【シリーズ:健康×マーケティング ピッチコンペティション2023】① 学生が「健康」と「ビジネス」の架け橋に!未来に新たな視点を築け
社会的健康戦略研究所の主催で行われた「健康×マーケティング ピッチコンペティション2023」。アフターコロナという新たなパラダイムのなか、就職を見据えた大学生や大学講師陣、そして企業が連携し、マーケティングの視点で健康経営という企業課題の解決策を幅広く模索していく産学連携のプロジェクトです。2020年から始まり、今回が4回目となるピッチコンペティションに、IKIGAI WORKSも初めて参加させていただきました。
〔参加団体〕
アクサ生命保険株式会社
株式会社富士通ゼネラル
社会的健康戦略研究所
IKIGAI WORKS 株式会社
〔参加チーム〕
7大学から15 チームが参加
専修大学 商学部 (大崎准教授)
和光大学 経済経営学部 (大野准教授)
神奈川大学 経営学部 (中見准教授)
大阪経済大学(江島教授)
名古屋学院大学 商学部 (濱教授)
西南学院大学 商学部 (三井准教授)
九州産業大学 商学部 (脇准教授)
目次
1.4つの団体がピッチコンペの課題を発表
2023年6月30日、「健康×マーケティング ピッチコンペティション2023」の第1回目がオンラインで開催されました。
会は、事務局の挨拶から始まりました。「GOOD HEALTH AND WELL-BEING(あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する)」という「SDGs目標3」が世界の潮流となるなか、日本では「人生100年時代」を迎えています。アフターコロナという新たなパラダイムにて、いかにして自己保健能力の高い人財へと学生を成長させるのか、そして健康経営をマーケティング視点でどのように考えていくのか。この解決策を学生によるピッチコンペにて、産学連携で模索していくことが、同プログラムの目的と語られました。
初回となる今回は、ピッチコンペ開催に向けてのキックオフオリエンテーション。アクサ生命保険、IKIGAI WORKS、富士通ゼネラル、社会的健康戦略研究所の順番で、4つの参加団体から課題が発表されました。
これに対して、参加大学は、専修大学、和光大学、神奈川大学、大阪経済大学、名古屋学院大学、西南学院大学、九州産業大学の7大学から15チーム。各チームは、それぞれの団体の課題を聞き、エントリー先を決定。その後、エントリーした先の団体とコミュニケーションを図りながら、9月8日の本番を迎えます。100点満点(課題企業の評価75点、経営学視点からの評価25点)で、ピッチコンペを競い合うことになります。
2.学生と企業が共創する新たな就活のカタチ
「みなさーん! こんにちは!」と活気あふれる挨拶から始まった、IKIGAI WORKSの課題発表。代表取締役の熊倉利和から当社の課題が伝えられました。その課題とは、
「学生とIKIGAI企業で創る 新しい就活のカタチ IKIGAI企業の採用ブランディング戦略」
「IKIGAI企業」とは熊倉の造語。その定義は「働きやすさと働きがいを大切にし、地域や社会と深いつながりを持っているホワイト企業」です。現在は、仕事を通じてウエルビーイング(Well‐being)を実現していく働き方が注目されています。健康経営の延長線上に働きやすさ、そして働きがいと幸せがある。そんな働き方のできる全国のIKIGAI企業に学生のみなさんがインタビューを行い、企業の思いを就職活動中の人たちに伝えていく。そんな採用マーケティングを学生さんたちとやっていきたいと、熊倉は語りました。
現在、就活における学生の意識は、多くが「就職するなら、やっぱり大手有名企業」「中小企業はブラックそう」「やりがいのある仕事がなさそう」というところにあります。しかし、日本には、社員の働きがいや幸せを第一に考える中小企業は多く、そうしたIKIGAI企業と交流していくことで、学生のみなさんに働き方に対する新たな視点を持ってほしい。そして、ピッチコンペやIKIGAI WORKS主催のイベントへの参加をきっかけに、学生と経営者の間で信頼関係が育まれ、そこから内定が決まっていく。そんな就活のあり方があっていいのではないか、と熊倉は考えています。
この大切なファーストステップとして、今回のピッチコンペでは、学生さんにIKIGAI企業による採用ブランディング戦略を考えてほしいと伝えました。
最後に熊倉は、ピッチコンペの目的は、「IKIGAI企業や各チームの発表に点数をつけることではない」と改めて強調。
