インターン生が見た健康経営企業の魅力【後編】

健康経営は、従業員の心身の健康に配慮することで、一人一人の生産性や創造性、さらには働きがい、生きがいを高めていくもの。そのことは、働く側にとって大きな魅力となり、就活生へのアピールポイントにもなります。今回は、三共精機のインターンシップに参加した学生の目に健康経営がどう映ったのか。また、受け入れる企業側にどのようなメリットをもたらすかについて取材しました。(取材:健康経営の広場/IKIGAI WORKS代表  熊倉 利和)

【2021年三共精機インターンシップ参加者】

■井上美玖(京都光華女子大学)

■橋爪佑太(京都文教大学)    

■山内月乃(同志社女子大学)   

■山本真輝(龍谷大学 )

1.16年目を迎えた三共精機のインターンシップ

前編では、インターン生が健康経営について企業にインタビューするなどし、その魅力に触れていきました。後編では、インターン生を受け入れた三共精機の石川会長と事務局の松本さんにインターン生を受けいれるようになった経緯やメリットなどを聞きました。

熊倉:御社ではいつから、どんな目的でインターン生の受け入れを始めたのですか?

石川会長:今回の2021年インターンシップで16期目、つまり16年目です。きっかけは、当社の広報や情報発信を依頼していたコンサルタントの方から、「御社のことを学生に知ってもらうには、インターンシップというやり方もあります」という話を聞いたこと。それで、インターンシップ事業を行なっている大学コンソーシアム京都で受け入れのエントリーをしたんです。

熊倉:なるほど。大学にではなく、大学コンソーシアム京都に依頼したのはなぜですか?

石川会長:当時、特定の大学との接点はありませんでしたし、仮に特定の大学から受け入れることにしてしまうと、その大学とだけのやりとりになってしまいます。その点、大学コンソーシアム京都でエントリーすると、どの大学の学生に来てもらえるのかわからないので、結果的に幅広い大学とお付き合いできるところも魅力でした。

熊倉:御社がインターンシップを始めた頃と今では、インターン生の意識なども変わってきていますか?

石川会長:そうですね。16年前は、インターンシップ自体、今ほどメジャーなものではありませんでした。その中で応募してくれる学生は、「学校で学んでいることを実地で試してみたい」「自分を成長させたい」といった意識を持っているしっかりしている人が多かったですね。

現在では、インターンシップは一般的になり、企業としても採用活動の一環として行っているところが多いですし、学生も就職の実績づくりとして参加している面があります。ですから、そういう意味では意識の高い学生だけでなく、みんながやっているので自分もやらなきゃという人も含め、幅広い学生が参加するようになっていますね。

2.大学と接点ができ、採用でもメリットが

熊倉:インターンシップを続けてきて良かったと思う点は?

石川会長:これまでに60人くらいの人が三共精機のインターンシップに参加してくれ、京都にあるほとんどの大学から来てもらっています。嬉しいのは、うちのインターンシップを経験した人が他社に就職後も、またオブザーバーとして、仕事の合間に参加してくれること。今回も東京、仙台、タイ、韓国にいるインターンOBたちが「自分たちの時はこうだったよ」とアドバイスをしてくれたり、学生の疑問に答えてくれたりしています。ですから、インターン生とそのOBという新しい縦の繋がりも生まれています。

それと、学生はインターンシップに参加しようとした時、まず学校や先輩に聞いて情報を集めますので、その際、「三共精機のインターンシップは評判がいい」「参加して良かった」と言ってもらえることも多く、学生たちへの認知度を高める広報としても役立っていると感じています。

熊倉:そのほかにも社内的なメリットはありますか?

石川会長:今年のインターンシップのテーマは健康経営ですが、近年は環境、CSR、SDGsなどについてもインターン生にレポート作成に取り組んでもらっています。環境、CSR、SDGsといったことには、会社としてあまり手をつけられていませんが、インターンシップがあるからこそ学んだり、取り組むきっかけになるのではないかと思っています。

熊倉:インターン生に担当はつくのですか? 

