残業を減らす働き方改革でワークライフバランス改善を!
ワークライフバランス推進の一環として、企業では労働時間削減を進める動きが高まっているわけですが、ここで「長時間労働は止めましょう」と上から言うだけでは効果が出てきません。
そこで、より効果的な労働時間削減の働きかけとして、さまざまな取り組みがなされています。最も多いのは残業を減らすための“働き方改革”です。
日本企業では、旧来「残業の多い人=がんばっている人」「残業しない人=やる気のない人」という評価がまかり通ってきました。
今なお、残業すること自体を評価するような社内風土があったり、あまつさえ定時退社に後ろめたさを感じたりする人も多いのです。
ノー残業デーは働き方改革の核となり得るか?
誰もが安心して残業せずに帰れる状況を作る。その施策のひとつにノー残業デーの導入があります。
ただ、ノー残業デーも設定するだけでは片手落ちです。確かにノー残業デー当日は残業しなくてもよい口実ができるわけですが、今まで残業でこなしていた分の業務をどうするかという対策が取られていなかったり、他の日はより一層の残業をする前提だったりでは、働き方改革が進んでいるとは言えません。
ノー残業デーに定時で帰るために、自宅に仕事を持ち帰ったり、他の日に余分に残業をしたりするのでは、トータルの労働時間の短縮は図れません。
しかしながらこういった本末転倒な事態は珍しいケースではなく、制度の本来の目的が果たされていない企業も多いのが現在の実情です。
残念ながらノー残業デー制度が働き方改革の核となり、ワークライフバランスが劇的に変わる、というものではないというのが現状です。制度があれば多少は働きやすくなる、といったところでしょう。
残業の事前申告制は労働時間削減の有効な手段
では、他に労働時間削減の取り組みとしては何があるのでしょうか。ノー残業デーに次いで目立つ事例は「残業の事前申告制の導入」です。
「残業の事前申告制」とは、残業をする際に、事前に上司に申告をして許可を得る必要があるという制度を指します。
これにより、管理職を経由して企業が社員の残業の有無を事前に把握し、管理する事ができます。
この制度があれば不必要な残業は申告されにくく、もし申告された場合も、許可しないといった策を施せます。また、仮に必要な残業であっても、労働時間が過重になっている従業員がいれば、仕事を分担するなどして労働時間を減らす事もできます。
まずは管理職を含めた従業員自身の意識改革を
しかし、この「残業の事前申告制の導入」も、ただ導入するだけでは万全ではありません。
管理職に労働時間削減の意識がなく、申告なしでのサービス残業まで黙認したり、暗に求めたりするようなことがあれば、制度は形骸化していきます。もちろん、部下が上司の許可を得ずにサービス残業しようとする場合も同様です。
このようなケースでは、サービス残業を「残業していない」とみなします。残業の記録が残らずその実態も把握できないとなれば、労働時間削減の面からは大きなデメリットです。
つまり、社員の労働時間削減の成否を分けるのは、どこまでこの制度を実効化し、会社の文化として定着させられるかという働き方改革にかかっています。
管理職は「正式な手続きなしに部下を残業させない」「従業員が上司の正式な許可なしに残業しようとする場合は退社させる。これらを例外なく徹底しなければなりません。
残業を減らし、労働時間を削減することは企業の利益になる
労働時間削減を実現してワークライフバランスを改善することは、なにも従業員側だけのメリットではありません。企業としてもダラダラ残業により発生していた無駄な残業代が削減でき、ハードワークによって懸念される従業員のメンタルヘルス不調の予防にもなるという大きな恩恵があります。
たとえ削減したのが残業代の発生していないサービス残業であったとしても、従業員の疲弊や不信を未然に防ぎ、健康被害による職場離脱や離職のリスクを下げることには、大いにメリットがあると言えるでしょう。