シリーズ『広報担当に聞く』 社内と地域とのコミュニケーションを活性化させ、企業価値を高める(大橋運輸)

健康経営を成功させるためには社内外とのコミュニケーションや広報活動がとても大事になりますが、ユーモア担当がいるなど大変ユニークな手法で効果を上げているのが大橋運輸さん。今回は鍋嶋社長と管理栄養士の太(たい)さんに社内広報と地域貢献活動についてお話を伺いました。(インタビュアー:健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役  熊倉 利和) 

〔大橋運輸株式会社〕

鍋嶋洋行さん(代表取締役社長)

太 美善さん(管理栄養士)

1. LINEと広報誌を活用したコミュニケーション

――太(たい)さんは管理栄養士として2020年に大橋運輸さんに入社されたとのこと。現在どのようなお仕事をされていますか?

鍋嶋社長:食育や健康指導のほかにも、健康イベントの企画・運営など幅広く担当してもらっています。

太さん:例えば、5月はゴールデンウィークもありましたから、『心のリフレッシュ』をテーマにして自然風景を撮影する写真コンテストを開催。応募作品を社内に掲示し、みんなに投票してもらい優秀賞を決めました。6月は従業員の奥さんにもご協力いただきながら『夏バテ防止』、7月は縄跳びイベントを開いています。

鍋嶋社長:賞品もなかなか豪華でしたので参加率は高かったですね。

――健康経営をする上で従業員を巻き込むことがとても重要ですが、御社はそれがとてもお上手ですね。従業員とのコミュニケーションでは何かツールを使っているのですか? 

太さん:はい。1年半前からはLINEを活用しています。健康関連の記事や動画を紹介するだけでなく、アンケートもLINE上でとっており、答えてくれた人には抽選で賞品が当たるようにしました。賞品がもらえるとなると、普段、LINEに参加しなかった人も見るきっかけになりますし、習慣づけにもなります。お陰様で健康施策に関する意見や要望などもたくさん寄せられています。

――単に健康情報を載せるだけではなく、多くの人に見てもらえるようにする工夫をされているのですね。その社内LINEの登録率はどれくらいですか?

太さん:今では96%になりました。当社のドライバーは40代、50代が中心。最初の頃は、スマホの使い方に慣れていない人も多かったので、仕事から帰ってきたドライバーを一人一人捕まえてはスマホを借り、私がLINEに登録して使える状態にしてから返したりもしていました。

――大橋運輸さんは月刊で出されている社内報もとても充実されていますね。何年前から始められたのですか?

鍋嶋社長:もう20年近く経ちました。広報誌には、健康や安全運転に関する情報のほか、新入社員や誕生日を迎えた社員の紹介、ダイバーシティ、LGBTなど幅広い記事を掲載しています。

――広報誌づくりはどなたが担当しているのですか? 

太さん:私を含め、4人で制作しており、それぞれが自分の担当するコーナーを持っています。

鍋嶋社長:広報誌は月に一回発行し、LINEは週一回、月曜日の夕方に配信しているのですが、紙媒体、ネットそれぞれの良さがありますので一つに集約するということはしません。従業員の奥さんなどにも見てもらっていますし、読む人は増えていますね。

太さん:そうですね。従業員の奥さんにもLINEに登録いただき、様々なイベントにも参加してもらっています。むしろ従業員よりも奥さんのほうが積極的だったりもしますね(笑)。

2.良い職場にはユーモアが欠かせない

――情報を社内に発信する際、工夫していることはありますか?

鍋嶋社長:はい。一つはユーモア。良い職場づくりにユーモアは欠かせません。そのため、社内にユーモア担当がおり、健康経営でも太とコラボレーションしながら、従業員に興味深く取り組んでもらえるように工夫してくれています。

――えっ、ユーモア担当がいるのですか! 具体的にはどのように太さんとコラボレーションするのですか? 

