【ワダカルシウム製薬】推進チームが語る、ブライト500認定までの軌跡と今後の展開

3年前から健康経営の取り組みを始め、見事に「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)ブライト500」の認定を受けたワダカルシウム製薬さん。健康経営の立ち上げからその成果、今後の課題などについて推進チームの皆さんにお話を伺いました。(インタビュアー:健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表  熊倉 利和) 

〔ワダカルシウム製薬株式会社〕

■吉田さん(取締役)

■寺尾さん(人事労務)

■坂口さん(人事労務)

■安居さん(滋賀工場)

1.保健指導も100%実施。病欠者が減少

――まずはワダカルシウム製薬さんについて改めて教えていただけますか?

吉田さん:はい。当社は今年(2022年)で創業111年目を迎えました。日本で最初にOTC医薬品(一般用医薬品)のカルシウム剤をつくった会社であり、今もカルシウム製品を中心にOTC医薬品と健康食品の製造・販売を行っています。

会社のモットーとなっているのが「歩くと元気を支えます」。そのモットーに沿って3年前から健康経営もスタートさせ、今年、念願のブライト500の認定をいただくことができました。

――おめでとうございます。健康経営はどのようにスタートさせましたか?

吉田さん:やはり健康経営はトップがその気にならないと、なかなか社内に浸透していきません。そのため「今、会社経営において健康経営がとても重要になっています。当社自身、健康関連の事業をおこなっていますし、社員の健康を大切にすることは企業イメージの向上にも繋がります。ぜひ健康経営に取り組みましょう」と前社長に提案したのが始まりです。現在の二瓶社長も健康経営に深い理解を示し、バックアップしてくれていることが今回のブライト500認定にも繋がったと思います。

――やはりトップの理解は大事ですね。具体的にはどのように進めていきましたか?

吉田さん:まずはプロジェクトチームの立ち上げです。「健康経営を始めます。一緒に取り組んでくれる人はいますか?」と声をかけ、手を挙げてくれた人たちとチームを発足しました。私がリーダーとなり、メンバーは3人です。

そして「健康経営とは何か?」という基本的なところから勉強を始め、他社さんの事例も参考にしながら、「当社で何ができるか?」「当社に相応しい健康経営は何か?」といったことについて話し合っていきました。

プロジェクトチームの発足が2019年1月。その4月に取締役会で承認を受け、正式に活動を始めています。2年目以降、坂口などに声をかけ、今のメンバーとなりました。

――声をかけられた時、坂口さんはどんな風に感じましたか?

坂口さん:健康経営を推進するのは会社にとって良いことですので「わかりました」と返事をしました。それに私の仕事は人事・総務。本社の健康診断の手配などもしており、一番、健康経営と関連している部署ですので自然な流れでもありました。

――安居さんはどうでしたか?

安居さん:はい。私が所属するのは工場の管理部門。工場の健康診断の手配なども行なっていましたので、健康経営でも必然的に担当になるだろうなとは思っていました。特に工場では病気などで一人、二人、抜けるだけで大きな影響があります。健康経営によってみんなが元気で働くことができればとても助かると思い、積極的にメンバーに加わりました。

――健康施策はどのように決めているのですか?

吉田さん:月に1度、定期的にミーティングを行なっています。健康経営優良法人の評価項目とも照らし合わせながら、「これはできている」「これはまだなので、どんなやり方があるか」といったことをみんなで話し合いながら決めていく形です。

――健康経営に取り組み始めてから、健康診断の受診率や保健指導の実施率に変化はありますか?

坂口さん:はい。健康診断の受診率は元々100%でしたが、健康経営を始めてから保健指導も実施するようになり、去年(2021年)は対象者全員に受けてもらえました。

寺尾さん:そうですね。坂口の呼びかけのお陰もあり、今、一般健診(定期健診)と特定健診の両方で保健指導は全員に受けてもらえています。今後、一般健診後の二次健診、付加健診、がん検診などについてもしっかりサポートしていこうと思っています。

安居さん:以前は健康診断を受けても受けっぱなしでしたが、保健指導を実施するようになってからは、より自分の健康状態を意識したり、考える機会も増えていると思います。

寺尾さん:工場で病欠する人の数はどうですか?

