【ホワイト企業オンライン座談会③】

健康経営の広場のシリーズ企画「大学生×ホワイト企業インタビュー」に登場の33社にお声かけをし、実施したオンライン座談会。4回にわけて開催された座談会の3回目となる今回は、I-QUON様、サンヨー・シーワィピー様、HNS様、ネクストビジョン様、東京すずらん様、リライアンス・セキュリティー様、ウェルネスワーク株式会社の7社、計8名が参加されました。

〔ホワイト企業〕

稲田 礼子(I-QUON株式会社 代表取締役)

新谷 幸一(株式会社サンヨー・シーワィピー 製版課サブリーダー)

山下 哲二(株式会社HNS 管理統括)

川原 健太朗(株式会社ネクストビジョン 経営企画室室長)

西尾 和樹(ウェルネスワーク株式会社 社会保険労務士 健康経営エキスパートアドバイザー)

石川 啓夫(株式会社東京すずらん 代表取締役)

池ノ谷 幸枝(株式会社東京すずらん 総務部部長)

有田 恭彰(リライアンス・セキュリティー株式会社 執行役員採用教育研修部長)

〔司会進行〕

熊倉利和(健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役)

1.すべての従業員を健康に

熊倉:本日は7社のホワイト企業にお集まりいただきました。健康経営の取り組みなど、情報交換を行っていきましょう。

石川:はい。東京すずらんの石川です。当社は埼玉県蕨市にあり、おしぼりをクリーニングしてお客様に届けるのが主な事業内容です。

池ノ谷:健康経営を担当している総務の池ノ谷です。現在は、産業医に協力していただきながら、健康セミナーの開催や個人面談に力を注いでいます。

新谷:セミナーなどは、全従業員に興味を持ってもらうことが重要になりますが、どのようなことをポイントにテーマを探されていますか。

池ノ谷:基本的には、さまざまな方面から講師を探すのではなく、産業医の先生に「当社にとっての旬の話題」を話していただいています。高齢の従業員も多いので「どうすると、体に負担をかけずに長く働き続けられるか」、あるいは男性社員向けに「育休を取得する大切さ」など、従業員の心と体の健康に直接役立つ情報発信を心がけています。

熊倉:サンヨー・シーワィピーさんは、最近はどんな健康経営に力を入れていますか?

新谷:当社は大阪府大阪市にある印刷会社で、主に試作品の製作や加工などを行っています。最近は、写真事業部を立ち上げるなど、印刷に関連した多くの事業にチャレンジしている最中です。当社では、「サンヨー・シーワィピーで働いてよかったと従業員に満足してもらう」ことを経営の大きな柱にしており、健康経営はその重要なツールと位置づけています。現在は、どんなものを食べると健康によいかなど、食の情報提供に力を入れています。印刷業は日勤、夜勤ともにあり、生活が不摂生になりやすい面があるため、食から健康促進をしていこうと力を入れています。

熊倉:すばらしいですね。では、ネクストビジョンさんはいかがでしょうか。

川原:当社は広島県広島市でシステム開発を行っている会社です。デスクワークがメインの業務となるため、実のところ、健康診断の数値がよくない従業員も多く見られます。そこで年に数回、運動イベントを行っています。現在は、健康診断の数値改善に向けて、歩数を競い合うイベントを開催しています。グループ会社も含めて約130人の従業員がいて、約60%が参加しているのが現状です。

有田:リライアンス・セキュリティーも広島県広島市にある警備会社で、現在は山口、愛媛、岡山、兵庫、大阪まで事業が拡がっています。警備はお客様のもとで行う仕事であり、屋外の業務が多くなります。当社は「従業員が健康第一で働ける環境づくり」に力を入れています。具体的には、夏であれば氷や塩タブレットと配って歩くなどの熱中症対策、冬であれば寒さと感染症の対策などを徹底して行っています。

山下:従業員が各事業所に散らばっていると、その健康にまで目が届きにくいかと思いますが、どんな対策を行っていますか。

有田:当社では社長が「三現主義」を唱えています。「現場で、現物を、現実に」との意味で「すべての物事は現場で起きている」との考えです。ですから管理職は、とにかく現場に足を運び、従業員の健康状態を直接確認し、声をかけながら健康管理を行っています。そうした地道な取り組みが警備というお客様の命と安全を守るサービスを向上させ、契約数の増加につながっていると考えています。

山下:すごいですね! HNSもシステム開発の会社で、従業員は派遣先でシステム開発の仕事をしており、どうやって従業員の健康を守ろうかと常に対策を考えているので、参考になりました。当社は約90人の技術者がいて、平均年齢は50歳を超えています。年齢層が高く、従業員は派遣先で仕事をしており、以前から個別に健康や介護の問題に一つひとつ対応していました。また最近は、ストレスチェック後の高ストレス者に対するサポートにも力を入れています。

2.カギは「情報発信」?

