【シリーズ:健康×マーケティング ピッチコンペティション2023】③ IKIGAI企業の新時代を開く切り札に!学生たちのピッチコンペ最終報告会

IKIGAI WORKS初参加の「健康×マーケティング ピッチコンペティション2023」(社会的健康戦略研究所主催)。準備期間の短い中、「このチームはコンペまでたどりつけるのか」とヒヤヒヤする場面も何度かありました。しかし、各チームとも試行錯誤しながらも走り抜き、コンペでは予想をはるかに超える結果を出してくれました。大学生たちはこんなにも能力が高く、豊かな発想力を持っているのかと感動したピッチコンペ。参加大学である専修大学、神奈川大学、九州産業大学、西南学院大学、大阪経済大学のうち、今回は受賞した3チームのプレゼンテーションを紹介します。

〔西南学院大学 三井ゼミ〕

守住唯 師玉夏歩 宮川優帆 竹中美桜 前田美波

〔専修大学 大崎ゼミ〕

新井優有 大田真央 小坂田真衣 芝田実優

〔大阪経済大学 ゼミ〕

大林由依 俵美愛 野村果音 水元紗理 吉岡尚哉

〔神奈川大学 中見ゼミ〕

〔九州産業大学 脇ゼミ〕

〔IKIGAI WORKS〕

熊倉 利和(健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役)

須子 善彦(マイプロジェクト代表取締役/IKIGAI WORKS取締役)

1.「新マイプロシートでカチガッチ~先天的/後天的な自分から見つけたIKIGAI」(西南学院大学)

「健康×マーケティング ピッチコンペティション2023」、IKIGAI WORKS部門の第1位を受賞したのは、西南学院大学の三井ゼミのチーム。その発表は、予想をはるかに超える内容でした。

プレゼンは、「人との対話から、大きな気づきを得た」というところからスタート。同チームの5人は、中間コミュニケーションでマイプロジェクトを発表した際、仲間やIKIGAI WORKSの須子の感想を聞いたことで「自分の新たな長所を発見できた」「自分の価値観がよりクリアになった」と実感したといいます。自分の中になんとなくある主観は、他者の意見を入れることでより明確化でき、マイモノサシの発見につながったと言及。そのマイモノサシを使って、インタビューの質問事項を考えました。

彼女たちがインタビュー先に選んだのは、博多にあるシティホテルの都ホテルさん(人事部・セールマーケティング部の社員さん1名ずつ)と、大手食品メーカーA社さん(先方の希望によりA社とする。営業部の社員さん2名)。IKIGAI WORKSが提示したインタビュー先のリストからではなく、「自分たちが話を聞きたい!」と考えた2社に自らアポを取るほどの積極性を見せてくれました。

そして、インタビュー後、各社1人の社員さんのマイプロシートを作成。その際、インタビュー内容を深く検証し、「仕事の先輩」である社員さんがどのような考えで就職先を探し、どんなことに仕事のやりがいを発見しているのかを分析。一目瞭然で「仕事ヒストリー」がわかる見事なマイプロシートを仕上げました。

さらに、企業インタビューによって、それぞれのマイモノサシが変化したことを発表。当初は「自分のやりがい」を重視してつくられていたマイモノサシが、「自分の仕事が、いかに人を幸せに、社会を豊かにしていけるのか」とバージョンアップしたことを発表しました。

この新たに手にしたマイモノサシを使って、2社を実際に評価。ところが、新マイモノサシで2社を測ると、いくつかの項目において、必ずしも高得点にならない、という重大な事実に気づいたのです。新マイモノサシは、インタビューを通じて完成したものであり、2社は5人が「この会社にインタビューしたい」と感じたほど魅力的なIKIGAI企業であるのに、なぜ、こんな矛盾が起こったのか検証しました。

彼女たちが考えたのは、マイモノサシを作成する際に活用したマイプロシートに問題があるのではないか、ということ。従来のマイプロシートは、過去の経験を重視するあまり、本来の自分が持つ重要な価値観を見つけ出せないのではないか? と仮定したのです。そこで、従来のマイプロシートでは拾い上げられない価値観を「先天的なMe(譲れないもの)」と定義しました。

