【イベントレポート】「ウェルビーイング×地域共創で生きがい・働きがいを創る」

2024年8月8日、関西大学梅田キャンパスで開かれた『Well -being共創サミット in大阪』。これまで以上にIKIGAI企業(※1)の皆さんと共に新しいものを創造していきたいという想いを込め、 “IKIGAIサミット”から“Well- being共創サミット”に名称も変更。その記念すべき1回目のテーマとなったのが『地域共創とウェルビーイング』です。

〔ゲスト:3名〕

平野治(NPO法人経営研究会 副理事)

安井元汰(株式会社PLOWNPOW 代表取締役)

横山恵子(関西大学 教授)

〔参加企業:ブライト500企業6社12名〕

内田秀俊(菊地光学精工株式会社 ブライト500 1回 総務部主幹)

伊東大介(三共精機株式会社 ブライト500 3回 代表取締役)

池ノ上理沙( 〃               営業企画部 主任)

吉田浩一(ワダカルシウム製薬株式会社 ブライト500 1回 代表取締役)

松本珠美( 〃                     管理部部長)

西岡徳行(株式会社ハンナ ブライト500 4回 取締役)

米澤友海( 〃               経営管理部)

山村健司(株式会社SANYO-CYP ブライト500 3回 代表取締役)

竹井信幸( 〃          経営管理室 アソシエイトマネージャー)

新谷幸一( 〃                  制作部 サブリーダー)

伊倉妙子( 〃          HRグループキャリアコンサルタント)

笠間力(株式会社カサマ ブライト500 3回 代表取締役)

〔主催企業〕

篠原英良(一般社団法人 社会的健康戦略研究所 事務局長)

塗野直透(一般社団法人 ETHICAL EXPO JAPAN  代表理事)

飯田貴将( 〃                  専務理事)

熊倉 利和(健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役)

須子 善彦(マイプロジェクト代表取締役/IKIGAI WORKS取締役)

1.新しい景色を見たい時、共創が必要となる

今回のサミット開催に当たり、まず関西大学商学部の横山恵子教授からスピーチをいただきました。横山先生は、大学で学生たちとアントレプレナーシップを推進。それとともに『そばくりラボ』(※2)や『かちぞうzemi』(※3)などを通じ、社会的価値創造をコラボレーションによって実現させる活動をなされています。

「私は昔から一人の人間ができることには限界があり、一人では見ることができない景色を見たい時、新しい世界を創造したい時は、誰かとコラボレーション、つまり共創するしかないと思っています。

改めて本日のテーマである地域共創ということを考えた時に、まず思い出すのは『早く行きたいなら一人で行きなさい。遠くに行きたいならみんなで行きなさい』というアフリカのことわざ。それとともにダーウィンの有名な言葉『最も強い者が生き残るのではなく、生き残る者は変化できる者である』も思い浮かびます。

変化が激しい時代に、今、私たちは課題だらけの地域にいます。そんな状況の中、私たちがよりよく生き残るためには変化し続ける必要があります。でも一人だけ、一社だけで変わるのには限界がある。他の人、他の企業と手を取り、化学反応を起こしながら変わっていくことがとても重要です。そんなことを考えながら、今日、何が起こるのか楽しみにしてここに来ました」

熊倉が続けます。

「まさに横山先生のおっしゃる通りで、特に今日お集まりいただいているブライト500に認定されるほどの企業になりますと、自社の健康やウェルビーイングの取り組みが、従業員の家族、取引先、地域へと自然に広がっていきます。地域共創と聞くと、何のことだろうと戸惑う方もいるかもしれません。でも、実は今、皆さんの取り組んでいることの延長線上にあるものです。

ウェルビーングを働く人の視点で捉えれば、働きがい、生きがいと言い換えることができるでしょう。実は、会社で地域貢献活動に力を入れていくと、地域のためになっている、多くの人に喜んでもらえているという実感をダイレクトに得られ、従業員の働きがい、生きがい、ウェルビーングも高まっていきます。

ですが、横山先生がおっしゃったように一社ではそれにも限界があります。地域への貢献と従業員のウェルビーング向上を掛け合わせながら、一緒に新しいものを作りあげていきませんかというのが今回のサミットの趣旨です」

