小さなことからコツコツと:森平舞台機構株式会社の健康経営

1.健康経営に取り組むことになったきっかけ・経緯

- 貴社の考える優良な健康経営について、および健康経営優良法人認定などに申請されることになったきっかけ・経緯を教えていただきたいです。

森社長:建設業という業種柄、全従業員の健康診断受診を始めとして社員の安全衛生管理には古くから取り組んでいました。2016年10月に現在の産業医と出会い、その先生を通じて健康経営の概念や認定制度を知り、本格的に健康経営に取り組むことにしました。

- 健康経営優良法人を取得するための書類づくり、体制整備はどちらの部署、どなたがなさったのでしょうか。

芦川さん:弊社でバックオフィスを担う経営管理部が担当しました。人事総務を担当する3名(芦川さん、山本さん、橋本さん)が、具体的な認定取得の書類作成などを行いました。

- 健康経営の認定を取得するまでには、どれくらいかかったのですか?

山本さん: 「健康企業宣言」における「銀の認定」と「健康経営優良法人2017」が当社としてはじめての健康経営の認定制度へのチャレンジでしたが、実は産業医の先生からそれらの制度を教えていただいたのは申請締切日まで既に1ヶ月ほどしかない時でした。とはいえ、それまでに健康診断受診や安全衛生委員会の活用など、実績が多くありましたので、兎にも角にもあとは書類を揃えて提出しようと取り組み、結果として両方とも認定を取得することができました。

橋本さん:申請には様々な施策を実行したことを示すエビデンスの提出が求められますが、そうした材料も社内に多く蓄積されておりましたので、申請時に役立ちました。

2.特徴的な施策や注力している施策

- 健康経営施策のなかで、特徴的な施策や注力している施策について教えていただけませんか。

森社長:月に一回行う安全衛生委員会が、やはり当社の健康経営の軸になっています。

- 他社では、安全衛生委員会が形骸化してしまっていることも多いと聞きます。月一回の実施が義務付けられているのですが、実施している風に取り繕っているというケースもあるようですね。

芦川さん:そこは社長をはじめとした経営者が積極的に社内をリードしたことが大きく影響したと思います。安全衛生委員会への参加はもとより、全社に向けた施策を実行する際にはたびたび経営者がトップメッセージを発信したり、社長自身が率先して行動したりしています。それにより社員も健康経営の重要性を認識し、主体的に参加するようになったのではないでしょうか。

山本さん:産業医の積極的な参加も理由のひとつです。当社の産業医はとても積極的な方で、安全衛生委員会で積極的に健康に関する情報を発信したり、全社員に対して面談をしていただいたり、現場視察に来ていただいたりもしています。

森社長:工事現場というのは時期によって時間外労働が増えますし、精神的なストレスが多い現場です。そういった意味でも、現場の社員と産業医の関係性をより近いものにすることが重要と考えています。

- 他に、健康経営施策で力を入れているところはどのようなところでしょうか?

山本さん:健康経営優良法人制度の中では、やはり一番肝になるのは定期健診、特定保健指導、ストレスチェックの受診率を100%にするというところです。この点については確実に達成できるように取り組んでいます。

- 素晴らしいですね。定期健診の受診率を100%にすることだけでも、ご苦労様なさっている企業がほとんどです。特定保健指導は40歳以上の方に対して実施するものですよね。その実施率が100%とは驚きました。それは、どのように実現したのですか?

山本さん:まず特定保健指導については、定期健康診断受診後、その日のうちに同じ場所で特定保健指導を実施してもらえるクリニックと契約しています。それによって特定保健指導の受診率を100%にすることができています。

森社長:建設工事の現場に入る時には定期健診の証明が必要になりますので、そもそも定期健康診断は全員が受診しなければビジネスが成り立たない、という事情もあります。

- なるほど、定期健診と特定保健指導を同じ日の一連の動作にすることで、受診率100%を実現したということですね。ところで、特定定期健診は40代以上が対象ですが、それより若い人はどうでしょうか?