安居さん:以前でしたら、朝、「熱がある」「体調が悪い」と連絡が来て休む人がいましたが、今はだいぶ少なくなっています。

吉田さん:確かに、最近、病欠で有給を消化する人がほとんどいなくなりましたね。

2.心の健康づくりにマインドフルネス

――健康に関する社員の皆さんの意識も高まっているようですね。

寺尾さん:そうですね。確かに、社員からがん健診のサポートをしてほしいといった要望も出るようになり、手応えを感じています。ただ、メンタルヘルスのサポートはまだ足りていないかもしれません。

――ストレスチェックは実施していますか?

寺尾さん:はい。以前から病気とまではいかなくても少し心配になる人は見受けられましたし、実際、会社を休んでいる人もいました。心の面での健康が保てていない原因は仕事だけではないかもしれませんが、会社としての働きかけは必要であると感じ、現状を把握するためにストレスチェックを実施しました。また、補助金をいただけることもあり「心の健康づくり計画(厚生労働省)」の取り組みを始めています。

――具体的にはどのようにしていますか?

寺尾さん:まずはセルフケア(正しい知識を従業員自身に身につけてもらうことで早期のケアなどを促すこと)の取り組みを始めたところ。セミナーを開き、メンタルヘルスに関する基本的な考え方、リテラシーについて知ってもらう活動を行っています。

当社には、もともと社員同士が互いに思いやり、体調についても気にかける風土があります。ですが、メンタル不調の人に対して、どういう声かけをすればいいのかといった専門的な知識やスキルに基づいたものではありません。ですので、まずはメンタルヘルスとはどういうものか、どう対応すればいいのかといったことを知ってもらうことが大事。今は、社員にメンタルヘルスの重要性を理解してもらっている段階であり、ラインケア(管理監督者が行うケア。日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応を行うことなど)はこれからです。

それと同時に、社員のメンタルの状態を良く保つための施策も積極的に取り入れていきたいと考えています。その一つとして、マインドフルネス(LifeWorkers’『大人の部活』)の活用なども始めています。

3.エンゲージメントを高めるイベント 

――健診にしてもメンタルヘルスにしても、いわば心身の状態をマイナスから正常に戻すためのもの。そこからさらに進め、働きがい、生きがいなどのプラスを生み出すための施策も必要だとお考えですか? 

吉田さん:はい。必要だと考えていますが、まだあまりできていません。先日、ちょうどスマホアプリ『LifeDRILL』にも取り組んでみました。『LifeDRILL』は健康づくりはもちろん、経営者や違う部署の人の考え、仕事に対する想いなどを共有できるツールとしても大変良かった。今後は、社内のコミュニケーションを活性化させるリアルなイベントにも取り組んでいきたいと思っていますし、「バーベキュー大会などもいいね。どんどんやろう」と二瓶社長も言ってくれています。

寺尾さん:そうですね。実は、このゴールデンウィークの谷間の出社日に、みんなで滋賀工場に行ってウォーキングイベントをやろうと計画を立てていたのですが、残念ながら実現できませんでした。「イベントをやるやると言っているけど、できていない。これじゃあ、やるやる詐欺じゃないか」と二瓶社長からも怒られました(笑)。

吉田さん:社員間のコミュニケーションの活性化については、やれることが色々ありそうですね。以前、ほめる会というものをやっていたことがあるのですが、健康経営の一つとして再開させてみるのもいいかもしれません。人と人の繋がりが生まれると「私の仕事を見守ってくれている人がいる。支えてくれている人がいる」ということを感じられて精神も安定。やりがいやエンゲージメントも高まりますから。

4.連続認定のため一人一人の意識を高める

――ブライト500認定を受けて社内の雰囲気は変わりましたか?

