健康経営で企業風土を変え、想いを未来に繋ぐ(都築電気)【前編】

昭和7年(1932年)創業という長い歴史と伝統を誇る都築電気ですが、2008年を境に、従業員一人一人が考え、行動する企業へと転換。その際、新しい経営理念に血を通わせ、社員を活気づかせるツールともなったのが健康経営でした。今回は、健康経営の推進役となった副社長の吉井さんと奥野さんにたっぷりとお話を伺いました。(インタビュアー:健康経営の広場/セルメスタ代表  熊倉 利和)

1.理念を変えるだけでは人は動かない

――まずは都築電気さんの会社や事業内容について教えていただけますか。

吉井さん:はい。わかりました。1932年に創業した当社は、来年(2022年)で90周年を迎えます。ICTによりお客様と共に歩んできましたが、近年のデジタル革新を中心とした大きな変化を新たな発展のチャンスとして捉え、お客さまのビジネスをご支援し共に歩み続ける「イノベーション・サービス・プロバイダー」を目指しています。創業から一貫しているのは、“繋ぐ”ということ。現在も、ネットワークやICT関連がメイン事業となっています。

奥野さん:言い換えれば、グループウェアやRPAによる業務自動化といったソリューションをネットワークで繋ぎ、お客様に提供することに強みを持つICT企業となります。

吉井さん:従業員数は約1,500名、グループ全体では2,300名ほど。売上は約1,300億円ですが、今後も益々伸ばしていきたい。そのためには、さらに新しいことにもチャレンジしていく必要があります。

――では、そんな御社が健康経営に取り組み始めた理由はなんですか?

吉井さん:はい。もともと当社はオーナー企業でして、工場も持っていたことから運動会など家族ぐるみのイベントも盛んでした。人の温もりに満ちた家族的な雰囲気は昔からあります。社員のことをとても大切に考えており、会社を大きくするためにもまずは人への投資だと採用を積極的に行い、社員数も急増したこともありました。バブル崩壊なども重なり、やがて以前のように運動会や社員旅行も徐々に減り業績回復に拍車がかかり、会社の雰囲気も変化してきました。

そんなこともあり、2016年には、「新しい会社に生まれ変わろう」と経営理念を見直すことにしました。未来に向けたものにするべきであるとの考えから、若い社員たちを中心に経営理念を練り上げていきました。

経営理念は無事に完成。「これまでのトップダウンではなく、ボトムアップとなり、社員自らがやりたいこと、挑戦したいことを会社はサポートし、投資を惜しまない」といくら言葉で投げかけても、なかなか浸透しませんでした。それが歯痒くもありましたが、社風とは長い時間をかけて培って行くもの。理念を変えただけではすぐに人は動かないのは仕方がないとも考えていました。

それでも、なんとか社内を活気づけ、新しい経営理念を浸透させる方法はないかと模索していた頃、経営企画の方から健康経営というものがあると教えてもらったんです。それで調べてみると、「健康経営は人を一番重要な資源として考えた将来に向けた投資である」ということを知り、「まさにこれだ!」となりました。

――どのあたりから健康経営に着手しましたか?

吉井さん:まずは社員の健康状態の把握です。喫煙者やお酒をたくさん飲む社員も少なくなかったので心配はしていたのですが、改めて健康診断の集計結果を確認すると、脂質異常、肝機能障害、高血圧、糖尿病などと診断されている社員も多く、予想以上にひどいものでした。

そして、社内への啓蒙活動。2016年の社員総会で健康経営の必要性を呼びかけ、健康経営を核としながら、人事戦略、情報化戦略、コミュニケーション戦略を推進していくと宣言しました。

2.本社と支店が一体となり、改革推進

――最初から健康経営の推進はうまくいきましたか?

