【イベントレポート】IKIGAI企業×Z世代 公開リバースメンタリング「トラックドライバーを『花形職業』にする広報とは?」(ハンナ)
【イベントレポート】IKIGAI企業×Z世代 公開リバースメンタリング「トラックドライバーを『花形職業』にする広報とは?」(ハンナ)
『IKIGAIサミットinエシカルエキスポ2024 大阪』の中で開かれた公開リバースメンタリング。IKIGAI企業がZ世代に悩みをぶつけることで、さらに魅力的な企業に進化してもらおうという画期的な企画です。今回は、IKIGAI企業のハンナがZ世代の起業家とインフルエンサーにリバースメンタリングを受けました。
〔IKIGAI企業〕
西岡徳行(株式会社ハンナ 取締役)
米澤友海(株式会社ハンナ 経営管理部総務課)
〔Z世代代表〕
・漆嶋将太(株式会社Maison Kasuya 共同代表)
・moe(インフルエンサー 高校生)
熊倉 利和(IKIGAI WOKRS株式会社 代表取締役)
今井:今井 遵(株式会社Headline Japan 執行役員/IVS事務局)
目次
1.社員の挑戦を応援する会社
今井:まずは、ハンナさんについて教えてください。
西岡:当社は奈良県に本社を置くトラック運送会社です。「ハンナ」には、阪神と奈良をつなぐという意味があります。現在の社員数は183名、車両台数は122台で、近畿2府4県を主なエリアとしています。
熊倉:健康経営優良法人の認定制度がスタートした当初から、ハンナさんは認定を取得されています。なんと奈良県では一番早く認定を受けられたんですよ。健康経営のトップランナーです。
今井:それはすごい! 実際にどのような取り組みをされているのですか?
西岡:社員が健康で元気に働き続けられるために、何が必要かを常に真剣に考え、社員教育にも力を入れています。社内アカデミーを実施し、さまざまな学びの機会を提供しています。また、地域のイベントにも積極的に参加しています。
今井:米澤さんは年齢的にZ世代に入ると思いますが、ハンナさんで働いてみて、実際のところどうですか?
米澤:楽しいですね。当社はさまざまなことにチャレンジさせてくれるので、働くことが本当に楽しいです。
今井:素晴らしい! 皆さん聞きましたか?一言目に「仕事が楽しい」って言えるなんて、素敵ですね。米澤さんはなぜハンナさんに就職されたのですか? 物流業界に興味があったのですか?
米澤:商業系の高校に在学中、取得した資格を活かせる仕事に就きたいと考えていました。一方で、大型トラックのドライバーをしている親戚がいて、運送業が身近に感じていました。そこで、ドライバーさんを支える分野で自分のスキルを活かせたら素敵だなと思い、運送業の総務部という仕事を選びました。
今井:そうやって選んだ職場がとても楽しい場所だったなんて、素敵な出会いですね。
2.Z世代と考えるドライバーの魅力と課題
今井:では西岡さん、今回のセッションの目的である、IKIGAI企業がZ世代に悩みを相談する公開リバースメンタリングを始めましょう。まず、相談したいことは何ですか?
西岡:私たちの運送業は、お客様に商品を届けることで、ライフラインを支える重要な役割だと自負しています。ただ、若い世代から見ると、たとえば運転免許を取るのに時間や費用がかかる、働く時間が長く、報酬少ないというイメージがあります。もっとトラックドライバーという職業を「かっこいい」と感じてもらい、なりたいと思う人を増やしたい。どうすれば、トラックドライバーが魅力的な職業になると思いますか?
今井:そうですね。Z世代にトラックドライバーを憧れの職業にするためにはどうしたらよいかということですが、漆嶋さん、どうでしょうか。
漆嶋:そうですね。僕は大学を卒業してすぐに起業したので、トラックドライバーの現状をよくわかっていないのですが、現在、トラックドライバーは「若者がなりたい職業ランキング」でどのあたりに位置しているのでしょうか?
西岡:残念ながら、現時点では上位に入っていません。運送業は「経済の血流」とも言われるように、社会に不可欠な職業です。トラックドライバーも、倉庫の作業員も大切な仕事ですが、「大変な仕事」というイメージが強く、Z世代がなりたい職業に物流関連はランクインしていないと思います。
今井:なるほど。たとえばタクシードライバーも似た職業だと思いますが、最近はタクシー業界も新卒採用に力を入れていて、人気が上がっていると聞きます。Z世代の方々にわかりやすく、タクシードライバーとトラックドライバーの違いを教えていただけますか?
西岡:一言で言えば、タクシーは人を、トラックは物を運ぶという点が大きな違いです。もちろん、働き方も異なります。当社は365日24時間稼働しており、運行管理やトラックの整備など、現場の一人ひとりが重要な役割を果たしています。
熊倉:西岡さんが「365日24時間営業している」とおっしゃいましたが、だからといってブラックな働き方をしているわけではありません。会社は365日24時間稼働していても、社員がオンとオフをしっかり区別できるよう、運行管理がしっかりとシステム化されています。責任ある仕事でありながら、休日もきちんと取れ、残業もほとんどありません。これが現在のトラックドライバーの働き方です。
今井:ドライバーの仕事を間近で見ている米澤さんは、ドライバーという職業をどう見ていますか?
