのほかにも不調に至る原因として、さまざまな要素が複雑に絡み合っていることがあります。
たとえば介護や離婚などの家庭的事情、経済的事情といったさまざまな個人的な問題に、働き方によるストレスが重なってしまうという状況です。
こうした場合、職場にすべての原因があるとは言えませんが、そうであっても、放置したり見過ごしたりすることが許される訳ではありません。

いずれの場合にも、労働者が健やかに働くことができるよう、原因を取り除いたり、サポートしたりすることが必要です。

専門家の知見を頼み、サポートを受けて早目の対策を

もし、労働者にメンタルヘルスを損なっていると思われる状態があったり、損ないかねない兆候が見受けられたりするのであれば、早急に対策が必要です。
対策は産業医または心療内科や精神科などと連携しながら行いますが、経験がない、何をするべきかわからないといったこともあるでしょう。

厚生労働省は、事業者(使用者)・労働者双方が利用できるメンタルヘルスケアのポータルサイト「こころの耳」を開設しています。こうした機関や発信される情報も利用しながら考えていくとよいでしょう。