松本さん(事務局):はい。一人一人にインターン生と年齢の近いブラザーがつきます。仕事をしながらインターン生の面倒をみるので大変な部分もあるかと思いますが、彼ら自身、楽しみながらやってくれていますし、日が経つごとに熱が入っていきますね。

石川会長:ブラザーになってくれる若い社員は、普段の仕事では上司や先輩から指導を受ける立場。それがブラザーを務めることで逆の立場になります。そうすると、人を指導したり、何かを伝えたりすることの難しさに初めて気づく。普段、自分を指導する時も先輩たちはこんなに苦労しているんだなと想像できるようになるんです。

社外的なメリットとしては、やはり大学との接点ができること。大学と接点ができると、新卒採用の際も説明会でブースを出させてもらえたりします。うちくらいの中小企業ですと、大学によってはブースを出せない時もありますから。

実際、松本などは採用も担当しているので、大学に行って説明会をすることも多い。そんな時、大学の事務局の人と「○○年にインターンに来てくれた○○君は元気ですか?」といった話にもなり、信頼関係や絆も生まれてきます。

大学と関係ができると新卒に限らず、中途採用の話も出てきますし、行政や商工会議所、ジェトロ、留学生、障がい者の方々などとの接点も増えてくる。当社のインターンシップの実績が、採用など他の部分に好影響を与えてくれています。

3.人として長く付き合っていくことが大事

熊倉:今回はインターン生が外部の企業にインタビューをしました。学べることが多かったのでは?

石川会長:そうですね。大橋運輸さん、アップコンさんのお話を聞いて、「こんな会社があるのか!」と彼らもびっくりしたと思います。就活で会社を選ぶ際の視点も広がったと思いますし、会社に入った後、その会社の健康経営を推進する役割を果たしてくれるかもしれない。当社としても健康経営に取り組んだからこそ、健康経営に力を入れている他の企業さんとも出会えましたし、学生に健康経営について知ってもらえる機会を作れたことが嬉しい。

熊倉:今ではとてもうまくいっていますが、インターンシップを始める時は反対もあったのでは?

石川会長:はい。確かに、インターン生を受け入れたからといって、その学生に入社してもらえるとは限りません。ですが、うちのお客さんは上場企業が多いですし、インターン生がその会社に就職すればお客さんになってくれる。あるいは、仕入れ先、銀行に勤めてくれるかもしれない。そうして、彼らが三共精機に恩返ししたいと外からサポートしてくれたらこんなにいいことはないじゃないかといった話を半分冗談でしていました。

基本的には、当社に就職する、しないではなく、人として付き合っていくことが大事だと思っています。間口を広くして色々な学生さんが自由に出入りできるようにして、その中でうちに入りたいという人がいれば嬉しいですし、面白いインターンシップになるんじゃないかと思っているんです。

4.インターン生によるプレゼンテーション

2021年9月3日のインターンシップ最終日。井上美玖さん、山本真輝さん、橋爪佑太さん、山内月乃さんの4人は、インターンシップの成果をまとめ、社員や大学コンソーシアム京都の上野さんが見つめる中、プレゼンテーションを行いました。

4人が提案するにあたり、「健康に働くことで幸せになる土台を作る」という三共精機の企業姿勢。三共精機の社員にアンケート調査を行い、頭痛、腰痛、肩こりなど体の痛みを抱えている人、運動不足の人が少なくないという現状。そして、在宅勤務をする人の健康サポートがまだ十分でないことを踏まえ、4人が提案したのは、三共精機オリジナルのエクササイズ動画、略して『サンエク』の配信でした。これは、動画を利用し、社員だけでなく、ステークホルダーも含め、みんなで一緒に運動するイベントを開催するというもの。イベントに参加した人は、ポイントやご褒美をもらえたり、健康推進カードやポイントカードの配布、管理方法なども含め、緻密に考え抜かれた見事な提案内容となりました。

4人プレゼンテーションの後は、質疑応答が開かれました。

伊東社長:とても素晴らしいプレゼンでした。私の方からは、「健康にとって一番大切なものは何であると感じたか?」「三共精機の社員の健康度合いは、どの程度であると思ったか?」「三共精機の社員と接する中、さすが社会人だなと思った点は?」という3つの質問をさせてください。

井上さん(インターン生):はい。私が健康にとって大事だと思ったのは、働きやすい環境です。ストレスなく働けることが健康に繋がりますし、そのためには社風なども含め、環境がとても大事であると感じました。三共精機ではどの部署に伺っても、皆さん明るく、上下関係なく、ワイワイ楽しそうに仕事をしていますし、社員同士がとても仲がいいと感じました。有給休暇も取りやすいという声も聞きましたし、健康度合いはとても高いのではないでしょうか。