太さん:例えば食材についても以前でしたら「バナナを食べるとこんな効能があります」と文章とせいぜいイラストを使って伝えていました。それがユーモア担当の人から「演出を加え、太さんがバナナをみんなにオススメしている写真を使いましょう」などアイデアを出してくれ、楽しい雰囲気の写真をアイキャッチにしました。すると「あっ、太さんだ!」と言って従業員も興味を持ってくれ、食べてくれる人も増えました。

鍋嶋社長:立体的なバナナも紙粘土で作りましたね。社内コミュニケーションはとても大事。そのため、ユーモア担当だけでなく、スマイルマイスターやファシリテーター、モチベーションスタッフもいます。例えば、最近ちょっとあの部署の人間関係がギクシャクしているなと感じたら、モチベーションスタッフが行って雰囲気を変えてもらうなどの活動をしてもらっています。また、2月5日の「笑顔の日」に当社は地域で毎年イベントを行っていますが、スマイルマイスターが関わり、より充実した内容にしたいと思っています。

――組織をより機能的にするための素晴らしい取り組みですね。ユーモア担当やスマイルマイスター、モチベーションスタッフなどは、それぞれご自身の業務を持ちながらそれらの活動をしているのですか?

鍋嶋社長:はい。中小企業ですからマルチタスクになります。自分の業務のほかにも何か一つ専門性を磨くことで、その人にとっても違う可能性が開けていきます。これから新しい人がたくさん入社してくれますし、さらにコミュニケーションを活性化する新しいポジションを増やしていきたいと考えています。

3.官民連携で地域貢献活動に力を入れる

――大橋運輸さんは地域貢献活動にも大変力を入れ、健康教室などを開かれていますね。

太さん:はい。ヨガ、太極拳、バランスボールなど市民の方にご参加いただく教室を開いています。

――健康教室は会社で開いているのですか?

太さん:以前はそうだったのですが、会社ですとスペース的にどうしてもご参加いただける人数に限りが出てしまい、すぐに予約で一杯になってしまう状態でした。ちょうど官民連携をさらに強化したいと考えていましたので、瀬戸市が所有する、やすらぎ会館で健康教室を開けないかと相談したところ、快く受け入れてくれました。

――やすらぎ会館はどこにあるのですか?

鍋嶋社長:会社の近くにあり、社会福祉協議会さんが管理している会館です。この社会福祉協議会さんと連携できるようになったことも、地域貢献活動にさらに力を入れる上でとても大きいですね。

――ヨガやバランスボールの教室はこれまで従業員に対して行ってきた健康増進を地域の方にも広げる形になっていますね。

太さん:そうですね。ただ、最初の頃は企業が主催している健康教室なのに無料なのはおかしい。何か買わされるのではないかと不安に思う方もいらしたようです(笑)。今は、市民なら誰でも知っているやすらぎ会館という公共施設で行うことでさらに安心いただけますし、より大勢の方の健康づくりのサポートをさせていただけるようになっています。

鍋嶋社長:市民の皆さんのコミュニティづくりにもなりますし、瀬戸市や社会福祉協議会さんにも喜んでもらえ、想像していた以上の相乗効果を生み出しています。健康教室には警察の生活安全課の人も参加してくれています。

――それはいいですね。警察が地域に根ざしているかどうかでその地域の犯罪率が大きく変わるという話を聞いたことがあります。警察としても、地域住民の皆さんの中に溶け込みたいと思ったとしても、その方法がなかなか見つからないというのが現状ではないでしょうか。それが一緒にヨガなどをすることで自然と地域の方と警察の人が仲良くなれますね。

鍋嶋社長:その通りです。健康教室の中で、高齢者の方に対して特殊詐欺などについての話もできますから、犯罪被害を事前に防ぐことにも繋がります。栄養の日(8月4日)や敬老の日のイベント・セミナーでも、警察の交通課や生活安全課の方にご協力いただき、官民連携によって今まででは考えられないような地域活動がどんどん広がっています。

4.地域貢献は会社のブランディングに繋がる

――地域貢献活動に力を入れることで自社にとってのメリットもありますか?

鍋嶋社長:はい。小学1、2年生を対象にした交通安全教室を開いた際、大橋運輸の企業ロゴ(キャラロゴ)を知っているかどうか尋ねたことがあります。1割程度の子供たちが知ってくれていたらいいなと思っていたところ、9割の子供たちが知っていてくれて大変驚きました。地域活動をしているうちに、少しずつ当社の認知度も高まっていると思います。

――小学生に対する交通安全教室はいつから行っているのですか?

