データヘルス見本市2018 主催者セミナー:健康スコアリングの活用とコラボヘルス推進方法のすべて

データヘルス見本市2018 主催者セミナー:健康スコアリングの活用とコラボヘルス推進方法のすべて

2018年10月に大阪で開催された「データヘルス・予防サービス見本市2018」では、健康経営や健康スコアリング、特定保健指導などについてのセミナーが開催されました。健康スコアリングによる「見える化」についてのセミナーは、「健康寿命」という著書を20年前に出版したことで有名な東北大学大学院医学系研究科教授・辻一郎氏が登壇しました。いま非常に注目が集まっている健康スコアリングについての本格的なセミナーということで会場は熱気に包まれました。


1. 健康スコアリングレポートとは

健康スコアリングレポートは、各健保組合の加入者の健康状態や医療費、予防・健康づくりの取り組み状況などについて、全健保組合平均や業績平均と比較したデータを見える化したものです。

活用方法としては、経営者に対して保険者が自らのデータヘルス分析と併せてスコアリングレポートの説明を行い、従業員の健康状況について現状認識を持ってもらうことを想定しています。その上で、企業と保険者が問題意識を共有し、経営者のトップダウンによるコラボヘルスの活性化を図ることを目的としています。

一方、コラボヘルスとは、企業と保険者が連携し、一体となって予防・健康づくりに取り組むこととなっています。平成30年8月31日付で健康スコアリングレポートの活用推進に関する通達が、厚生労働大臣、経済産業大臣などの署名入りで、「経営者の皆様へ」と発せられました。

これは、健康スコアリングレポートの推進を行うには、企業トップの理解や協力が得られないと進めることができない、ということをあらわしています。この発令により、健康スコアリングレポートの活用について、さらなる注目が集まることが予想される、と辻氏は説明しました。

2. コラボヘルスの重要性

コラボヘルスは、先ほど少し説明したように健康保険組合などの保険者と企業(事業主)が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境のもと、加入者の予防・健康づくりを効果かつ効率的に実行することです。

コラボヘルスにより、保険者による「データヘルスの推進」と、事業主による「健康経営の推進」が同時に実現可能になる、と辻氏は話しました。

保健事業における保険者・事業主連携モデルとしては、保険者(健保組合)、事業主、外部専門業者が相互に連携して、加入者に対してアプローチすることが挙げられます。例えば、保険者の主な役割はPDCAサイクルによる事業の実施や財源や人材確保などがあり、事業者は健保組合との役割分担や連携方針の確率、さらに人材や財源の投入などがあります。

保険者と事業主は常に連携をとって、加入者の健康状態や保険事業に関する説明や報告を行う必要があります。一方、専門的な知識や技術が有効である場合、保険者は外部専門業者に業務を委託して加入者へのアプローチを直接的に行うケースもあります。

3. コラボヘルスの推進体制と例

コラボヘルスの推進体制の例は、厚生労働省がまとめている「コラボヘルスガイドライン」をもとに紹介されました。まず事業主が「健康経営」推進宣言などを行い、人事部や総務部、健康経営推進部署、産業保険スタッフ(産業医・保健師など)をとりまとめます。

これは、労働安全衛生法に基づき従業員の安全と健康を守るということに沿って進められます。健康経営推進会議を行う場合、健康保険組合や労働組合、さらに外部の専門業者を交えて行います。

例えば、喫煙対策事業においても事業主と健康保険組合の双方から取り組みます。健康保険組合は特定健診の結果から喫煙状況のデータを提供し、事業主と一緒に健康白書の作成を行います。

これは加入者の健康課題の周知と健康課題への対策の実施を含んでいます。その後、事業主と健康保険組合は役割分担を行います。事業主は職場内環境の整備(敷地内禁煙やポスターによる広報など)、健康保険組合の事業に参加するように人事部長名で全体に周知を行います。

一方、健康保険組合は禁煙サポート事業の実施を行い、事業の効果(喫煙状況の変化)を観察、さらに適宜事業主にフィードバックをします。もしくは、事業主と健康保険組合で情報を共有し、事業を実施するという方法もあります。

