ワークライフバランスを意識した社員満足度第一の健康経営とは

ワークライフバランスを意識した社員満足度第一の健康経営とは

理由なしで月に40時間行える「在宅勤務制度」や、コアタイムのない「フレックスタイム制」を導入しているボッシュエンジニアリング株式会社。19世紀からワークライフバランスに関する革新的な取り組みを行ってきたボッシュイズムを受け継ぎ、事業に上手く合わせながら「健康経営」に取り組んでいらっしゃいます。そんなボッシュエンジニアリング株式会社代表取締役の龍﨑 浩太郎さん、ヒューマンリソース部マネージャーの高原 美香さん、管理部シニアマネージャーの若山 宏樹さんに、健康経営についてのお話を伺ってきました。インタビュアー:株式会社セルメスタ 代表 熊倉 利和


1.従業員がなにより会社の資産!従業員のことを考えて、コアタイムなしのフレックスタイム制は生まれた

- はじめに、ボッシュエンジニアリング株式会社のグループ内での位置付けや、事業概要を教えていただけますか?

龍﨑 浩太郎さん(以下、龍﨑さん):私どもボッシュエンジニアリング株式会社はボッシュの100%子会社です。メガサプライヤーのボッシュが得意としていない「少量生産のプロジェクト(お客様の要望に合わせて設計する製品)」を中心に、エンジニアリングサービスやモータースポーツの製品販売をしています。弊社は2006年に、本社があるドイツ以外ではじめての海外拠点として設立されました。


- 事前のヒアリングで、ボッシュの経営理念とボッシュエンジニアリングの健康経営が似ているとお聞きしました。

龍﨑さん:ボッシュの創業者ロバート・ボッシュは、ワークライフバランスは「会社にとって最も経済効果の高い施策であり、労働者の生産効率を保持するのに最適な方法である」という企業理念を持っていました。そのためボッシュ社は労働環境改善や福利厚生などに先進的で、19世紀の終わりには9時間労働、1906年には業界に先駆けて8時間労働を導入していたそうです。さらに、1910年には土曜日半日休暇や有給休暇制度を導入するなど、当時にしては非常に革新的な制度の数々を導入し、つねに業界に先駆けて労働環境改善を行っていました。このような経営理念がベースとなって我々の「健康経営」につながっていると思いますので、似ているというよりは「受け継いでいる」という表現になるかもしれません。


- すごいですね!御社に100年遅れで世間が追いついてきたと言っても過言ではないですね(笑)その当時の日本では考えられないほど、本当に先に進んでいらっしゃいますね。

皆さん:そうとも言えるかもしれませんね(笑)

龍﨑さん:弊社も「従業員がなにより会社の資産であり価値である」と思っています。というのも、ボッシュエンジニアリングは自社製品といえるものを持っておらず、ボッシュが作った製品にお客様のニーズに合わせたアプリケーションやソフトウェアを追加して提供しています。そのため、サービスを提供するために最も大切な資産が従業員となるわけです。大切な従業員が会社に居続けてもらうためにも、福利厚生や労働環境の満足度が重要になると考えています。


- では、龍﨑さんは経営をする立場として「創業者(ボッシュ)の思い」を踏まえて行っている施策はありますか?

龍﨑さん:ボッシュジャパンと見劣りしない条件を用意するように尽力しています。弊社はボッシュから独立しているので、採用活動を自分たちで行わなければなりません。そうすると会社としては規模が小さく、なにかアピールをする必要があるからです。また、弊社は労働組合がないのですが、逆に社内ルールを大胆に変更できるという面もあります。そのような縛りが少ないことは、従業員にとってもメリットがあると思っています。エンジニア達が誇りを持って仕事ができるような条件(給与面など)に変えて、「エンジニアがハッピーな会社作り」を出来ることが強みだと思っています。


― なるほど。従業員第一の姿勢がここでも活きてくるわけですね。

龍﨑さん:業界でも健康経営の先駆け的な存在のボッシュに負けないように意識していますね。あとは人事ローテーションなどで転籍があった場合に、給与面など条件が変わると嫌がられますので(笑)人事ローテーションはどんどん回していきたいと思っています。


― ちなみに現在50名ほどの社員さんがいると思いますが、ボッシュエンジニアリングに採用された社員さんと、外部からの転籍者などの割合はどれくらいですか?

