【ワダカルシウム製薬】フレイル予防のためのモノとコト。歩くと元気をささえる100年企業
歩くことは、生活習慣病や骨粗鬆症の予防、さらにストレス解消にも役立ち、心身の健康にとても良いことは周知の通りです。ワダカルシウム製薬は、健康を支える医薬品・健康食品を製造販売するとともに、『歩こう会』などのイベントも開催。自社の健康経営と、「人々の歩くと元気をささえます」という理念を実現するための事業を両輪で推進しています。(インタビュアー:健康経営の広場/IKIGAI WORKS代表 熊倉 利和)
目次
1. 働きかけをし、特定保健指導100%を実現
――御社は、健康増進のための医薬品・健康食品などを製造販売するだけでなく、自社でも健康経営を推進しています。ピップ株式会社をはじめとしたフジモトHDの中でも、先駆けて健康経営優良法人認定を取得していますね。最近、健康経営で取り組み始めたことがあれば教えてください。
安居さん:はい。今年(2021年)の8月からは野菜ジュースなどの健康サポート飲料の宅配をスタートさせ、従業員がいつでも購入できるようにしています。冷蔵庫をチェックした時に減っていると、「あ、飲んでくれているな」と嬉しくなりますね。バリエーションを豊富にして飽きられないような工夫もしています。
坂口さん:そうですね。本社では本人が70円支払い、会社が59円補助しています。ですから、半分以上は個人の負担になるので、最初は残ってしまうのではと心配していましたが、今は全部売れています。
――なるほど。その他、始めたことはありますか?
坂口さん:はい。本社(大阪)と工場(滋賀)は離れた場所にあるのでどうしてもコミュニケーションが不足しがち。そこでWebを使ったランチミーティングを開催しました。
寺尾さん:工場の食堂と本社の会議室にカメラを置いて繋げました。最初はみんながご飯を食べている姿が映っているだけだったんですが、「○○さん、ちょっと来て!」と声かけをしてカメラの前に来てもらったり、入れ替わり立ち替わりみんなでワイワイ楽しくおしゃべりができました。
坂口さん:本当にそうですね。「あの人、誰だっけ?」と名前と顔が一致しない人とも話ができましたし、意外な発見があって良かった。距離が縮まった気がします。
――それはいいですね。他社さんの参考にもなると思います。ところで健康診断を受け、特定保健指導の対象になる人は、一般的に2、3割程度いるかと思いますが、御社ではどうですか?
寺尾さん:当社でも15%くらいはいると思います。ですが、今回、対象になった人には全員、特定保健指導を受けてもらえることになりました。これは、坂口さんのお陰ですね。坂口さんから、「受けて」と頼まれたら誰も断れません(笑)。
坂口さん:そんなことはないですよ(笑)。ただ、去年までは健保組合からの通知が個人宅に届くだけでしたから、スルーされてしまい、誰も受けていなかったんです。それで今年は、「受けてくださいね」とこちらから働きかけるようにしました。それと、オンラインで指導を受けられるようになったことも大きいと思います。自宅で受けてもいいですし、会社で受けたいならパソコンも用意しますといったことを伝えていましたので、皆さん受けてくれることになったのだと思います。
中家良夫(IKIGAI WORKS株式会社 CHO):それは素晴らしいですね。私は10年間、健保組合で働いていましたが、今のお話は驚きです。というのも特定保健指導は、法律で義務化されたものではなく、あくまで任意。健保組合から案内を送っても、なかなか受けてくれないケースも多く、苦労しました。
それが、ワダカルシウム製薬さんの場合、誰が対象になっているのかを把握し、受けることを促し、実際に受けたかどうかまでをしっかりフォロー。その結果、100%を達成できたのはすごいことだと思います。健保組合の機関紙などでもぜひ紹介してほしい素晴らしい取り組みです!
2.先に進むために健康経営で一体感を生み出す
――今、健康経営に限らず、組織デザインなどをする上で何か課題はありますか?
