【パネルディスカッション】運輸業における健康経営のメリットについて

2022年4月20日に開かれた、ブライト500企業による人的資本経営の実例『運輸業における健康経営のメリットについて』。健康経営に力を入れ成果を出している3社のトップが集まり、今、聞いておきたい実践的な事例やノウハウなども含め、大変興味深いパネルディスカッションが展開されました。

[パネリスト]

■鍋嶋洋行(大橋運輸株式会社 代表取締役社長)

■森川孝司(ベイラインエクスプレス株式会社 代表取締役社長)

■久礼亮一(株式会社ケーロッド 代表取締役) 

司会進行:熊倉利和(健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表)

なぜ運輸業は健康経営に力を入れるのか 

熊倉:先月(2022年3月)、健康経営優良法人2022の発表があり、中小規模法人部門では12,255の法人が認定を受けました。そのうち、運輸業が1,000社を超えており、全業種の中で3番目です。なぜ運輸業は健康経営に力を入れるのでしょうか?

鍋嶋:運輸業は安全がとても大切な業種であり、その安全を支えるのが健康であるということが大きいのではないでしょうか。特にドライバーは、まさに体が資本。健康づくりに力を入れるのは当然なことだと言えます。

森川:そうですね。特に当社の場合、高速路線バスの会社ですので、仕事も昼夜逆転しがち。そのため、より体調を万全にし、安全運転に務める必要がありますから、運転士の体調管理のサポートは不可欠です。

久礼:お二人のお話に加え、運輸業全体のイメージアップということも考えて健康経営に取り組み始めました。世間的にはいわゆる3Kで、働いている人もどこか荒々しいと思われがちですが、そうではなく、経済の血流として国の根幹を支える仕事なんだということも含め、健康をキーワードにしながら業界のイメージを向上させていきたいという強い想いも持っていました。

――具体的にはどのような取り組みをしていますか?

鍋嶋: はい。10年ほど前、ES(社員満足)の一環として健康経営に取り組み始めましたが、大きなテーマとなったのが、定年後も元気に過ごしてもらえるようにすること。例えば、8020運動(80歳で20本の歯を残そう)や禁煙、そして食事。健康に大きな影響を与える食事については、社内に管理栄養士がいて食育指導をしてもらっています。また、毎月、私と管理栄養士、産業医でミーティングを行い、どのような取り組みをするのがいいのかといったことを話し合っています。

朝、乳酸菌飲料を配り、バナナはいつでも食べられるようにしていますし、目に良いブルーベリー、疲労回復に効果があるトウモロコシ、食物繊維が豊富で虫歯予防にもなるリンゴ、夏には夏バテ防止に豚肉やウナギ、冬には風邪予防にミカンといったふうに季節の野菜、果物、魚などを社員に配布しています。

元気に長く働きたいという思いはみんな持っていますし、健康経営に力を入れることで従業員だけでなく、ご家族やパートナーさんのご支持も得られ、定着率も上がりますし、人財採用にもとても良い影響をもたらしてくれます。

森川:もともと当社の場合、安全を全面に打ち出した会社になりたいと思っていました。では、安全とは何だろうかと突き詰めて考えた時、運転士さんのスキル、人柄、そして健康であるという答に辿りつきました。常日頃から「安全には細心の注意を払ってほしい」と口を酸っぱくして言ってもきました。しかし、実際は、長距離バスという仕事柄、昼夜逆転になってしまい、睡眠も食事も不規則なものになりがち。それなのに運転士にばかり責任を押しつける形になってしまい、自分自身、恥ずかしい気持ちになっていました。

そういう状況を打破するためには会社が動かないといけないと思い、健康経営に取り組み始めました。腰痛対策、目の疲れの改善などのほか、脳ドックやSAS(睡眠時無呼吸症候群)検査、さらに心臓と肺の状態によって心疾患、脳疾患を引き起こす可能性がありますから心肺ドックも行っています。

バス事業者は、脳ドックやSAS(睡眠時無呼吸症候群)検査を法律で義務化や努力義務とされているので、取り組んでいらっしゃる会社は多いのですが、大事なのはその検査の結果をどう実際の取り組みに活かしていくのか、その後、体の状態がどうなったかを把握し、フォローしていくことです。

久礼:以前の当社には、どこか下を向いているような従業員が多く、離職率も高かった。そこで従業員同士を繋げ、社内の雰囲気が活性化する取り組みをおこなっていきました。そうすると、「今日のストレッチ教室、楽しかったね」「ウォーキングをしながら、こんな話をしたよ」といった会話が自然となされるようになり、健康経営がコミュニケーションのツールにもなっていきました。その結果、社内に活気が生まれて、社員の笑顔が増えましたし、離職率も下がりました。

以前は毎月のように1、2人辞めているという状態。せっかく新しい人を採用しても辞めてしまう人も出て、まさにイタチごっこのようでした。それが今は辞職者を年に1、2人くらいまで減らすことができています。

この後、「健康経営によって生まれる様々なメリット」「健康経営を推進する上で苦労した点とその解決策」「健康経営と女性活用の相性の良さ」といったことについて話が展開。まさに経営者や健康経営の推進担当者が聞きたい事例やノウハウがどんどん飛び出していきます。このパネルディスカッションの動画は以下にてご覧いただけます。

<企業データ>

会社名:大橋運輸株式会社

事業内容:自動車部品輸送、引越、生前整理・遺品整理、レンタルコンテナなど

所在地:〒489-0912 愛知県瀬戸市西松山町2-260

資本金:3,000万円

従業員数:96人(2022年3月末時点)

 

会社名ベイラインエクスプレス株式会社

事業内容:高速バス・夜行バスの運行/企業送迎バスの運行/人材紹介

所在地:神奈川県川崎市川崎区塩浜2-10-1

従業員数:36名

 

会社名株式会社ケーロッド

事業内容:一般貨物自動車運送事業(食品輸送)/建設業

所在地:本社営業所:〒358-0033 入間市狭山台1丁目2-21/三芳営業所:〒354-0044 埼玉県入間郡三芳町大字北永井959-8

資本金:1000万円

従業員数:55名(2019年 5月現在)

健康経営を支援する会員制度