さすが社会人だなと思った点は、私の場合、「こうではないか」と言われたら、その通りだとすぐに納得してしまいますが、三共精機の社員さんたちは、「こういう面から考えるとどうなるだろうか?」といった風に様々なものの見方をされていて、さすがだなと感じました。

山本さん(インターン生):健康にとって大事だと思ったのは、大橋運輸さんを取材した時にお聞きした「治療より予防」。病気になってからどうするかではなく、ならないために何をするかということです。特に長寿社会を迎えるにあたり、健康寿命を伸ばすことがこれからとても重要になると思います。

社会人としてすごいなと感じた点は、物事を表面的ではなく、根本的なところから見ているところ。私たちがレポートや提案を作成する際も、「これはなぜ?」「具体的には?」と常に問いかけてきてくれ、そのお陰でレポートを完成させることができました。

奥村さん(三共精機フィリピン駐在):私が皆さんの提案を聞いて一番すごいと思ったのは、社内だけでなく、外部との関わりを考えていたこと。なぜ、外部の人たちと健康づくりを共有しようと考えたのですか?

山本さん(インターン生):三共精機さんは「ものづくりの課題解決業」。製造業をはじめとしたお客様の課題を解決する仕事ですので、それを健康経営にも活かすべきなのではないかという意見が出ました。そこから、健康づくりにおいても自社だけでなく、関わる全ての方々の健康を促進していくことが三共精機さんならではの健康経営のあり方だと思い、そのような提案となりました。

奥村さん:おっしゃられた通り、ものづくりの課題解決業というのは、お客様を中心としたステークホルダーの方々があってこそ。まさにそれが私たちの仕事の本質。皆さんとは年齢が大分離れていますが、その言葉に深く感動しました。

5.インターンシップを終えて

そして、一人一人が今後のことやインターンシップについての感想を話してくれました。

井上さん(インターン生):最初は不安が大きかったですし、初めて会う4人で新しいものを作っていけるのだろうかと心配もしていました。ですが、レポートをまとめる際も、「それはどういう意味?もっと聞かせて」と、社員の皆さんが前向きに意見や考えを引き出してくれて助かりましたし、この4人だったからこそ満足いくものが作れました。今は達成感でいっぱいです。

山本さん(インターン生):大学に入ってからこれほど充実した夏休みを過ごせたことはありません。最初に3人と会った時も、「あっ、この4人でならインターンシップを成功させることができる」と感じました。実際、それぞれの個性を活かしながら頑張ることができ、本当に良いチームだったなと思います。私はもともと人をまとめることが苦手で、それがコンプレックスでした。ですが、今回リーダーを任され、積極性も出て成長できたのではと思っていますし、この経験を就活にも活かしていきたいと思っています。

石川会長:とても素晴らしい提案をしてくれました。しっかり受け止め、経営や仕事にも活かしていければ、会社としてさらに一歩進めるのではないかと感じています。『サンエク』もぜひ実現させ、4人に見てもらいたいと思っています。本当にご苦労様でした。以上を持ちまして16期インターンシップ報告会を終了したいと思います。

【取材後記】

近年、大学生のインターンシップといえば、就職活動、採用活動の一環として捉われがちになっています。ですが、三共精機のインターンシップは、インターン生が入社する、しないに関わらず、人として大切に、長く付き合っていくという想いに溢れたものでした。そういう三共精機のインターンシップだからこそ、健康が個々にとってだけでなく、いかに企業にとって重要であるか、さらには自分が仕事に何を求めるのか、生きがい、働きがいについて考える良い機会にもなっていると感じられました。そして、そんな三共精機は健康経営やインターンシップのあり方、可能性を広げていってくれる企業としてさらに期待が集まっています。

<企業データ>

■三共精機株式会社

事業内容:2019年経済産業省 新・ダイバーシティ経営企業100選認定。2018年、2020年、健康康経営優良法人認定、2021年同認定ブライト500認定。1948年に設立された機械・工具・測定機器・装置等を扱う専門商社。現在京都本社・滋賀・名古屋・岡山とフィリピン、マレーシアに販売拠点を置き、企業の社会的責任やSDGsを社員全員が考えられる土壌を実現。

本社所在地:京都市南区吉祥院九条町49番地

従業員数:74名

http://www.sankyo-seiki.com/

健康経営を支援する会員制度