寺尾さん:はい。当社の社員はみんな真面目です。仕事に真摯に取り組み、決してずるいことはしない人ばかり。それが良さでもありますが、さらに先に進むためには、もっと主体的に発信できる雰囲気にしていく必要があると思っています。
今も決して仲が悪いわけではないのですが、本社と滋賀工場、本社内でも部署間などにどこか薄い壁があり、全員が一体となって目標に向かっているという感じにはまだなれていないと思います。社内のコミュニケーションを活性化していくこともそうですし、いわゆる心理的安全性を高めるということも必要かもしれません。
ですから、健康経営を通じて社員同士の繋がりを深めたり、自由に自分の意見を言えたり、自分のやりたいことができる企業風土、企業文化を醸成していきたい。そのためには、そういった企業風土の醸成を進めていけたり、健康経営や組織デザインをビジネスに結びつけられる人材の育成も必要になってくると思います。
吉田さん:私も全く同じ考えです。最近、マーケティングの仕事に力を入れているのですが、新商品のアイデアやネーミング案を掲示板で募集したりしています。そのことで、「この商品はみんなでつくったんだ。がんばってみんなで売ろうじゃないか!」という気持ちになり、一体感が持てる施策はどんどんやった方がいいと考えています。部署間や滋賀工場と本社の間でもっと活発にコミュニケーションが取れれば、社員の意識も変わっていくと思います。
3.今、フレイル予防のためにすべきこと
――ワダカルシウム製薬さんは、医薬品や健康食品を製造販売する会社ですが、今後、特に力を入れていきたいことはありますか?
吉田さん:はい。やはりフレイル予防は大きなテーマです。当社の商品をご購入されるお客様は60代以上の方が多いですし、いつまでも自分の足でしっかり歩き、健康寿命を伸ばすことは国の政策とも合致しています。ですから、私たちがフレイル予防のための商品を提供していることをもっと多くの人たちに知ってもらいたいですし、発信していく必要があると思っています。
それと商品を提供するだけでいいのかということもあります。商品だけでなく、健康に関連した情報やサービスを提供するのもいい。当社のものでなくても、他社の良い商品やサービスも紹介し、もっとトータルにフレイル予防に関わり、高齢者の方々の健康に貢献できるようにしたいと考えています。
それと、日本ケンタッキー・フライド・チキンさんのマーケティング担当の方のお話を聞くと、「当社はチキンだけを売っている会社ではありません。家族団欒の時間や楽しさを提供する会社なんです」という意味のことをおっしゃっています。チキンだけを売っているのであれば、価格や味だけの勝負になってしまう。
私たちも商品だけでなく、心の部分も含めたものをお客様に提供できる会社になる必要があると考えています。会社への共感を持ってもらった上で、「この会社の商品じゃないとダメだ」というお客様を一人でも増やしていくべき。そのためには、商品以外での付加価値をつくる必要がありますし、会社への共感度を高めていくためにも、社会貢献活動を積極的に進めていくことも大切になるのではないでしょうか。
4.「歩く+α」で高齢者と現役世代を繋げる
――御社が2008年から開催している『歩こう会』も社会貢献になっているのではないでしょうか。毎回、大阪城公園や高尾山などを会員の方と楽しみながら一緒に歩き、骨密度測定、骨密度を維持するための食事や運動のポイントなどもお伝えしているとお聞きしました。特に高齢になって骨折すると大変なので、『歩こう会』は会員の方に喜んでいただけますね。
吉田さん:そうですね。コロナ禍の影響でこの2年開催できていなかったので、状況を見て久しぶりに再開したいと考えています。
――それはいいですね。ほかにも考えていることはありますか?
吉田さん:はい。Moff Band (モフバンド) を使ったサービス提供もぜひやってみたい。Moff Bandは、定量的評価(各種身体能力・認知能力など)ができるウェアラブル端末であり、運動メニューを組み立て、どれくらい運動したか計測できます。例えば、運動メニューが使い放題で年一回検査もできるといった特典やサービスを提供できると面白いですね。まずは、お客様に提供する前に社員でやってみて効果を確かめたい。フレイルということになると、栄養、運動、メンタルの3つが大切になります。メンタルの部分は難しいですが、栄養の面は当社の健康食品で提供できますし、運動面のサービスをさらに強化していきたい。
――それは素晴らしい。ぜひやりましょう!