熊倉:今回、ブライト500は225社が入れ替わりました。年々、優良法人の認定数が増えていて、現在は1万4000社以上。そのうちの500社ですから、ブライト500はますます狭き門になっています。I-QUONさんは健康経営を完璧にされていて、率直に「これ以上、何をすればいいの?」という思いではないでしょうか。

稲田:本当にそう感じています。I-QUONは産業医を中心とした労働衛生のコンサルタント会社で、大阪府高槻市にあります。産業医や保険師、産業カウンセラーなど専門職の集団で、多くの会社さんに健康経営を勧める立場にあります。ブライト500も連続して取得してきましたが、今年は逃してしまいました。従業員数は10名に満たず、みな健康のプロで、申請書の項目はすべて100点満点を網羅しています。ですから、今まさに「これ以上、何をどう改善していけばいいのか」という課題を抱えています。

熊倉:ネクストビジョンさんはブライト500を連続して取得されていますが、何か特別に行っていることはありますか。

川原:ブライト500を申請する項目に「外部発信」があったと思います。私たちはここにも力を入れています。たとえば、経済産業省主催の取材や、広島県主催の講演会の依頼を社長が受けていくなど、健康経営の取り組みについて積極的に情報発信を行っています。

稲田:なるほど。確かに発信力やプレゼン力は少し弱かったかもしれません。ここが反省点ですね。

熊倉:ウェルネスワークさんは従業員数2名ですが、ブライト500を最初から連続して取得していますね。情報発信を上手にされているのではありませんか。

西尾:そうですね。私は青森県八戸市で社会保険労務士をしています。開業以降、ストレスの少ない職場づくりを心掛けてきました。たとえば、狭い社内でどんなふうに運動するとリラックスできるのかを、健康運動指導士の先生にアドバイスをいただいたりしています。そんな経験をもとに、現在は他社さんに健康経営を紹介する活動も行っています。今日も、協同組合に加入している40~50社の会社さんとランチミーティングを行い、当社の健康経営の取り組みのお話ししました。なるべくお金をかけずに工夫して健康経営を行う方法などの情報発信をどんどん行っています。

3.従業員のストレスといかに向きあうか

西尾:I-QUONの稲田さんに質問をさせてください。産業医は、どのようなことをポイントに探すとよいでしょうか。

稲田:産業医には2つのタイプがいて、クリニックの医師が空き時間に企業に出向く産業医と、ウェルビーイングをきちんと理解し、企業の利益の向上にまでつなげていこうとする専門性の高い産業医です。

さらに2015年から、ストレスチェック制度が義務化されました。それまでは主に内科の医師が産業医をしていましたが、内科医はメンタルケアを苦手にする人が少なくありません。当社には精神科の産業医が3人いますが、メンタル不調の従業員が多い場合は、メンタルに強い産業医を探すことが大事です。なお、産業医でなくても顧問医のような形で契約する方法もあると思います。

熊倉:従業員のストレスへの対応も、健康経営の重要な事項となりますね。みなさんはどのような対応をされていますか。

山下:HNSでは、コーピング(ストレス反応への対処法)を取り入れたオンラインヨガを行っています。コーピングはストレス軽減のために行動すること。ストレス対処法は人それぞれのところもありますが、オンラインヨガに極力参加してもらうことで、コーピングについて従業員に少しずつ学んでもらうきっかけにしていきたいと考えています。

熊倉:なるほど。コーピングを取り入れたオンラインヨガとは、すばらしいですね。何か新しいことを始める際には、従業員をいかに巻き込んでいくかが重要になってきます。さきほど、ネクストビジョンの川原さんが、ウォーキングイベントの参加率が約60%と素晴らしい成果を話してくれました。どのように参加率を上げていますか?

川原:第一には、健康診断の有所見者には個別メッセージを送って参加を促しています。加えて、Amazonギフト券などの参加賞も出しています。

新谷:サンヨー・シーワィピーもウォーキングイベントを2年ほど続けていますが、目新しさなどの刺激がないと、少しずつ参加者は減ってしまいますよね。一方で、イベントをきっかけに、ふだんは接点のないような他部署の人同士が話すようになり、新たな交流が生まれ、それが参加率にもつながっているように感じます。

熊倉:リライアンス・セキュリティーさんはどうでしょうか。拠点が複数あり、健康経営を盛り上げていくのは、なかなか大変だと思います。

有田:そうですね。当社の場合、全社を挙げて行うイベントはなかなか難しく、まだ取り組めていないのが現状です。ですが、当社では「社員の健康と命を守る経営」を宣言しています。各拠点に巡察をこまめに行い、一人ひとりに声をかけていくという当社の基本をしっかり行っていくことが、当社の健康経営では何よりも重要と考えています。