芦川さん:年齢に限らず、全社員の定期健診の結果はすべて産業医の先生にチェックしていただいています。健診結果により再受診が必要と判断された社員に対しては、定期健診から再受診までの一連の流れを記録する『健康診断後受診報告書』という社内帳票を産業医から発行し、問題所見を放置しないよう、経営管理部で進捗管理する体制をとっています。

写真:健康診断後受診報告書

- 再受診の案内を自社で出すことすら逡巡する企業が多いのが現実です。健康診断後受診報告書で社員の定期健診の事後フォローをするというのは、ほかの企業でも大変参考になると思います。ストレスチェック受診率も100%というのも素晴らしいですね。これも、どのように実現しているのかお聞かせいただきたいです。

山本さん: 当社には年に二度、安全大会という全社員が集まる会議があるのですが、初めてストレスチェックを実施することになった年にはその場で産業医の先生に目的や重要性について説明していただきました。同時に、社長からのメッセージも添付してテストの案内を社員に配布したところ、3日後くらいにはほぼ全員がストレスチェックを受検していました。産業医の先生がしっかりと熱く説明してくださったのもあって、重要性が伝わったのだと思います。早いスピードで実施することができました。

- 先ほどからお話に出ている産業医の先生は、とても積極的な方だと感じます。安全大会で産業医の先生から全社員にお話しいただけたのですね。

山本さん:はい、とてもありがたいことだと思っています。産業医の先生はストレスチェックだけでなく、組織分析、集団分析もやってくださいます。会社としてその結果を聞いて身につまされることもありますが、褒めていただけることもあります。こんな風に結果が返ってくるんだということがわかりました。先生の分析を受けることができて、良かったと思っています。

- ストレスチェックの判定の結果で高ストレスの判定が出た社員に対しての事後フォローはどのようになさっていますか?

山本さん:高ストレスだった方への面談は会社から強要することはできません。でも、高ストレスだからということで、なかなか自発的に自分から面談を希望するというのは難しいところがあります。そこで当社では、産業医との面談はストレスチェックの判定の結果に関わらず全員行うことにしています。

森社長:全社員が年に1度は産業医と個別に話ができる場を設けています。先程もお伝えしたとおり、社員と産業医の関係を近いものにできれば、と考えています。

山本さん:ストレスチェックだけのために産業医面談を受けるのではなく、定期健診の結果の健康相談と合わせて行うことにしています。むしろ同時に行うことで、面談しやすい環境を整えています。

- 出張所勤務など、遠隔地で勤務している社員に対してはどのような対応をされているのでしょうか?

芦川さん:先程の、全社員が集まる年に二度の安全大会のタイミングに合わせて実施しています。今後はweb会議システム等を用いた面談の実施も検討しています。

- 年1回の全社員の定期健診と、その結果を基にした産業医との健康相談は、実は産業医のストレスチェックの結果面談も兼ねている。そして、定期健診の結果が悪かった方には経営管理部の健康診断後受診報告書との産業医による再検査受診フォロー、これらの全てが確立されているのですね。さらに、毎月1回労働安全衛生委員会も実施されているということでした。とても、素晴らしいと思います。他に健康経営のために取り組んでいることはありますか?

橋本さん:日常的な通院等に利用してもらおうと、時間有給休暇制度を導入しました。従来は午前休、午後休など半日休が最小単位でしたが、改定後は2時間単位で取得できるようにしました。

- 時間休の利用状況はどうですか?

芦川さん:利用者は多く、社員の評判も非常に良いです。朝や夕方に病院によりたい、ちょっと用事を済ませたい、保育園にお迎えに行きたいなどという用事は2時間で足りることが多いようなので、とても使い勝手が良いようです。

- なるほど、その仕組みは他社さんも参考になるのではないかと思います。しかし、社員が細かく時間休を取得すると、管理が大変になるということはありませんでしたか?

森社長:勤怠管理は専用の管理ソフトを導入しています。社員がシステムで時間休申請をして上長が決済するという流れができているので、管理に関しては特に問題はありませんでした。

3.健康経営宣言後の社内外の変化

- 健康経営宣言をされてからの社内外の様子の変化などありましたか。

山本さん:当初は社内からの反応よりも社外からの反応の方が大きかったですね。取材の依頼を多数いただき驚きました。

- 社外から非常に注目されたということですね。社内の反応はいかがでしたか?