吉井さん:いえ、健康経営について説明しても、「健康は個人のことですし、仕事とは関係ありません。放っておいてください」といった反応もあり、理解してくれない人もいました。それでも話し続ければいつかはわかってくれるはずと、1年かけて支店を全部回りました。ですが、思ったような効果は見えず、正直、気持ちが萎えかけました。

転機となったのは、2017年の社員総会に、当時、経産省のヘルスケア産業課の課長さんをお呼びしたこと。健康経営についてとても熱く語っていただき、感銘を受けました。その中でホワイト500の紹介もあり、「よし、自分たちもホワイト500に挑戦しよう!」と課長さんの講演の後、当時ボトムアップ活動の中心だった健康経営のワーキンググループ(WG)全員一致で決めました。

奥野さん:円陣を組み、社長の「エイエイオー!」の声がけに合わせ、みんなで気勢をあげましたね(笑)。

――経営陣が自ら先頭に立ち、推進しているところが素晴らしいですね。御社の健康経営で柱となっているものはありますか?

奥野さん:はい。働き方改革と健康増進を両輪とし、その両方に共通する意識改革を三位一体で推進しております。特に大事にしているのは現場主義。先程、吉井からも話があったように、事務所の所在地ごとに背景や資源は異なりますので、本社だけでなく、支店それぞれで健康経営宣言をしてもらい、目標にも働き方改革KPIを組み込んでもらっています。

吉井さん:残業時間の削減や健康診断の受診率の向上といった基本的な目標設定だけでなく、現場の若い社員からも積極的な提案がされ、工夫を凝らした取り組みをする支店も増えています。

奥野さん:そうですね。例えば、昼休みに社員を集めてラジオ体操をしたり、東京2020パラリンピック競技大会でも実施されるボッチャに出場したりと、支店に合った施策がどんどん出てくるようになっています。

――そんな支店に対し、本社としてはどのようなサポートを行なっていますか?

奥野さん:一つはICT環境の整備。それまでも育児・介護や健康上の都合がある方だけではなく、生産性の向上に向けてテレワークを推奨していたのですが、使っているパソコンが大きく、家に持ち帰らせるのは忍びなかった。そこで、高価なモバイル端末を一挙に2,000台導入。2016年のテレワーク経験者4%から2020年には全社員が一度はテレワークを経験するところまでいきました。

吉井さん:そうだね。コロナ禍もあり、一時期はテレワーク率87%までいったからね。

奥野さん:はい。オンライン化もこの1年でずいぶん進みましたね。例えば、当社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する部門と連携したウェルネスチェックサービスでは、出勤時、「昨日は目標としている歩数を歩きましたか?」「何回笑いましたか?」などのセルフチェックを行える仕組みになっています。

スクワットチャレンジと言って、スクワットの回数を計測してくれるシステムも用意。ランキングも出ますから、競い合いながら楽しく取り組んでいます。1位の人は、驚くことに6万回近くスクワットをしています。吉井さんは1万8千回で4位ですね。

吉井さん:残念。前は3位だったのになあ。

奥野さん:いくら健康に良いからとはいえ、就業時間中に私用スマホで動画サイトやアプリを開くのは、気が引ける方も多いのではないでしょうか。業務中でも気兼ねなくご利用いただけるよう、会社として肩こり・腰痛予防をはじめ、生活習慣の改善に向けた短時間でできる推奨行動を提示することで、周りに遠慮することなく自分のペースで良い習慣を選択しやすくなるのではないでしょうか。

新しいことを始めるとき、最初の石を転がす仕掛けを健康経営委員会がつくることで、支店含めた全社一丸となった動きになっていくんだなと実感しています。現場の社員の皆さんの声を受け取った施策展開が、より重要だと思います。

――いや、驚きました。他社さんにもぜひ参考にしていただきたいフレームワークです。さらにお話を聞かせてください。

健康経営で企業風土を変え、想いを未来に繋ぐ(都築電気)【後編】へ続く

<インタビュー後記>

健康経営を社員の健康づくりだけでなく、企業理念を浸透させ、社内を活気づかせるツールとして使い、見事に成功している都築電気さん。今回のインタビューは、大変興味深く、参考になることばかりでした。後編ではいよいよ、健康経営を推進することで起こった社内外の変化や、健康経営に込められた熱い想いなど、より深いお話が展開されていきます。ご期待ください!

<企業データ>

会社名:都築電気株式会社

事業内容:ネットワークシステムおよび情報システムの設計、開発、施工、保守/電子デバイス、

情報機器の販売ならびに受託設計開発

本社所在地:東京都港区新橋6−19−15 東京美術倶楽部ビル

従業員数:1,510名(2020年3月)