そして、「先天的なMe(譲れないもの)」を重視した新マイプロシートを作成。この新マイプロシートを使ってIKIGAI企業のPR方法を考案しました。

「一般的な就活サイトでは、福利厚生や制度などの条件から企業を検索できても、自分が大切にする価値観からは企業を検索しにくい」という就活の課題を指摘。そこで、「就活生が持つ価値観」と「企業が大切にする価値観」という二者の価値観が合致する部分を検索できるサイト「カチガッチ」を構築してはどうか、と提案したのです。このサイトでは、学生がサイト上の新マイプロシートに記入をすると、自分と価値観が合致するIKIGAI企業をAIが探してくれる仕組みです。

西南学院大学の発表に、熊倉は「この短期間で、よくここまでやってくれた。本当にうれしい。IKIGAI企業のPR方法もおもしろく、素晴らしいイデア。実用化に向けて、ぜひ進めていきたいと前向きな気持ちにさせられた。こうした提案は、就活を体験している学生からでなければ出てこない、すごいアイデアだ」と絶賛。須子は「IKIGAI WORKSが出した課題に一歩引いた視点を持ちながらも、自分たちが実際に感じた心の動きまでが詳細に述べられている。守備範囲が広く、びっくりさせられるプレゼンだった。『新マイプロシート」の提案も、哲学的、心理学的な視点が入り、非常におもしろく、参考になった」と高く評価をしました。

2.「みんなに届けたい! IKIGAI企業の認知度UP大作戦」(専修大学)

第2位は、専修大学の大崎ゼミのチーム。同チームは、マイプロジェクトから導き出した各自のマイモノサシから発表を始めました。学生たちは仕事に対し、いかに「自己成長」と「プライベートの確保」を重視しているかが表れているマイモノサシでした。

次に、株式会社オカモトヤさんへのインタビュー内容を発表。同チームも、自分たちでインタビューしたい会社を探し、「ぜひ、オカモトヤさんに!」とアポを取るほどの積極性を見せてくれました。

ワークプレイス事業、オフィスサプライ事業、老舗文房具店を主な事業内容とするオカモトヤさん。緑が多く、リラックスできる職場の空間、タバコの煙を吸収する装置のあるガラス張りの喫煙所など、社員の心身の健康に配慮したオフィスが印象的。また、フリーアドレス制、テレワーク、時差出勤の導入など、社員の働きやすさを第一に健康経営が行われているとの話を聞き、「オカモトヤさんは、人を幸せにするウエルビーイングな経営を行っているIKIGAI企業」と感想をまとめました。

もう一つの課題である、IKIGAI企業のPR方法については、「採用ブランディング戦略の入口」を提案。現在、大学生の約7割がアプリを使って就活情報を収集しているとのデータから、アプリを活用したPR方法が詳細に解説されました。そのアプリにはバーチャルオフィスを組み込むことを提案。オカモトヤさんのように、素敵なオフィスで働きたい人は多く、就活生へのよいPRになると考えました。

発表後、IKIGAI WORKSの須子から講評がありました。全体的に、非常によくまとまっていること、マーケティング手法をしっかり学んでいることを高く評価。一方で、中間コミュニケーションでは相当につくり込まれていたマイプロジェクトとマイモノサシが、コンペではさらっと流されてしまったことが残念。PR戦略については、バーチャルオフィスの提案は実感がこもっていて非常によかった反面、アプリを導入するPR戦略そのものは「学び」の域を超えていないことがもったいなかったと、改良点を伝えました。とはいえ、準備をしっかり行って望んだことがわかる、素晴らしいプレゼンでした。

3.「インタビューで得た気づき」(大阪経済大学)

コンペの第3位は、大阪経済大学の江島ゼミのチーム。このチームは8月28日に名古屋で開催されたIKIGAI WORKS主催のイベントに参加。IKIGAI企業5社が集うこのイベントで、1人1社ずつ社長さんにインタビューを行いました。今回のプレゼンは、運送会社の大橋運輸さんと保険会社のTISさんのインタビューをもとに実施。インタビューを通してマイモノサシがどう変化したのか、発表されました。

まず、インタビュー前は、音楽が大好きなことから音楽業界に就職したいと考えていたという男子学生。「自分の軸や好きなこと」をマイモノサシに大橋運輸の鍋嶋洋行社長インタビューをしたところ、「自分の軸や好きなことは年月とともに変化していく。しかし、信頼関係は変化しない。信頼関係があってこそ人はついてきてくれる」と予想もしなかった返答。この話に感銘を受け、「今後の人生は信頼関係の構築に重きを置いていこう」と決意したと熱く語りました。