龍﨑さん:ほとんど私達で採用したプロパー社員です。今ドイツのボッシュエンジニアリングからの出向者が3名、国内グループ会社からの出向者が数名おりますが、他の社員は基本的にプロパー社員です。設立当初は社員の半数近くがドイツからの出向者だったのですが、その分サービスの単価が高くなっていました。はじめはそれでも受注できていたのですが、だんだんと値段の高さを指摘されるようになり、私達で従業員を雇って育てるように改善していきました。


― 出向者の割合を減らすために、ローカルの日本人を育てていったということですね。

龍﨑さん:はい、そのため現在はほとんどプロパーの社員になっています。しかしながら、現在日本のエンジニアリング担当者だけでは全国の顧客に対応できず、ドイツ本社と共同で業務を行っています。そうするとコミュニケーションのためにどうしても時差に対応する必要があります。時差があるミーティングに対応するため残業になるのは問題ですので、「コアタイム」のないフレックスタイム制を導入しています。コアタイムがある場合、コアタイムに縛られて就業時間が伸びてしまうことがあるためです。フレックスタイム制は多くの企業が導入されていると思いますが、コアタイムがないのは珍しいと思います。これは親会社のボッシュも例外ではなくて、ボッシュではコアタイムがないと逆に業務に支障が出てしまいますので、このやり方は弊社だけ導入しています。

― ボッシュとボッシュエンジニアリングでそれぞれ独自の進化を遂げている感じですね。

龍﨑さん:そうですね。直接部門を持たないという点から大きな違いが生まれていると思います。

2.生産性向上に加えて、従業員の自主性を育む「在宅勤務制度」

― こういった活動をアピールするためにも「健康経営優良法人認定」は適していますよね。この認定を取るきっかけとして、ボッシュからの呼びかけなどはありましたか?

高原 美香さん(以下、高原さん):いえ、弊社自ら取りたいと志願しました!

― 素晴らしいですね!

龍﨑さん:彼女は人事マネージャーとして、弊社のような小さな会社をどうやってアピールしていくかを常に考えてくれていました。「採用の際にもロゴマークが使えるのはメリットですよ」と。そこで「健康経営優良法人認定」が候補に挙がり、今回の取得に繋がりました。また、毎年の更新という目的で、経営状態の維持ができるという点も良かったですね。


― ワークライフバランスと健康経営が上手くマッチしている部分はありますか?

龍﨑さん:昨年から導入した「在宅勤務制度」は、理由なく月に40時間まで可能です。つまり、育児や介護などの目的無しでも申請できるということです。たとえば、出張時に会社に戻ってくると効率が悪い場合に、在宅勤務を選択できると生産性を上げることができますので。従業員をあまり管理していないように見えるかもしれませんが、個人の自立性を求めた結果ですね。「きちんと自ら業務管理ができる人であれば働く場所は問わない」という流れになっています。これは我々だけでなく、ボッシュグループ全体がそのような雰囲気になっています。


― すごいですね。お子さんが小さいからとか、ご両親が介護状態だからという訳ではないのですね。

高原さん:育児や介護であれば、また別途プラスの時間を認めています。全体で1週間の半分まで(週に20時間まで)在宅勤務ができるようになっています。


― さらに在宅勤務時間が伸びるのですね。では、在宅勤務と通常勤務の割合や、利用度合いはどのくらいでしょうか?