鍋嶋社長:今年で6年目です。橋渡しのイベントに関しては、11年前から始めています。これは、8月4日(橋の日)に橋の前でお箸を渡しながら交通安全を呼びかけるもので、警察、ボランティア団体、当社で行っています。川の清掃活動も10年目になります。様々なイベントに参加していますが、8月4日は栄養の日と橋の日が重なりますので特に忙しいですね(笑)。

これらのイベントでは、毎回メディアの取材を受けますし、新聞やタウン誌などでも当社の取り組みを紹介してくれていますので、社外へのPRにも役立ちます。有難いことに当社の活動に共感し、応援してくれる人が年々増えています。

――採用面でのメリットはどうですか?

鍋嶋社長:それは明らかにありますね。ちょうど明日、福井県から高校生が親御さんと一緒に就職のための会社見学に来る予定になっています。昔でしたら、高校生が県外から会社見学に来るなど考えられませんでしたが、今では秋田や群馬など県外からの応募が増えており、手応えを感じています。

当社は何か製品をつくっているわけではなく、サービスという形のないものを提供している会社です。地域貢献活動によって当社の行っていること、考えていることを知ってもらうことで認知度や信頼度が高まりますし、それが採用や事業にも繋がっていきます。さらに地域貢献活動は、社員の育成の場、成長の場にもなります。地域貢献活動は当社にとって様々な面でメリットを生み出すものです。

――とは言っても、どの会社でも御社のように地域貢献活動に力を入れるというのは簡単にできることではありませんね。

鍋嶋社長:いえ、当社の場合、たまたま交通安全や健康などをテーマに地域貢献活動をさせていただいていますが、その地域の課題は地域ごとに違っています。ですから、どんなに小さいことでも、気づいたことから始めればいいのではないでしょうか。

5.社会の課題を解決することで価値が生まれる

――今となっては御社の健康経営と地域貢献活動がすっかり定着していますね。

鍋嶋社長:そうですね。特に太が来てから健康施策がとても充実。LINEなどのITツールもうまく活用しながら、社内コミュニケーションを活性化してくれています。コロナ禍で対面が制限される中、本当によくやってくれました。また、市民との交流、地域貢献活動でも大いに活躍し、セミナーなどでも講師を務めています。そのため、市民の方からも太の認知度や人気は非常に高くなっています。

――それは素晴らしい。約10年前から始めた地域貢献活動。自社だけでなく、地域全体の未来を考えていることは本当にすごい。同じ経営者として頭が下がります。

鍋嶋社長:これからは自社の利益を追求するだけの経営ではつまらないのではないでしょうか。社会課題に対して自社で何ができるのか、地域に対してどうやって貢献していくのかが大事。企業ですから売上、利益は確保しなければいけませんが、どの会社でもできることで勝負していこうとすると、価格勝負になってしまいます。

そうなるとどうしても働いている人たちへの給与などにも影響が出てしまいます。地域の課題に対しての解決策を提供することで価値が生まれ、それが会社の強みとなり、価格勝負にもなりません。そして、他社がやらないことに挑戦するほうがやりがいを感じるのではないでしょうか。

【取材後記】

今回は、社内コミュニケーションと地域貢献活動をテーマにお話を伺いましたが、大橋運輸さんではその両方において健康経営が核になっているように感じられました。社内コミュニケーションでは、管理栄養士の太さんが中心となり、LINEや広報誌はもちろん、ユーモア担当、スマイルマイスター、モチベーションスタッフなどと協力しながら、効果的な情報伝達やコミュニケーションに成功。地域貢献活動でも健康教室が軸となり、自治体や警察などとの連携に発展しています。「他社がやらないことに挑戦するほうがおもしろい」「地域に貢献することが会社の価値を高める」と話す鍋嶋社長。まさに健康経営のパイオニアとして、新しい可能性を私たちに指し示してくれています。

<企業データ>

会社名:大橋運輸株式会社

事業内容:自動車部品輸送、引越、生前整理・遺品整理、レンタルコンテナなど

所在地:〒489-0912 愛知県瀬戸市西松山町2-260

資本金:3,000万円

従業員数:96人(2022年3月末時点)

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