データヘルス見本市 主催者セミナー:スポーツで健康を保つ!運動を楽しむための取組とは
目次
1.オリンピックを見据えて
あなたは、健康づくりのためにスポーツや運動を行っていますか?
スポーツ庁のスローガンは、「スポーツが変える。未来を創る。Enjoy Sports,Enjoy Life」です。ご存知のとおり、2019年にはラグビーW杯、2020年には東京オリンピックという世界的な競技大会が開催されることから、日本中でスポーツに関する注目度は非常に高まっています。
スポーツ庁としてオリンピック開催もふまえたうえで、スポーツと合わせて行っている取組としては大きく分けて4つあります。健康増進、国際交流、地域活性化、ビジネス、これら4つを他省庁とともに連携して様々な施策を展開しています。健康増進では厚労省とともに障害者スポーツの充実、国際交流では外務省と提携しスポーツ外交が盛んに行われています。また、地域活性化では国交省、ビジネスでは経産省など、多角的に展開しています。
スポーツ庁のスローガンにもあるように、スポーツで健康になることで人生や社会が変わるということや、世界とつながり未来を創ると考えています。スポーツを「する」「みる」「ささえる」ことで、スポーツ参画人口の拡大を目指しています。また、スポーツを通じた明るく活力のある社会、国際競技力の向上、クリーンでフェアなスポーツの推進を基本計画のポイントとしている、と安達氏は話しました。
2.スポーツ実施率の状況
皆様は週に1回以上スポーツを行っていますか?
全年代に行ったアンケートによると、スポーツを週1回以上行っている答えた人の割合は、今年になり50%を超えました。実は、1年前までは40%台だったので、やっと半分の人がスポーツを行っているというところまで到達したという状況です。
しかしながら、週3回以上のスポーツとなると30%を下回っているという状態です。こちらは現在の目標は50%以上ですが、週に1回のスポーツに関しては、オリンピック後の2020年に65%以上を目指しています。
スポーツを行う人の傾向としては、いくつかのパターンが挙げられます。まずは、健康に関心の高い人、やる気はあるけれどプッシュが必要な人、そしてスポーツに全く関心がない人、これら3つのパターンです。健康に関心があるからスポーツを積極的に行っているという人は少数派で、行おうと思ってはいるけれどなかなか実行できない人が多いというのが一般的でしょうか。
例えば、スポーツが好きな人の場合には、地方のマラソン大会に参加することで地域活性化につなげてもらうということも可能です。また、働く人はスポーツする時間を確保することが難しいというのが現状であることから、スポーツを行ってもらえるように促す方法、どのようなアイディアがあるかについて考えることが必要です。また、スポーツに関心のない方であればスポーツ観戦としてスタジアムにサッカーを見に行っていただく機会をつくる、興味を持っていただくよう工夫するなど、まずは一歩を踏み出してもらうためのきっかけというのも大切だと思います。
一方、別の運動に関するアンケート結果では、約20%の人が今後スポーツをしたくない、続けたくない、と答えています。ここには、全くスポーツに対する意識のない方が多く含まれています。スポーツをしたくないと答えた人の男女比較では、女性がやや多い結果となっています。
女性は妊娠、出産、子育てを経ることで運動する機会を確保しにくくなりやすいという特徴があります。また、それ以前にも幼児期にスポーツに対する苦手意識を持ってしまい、中学生で運動部に入って部活をしない、格好悪いといった意識をもってしまう場合もあるようです。
しかし、その運動に対する意識の比率は60〜70歳代になると男女逆転し、女性の方がより多く運動をしているというデータがあります。1950〜60年代頃に子どもだった女性が、この数年で運動をしっかりと行っているということになります。
3.ライフステージ別の運動
視点を子どもに移してみましょう。長年行っている「体力・運動能力調査」の推移を見ると、ほとんどの項目の調査結果で改善が見られるのですが、そのなかで2つだけ改善しない項目があります。それは、握力とボール投げです。
これには様々な見解があるのですが、最近の住宅や社会事情などが原因で、キャッチボールをする機会が減っていることが挙げられます。スポーツに関するふれあいイベントなどで見ていても、投げる動作がうまくできないという子どもが非常に多くなっています。また、握力に関して言えば、最近は雑巾をしぼる機会が減っているということも原因のひとつとして考えられると思います。握力が改善しないことで鉄棒などを握る力は不足している反面、体力や持久力全般については改善傾向がみられます。子どもの頃から運動する機会の確保を積極的に行ってあげることが大切、と安達氏。
ご存知のとおり、我が国の寿命は延びており世界的にもトップレベルではありますが、健康寿命と呼ばれる活動できる状態との差は約10年あります。また、2007年度の調査になりますが運動不足によって毎年5万人が死亡しているというデータもあります。基本的に、体力が必要なスポーツを行えるということは健康であるという、ひとつの目安になります。そのため、運動とスポーツは切っても切れない関係であるといえるでしょう。
4.スポーツによる効果
スポーツの語源は「Deportare(デポルターレ)」と言われています。これはラテン語で、港から離れて、運ぶ運搬するという意味が含まれています。そこから派生して、息抜きや気晴らしという要素もあります。そして、スポーツ庁が提唱するスポーツには「する」「みる」「ささえる」という3つの要素があります。スポーツを「する」ことで楽しみや喜び、「みる」ことで感動、「ささえる」ことで共感が生まれます。スポーツ庁では、スポーツ参画人口の拡大を目指しています。