高原さん:弊社の基本時間が8時間で、基本在宅勤務が40時間ですので、基本は最高5日分になります。さらに育児・介護の場合は時間が伸びたり、時短勤務と併用したりもできるのでかなり柔軟な働き方ができると思います。利用度合いは申請書ベースだと50名のうち4割が利用しています。いまのところ、育児・介護として利用している人はおらず、みんな月40時間内で対応しているようです。

- では40時間のうち、みなさん大体何時間くらい利用されていますか?

高原さん:正確な数字が出なくて申し訳ないのですが、ほとんど40時間フルで使っているイメージですね。毎日5~6人が利用していると思います。


- その在宅勤務制度をよく利用するヘビーユーザー達から、「時間が足りない」といったような声は出ていませんか?

龍﨑さん:いまのところそういった意見は出ておらず、満足して使ってもらえている印象です。というのも完全導入をする前に試験運転を一部で実施して、不満や使いにくさを先に潰しました。その結果や、ボッシュも40時間で行っていることから、40時間を基準にしようという結論に至りました。しかし、時間の取り方、すなわち1日単位で取れるのか、時間単位で取れるのかという点は少し議論になりましたね。


― 現状は1日単位ということでよろしいですか?

高原さん:いえ、時間単位です。というより1分単位で自由に使ってもらっています。なぜなら、1時間の会議のために1日単位や半日単位でしか取れない制度ですと、二の足を踏む人が多くなってくると思うので。柔軟に業務に対応してもらえるためにも、また、より制度を利用してもらうためにも時間単位というやり方をしています。


― 上手に仕組みを作られていますね。では在宅勤務での業務管理はどのようにしているのでしょうか?在宅勤務を導入する場合、そのあたりが課題になると思うのですが。


龍﨑さん:完全にシステムで計れている訳ではないのですが、在宅勤務をするには上司から許可をもらうのが前提となっています。つまり、在宅勤務でも仕事の管理ができるかどうかを判断するということです。そして、許可がでれば本人は期間を申請して、なおかつアウトルックのスケジューラーに時間が表示されるようにしています。さらにSkype for Businessのシステムを使い、在宅勤務の時間帯はパソコンがアクティブになっているかどうかがわかるようになっており、その状況で管理する形ですね。極端な話、カメラで状況を写すこともできるのですが、プライバシー等の問題もあるためさすがに使ってはいません(笑)

― 在宅に限らず社外でパソコンを使う場合、ネットワークセキュリティの問題もあると思いますが、どのようなシステムを使っていますか?

龍﨑さん:この問題は弊社だけでは解決出来ませんので、ボッシュと同じやり方で管理しています。ボッシュが安全に仕事のできるセキュリティ面にものすごく力をいれているので、それに便乗している形です。たとえば、インターネットに外部Wi-Fiから繋げる時にアラームが出るようになっていて、ボッシュのグローバルネット経由でアクセスするようにしています。

若山 宏樹さん(以下、若山さん):ボッシュグループのVPNがあって、社外からのアクセスに対応しています。こちらも権限制で、誰でも使えるという状態ではありません。


― つまり、自宅PCからボッシュのVPNに入ることはできないということですかね?

若山さん:はい、プライベートデバイスではアクセスできないようになっていますね。また、自宅PCで作った資料をアップすることも不可能です。業務には弊社から支給されているパソコンを使う必要があります。さらに支給しているパソコンの設定や管理は勝手に変えられないようになっていて、標準ではないアプリをインストールする場合は必要な権限を付与してもらう必要があります。


― なるほど。では在宅勤務制度を利用できる社員の基準というのはどのようなものですか?

龍﨑さん:原則入社1年間は禁止です。さらに仕事ランクというものが個々の社員に設定してあって、そのランクで管理をするようにしています。というのも、仕事ランクが低い社員はそもそも自主的に仕事をする立場ではないので、在宅勤務をする必要がありません。ですので、仕事ランクが上がって、自主的にできる仕事が増えてからしか利用できないような仕組みを作っています。


― お話を聞いていて、すごく上手いやり方をなさっているなと感じています。おそらく他社さんにはものすごく参考になるのかなと。ただ、コアタイムがないということで運用が難しい気がするのですが、いかがですか?