吉田さん:今朝の全体ミーティングでも寺尾がブライト500認定の報告や、今後の課題などについて話してくれましたので、みんなも健康経営の必要性をさらに感じてくれたのではないでしょうか。

坂口さん:そうですね。機関誌『けんぽだより』でも大阪薬業健康保険組合の中でブライト500の認定を受けたのは当社だけという記載がありましたので、それを見た人たちから「これはすごいことだ」と言われました。

寺尾さん:ただ、自分が日々取り組んでいる健康づくりが、ブライト500認定に繋がったんだという意識はまだあまり高くないかもしれません。ブライト500認定の重みをもっと知ってもらいたいですし、自分事として健康経営に取り組み、ブライト500認定をみんなで喜び合えるようにしていきたいと思っています。

――健康経営に今後どう取り組んでいきますか?

寺尾さん:推進チームのメンバーも増やそうと思っています。ただ、いきなり手を広げるよりは、まず足元のことをしっかりやることが大事。健康診断やアフターフォローなどの基本的なことができていないと、2年連続でのブライト500認定も難しくなります。

――逆にブライト500認定を受けられたのでもう満足だ、これで止めるという選択肢はありませんか?

吉田さん:ありません。やはり続けることに意味がありますし、一度取れたのに次は取れなくなるほうがむしろ悪い。この先、ブライト500の認定を受けられないということはあるかもしれませんが、健康優良法人認定も受けられないとなると大きな後退を意味します。

寺尾さん:そうですね。今は、健康優良法人の認定を受けることは企業として当たり前のことだという風潮になっています。その認定を受けられないとなると、普通より劣った企業と思われてしまうかもしれません。

5.トータルに健康を提供する企業に

――採用などにも影響はありましたか?

寺尾さん:はい。面接でも応募者の方から「健康経営にとても力を入れて、社員を大切にしているんですね」などとよく言われます。健康経営をすることで当社に対してクリーンなイメージを持っていただけ、応募者の方にとっても確実に安心材料になっていると思います。

――もともと健康をサポートする御社の事業内容と、社員の健康を大切にする健康経営の相性は抜群。フレイル予防にも役立つお客様のための『歩こう会』などのイベントにも力を入れていますし、自社の健康経営がお客様へのサービスにも繋がっていくのではないでしょうか。

吉田さん:そうですね。今は『歩こう会』にしても、どうしても大阪、東京の開催になりがちなので、離れた場所にお住まいのお客様にご参加いただくのが難しくなっています。例えば、日本ウォーキング協会さんは、全国でイベントを開催しているので、そこにお客様と当社の社員が一緒に参加させていただくのもいいかもしれません。そういったことも考えながら、事業と健康経営のシナジーを高めていきたいですね。

――健康経営を起点にした新規事業も生まれてきそうですね。

吉田さん:はい。ワダカルシウム製薬は、ただ単にOTC薬品や健康食品の製造・販売をする会社ではなく、トータルにお客様の健康を考え、ソリューションを提供できる会社になるべきなのではないかと考えています。そのツールの一つがOTC薬品や健康食品であり、従業員の健康の先にユーザーの健康があるということでもあります。トータルに健康をサポートする企業に進化するためにも、健康経営に取り組むことがより重要になってくるのではないでしょうか。

【取材後記】

今回は、健康経営の立ち上げからブライト500認定までのストーリーを推進チームの皆さんに語ってもらうことで、ブライト500認定を目指す企業や、自社の健康経営でお悩みの担当者の方々にとって、とても参考になるインタビューとなりました。特に健康診断やメンタルヘルスに加え、エンゲージメント向上の取り組みを始めていることが印象的でした。健康管理軸(身体と精神の健康)だけでなく、環境軸(コンフォート+コミュニケーション)の強化を進めており、今後も健康経営のあるべき姿を私たちに見せてくれることでしょう。

<企業データ>

会社名:ワダカルシウム製薬株式会社

事業内容:医薬品・健康食品を製造販売

所在地:〒534-0024 大阪市都島区東野田町4丁目1-17

資本金:9,800万円(1998年2月1日増資)

社員数:56名

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