また、スポーツには大きく分けて競技として自分の限界に挑戦することと、健康のためや仲間との交流を兼ねて行うという2パターンがあります。簡単に言うと、プロとアマチュアといったところでしょうか。ほとんどの人にとって、スポーツは後者の役割があると思います。
定期的に行っている運動としてはウォーキングが断トツに多く、ラジオ体操、ダンスやヨガなども最近は増えています。レジャーを伴うような続けやすい、散歩、サイクリング、ハイキングなどを行う方がほとんどです。
近年では、メンタルヘルスについても問題になっていますが、スポーツはストレス解消効果があり、生活の充実度アップにもつながります。また、一流の頭脳を育てるとも言われています。運動をすると認知症の予防効果があるとされており、メンタルヘルスには大いに良い影響を及ぼすと言えます。
5.ビジネスパーソンのスポーツとは
ビジネスパーソン、いわゆる現役世代のスポーツについてお話ししたいと思います。時間を確保しづらいビジネスパーソンのスポーツ習慣づくりのためには、企業側から積極的にスポーツを行うための働きかけを行うことが大切です。
それには、地方公共団体、国、保険者、産業界という様々な業界の連携が必要です。スポーツを通勤時間や休憩時間にうまく取り込めるような環境づくりも大切です。
きほど、運動を週に1回以上行っている人は50%を超えたとお話ししましたが、実はその反面、運動不足を感じていると答えた人は80%近くいるというのも事実です。そこで、スポーツ庁では「FUN+WALK PROJECT」を企画しました。これは、1日8000歩目標に対しての足らない分を補う、プラス1000歩とプラス10歩、あと少し歩いてみようというキャンペーンです。
「FUN+WALK PROJECT」についてですが、スポーツ庁の鈴木大地長官のプレス発表をご覧ください。黒いスーツ姿に白いスニーカーという颯爽としたスタイルですが、翌日の新聞で「ダサい!」と書かれていたのが印象的でした、と笑顔を交えながら話す安達氏。
※「FUN+WALK PROJECT」の上記内容の画像をできればご使用ください
「FUN+WALK PROJECT」は、20〜40代のビジネスパーソン向けの活動として、「歩きやすい服装での運動」を推進しています。通勤にもスニーカーを着用し、通勤時間や休憩時間などを利用してウォーキングをするといったスポーツへのきっかけづくりを想定しています。
また、連携したアプリを導入し、ご当地キャラを活用したり、漫画の課長島耕作が課長から会長に出世していくなど、楽しみながら歩くことができるように工夫しました。また、ご賛同いただける企業にはプロジェクトをお願いしました。
10月にはFUN+WALK月間として、歩くための目標達成を図るための強化月間とし、様々な取組を行いました。FUN+WALK PROJECTのアンバサダーとしてEXILEのUSAさん、TETSUYAさんをアンバダサーに任命し、ご当地キャラとのコラボレーションによるポスターの作成も行いました。
FUN+WALKフェアと題して、百貨店の協力により、スーツやシューズなどの歩きやすい服装の提案やロゴマークの作成なども行いました。さらに、8000歩歩くことを達成した場合には、串カツ田中でのワンドリンククーポンを差し上げるというキャンペーンもありました。これは、せっかく8000歩以上歩いたのに、その後ビールと串カツを食べるという少々矛盾した内容ではありますが、このような取組も行っていると安達氏が話すと、会場は大きな笑いに包まれました。
その他にも企業におけるFUN+WALK PROJECTの例として、イオンモールが挙げられます。イオンモールは基本的に大きなショッピング施設が多いのですが、1階から2階まで歩くと1km以上にもなる施設が多くなっています。これを利用してウォーキングコースを設置して、買い物のついでに、天候に左右されず、疲れたら飲食店などで休憩も可能、といった内容の趣旨でウォーキングイベントを開催しました。また、「スポーツエールカンパニー認証制度」を設立し、従業員のためのスポーツに対する取組の促進に貢献した企業の認定を平成29年から行っています。
株式会社じげんでは、エレベーターの利用を制限したうえで女性用のパウダールームを4階に設置し、階段の利用を促進。縄跳びやフラフープなどを置き、休憩時間などに楽しんでもらえるようにしました。株式会社サカタ製作所では、駐車場をあえて遠くに設置したり、ラジオ体操を社内で行うようにしています。
また、近年、企業内で運動会を行うことが増えているようで、第二次運動会ブームと呼ばれているようです。お揃いのユニフォームを作るなど、企業内での結束力の高まりにもつながっています。また、プレミアムフライデーに連動し、プレミアムスポーツフライデーと称して、その時間を利用してスポーツに取り組んでもらえるようなイベントの開催も行われています。
ビジネスパーソンの運動習慣づくりの取組例としては、「あさ活」「通勤時」「ゆう活」の3つに分けられます。
「あさ活」では、出勤前の時間を使用したトライアルとして朝7時から公営のスポーツ施設を開放し、プールの早朝営業を行いました。また、「通勤時」の取組例としては、積極的に階段を使用したり、一駅歩いたり、車移動を控えるなど、歩くことを重視しています。ちなみに、自ら実践ということで鈴木大地長官は毎日スポーツ庁のある13階まで階段で登っていますが、さすがにオリンピック金メダリストの体力とは違ういうことで他の職員はなかなか真似できていません。さらに、「ゆう活」はレクリエーション活動を通じて交流の場にもなるような一例として空手に挑戦しました。
このように、運動はフィジカルやメンタルを鍛えるだけではなくコミュニケーションの場としても役立ちます。また、企業にもたらされるメリットとしては生産性の向上、活気のある職場づくり、誠実な人材育成などがあります。社員の運動習慣を定着させることで、企業の業績やブランド価値の向上を生み出すのです。会社単位でスポーツの推進活動にぜひ取り組んでいただきたいと思っています。