「大企業の他にも素敵な会社は日本全国にあります。ピッチコンペではそのことに興味を持ってもらい、学生さんが就活に望む際のモノサシを自分自身の中に築いてほしい。また、IKIGAI WORKSでは、12月のイベント『働き方生き方フェス』を一緒に盛り上げてくれる仲間を見つけたい。ぜひ、楽しむ気持ちを持って、ピッチコンペに参加してほしい」と伝えました。
3.健康とウエルビーイングを核に、新たな社会を築く
キックオフオリエンテーションは、社会的健康戦略研究所の代表理事である浅野健一郎氏の講演で締めくくられました。テーマは「参加学生へのメッセージ これから始まる新しい社会に必要な視点」です。
日本は、「最低限健康で文化的な生活」を日本国憲法にて国民に保障しています。事実、私たちは衛生的な生活環境で暮らし、国民皆保険によって高度な医療を受けることができます。先進国でもここまで整っている国は、ほとんどありません。しかも、国民は自ら健康増進に努めていかなければいけないと自己保健義務までが法律によって課せられています。なぜ、これほど恵まれた国でありながら、健康経営を行う企業が増えているのでしょうか。
右肩上がりで増加する医療費や社会保障の問題、生産年齢人口と総人口の減少、超高齢化、さらに気象災害、大地震の発生など、日本には社会課題が山積しています。そのなかで、世界と比較し、日本企業の競争力が下がってきています。理由の1つは、熱意を持って働く社員が減っていること。では、どのように社員に熱意を持ってもらうのか。この対策が日本の企業の喫緊の課題になっています。
一方、世界的に見れば、SDGsという人類が現状を打破しなければならない社会問題があります。
こうした世界と日本の課題を一言でまとめれば、「持続可能性の危機」への対応にあります。その課題解決の目的は、「よりよい社会を築いていくため」である反面、このまま進むと、悲惨な未来が到来する可能性も高い。地球環境、人類の生存、国、社会・企業を破綻させず、存続させていくためには、どうしたらよいのか。「今こそ、社会を変えていかなければいけない」という動きが高まっているのです。
それが「Society 5.0」という動きです。人類は長い歴史の中で、「Society1.0 狩猟社会」「Society2.0 農耕社会」「Society3.0 工業社会」「Society4.0 情報社会」と進み、今、人類が迎えている5番目の新しい社会がSociety5.0となる「人間中心社会」です。もう一度、人間を中心にすえた社会をつくっていこうとする取り組みです。
多くのテクノロジーを活用しながら、人が快適で活力に満ちた生活を送ることができる社会をいかに築くのか。この視点を持ち、自分たちの視点も大切にしながら、ピッチコンペに望んでほしいと、浅野代表理事は学生に語りかけました。
そして、ピッチコンペに際して、「健康とは何か」ということを共通認識にしておきましょうとも伝えられました。
一般的に、健康とは「病気ではない状態」と語られます。しかし、そもそもWHO憲章では「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」を「健康」と定義しています。つまり、健康とは病気の対義語ではない。「身体」「精神」「社会」の3つが満たされることが「健康」なのです。とくに現在は、社会的なウエルビーイングを高めていくことが求められています。
ここを共通認識として、ピッチコンペに取り組んでほしい。学生・大学・企業が一体になって健康をテーマとする社会課題の解決に取り組んでいくことが、社会全体の経済発展につながり、持続可能な社会の実現に結びついていく。そういう思いを持って、学生のみなさん、がんばってください、と浅野代表はエールを送り、キックオフオリエンテーションは締めくくられました。
【取材後記】
今回のキックオフオリエンテーションでは、4つの団体からの課題発表と、社会的健康戦略研究所の浅野代表理事の講演が行われました。各団体とも力の入った課題を発表し、健康経営とマーケティングに対する新たな視点を得ることができました。IKIGAI WORKSは、学生と企業が協力して新しい就活のカタチを築くという課題を提案。IKIGAI企業の概念を明確に伝えることで、学生のみなさんに就活における重要な視点を一つ提示できたと考えています。さあ、学生さんたちは、このピッチコンペを通じて、どのようなアイデアを生み出してくれるのか。楽しみです。