また、若年者(39歳以下)のメタボ予備軍への保険指導事業でも同様で、事業主は事業主健診結果(39歳以下)と人事データを提供、健康保険組合は特定健診結果(40歳以上)とレセプトデータを提供します。それらを基に健康白書を作成し、事業主は周知を徹底し、健康保険組合は特定保健指導(40歳以上)と保険指導(39歳以下)を行います。

なかには例外もあります。高血糖者に対する受診勧奨事業では、保有している血糖値データ(事業主は事業主検診結果・健康保険組合は特定健診結果)は同じものとなっています。そのため、事業主と健康保険組合がそれぞれに加入者へアプローチしてしまうと非効率で、差異がある情報によって加入者が混乱することが予想されます。

そこで、役割分担のもと事業を実施します。事業主は病院に行けるよう環境を整備、健康保険組合は受診勧奨や病院の受診状況(レセプト)を観察します。または、個人の同意を得たうえで、病院の未受診状況を事業主の医療専門職と健康保険組合で共有することも考えられます。

基本的に事業主と健康保険組合が保有するデータには違いがあります。事業主は健診のほか、病欠日数や残業時間、有休休暇取得率や勤怠状況のデータなどを把握しています。

一方、健保組合は特定健診結果や人間ドックやガン検診の結果などの健診(検診)データ、喫煙や飲酒状況などの問診データ、医療費や服薬状況などのレセプトデータなどを保有しています。コラボヘルスでは、それぞれの集計データを有効に活用することが重要です。

ただ、「個人情報」と「プライバシー情報」、その両方が関わる「プライバシーに係る個人情報」の問題がありますので、センシティブな情報は特段の必要がない限り取得しないように配慮することも大切である、と辻氏は説明しました。

コラボヘルスにおける事業所との健診結果情報等の共有や活用については、個人の健康・医療情報は要配慮個人情報であること、健康保険組合と企業(事業主)は別法人であり、個人データを相互に提供する場合には「第三者提供」にあたるため本人の同意が必要となります。

ただ、これには例外があり、共同利用や使用であれば健診データなどは共有可能ですが、病名などのレセプトデータは共同利用の「範囲外」であると考えなければなりません。

健康保険組合と企業(事業主)が健康・医療データを活用してコラボヘルスを実行するための環境整備についてまとめます。

①集計データに基づく健康白書の作成
②加入者の健康問題に対する周知理解
③集計データに基づき健康課題に応じた対策の検討(ポピュレーションアプローチ)
④個別データに基づく介入が必要な事業(重症化予防事業など)の検討

これら4つが基本となります。

個別データに基づいて、重症化予防事業を実施する場合、健康保険組合と企業(事業主)がうまく役割分担すれば、レセプトデータそのものを事業主に提供せずに実施することができます。

例えば、先に紹介したような健康保険組合は受診状況の確認や受診勧奨通知の送付を行い、企業(事業主)は該当者が受診しやすいよう、職場環境を整備することが挙げられる、と再度辻氏は強調し、解説しました。

4. 優良事例の具体例

具体的な例として、花王株式会社の健保組合が紹介されました。花王では、従業員の年齢構成の変化に伴い、生活習慣病など健康リスクの高まる年齢層の増加が問題になっています。

2014年末では、2008年と比較して男性従業員の平均年齢がプラス2.2歳の44.8歳、女性平均年齢は39歳ですがプラス4.7歳という急速な平均年齢上昇がみられます。解決策として、企業と健康保険組合が一体となった「コラボヘルス」により従業員の健康増進事業を実施、事業所ごとに健康づくり責任者、担当者、産業医、看護職のチームを作りました。

「花王グループ健康宣言」を企業トップが発信し、宣言実現に向けたPDCAサイクルを推進、企業、健保組合、産業医・保健師、協力事業者を巻き込んだ推進体制を構築、本社、工場、さらにリージョン(販売会社)単位で施策を実施しています。

