【イベントレポート】Well-Being共創サミット開催 共創の力が理想の世界を切り拓く
名古屋学院大学で開催されたWell-Being共創サミット。東海エリアのブライト500企業8社、学術機関、学生が集結しました。「共創」とは、立場や世代を超えて力を合わせ、新たな価値を生み出すこと。健康経営の事例発表や経営者と学生の意見交換などを通じて、多くの学びが得られました。
〔ゲスト:10名〕
江崎禎英(社会政策課題研究所 所長)
平野 治(NPO法人 健康経営研究会 副理事長)
伊沢俊泰(名古屋学院大学 副学長・社会連携センター長)
上田幸則(名古屋学院大学 商学部 学部長)
豊岡博(名古屋学院大学 商学部 教授)
濱満久(名古屋学院大学 商学部 教授)
小室達章(金城学院大学 国際情報学部 教授)
小林幸生(株式会社あまの創健 常務取締役)
菊谷徹(株式会社あまの創健 健康管理事業部長 )
〔参加企業:ブライト500企業8社18名〕
舘有希子(株式会社エイジェントヴィレッジ ブライト500 4回 コーポレート部)
安倍亜紀( 〃 コーポレート部)
鍋嶋洋行(大橋運輸株式会社 ブライト500 4回 代表取締役)
太美善 ( 〃 管理栄養士)
齋田輝政(齋田炉材株式会社 ブライト500 1回 代表取締役)
川中博人( 〃 室長)
藤井竜次( 〃 ウェルネス事業部 マネージャー)
木下力哉(三幸土木株式会社 ブライト500 4回 代表取締役社長)
宮路浩貴( 〃 企画業務部長)
木村識名( 〃 企画業務部主任)
佐藤真吾(大有建設株式会社 ブライト500 3回 品質安全部MS課 課長)
今尾優里(〃 品質安全部MS課)
中嶋洋子(株式会社トップライン ブライト500 4回 代表取締役)
玉腰純平(〃 業務課 係長)
伊藤正樹(ハートランス株式会社 ブライト500 1回 安全品質管理室長)
辻直樹(株式会社マイシン ブライト500 3回 代表取締役)
柳瀬裕治( 〃 常務取締役)
山田真理子(〃 総務部 次長)
〔Z世代代表 17名〕
龍谷大学 秋庭ゼミナール
名古屋学院大学 濱ゼミナール
〔主催〕
篠原英良(一般社団法人社会的健康戦略研究所)
飯田貴将(一般社団法人ETHICAL EXPO JAPAN 専務理事)
熊倉 利和(IKIGAI WOKRS株式会社 代表取締役)
〔司会〕
田守那瑠(一般社団法人ETHICAL EXPO JAPAN 共創事業部 部長)
目次
1.『共創』の輪を広げていこう
司会:ただいまよりWell-Being共創サミットを開催します。一般社団法人社会的健康戦略研究所の篠原英良様、開会のあいさつをお願いします。
篠原さん: Well-Being共創サミットへのご参加、誠にありがとうございます。
世界保健機関(WHO)では、「健康」とは「肉体的、精神的、社会的に完全に良好な状態」と定義されています。その中でも「社会的健康」は、仕事の環境と深く結びついています。
私たちの研究所は、この「社会的健康」を充実させることを目指して活動を続けています。そして、本日のテーマである「共創」と「Well-Being(心身ともに満たされた良好な状態)」は、社会的健康の向上に欠かせない要素です。
本サミットでは、皆様と共に「共創」と「Well-Being」を深掘りし、新たな気づきを共有し、共に歩む仲間を増やしていきたいと考えております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
司会:続きまして、IKIGAI WORKSの熊倉さんに本日の主旨をお話しいただきます。
熊倉:今、日本には次のような社会問題があります。
- 熱意ある従業員が5%しかいない
- 健康経営に取り組んでも周囲に伝わらない
- 安心感・やりがいを持って働ける企業が限られている
- 人口減少・人口流出と高齢化に伴う人手不足
私たちは、現在の社会問題を解決するための唯一の方法は「人を幸せにする経営」にあると確信しています。「人を幸せにする経営」とは、従業員の働きやすさと成長を支援し、やりがいを創出することで、企業の持続的な成長と社会貢献を目指す経営手法です。
本日は、その取り組みを実践している8社の企業の皆様、大学の先生方、そして学生の皆さんが一堂に会しました。私たちが目指すのは、「共創」の実現です。
「共創」とは、立場や世代、業種を超えた人々が協力し、課題を解決しながら新たな価値を生み出すこと。これによって、持続可能な成長が促進されます。
共に「人を幸せにする経営」を広め、日本の社会問題を解決し、全国の働く人々のWell-Beingを実現させていきましょう。これが、本日のWell-Being共創サミットの目標であり、皆さんと共に目指したい理想の未来です。
この理想の未来の実現に向けて、私たちはWell-Being共創コンソーシアムを構築しました。健康経営優良法人に認定された企業を中心に、業種や役職、世代を超えて地方創生と働きがいの実現をテーマに活動しています。