2.各企業の地域貢献&ウェルビーングの取り組み

続いて熊倉から今回参加したIKIGAI企業の皆さんについての紹介がありました。

「伊東大介さん、池ノ上理沙さんの三共精機は、モデルフォレスト運動(森林保全活動)をはじめ、長年に渡って地域との共創活動をされています。吉田浩一さん、松本珠美さんのワダカルシウム製薬は、『人々の歩くと元気をささえます』をテーマに掲げ、健康寿命を延ばす取り組みをされている企業。菊地光学精工の内田秀俊さんは、残業ゼロに取り組み、横山先生の関大ソーシャル・アントレプレナーシップにも参加していただきました。

カサマの笠間力さんにも関大ソーシャル・アントレプレナーシップのプログラムにご協力いただきました。笠間さんは健康経営のコンサルタントとしても有名な方で最近は特にワークエンゲージメント向上に取り組まれています。西岡徳行さん、米澤友海さんのハンナは、トラックドライバーの仕事はかっこいいことを知ってもらい、若い世代のなりたい職業1位にしたいという熱い想いを持った熱血プロ集団です。

そして山村健司さん、竹井信幸さん、新谷幸一さん、伊倉妙子さんのSANYO-CYPは、苦難を乗り越え、“定年を迎える時、従業員にここで働いてきてよかったと思ってもらえる会社”づくりを実践されています。本日は山村社長にその経緯などをご講演でお話しいただきます。では、山村社長、よろしくお願いします」

山村社長はまず健康経営やパーパス経営に本格的に取り組むきっかけとなった職業性胆管がん問題(※4)について話します。この問題は大きな風評被害をもたらし、一時期は会社の存続も危ぶまれたと言います。

「こんな状況なら社員が会社を辞めてしまうのも仕方がない、止めることはできないと思っていましたが、8割の社員が何も言わずとも残ってくれました。私はそれが本当に嬉しく、勇気をもらいました。そして、社員一人ひとりと真摯に向き合い、対話を重ねながらパーパス(常に追い求める、永遠の目標)を設定。それが『定年退職時にこの会社で働いて良かった、自分の子供・孫もこの会社で働かせたいと思える会社にする』です」

その後、胆管がん問題解決に留まらず、健康経営や治療と仕事の両立支援を開始。健康診断受診、ストレスチェック、ワークライフバランスの推進はもちろん、管理職・従業員へのキャリアコンサルティング制度を導入。それらが功を奏して会社も見事に立ち直りを見せました。

山村社長は最後にこう言います。

「パーパス経営、ウェルビーング経営によって社員が安心して働ける職場を作ること。それが弊社で働き続けたい理由となり、病気やガンと共存できる環境や企業文化の形成につながります。特に健康経営は全ての土台となり、企業の持続可能な発展にとって不可欠です。今後も社員とその家族の健康を守り、社員が何事にもチャレンジできる組織づくりを目指していきます」

3.「IKIGAI企業はかっこいい」と認知される日

講演の後は、山村社長がホストとなり、「やりがい・働きがいを高めあう新しい組織の在り方」をテーマとした共創ダイアログなどを経て、『Well-Be-being共創サミット in大阪』は無事終了となりました。

熊倉は今回のサミットを総括するとともにビジョンを語ります。

「本日は期待以上の素晴らしいサミットを開くことができました。地域貢献もそうですし、働きがい、ウェルビーングということでも共創によってさらにパワーが生まれ、新しい可能性が広がっていくことを確信しました。

今日、皆さんにお集まりいただくことで産声を上げたこのコミュニティを起点に、1年後、3年後、5年後にこんなふうにしたいという夢を私は描いています。それは、皆さんのような仕事に働きがいを感じられ、人を幸せにするIKIGAI企業って最高にかっこいいんだ、と日本全体から認知されること。Z世代などの若い人たちからも「こんな会社で働きたい!」と熱望されること。

仕事はお金を稼ぐために我慢しながらするもの。企業は利益を上げるために存在している。そんな固定観念を打ち破り、働きがいを感じながら売り上げもしっかり伸ばせる会社があるんだ、ということを一人でも多くの人たちに知ってもらいたいですし、そういう価値観を皆さんと一緒に社会に広めていきたいと思っています」