皆さん:正直、特にコアタイムがなくて困ったことはないですね。


- えぇ!そうですか!「時間のすれ違いで連絡が取りづらい」などはありませんか?

龍﨑さん:チーム内でのコミュニケーションはどこでも課題だと思うのですが、プロジェクトマネージャーの仕事が、その管理かなと思っています。

若山さん:また、アウトルックのスケジューラーでスケジュールを把握できるので、それも皆さん上手く活用していますね。Skype for businessとも連動していますので、対面だけでなく電話会議による打ち合わせをすることもあります。

3.グループにおいて独自に取り組む健康経営に向けての個人面談

- 在宅勤務制度やフレックスタイム制の運用について、ボッシュエンジニアリングとボッシュの違いはありますか?

龍﨑さん:フレックスタイム制についてはやはりコアタイムがないというのが大きな違いでしょうか。ボッシュから来る社員には、コアタイムが無いという点が高評価のようです。ぜひそれをボッシュに戻ったら伝えて欲しいと思っています。


― では、健康経営の施策としてボッシュエンジニアリング独自の取り組みはありますか?

高原さん:小さい話からすると、カフェテリアにバランスボールを椅子として設置して、身体を鍛えながらご飯を食べています(笑)あとは年に2回、龍﨑が非管理職全員と個人個人で面談を行っています。

-すごいですね!50名となると大変ですよね?

龍﨑さん:大変ですね。ただ正直な話、「物理的にオフィスが近い社員だとしてもどんな業務を行っているかがわからない」というのが本音です。さらに直属の上司評価と従業員の意見が必ずしも一緒であるとは限らないと思っていますので、この面談で人間が持っている「認知欲」を少しでも満たせればと思い始めました。この面談は、自分のやっている仕事をプレゼンしてもらったり、さまざまな意見を従業員からもらったりして、健康経営につながるダイレクトな意見が聞ける場でもあります。おそらくまだ50名程度なので出来ていることだと思います。ちなみにマネージャーとは話をする機会が多いので行っていません。


- なるほど。普段話しをすることのない社員とも接する機会があるのは良い取り組みですね。

4.「健康経営優良法人認定」取得で、外部に向けてワークライフバランスの取り組みをアピール

- 「健康経営優良法人」を取得して、なにか変わったことはありますか?


高原さん:健康経営優良法人認定マークの効果が少なからずあると思います。会社説明会やホームページでもロゴを使ってアピールができるので、「外部から見ても高いレベルの健康経営をしています」という説得力が増しているかなと思います。そのおかげで、「ワークライフバランスに力を入れているのがわかる」という意見も頂いていますね。さらに弊社は外資系ということもあって、海外経験がある方や外国籍の方の応募も多く、その方たちからも良い評判を頂いています。



- 今後やっていきたいことや、強化していきたい部分はありますか?

高原さん:さきほどの話に続くのですが、これからは、社内はもちろん社外に対しても「社員を大切にする会社です」ということを積極的に発信していきたいです。また、現在具体的な案は出てないのですが、ウチの弱点を挙げるとすれば「食育」だと思っています。ここは強化していきたいと思っているので、ボッシュ健保ともよく話し合いはしています。

― さすがですね!今回のお話、特に在宅勤務制度やフレックスタイム制の部分は本当に参考になりました。本日はどうもありがとうございました。

皆さん:ありがとうございました。

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<企業データ>

会社名:ボッシュエンジニアリング株式会社
事業内容: 自動車部品のソフトウェア開発およびアプリケーション(適合)開発などのエンジニアリング業務およびモータースポーツ製品の販売
所在地:〒220-6218 神奈川県横浜市西区みなとみらい2-3-5クイーンズタワーC棟18F
資本金: 1億円
従業員数:52名

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