2.成功事例「ホワイト企業からプラチナ企業へ」
司会:それでは、Well-Being共創コミュニティー会員企業である三幸土木株式会社様より、健康経営の取り組みと成功事例をお話しいただきます。その後、「健康経営の生みの親」である平野治様に講評をお願いします。
宮路さん:皆様、こんにちは。私たち三幸土木株式会社は愛知県日進市で土木工事事業を行っています。健康経営は2014年から開始し、従業員の健康と働きやすさを目指した多様な施策を実施してきました。今年は6月を「Sanko夢眠(ムーミン)月間」とし、従業員に睡眠計測アプリを導入してもらうとともに、睡眠の重要性をわかりやすく伝える活動を行いました。睡眠不足は健康被害だけでなく、現場での事故や熱中症のリスクを高めるためです。このように、従業員の健康とWell-Beingを支えるための必要な取り組みを一つひとつ企画実行しながら、よりよい職場環境づくりを目指しています。
木下力哉社長:最近、「新3K(給与、休暇、希望)」という言葉が注目されています。私たち三幸土木では10年以上前からこの実現に向けて健康経営に取り組み、現在は「ホワイト企業からプラチナ企業へ」と発展を目指しています。
その大きな要となっているのが、チーム経営責任者「TMO(Team Management Officer)」の導入です。社内の中間層である40代を中心に7名をTMOに抜擢し、大きな裁量を与えています。彼らは「給与を上げるには」「有給取得率を上げるには」といった課題解決に取り組み、若手の育成も進めています。
「管理者」という言葉がありますが、必要なのは管理ではなく、相手の思いを察知し、寄り添う姿勢です。上司がこの姿勢で問題解決を推進していくことで、今では若手たちが自ら勉強会を開き、積極的に交流するようになりました。
こうした社内文化が根づいたのは、健康経営に真剣に取り組んできた成果です。会社が従業員の健康を大切にし、希望を持てる環境を提供することで、従業員も安心して成長し、積極的に会社に貢献するようになるのです。
平野さん:素晴らしい事例紹介でした。私たちが健康経営の議論を始めたのは20年前、当時、「なぜ人は決算書の資本の部に入らないのだろう?」という疑問が強くありました。人は育てれば大きな資産になりますが、評価が難しいのが現実です。
しかし、三幸土木さんはその壁を打ち破り、人財を資本と捉えて成長させてきました。スキルアップのためのトレーニングを積極的に行い、見事なチームビルディングを実現されています。
このような成功例を目の当たりにすると、人的資本経営の可能性がますます広がることを実感します。ありがとうございました。
3.リバースメンタリング「営業職に人がこないのはなぜ?」
司会:次のセッションでは、リバースメンタリングを行います。企業の悩みに対して、Z世代の皆様に本気で公開メンタリングを行っていただきます。ご登壇いただくのはWell-Being共創コミュニティー会員企業である株式会社トップラインの玉腰純平さん(業務課係長)、そしてZ世代代表は、龍谷大学である畠中さん、前田さん、中川さんです。どうぞよろしくお願いいたします。
玉腰さん:株式会社トップラインは、愛知県近郊を配送拠点とし、幅広く物流サービスを提供する愛知県小牧市の運送会社です。私自身は現在34歳、もともとはテレビ番組の制作会社のディレクターをしていましたが、激務のために体を壊し、地元に戻ってきました。そしてご縁を得てトップラインに入社。当社が健康経営を熱心に行っていたおかげで、子どもが誕生したとき、育児休暇を取得できました。運輸業に興味があったわけではないのですが、トップラインが大好きです。
そんな私から、Z世代の方々へリアルな悩みを共有させてください。当社では社長と私の他に営業ができる人財がいません。財務も現場の環境も良好なのに、新規開拓を行う営業部門に人が入ってこないのです。Z世代の方々は、中小企業の営業職にどのようなイメージがありますか? 学生さんのリアルな声を今後の採用に活かしていきたいと考えています。
畠中さん:そうですね。スーツにネクタイを締めて、頭を下げるというイメージですかね。ドラマや映画では、大手企業の担当者に厳しいことを言われ、肩を落として帰る姿がよく描かれています。
中川さん:私も率直なところで、「きつそう」の一言です。ただ、就活の企業訪問で営業職の方とお会いすると、話が上手で、オープンなオーラが出ていて、すごいなと感じます。
司会:中小企業と大企業では営業職のイメージが違う、ということが出てきましたが、前田さん、この点に関していかがですか。
前田さん:私は今、就活中で数社のインターンに参加し、中小企業の広告代理店で企画運営に携わらせていただいたこともあります。コンペに企画を出す際、大手企業のブランドイメージが強くて、大変な難しさを実感しました。大企業と中小企業の違いは、ブランド力も大きいように感じます。
司会:みなさんは今、就職活動中だと思いますが、やはり大企業と中小企業に対する見方は違うものですか?