【取材後記】

横山先生の「一人では見ることができない景色を見たい時、共創しかない」という言葉に始まり、熊倉の「地域貢献活動は従業員の働きがい、生きがいにつながり、ウェルビーングを高める」を経て、「定年退職時にこの会社で働いて良かった、自分の子供・孫もこの会社で働かせたいと思える会社にする」と語るSANYO-CYP山村社長。まさに地域共創とウェルビーングがぴたりと重なるサミットとなりました。地域貢献とウェルビーングを掛け合わせながら共創することで、どのように地域を活性化し、従業員の働きがい、生きがい、エンゲージメントを向上させていくのか。『Well-Be-being共創サミット』やIKIGAI企業のこれからの活動への期待が高まります。

(※1)IKIGAI企業とは、一人ひとりが働きがい、生きがいを探求、実践することで、働くことを通して社会とのつながりや幸せ(社会的健康)を感じ、身体的・心理的に健康で、結果的に生産性や創造性の高い働き方を実現している企業のこと。

(※2)関西大学の横山恵子教授が代表理事を務めるそばくりラボは、社会的価値創造にかかわる活動を応援し、また自らも実践していく研究所。社会的価値創造=Social Value Creationの頭文字から、そばくりラボと命名された。

(※3)産学連携かちぞうzemiは、一般社団法人そばくりラボ主催の「かちぞう企画」の一つで、産学連携で価値創造にチャレンジする実践的なPBL活動(PBL:Problem Based Learning)。より良い社会の構築を目指して価値創造するための実践的な調査研究活動に、学生がチーム単位で半年間かけて取り組む。

(※4)職業性胆管がん問題とは、2012年、塩素系有機洗浄剤を大量に使用してきた印刷工場の従業員に胆管がんが発症していることが報告された。印刷機のインクを拭き取るために使っていた洗浄剤に含まれる1,2-ジクロロプロパンという化学物質が要因として疑われたが、厚生労働省の研究班による調査結果によると、1,2-ジクロロプロパンでの毒性試験で発生頻度・発生数に有意な変化は認められなかった。

〈企業データ〉

会社名:菊地光学精工株式会社

事業内容:光学レンズ/プリズム/シリンドリカルレンズ/平面基板/レーザー基盤/光学ミラー/光学フィルターなどの精密研磨レーザー光学系/センサー系/医療・測定機光学系などの精密加工 等

所在地:〒599-8233 大阪府堺市中区大野芝町213-1

資本金:30,000,000 円

社員数:58 名

 

会社名:三共精機株式会社

事業内容:切削工具、測定工具・機器、環境関連商品、工作機械、設備・装置などの販売。ものづくりの課題解決業

本社所在地:〒601-8328 京都市南区吉祥院九条町49番地

資本金:1,000万円

従業員数:77名

 

会社名:ワダカルシウム製薬株式会社

事業内容:医薬品・健康食品を製造販売

所在地:〒534-0024 大阪市都島区東野田町4丁目1-17

資本金:9,800万円(1998年2月1日増資)

社員数:56名

 

会社名:株式会社ハンナ

事業内容:一般貨物自動車運送事業・貨物利用運送・通過型倉庫・車輌整備

所在地:〒630-8442 奈良県奈良市北永井町372番地

資本金:1,000万円

社員数:社員数 147名(2023年4月現在)

 

会社名:株式会社 SANYO-CYP

事業内容:印刷に関わる企画・デザイン・データ加工・試作・印刷・加工・サポート/WEB、VR/ARなどデジタルデータの企画・制作・販売/一般写真および商業写真・動画撮影

所在地:〒540-0014 大阪市中央区龍造寺町8番15号

資本金:5,000万円

社員数:108名

 

会社名:株式会社カサマ

事業内容:DM事業(販促サポート)/健康食品の通信販売/健康経営のコンサルティング

所在地:〒536-0008 大阪市城東区関目6丁目13-24 ヘッドビル3階

資本金:1,000万円

社員数:25名

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