吉田さん:ただ、ちょっと心配なのは、会員様の8、9割はスマホをお使いにならないご高齢の方なんです。Moff Bandもスマホと連携させるとなると使える人が限定されてしまう恐れがあります。
寺尾さん:逆にやってみることで、ご高齢の会員様も案外スマホをご利用になる方が多いことがわかるかもしれません。というのも、この間、予防接種を受けに病院に行った時、待合室に置いてある、フレイル、ロコモなどの情報が掲載されている高齢者向けの機関紙や冊子を手に取ると、QRコードの使い方の説明もしっかり載っていました。スマホを実際に使われている方はもちろん、これから使ってみたいと思っている方も少なくないのではないでしょうか。
今、お客様がどれくらい歩いたかを自己申告すると当社のポイントが貯まる制度がありますが、それもスマホを使ってやってもらった方が正確に行えます。また、スマホを通じてみんなと繋がるという心理的なコミュニティの場を高齢者の方々に提供できるようになりますし、それは社会貢献にもなるのではないかと思います。
――なるほど。まさしくそうですね。社会と繋がることは、高齢者にとってとても大事なこと。スマホが使えるかどうかがネックになるのなら、『歩こう会』などで皆さんに来ていただいた時にアプリをダウンロードして差し上げるのもいいかもしれません。
吉田さん:それはいいですね。次の『歩こう会』では、アプリのダウンロードをして差し上げて、30分後、1時間後、自分がどれくらい歩いたかをスマホで確認できるようになれば参加者の方々のモチベーションも高まるでしょう。
――仮にまた緊急事態宣言などが出て、実際に集まれなくなったとしても、寺尾さんが言うように、アプリ上のコミュニティで繋がることができます。私はさらに現役世代とシニア世代をマッチングさせたいと考えているんです。
吉田さん:なるほど。特にこのコロナ禍で高齢者が社会から分断されてしまうという事態が起きています。個人的なことで恐縮ですが、私の義母が私たちの家に1ヶ月ほど滞在してリフレッシュした後、地元に戻ったら、お年寄りの様子がおかしいと感じたと言うんです。みんな元気がなく、痴呆が進んでいる方もいた、と。義母は家族と過ごしたことでリフレッシュできたのに対し、地元のお年寄りは元気がなくなってしまっている。やはり人との繋がりを持つことはとても大切であり、アプリを通じてご高齢者の気持ちを少しでも和らげることができるかもしれません。
5. LifeWorkers’を導入し、健康経営の完成形を目指す
――御社自身の健康経営に話を戻しますが、これからどういう取り組みをされる予定ですか?
寺尾さん:そうですね。今、みんなで話し合っているところで色々なアイデアは出ていますが、やはりメンタルヘルスについてはさらに力を入れていきたいと考えています。今、セミナーを開催する予定ですが、それだけでは足りません。ストレスチェックの結果分析もあまりできていないので、そのへんも含め、取り組んでいきたい。LifeWorkers’(IKIGAI WORKSが提供するサブスク型会員制サービス)も活用させていただきたいですし、まずはマインドフルネスなどから始めたいと思っています。
――ありがとうございます。大阪で開くインターバル速歩(筋力・持久力を無理なく向上させ、骨密度の増加や生活習慣病リスクを改善させるトレーニング方法)の体験会への参加もご検討いただけているとのことですね。
寺尾さん:はい。本社は大阪にあるので問題ないのですが、滋賀工場で働いている人が大阪まで足を運ぶのは少し大変かもしれません。ただ、せっかくの機会ですのでみんなに声かけをしてみます。あっ、参加予定の三共精機さんは京都にあるのですね。私は京都に住んでいますので、個人的には京都でも開いていただき、鴨川沿いを皆さんで歩くのもいいですね。
――それは楽しそうですね。検討してみます。お忙しい中、本日はありがとうございました。御社の取り組もうとされていることは、まさにLifeWorkers’の『大人の体力測定』や『大人の食育』などとも重なってきます。会員様向けにオリジナルメニューを組むこともできますし、今後とも協力させてください。
〔LifeWorkers’のご案内〕
【取材後記】
「歩くと元気をささえる」という企業理念の元、医薬品・健康食品のみならず、『歩こう会』などの活動も積極的にされてきたワダカルシウム製薬さん。自社の健康経営を推進しながら、事業を通じてフレイル予防という大きな社会課題に取り組んでいます。ちょうどいいタイミングでLifeWorkers’のサービスも本格指導。このLifeWorkers’など外部のサービスも活用しながら、自社の従業員とお客様の両方を健康にする新たな取り組みに期待がかかります。
<企業データ>
会社名:ワダカルシウム製薬株式会社
事業内容:医薬品・健康食品を製造販売
所在地:大阪市都島区東野田町4丁目1-17
資本金:9,800万円(1998年2月1日増資)
社員数:56名