森社長:はじめのうちは社員によってかなり温度差がありましたが、徐々に社員の健康経営に関する意識が高まってきました。自主的にジムに通ったり歩く距離を増やしたりして運動の機会を設ける社員や、健康診断後の再受診や生活習慣の改善に真摯に取り組む社員も増えてきました。お客様と接する機会が多い社員は、名刺に印刷されている健康経営優良企業のマークを見た方から「これって何のマークなの?」と質問されることも多いるようで、自分の言葉できちんと自社の取り組みを説明できるようにと積極的に学ぼうとしている社員もいます。社内への地道な活動を継続してきた成果だと思っています。

- ところで、御社のHPを拝見すると社員は100名で、社歴110年と大変に歴史のある会社です。健康経営活動の影響は採用活動の方にはありましたか。

森社長:それは非常にありましたね。学生のみなさんは予想以上に健康経営に関する知識があり、関心が高いと感じました。

橋本さん: 新卒採用に限らず中途採用に関しても同様です。売り手市場が加速する中で、企業選びのポイントとして健康経営への取り組みに着目する方が増えているのではないでしょうか。健康経営に関する認定を受けていることで、採用競争力の向上につながっていると感じます。

4.苦労した点やモチベーション維持のために苦労した点

- 健康経営宣言後、ご苦労なさった点、モチベーション維持のためにご苦労なさっていることなどがございましたら教えていただきたいです。

山本さん: 先にも述べたとおり、社員ひとりひとりの健康に対する意識をどのように向上させるか、という点には苦心しました。当たり前のことですが、社員の食生活や運動を会社が強制することはできませんが、社員の健康はその人の行動によってしか実現し得ないものです。だからといって会社が「こうしなさい」「ああしなさい」と伝えるだけではだれも前向きに行動を起こさないと思います。ですから、健康経営の施策を実施する際には目的や意図を明確にて正確な情報をこまめに発信したり、社員が行動しやすいように担当者や経営者が率先して行動したりして、いかに社員の自主的な行動を促す環境をつくるか、という点に注力しています。
また、健康経営関連の認定を取得したり取材を受けたりした際には、自社のどういうポイントが評価されたのかというフィードバックもきちんと社内に発信するようにしています。社員ひとりひとりひ行動なしには認定を受けられなかったのは事実ですから。こうした点は今後も確実に継続していきたいと思っています。

5.今後の取り組みについて

ー 今後の御社の健康経営の課題などをお教えください。

森社長:これは、永遠の課題だと思っていますが、健康経営に関して積極的な社員とそうでない社員の温度差や理解度の差はどうしても生じてしまいます。それをどうしていくのかが、課題です。

橋本さん:社内のニーズを把握しようと、最近は全社に関わる施策を検討する際には、必ず社員に対してアンケートを実施するようにしています。社内では複数の委員会やプロジェクトが活動していますが、経営管理部以外にもこうしたグループからもアンケートを実施して社員の意見を聞いています。

- 委員会やプロジェクトとは?

芦川さん:働き方改革プロジェクト、美化委員会、心と体の相談窓口などです。例えば、ここ数年女性社員が増えてきましたので、美化委員会を立ち上げて社内の内装を改修したりもしています。

森社長:アンケートをきちんと取れば思いがけない課題がみつかることもあるので、そういう意味でも必要なことだと思っています。各プロジェクトや委員会のメンバーは可能な限り偏りがないように意識しています。

- 社員を巻き込む手続きを、より丁寧に実施していくことで、社員間の温度差をなくしていこうということですね。本日は、これから健康経営優良法人を目指す企業、健康経営を実践する企業にとって、とても参考になるお話をどうもありがとうございました。

写真:右から芦川さん、橋本さん、森社長、山本さん、インタビュアー

<企業データ>

会社名:森平舞台機構株式会社
事業内容:舞台機構設備、スタジオ設備等の設計・施工・保守の舞台総合メーカー
所在地:〒111-0033 東京都台東区花川戸2-11-2
資本金:8,000万円
従業員数:104人

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