次に、自身の考えがマイノリティになりがちで、生きにくさを感じることが多いという女子学生。「少数派の意見が尊重され、少数派が働きやすい制度があること」をマイモノサシに、TISの岩井健治社長にインタビューしました。すると、岩井社長は自身の経験を踏まえて「人を差別せず、すべての人を『1人の人間』と大切する環境づくりが、社会においても、企業においても重要」と返答。学生たちは「マイノリティが働きやすい環境とは、制度ではなく、多様性を認める姿勢がトップにあるか否かで決まる」と気づかされました。岩井社長の優しさに触れ、「すべての社員が尊重される社風は、トップの資質しだい」と、就活に向けて新たなマイモノサシを築くことができました。

次に、IKIGAI企業のPR方法を発表。IKIGAI企業は、社員思いで、労働環境の素晴らしい会社が多いのに対し、そのほとんどが学生に知られていない。また、学生自身も、インターンに行っても、その経験を友人と共有しないという実態もある。これによって、「よい企業」「よくない企業」が不明確なまま、就活が進んでいってしまう。そこで、IKIGAI企業のみを誘致し、1~2年生を対象に大学で就職説明会を行うことを提案しました。その際、学生はマイプロシートを作成し、マイモノサシから会社さんに質問できるようにすれば、堅苦しい就活から、気軽で楽しい就活へと転換できるうえ、3年生でのインターン探しもスムーズになると、IKIGAI企業と学生のメリットを見事に合致させてみせました。

発表を終え、まず須子が「我々が当初提示したプレゼンの流れを、いい意味でひっくり返したことで、よりわかりやすくまとまっていた。これも大きな発明。非常にわかりやすいプレゼンだった」と高く評価。また、「『友人には就活の情報を共有しにくい』とは、重大な問題発見。ビジネスにおいてもっとも重要なのは、問題発見。問題発見さえできれば、解決策はいくらでも導き出せる。学生のリアルな声を共有してくれたことは、我々にとって非常に大きな気づきとなった」と感謝の言葉を述べました。

熊倉は、IKIGAI企業を大学に呼んで就職説明会を行うことは、実現可能かと学生に質問。「就職課に直談判したところ、教授を通してもらいたいとの返事だった。私たちが『ぜひやりたい』とお願いすれば、ゼミ担当の教授がきっと動いてくれるはず」と頼もしい答えが返ってきました。

4.学生の成長と提案に感謝! 結果発表

IKIGAI WORKSと主催者である社会的健康戦略研究所の採点を集計し、事務局から結果が発表されました。その結果は前述のとおり、「1位 西南学院大学」「2位 専修大学」「3位 大阪経済大学」となりました。

この結果を受け、熊倉と須子は感想を一言ずつ述べました。

熊倉 「参加してくれた5大学のチームの学生さんは、それぞれが生きがいや働きがいなど、自身の価値観と真摯に向きあい、大きな学びを得てくれた。このことに最大限の感謝を伝えたい。IKIGAI WORKSとしてもたくさんの提案を頂戴できたコンペだった」

須子 「5大学とも、この短期間でよくぞこれほどの課題をこなし、最後まで走り抜けてくれた。この素晴らしさにまずは感謝したい。そのうえで、1位をとった西南学院大学のプレゼンは、我々がびっくりするほどの驚きがあった。また、自分たちでインタビュー先を探してくるチャレンジ精神にあふれたチームもあった。今日は、順位がついたけれども、みんながそれぞれに成長したコンペとなった。ぜひ、『自分がいちばんチャレンジし、成長した』と自分を褒めてあげてほしい。その高い意識とポテンシャルで新しい社会を切り開き、今後はぜひぼくたちのよきパートナーになってほしい」

【取材後記】

IKIGAI WORKSにとって初参加となるピッチコンペ。マイプロジェクトやマイモノサシの作成やIKIGAI企業へのインタビューを通じ、どんどん成長していく学生さんの姿には感動の連続でした。また、それぞれのチームがIKIGAI企業のPR方法を提案。そのアイデアの優れた部分を組み合わせていくことで、IKIGAI企業をPRする「新たな就活のカタチ」の完成を実現できると、確かな手ごたえを得ました。参加してくれた学生のみなさん、ゼミの教授、そして主催者である社会的健康戦略研究所のみなさん、心からお礼を伝えます。ありがとうございました!

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