200名超が来場!人材派遣健康保険組合とセルメスタの健康経営コラボセミナー
目次
人材派遣業界ならではの特徴を持った「人材派遣健康保険組合」
去る4月、東京ビッグサイトで「第3回 ヘルスケアIT 2018」が開催され、「健康保険組合の活用による健康経営の促進(人材派遣健康保険組合の活動内容と事業主との連携事例)」のセミナーを行いました。
人材派遣健康保険組合(はけんけんぽ)からは常務理事の伊藤康子氏(写真左)、業務部長の佐藤貴弘氏(同右)、そしてモデレーターとして株式会社セルメスタ代表・熊倉利和が登壇。まずは、はけんけんぽの概要が紹介されました。
国内最大級の健康保険組合であるはけんけんぽは、315事業所、50万人以上いる加入者の8割を女性が占め、派遣元が変わると保険もリセットされることから、平均在籍年数が短いという顕著な特徴が見られます。また設立当時32歳であった平均年齢が、現在は40歳近くにまで上昇。被保険者のボリュームゾーンは40~44歳ということで、「派遣社員は若い女性が多い」というイメージは、もはや一昔前のものになっていると説明がありました。
さらに、健康経営についてもポイントとなる発言がありました。
一般的に正社員が主な対象であると思われがちな健康経営への取り組みについて、伊藤氏は「今日会場にお越しの皆さんの中には、派遣社員をご利用されている方もいらっしゃるでしょうが、(使用者側の立場に立つと)お休みがちな派遣社員を契約更新したくありませんよね。派遣社員だからこそ、健康であることが雇用継続に繋がると思っています」と一言。見過ごされやすい人材派遣業界における健康経営の重要さが浮き彫りになりました。
1.健診リスクに応じた情報提供
続いて、はけんけんぽの保健事業が紹介されます。「被保険者の在籍年数は短いけれど、その中でやれることは全部やろう」と、特に生活習慣病発症予防に力を入れていると伊藤氏。意気込みが伝わってきます。
熊倉もレセプトや健診データによるエビデンスを持った専門家集団である「健保」と連携することで、健康経営のPDCAサイクルにこのようなエビデンスが加わるメリットは大きいと語りました。
まず一つめの事業は「健診リスクに応じた情報提供」。
健診の結果を知らせるだけで終わりではなく、健診結果によって判明したリスクに応じて、独自に6パターンの情報通知や電話での保健指導などが行われます。
例えば、最もハイリスクな方に送られる通知書の見出しは「あなたのからだは、このままでは危険な状態です」というショッキングなもの。一刻も早く病院にかかってほしいという切迫した状況が伝わります。
また、派遣先企業では就業中に電話での健康指導に応じにくいことから、夜間に電話をするなどの配慮もされていることが分かりました。
2.コラボヘルス
「コラボヘルス」とは、健保と事業主が連携して従業員の健康増進や疾病予防の取り組みを行うこと。佐藤氏よりその具体的な実績として健診リスクを放置し入院加療に至った事例と、はけんけんぽの指導で通院にとどめた事例の両方が紹介されます。
健診で高血圧(最高血圧185)を指摘されながらも2年間放置していた被保険者は、脳内出血を起こして入院。職場復帰には9カ月を要したといいます。
また、脂質異常を1年間放置していた被保険者は、不安定狭心症で入院、手術を行い、職場復帰に2カ月を要しました。
一方、腹囲が90㎝以上あり、高血圧(最高血圧182)を指摘された被保険者に対して先程の赤色の情報提供通知書を発送した後、保健師がご本人に電話し、すぐに医療機関を受診するようアドバイスしました。これに応じ、直ちに通院を開始したことでリスクが改善され、大事には至りませんでした。
健診結果で予兆が出ていた方々のうち、早期に対応された方と放置された方を比較した結果、放置された方が発症に至ると、自己負担で9倍以上の医療費となり、経済的な負担は格段に大きくなります。さらに健保負担では、52倍以上の費用がかかることになります。