4.すべての人が楽しめるイベントを

熊倉:東京すずらんさんは、さまざまなユニークなイベントを行われていますね。そのアイデアはどのように生まれてくるのですか。

石川:社交性のある人はこちらがサポートしなくても元気に動いてくれます。反対に対人関係が苦手な人は、自分の殻に閉じこもります。会社経営には従業員の人間関係が重要です。対人関係が苦手な人が入社したら、当社ではその人の得意分野でイベントを開催します。その人から知恵をもらって計画することになるので本人主役のイベントになりますし、みんなも新しい経験ができる。そうやって計画していくと、釣りやハンバーガーの早食い、秋葉原のメイドカフェ探訪など、自然と刺激的でおもしろいイベントが開催できます。

池ノ谷:当社は3階建てのビルなのですが、3階から卵を落として下でキャッチするというイベントをしたこともあります。最初は「面倒だな」という顔をしている人も、参加すると「楽しかったね」と笑顔になり、ストレスも発散できる。人間関係に馴染めない人も、みんなと一緒に何かに取り組むことで会話が自然と生まれます。

新谷:まさに目からウロコの情報です。いわれてみれば「なるほど」と思うのですが、そうした方法は気づきませんでした。私自身、アイデアがまだまだ足りていないと感じていたので、非常に勉強になりました。

山下:本当ですね。何かのイベントをする際には、思いが通じあう企業と集まってチャレンジするのもおすすめです。当社がオンラインヨガを始める際も同業者に声をかけ、十数社に参加してもらいました。情報が多く集まってくるので、よりよいイベントに成長させられました。しかも、多くの企業が盛り上がっていくとニュース性も生まれ、PRしやすいと感じています。

西尾:確かに、関連会社さんと一緒にイベントを行えば新しい発見が得られますね。得意なところは自分の会社でどんどん取り組むけれども、苦手な部分は企画の上手な会社さんにお願いして、一緒に混ぜてもらう形も楽しくていいですね。

川原:素晴らしい発見ですね。これまで当社の健康経営を担当してきましたが、ホワイト企業の方々と話す機会はほぼありませんでした。短い時間でしたが、同じ活動するみなさんと仲間意識も生まれ、素敵な会に参加できたことをうれしく感じています。

有田:当社は情報発信もまだ十分でなく、全社を挙げたイベントも行えてなく、どう進めていくとよいのか悩んでいましたので、みなさんのお話が大変に参考になりました。3年、5年とブライト500を取得し続けられるように、今やるべきことをしっかり取り組んでいこうと思っています。

稲田:健康経営というと、働きやすさを伝えるツールに見えがちですが、実はやり方一つでワークエンゲージメントや働きがいにつながっていくと実感でき、大変に勉強になりました。誰も取り残さない形で楽しく健康経営に参加してもらうことが大切ですね。

熊倉:IKIGAI WORKSが行っていきたいのもまさにそこで、健康経営を通して人と人がつながり、ともに学び、働きがいを見つけるお手伝いをしていきたいと考えています。今後も横のつながりを構築していくため、イベントを開催していきます。引き続きよろしくお願いします。

【取材後記】

全7社、計8名にお集まりいただいた今回のオンライン座談会。時間内では収まりきらないほど活発な情報交換が行われました。しかも、参加者の思いがだんだんと近づき、「ともに健康経営をがんばる仲間」との意識が育まれていくのを実感。「まだまだ話足りない」との意見も出たこの座談会。これで終わりにすることなく、次々に開催し、関係構築と情報発信に役立てていきたいと考えています。

〈企業データ〉

 

会社名:I-QUON株式会社

事業内容:企業・団体のメンタルヘルス・安全衛生管理・労務管理等に関するコンサルティングなど

所在地:大阪府高槻市城北町2丁目9-34 1F・2F

資本金:2,100万円

社員数:7名

 

会社名:株式会社サンヨー・シーワィピー

事業内容:オフセット印刷の製版、印刷用データ作成など

所在地:大阪府大阪市中央区龍造寺町8番15号

資本金:5,000万円

社員数:113名

 

会社名:株式会社HNS

事業内容:金融・流通関連の業務系システム開発

所在地:大阪府大阪市中央区南本町四丁目3-16-1002

資本金:1,500万円

社員数:41名

 

会社名:株式会社ネクストビジョン

事業内容:システム開発、Webサイト制作、ネットワーク構築支援

所在地:広島県広島市中区榎町2-15 榎町ビュロー6F

資本金:2,2000万円

社員数:93名

 

会社名:ウェルネスワーク株式会社

事業内容:労働法令の遵守(労働安全衛生・健康管理)

所在地:青森県八戸市湊高台5-5-4

社員数:2名

 

会社名:株式会社東京すずらん

事業内容:おしぼり・タオルなどのレンタル、リース、業務用商品販売ほか

所在地:埼玉県蕨市錦町2-3-1

資本金:6,000万円

社員数:70名

 

会社名:リライアンス・セキュリティー株式会社

事業内容:施設警備、交通・雑踏警備、身辺警備、セキュリティコンサルティング

所在地:広島県広島市中区舟入川口町14番22号

資本金:1,000万円

社員数:220名

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