中川さん:私は企業を調べる際、福利厚生を重視しています。条件のよい順に探していくと、どうしても大企業に目がいき、中小企業までたどり着けないことがよくあります。
前田さん:私はSNS運用や企画運営、広告の仕事をしたいので、その分野を中心に就活しています。そして将来は、フリーランスで働くことも視野に入れています。その際、大手企業で働いていたというブランドは、大きな信頼につながるはずと考えてしまうところが、正直にあります。
畠中さん:僕は今、声優を目指して活動しているので、就活はしていませんが、友人を見ていると、そこにこだわる人もいます。ただ、友人からよく言われるのは、「夢を追いかけるなんて、自分にはできない」という言葉。今、受動的な学生がとても多いと感じています。自ら動かなければ、今日のようなプレゼンテーションに触れる機会もほとんどない。「安定」という枠から一歩飛び出す勇気を学生が持つためには、「健康経営を積極的に行い、社員の働きがいを大事にしてくれる企業があるよ」「営業職はおもしろいよ」と伝える機会を、企業側からどんどんつくっていく必要があると感じます。
司会:ありがとうございました。このリバースメンタリングの締めくくりとして、トップラインの中嶋社長、コメントをいただけますか。
中嶋社長:学生さんからとてもいい話が聞けました。「僕には夢がある」「将来はこんな自分になっていたい」という思い、とても素晴らしいです。ただ、理解しておいてほしいのは、仕事はブランド力だけで動いているのではないことです。中小企業だからできるチャレンジングな営業方法も、おもしろさも喜びもあります。そして、私たちは業績もしっかり伸ばし、福利厚生も充実させています。確かに、ブランド力も大事でしょう。でも、何より重要なのは、皆さん自身がやりがいのある仕事をして、自分の強みを育てていくこと。その強みこそが、将来、皆さんの確かな能力となっていくはずです。皆さんの就職活動を心から応援しています。
※このあと、6つのグループにわかれて、「採用」「広報」「エンゲージメント向上」を議題に、大人と学生が真剣に議論を交わしました。
4.健康経営が日本を強くする
司会:それでは本日のWell-Being共創サミットの感想を社会政策課題研究所所長の江崎 禎英様お願いいたします。
江崎所長:私たちのグループにて、学生さんが職場に求めることは「自分を必要としてくれるか」「仲間と支え合っていける環境か」だと話してくれました。私も、これこそが働くことの本質だと考えます。
私が通産省(現・経済産業省)に入った当初、真っ先に注意されたのは「質問するな」でした。「質問すると、先輩の手が止まる。それは日本政府の損失だ。すべて見て覚えろ」と。今ではパワハラに該当します。でも、私たち世代はそれに耐えました。なぜなら、半年後には給料が上がり、昇進も早かったからです。
現在も当時の感覚を引きずる経営者は少なくありません。これを変えることが、もともとの健康経営の原点でした。なぜなら、昔の「健康管理は自己責任」という感覚で経営をしていたら、よい人財は集まらず、会社に発展はなく、社会も改善していかないからです。
私たち世代の転職の理由は、「いい給料が欲しい」「いいポストが欲しい」でした。しかし、現在の若い世代は「自分が成長している感じがない」「この会社に自分が貢献している気がしない」「自分のことをきちんと認めてほしい」というのが転職の最大の理由です。
「今の子たちは根性がない」という人がいますが、それは誤解です。彼らは真剣に仕事に向き合い、働きがいを強く求めています。そうだというのに、「今の子たちは根性がない」と決めつける人がいる。ここを勘違いしてはいけません。
健康経営というと、残業ゼロや禁煙運動、運動促進などのことと考えている人がいます。しかし、最も重要なのは人とのコミュニケーションを深め、自分の能力を発揮できる環境や、子育て中でも安心して働ける仕組みを築くことです。これらを実現していくのが健康経営なのです。それを達成すれば、この国は強くなります。
今回のサミットは、経営者と学生さんが面と向かってコミュニケーションを図れる素晴らしい取り組みでした。このような機会をどんどん創っていってほしいと思います。
司会:ありがとうございます。では、大橋運輸株式会社の鍋嶋洋行社長、本日のご感想をいただけますか。
鍋嶋社長:どんな時代にあっても、仕事の付加価値をつくるのは人です。付加価値を創造できる人財を蓄えるためには、健康経営が重要です。健康経営は、心の余裕を生み出してくれます。その余裕が仕事の付加価値を生み出すのです。本日、みなさんのお話を聴き、学生さんと議論したことは、私自身、大きな刺激になりました。
司会:学生さんにも2人、本日の感想をお願いします。
西村さん:名古屋学院大学の西村です。自分自身が働きがいを見つけることが、企業の成長につながっていく、との話が目からウロコが落ちる思いでした。私も就活中です。皆様の話を聴いて、やりたいことが一つ明確になりました。
畠中:龍谷大学の畠中です。経営者の方やその道のスペシャリストの方と本音で語り合うという機会が、学生にはほとんどありません。就職活動中はいい子の顔をし、印象のよいことを言おうと努めてしまいます。しかし、大人に本音でぶつかっていくって、こんなに楽しいんだと改めて思いました。また、僕の父は、朝5時に家を出て、帰宅が夜の9時という環境で働いていました。健康経営がもっと広がっていけば、寂しい思いをする子どもが減り、世の中、どんどんよくなっていくと感じました。本日はありがとうございました!!