このように健診リスクの高い方々に対して、通知書や電話アプローチをした結果、3年間で入院人数にして223人減、入院医療費5.1億円減という素晴らしい成果を上げることができました。これには熊倉も、「被保険者の平均在籍期間が短く、また勤務地は派遣先企業であるなど、対策が限られている中でターゲットを明確にし、そこにアプローチをすることで確実に実績を出している」と感心します。
3.健康状況シート・表彰
事業者向けの取り組みとして紹介されたのが、「事業所別健康状況シート」と優秀な事業所の「表彰」です。
「事業所別健康状況シート」は、はけんけんぽが加入者の健診データを事業所単位で分析し、その事業所の加入者に顕著な健診リスクや医療コストを一覧化したシートを配布するもの。
事業所側に従業員の健康状態を見える化することで、健康経営について関心を持ってもらおうという取り組みです。
熊倉も「健康経営には現状把握が大切。はけんけんぽ以外でも、こうしたシートを提供する健保は増えてきている」と補足します。
また「表彰」は、はけんけんぽが事業所に対し向上を要請している「健診受診率」や「ジェネリック医薬品利用率」について、改善率の高い事業所を表彰するもの。盾も授与され、健康経営に関心の高い事業所であることを内外にアピールできます。
4.家庭常備薬のあっせん
はけんけんぽでは、上位疾病である「新生物(ただし、子宮筋腫等の良性新生物が多い)」に次いで、風邪、鼻炎など「呼吸器系疾患」の受診数が多く、家庭常備薬も重要な役目を果たしていることが説明されます。
セミナー来場者には、被保険者が宅配便で常備薬を購入できる「家庭用常備薬斡旋ご案内」の見本を配布。さらにこの斡旋では、大手メーカーの常備薬を市価より手ごろに購入できる「特納品」が利用でき、被保険者の負担が軽減されることも分かりました。
「健康経営銘柄・ホワイト500」取得状況
ここまでご紹介してきた取り組みが功を奏してか、2018年には、はけんけんぽ加入事業所から「健康経営銘柄」へ選出される事業所が登場、「ホワイト500」にも6社が選定されるなど、健康経営の推進にも寄与している様子が伝えられました。
健康保険組合を有効活用して健康経営を!
最後は熊倉が今一度「こうした事業や取り組みをゼロから作るのはとても大変なこと。健保を有効活用して、健康経営を進めてほしい」と訴えます。「健保と事業者、一緒にやることが確実な成果になる」という力強い一言は、会場に集まった人々にも深く刻まれたのではないでしょうか。
健康経営に関心の高い人々でびっしりと埋め尽くされたこのセミナー。人材派遣業の特徴にフォーカスした取り組みとはいえ、その内容は様々な健保関係者や事業者にとっても大変参考になるものでした。
このたび、人材派遣健康保険組合のお取り計らいにより、自社の健康経営などの目的で活用をご希望の方に、講演で使用したスライド資料をご提供できる運びとなりました。
ご希望の方は下記よりご連絡ください。
「第3回 ヘルスケアIT 2018」の会場レポートはこちら
<企業データ>
会社名:株式会社 セルメスタ
事業内容:1.一般用医薬品、救急医薬品セット、介護用品、防災用品、健康食品の販売
2.郵送検診事業の受託
3.郵送検診キットの販売
4.インターネットを利用した各種情報提供サービス及び販売
5.医療費抑制事業
6.不動産管理事務の受託
所在地:〒130-8671 東京都墨田区石原4丁目25番12号
資本金:9,900万円
名称:人材派遣健康保険組合
所在地:〒112-0013 東京都文京区音羽2-10-2 音羽NSビル
加入事業所数:315事業所 (H30年2月末現在)
被保険者数:436,643人
被扶養者数: 71,363人