この企業とコラボヘルスにより、生活習慣病健康受診率99.9%、特定保険指導実施率68.0%(健保組合平均は16.5%)などを実現しています。

推進体制として、会社と健保が連携し施策立案を行うコラボヘルスによる「健康経営」を実現しています。その後、健保・会社・労組が関わり施策決定が行われます。そして、現場主義に基づき事務職と産業医・看護職が推進し、事業主と健康保険組合は、協働してPDCAサイクルを推進しています。

花王では、健診を起点とした健康づくりサイクルを提唱しています。施策決定と実行後の評価は協働で行い、従業員の働きかけは事業主、健康増進活動は健保が支援するなどの方法で推進しています。このようなコラボヘルスが効果的に機能することで、結果に結びついていると言える、と辻氏は説明しました。

花王では定期健康診断受診率(生活習慣病健診・一般健診)99.8%となっていますが健保組合連合会の調査による平均は84.6%となっており、受診率はほぼ100%という良い結果がみられます。

二次検査受診率は88%、健診後面談実施率は78.6%、さらに、特定保険指導実施率は68%以上ですが、健保組合が発表している平均では16.5%となっており、平均と比較すると非常に高い実施率となっています。また、生活習慣病に関わる医療費は5年間で約14%減少という良い結果を生み出しています。

6. 健康スコアリングレポートの活用

健康スコアリングレポートは、各健保組合の加入者の健康状態や医療費、予防や健康づくりの取り組み状況などについて、全健保組合平均や業態平均と比較したデータを見える化したものです。

活用方法として、経営者に対して保険者が自らのデータについて現状認識を持ってもらうということを想定しています。さらに、企業と保険者が問題意識を共有し、経営者のトップダウンによるコラボヘルスの取り組みの活性化につながることを図ります。

レポートと合わせて、担当者向けに経営者への説明ポイント、レポートの見方や活用方法などを示した実践的な「活用ガイドライン」を送付するなど、何をすれば良いかを抽出する役割を果たしています。スコアリングレポートの指標は、特定健診・特定保健指導、健康状況、生活習慣、医療費などで構成されており、全国平均と比較して自分の所属する事業者のどこに問題があるかを把握、対策を考えやすくなるという利点があります。

また、職種や業種別で比較すると、スコアに偏りが見られることが分かっています。

全体的に言えることとして、定期健康診断、特定保険指導などの施策実施率が高いと従業員の健康状態が良好であることが多いということ、運動習慣がある人や飲酒の習慣が少なければ肥満リスクも低いということが挙げられます。また、健康経営優良法人のホワイト500に選ばれた企業は健康リスクが低いという統計も出ています。

ここで、健康スコアリングレポートの具体的な活用方法についてまとめます。
スコアリングレポートは、企業と健保組合の連携によるコラボヘルスを実現するためのコミュニケーションツールと言え、最も重要なことは、データ分析結果から具体的なアクションにつなげることです。

手順として、
まずは、レポートによる見える化から健康課題の共有を行います。

これには、全組合との比較、さらに健保組合や外部専門業社によるデータ分析を含む、データヘルスの活用を行います。

その後、コラボヘルスの推進に移ります。推進体制の構築には、企業、健保組合、産業保健スタッフの関係者による体制が必要不可欠です。

さらに、役割分担を行い、対策の実行では、企業や健保組合、さらに外部専門業社などのそれぞれが出来ることについての構築を行います。

最後に取り組みの評価や改善策についての考察を行います。効果検証に基づいて、取り組みを振り返り、見直しますが、PDCAサイクルによる好循環を活用するようにします。

これらのステップにより、予防・健康づくりの取り組みが活性化し、従業員の健康増進や生産性向上、医療費の適正化が期待できます。

予防・健康づくりの取り組みを効果的・効率的に実現するために、健康スコアリングレポートを活用することで、データ分析や保健事業の評価などに活用するなど、PDCAサイクルをうまく位置付けることにつながります。

そして、健康スコアリングレポートを活用したコラボヘルスの推進により、従業員が健康でいきいきと働ける会社や職場の実現へとつなげていくことが目標である、と辻氏。これらが、事業主・保険者の皆様へ期待することである、との言葉で健康スコアリングレポートの活用についてのセミナーは締めくくられました。

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