司会:最後に、名古屋学院大学副学長の伊沢様、感想をいただけますか。
伊沢副学長: 本日は、共創と健康経営をテーマにたくさんのお話を聴け、学生にとってもわれわれ教員にとっても、学びの多い時間でした。この健康経営を軸とした皆様とのつながりが、今後も豊かに発展していくことを願っています。
【取材後記】
本サミットでは、企業、専門家、学生が立場を超えて意見を交わしました。学生たちの「自分を必要としてくれる職場を求める声」と、経営者の「支え合い、共に成長する組織づくり」への熱意が結びつき、新しい気づきが次々と生まれました。Well-Being共創コンソーシアムに参加することで、こうした刺激的な対話を通じ、革新的なアイデアや連携のチャンスが広がります。会社の課題の解決に向け、共に新しい価値を創り出す力がWell-Being共創コンソーシアムにはあります。
<企業データ>
会社名:株式会社エイジェントヴィレッジ
事業内容:財務コンサルティング、保険サービス、不動産事業、投資事業、M&A・企業再生支援など
所在地:〒461-0004 愛知県名古屋市東区葵3-22-8 ニューザックビル6階
資本金:記載なし
従業員数:24名
会社名:大橋運輸株式会社
事業内容:自動車部品輸送、引越、生前整理・遺品整理、レンタルコンテナなど
所在地:〒489-0912 愛知県瀬戸市西松山町2-260
資本金:3,000万円
従業員数:99名
会社名:齋田炉材株式会社
事業内容:【ウェルネス事業部】健康経営研究室、GREENLIFE FITNESS【不動産賃貸業】
所在地:〒479-0831 愛知県常滑市錦町4-537
資本金:16,000千円
従業員数:19名
会社名:三幸土木株式会社
事業内容:土木建築一式工事、建築資材の販売、砕石、砂利の採取及び販売、産業廃棄物処理業、前各号に付帯関連する一切の業務
所在地:〒470-0103 愛知県日進市北新町北鶯91番地5
URL:https://www.sanko-inc.net/
資本金:3,000万円
従業員数:103名
会社名:大有建設株式会社
事業内容:建設事業、製品販売事業、アグリ事業(トマト)、環境事業、海外事業、研究事業
所在地:〒460-8383 愛知県名古屋市中区金山五丁目14番2号
資本金:1億円
従業員数:429名
会社名:株式会社トップライン
事業内容:一般貨物自動車運送業、貨物軽自動車運送業、貨物利用運送事業、特別管理産業廃棄物収集運搬業、PCB廃棄物収集運搬
所在地:〒485-0082 愛知県小牧市村中葭池 1244-1
資本金:1,000万円
従業員数:31名
会社名:ハートランス株式会社
事業内容:一般貨物自動車運送事業、第一種貨物利用運送事業、倉庫業、労働者派遣事業
所在地:〒501-6134 岐阜県岐阜市大脇2-33
URL:https://www.heartrans.com/
資本金:2,180万円
従業員数:450名
会社名:株式会社マイシン
事業内容:一般貨物自動車運送事業、貨物自動車利用運送事業、軽車輌等運送事業、倉庫業、引越サービス、産業廃棄物の収集運搬業、損害保険代理業、自動車損害賠償保障法に基づく保険代理業
所在地:〒441-8077 愛知県豊橋市神野新田町字トノ割15-1
資本金:3,900万円
従業員数:179名