米澤:私は社内の管理部門にいるのでトラックには乗りませんが、ドライバーの方々がどれだけ努力しているかを日々見ています。その努力が私たちの生活を支えていると実感しています。私自身、ドライバーの方々を支えることが働きがいにつながっており、「この仕事は楽しい」と思っています。
漆嶋:素敵ですね。就職経験のない私が言うのも恐縮ですが、企業で自分の立場を築いていくことに、とても尊敬します。
今井:女子高校生のmoeさんは、トラックドライバーの仕事や働くことなどのイメージを持ちにくいでしょうか。
moe:そんなことありません。実は私の母がタクシードライバーをしており、仕事を楽しんで働いています。そんな母の姿を見て、「いいな」と思ってきました。
今井:では、インフルエンサーであるmoeさんに、「この素敵な会社を宣伝してください」と依頼が来た場合、どのように発信しますか?
moe:今、米澤さんが話されたように、運送会社の良いところや働く喜びをSNSなどでどんどん伝えていきます。「こんな社員さんがこんな話をしています」といった具体的なエピソードを共有して、ドライバーさんの働き方を想像しやすい形でアピールしていきます。
今井:素晴らしい! 運送会社で働くことを考えていない人たちにも、「この会社いいな」「ここで働きたいな」と思ってもらえるような打ち出し方が大切ですね。
3.トラックドライバーを花形職業にしたい!
今井:私からも西岡さんに質問してもいいですか? 西岡さんは、トラックドライバーを憧れの職業にするにはどうしたらよいだろうと、Z世代のお二人に相談されました。それは、新卒採用を増やしたいからですか? それとも、新たな風を吹き込むような人材が欲しいということでしょうか?
西岡:そうですね。当社に入社する人を増やしたいというよりは、ドライバーは若い人たちにも憧れる職業なんだ、という風を業界全体に吹き込みたいという思いです。ドライバー不足が進むと、企業がいくら良い商品をつくっても運べなくなります。実際、ドライバー不足は豊かで便利な消費行動を止めかねない大問題です。私たちは、それを防ぎたい。それに、海外ではトラックドライバーは花形の仕事なんですよ。
今井:知りませんでした。それは、高給だからですか?
西岡:それもありますね。やりがいがあり、人の役に立つ仕事だからという理由もあるでしょう。
今井:漆嶋さん、海外では花形職業でありながら、日本では人気職業にランキングされていない。どうしたら若い人たちのイメージを変えていけるでしょうか?
漆嶋:そうですね。今の若い世代は車離れが進んでいます。僕も車の免許を取ったのは去年で、オートマチック限定です。トラックドライバーになるためには大型免許が必要ですが、その手順がよくわからないということが、ハードルになっているかもしれません。
今井:確かに。オートマチック限定でさえ取得が大変なのに、大型免許となるとさらに難しく感じますね。
西岡:当社には、軽自動車での配送もあります。ですから、オートマチック限定免許でも大丈夫です。大型免許がなくても、ドライバーになれるんです。
今井:自分のレベルに合わせた働き方ができるということですね。それなら、その点をもっとアピールしたらどうでしょうか。ハンナさんのホームページを見ましたが、ファーストビューには大型トラックがバーンと美しく並んでいる写真がありました。それも素敵です。その一方で、いろいろなタイプの配送車があるということも写真で見せていけば、Z世代にとって、ドライバーという仕事がもっと身近に感じられるかもしれませんね。
西岡:なるほど。確かにそうですね。広報の仕方がやはり重要だと気づかされました。トラックドライバーを憧れの職業にするには、就職後の姿を想像できるような広報が大切だとわかりました。本当にありがとうございます。
米澤:私もZ世代代表のお二人と年齢は近いですが、社会に出て5年が経つ今では、いつの間にか会社寄りの考え方になっている自分に気づきました。広報も担当していますが、今日の話を聞いて、自分が見落としていた点がはっきりした思いです。いただいたご意見を参考に、今後はトラックドライバーのハードルを下げる広報活動に積極的に取り組んでいきます。
今井:トラックドライバーの仕事は「大変」というイメージがありますが、実は海外では花形職業だというのは驚きの発見でした。私自身、情報を正しく得て、わかりやすく伝え、関心を持ってもらうことの重要性を改めて感じました。貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました!
【取材後記】
ハンナの社員がZ世代の起業家とインフルエンサーからリバースメンタリングを受けた今回のセッションでは、多くの気づきが得られました。特に印象的だったのは、Z世代の視点から見た「トラックドライバー」という職業のイメージです。Z世代代表の指摘により、若い世代にとって免許取得のハードルが高いことや、大型トラックに対する先入観が、ドライバー職への関心を妨げていることが浮き彫りになりました。また、「働きやすさ」や「自分のペースに合わせた働き方」を訴求する広報戦略が必要だというアドバイスも、今後の広報活動に大きな影響を与えるでしょう。Z世代の共感を得るための広報活動に注力することで、ハンナは単なる業界の一企業にとどまらず、次世代のトラックドライバー像を創り出し、業界全体を牽引するリーダーとなる未来が鮮明に見えてきました。
<企業データ>
会社名:株式会社ハンナ
事業内容:一般貨物自動車運送事業・貨物利用運送・通過型倉庫・車輌整備
所在地:〒630-8442 奈良県奈良市北永井町372番地
資本金:1,000万円
社員数: 183名