【イベントレポート】IKIGAI企業×Z世代 公開リバースメンタリング「社員の婚活をサポートする会社、どう思います?」(三幸土木)

【イベントレポート】IKIGAI企業×Z世代 公開リバースメンタリング「社員の婚活をサポートする会社、どう思います?」(三幸土木)

『IKIGAIサミットinエシカルエキスポ2024 OSAKA』で開かれた公開リバースメンタリング。IKIGAI企業がZ世代に悩みをぶつけることで、さらに魅力的な企業に進化してもらおうという画期的な企画です。今回は、IKIGAI企業の三幸土木がZ世代の起業家とインフルエンサーにリバースメンタリングを受けました。

〔IKIGAI企業〕

宮路浩貴(三幸土木株式会社 企画業務部部長)

木村識名(三幸土木株式会社 企画業務部主任)

〔Z世代代表〕

・安井元汰(株式会社PLOWNOW 代表取締役社長)

・夏井ちひろ(インフルエンサー 大学生)

熊倉 利和(IKIGAI WOKRS株式会社 代表取締役)

飯田貴将(エシカルエキスポ2024 総合プロデューサー)

1.社員の婚活に本気で向き合う

飯田:まずは、三幸土木さんについて教えてください。

宮路:私たちは愛知県にある建設業です。健康経営には、認定制度が始まる以前から取り組んできました。社員をもっとも大切に考える会社であり、みんなを幸せにするにはどうしたらよいのかと常に取り組んでいます。

飯田:社員みんなを幸せにしようと取り組んでいる会社とは、すごい! そんな、三幸土木さんの困りごとは何でしょうか。Z世代代表の2人にご相談ください。

宮路:弊社の若手社員が抱える悩みについて相談させてください。建設業界では、異性との出会いの機会が限られています。とくに土木業は3K(キツイ・キタナイ・キケン)といわれ、ただでさえ人が集まりにくい業種であるのに、異性との出会いも少ないのが現状です。ある幹部社員は若手との雑談で「この業界にいたら、結婚ができないのではないだろうか。転職も考えないといけないかもしれない」と相談されたそうです。

飯田:それは、リアルな問題ですね。

宮路:その幹部社員は「君たちの世代なら、マッチングアプリで探したらいいじゃない」と答えました。しかし、若手社員は「マッチングアプリには抵抗がある」という。そういわれると、我々も悩んでしまって。お見合いをセッティングしたほうがいいのか、婚活の面倒を見たほうがいいのか……。そんな突拍子もない議題が上層部の会議で出ました。

飯田:なるほど。難しいところですね。

宮路:私たちの会社は、社員の幸せを何よりも大事にしています。それでも、会社が出会いの場のセッティングまでやったほうがよいのか、という意見が出ました。

そこでZ世代の人たちに聞きたいのは、2つです。「そんなことを真剣に考える会社ってどう思う?」ということと、「会社が本気になって若手社員のためにお相手を探してきたとして、『余計なお節介』と思われてしまわないか」です。

安井:めちゃくちゃおもしろい質問ですね。婚活ですよね。正直に言うと、上司が探してきてくれた女性と交際することになった場合、「最近、〇〇ちゃんとどう?」とネタにされそうで、ちょっと気まずそうです(笑)。とはいえ、業界的に出会いがないのであれば、その場をつくってもらえるのは、僕なら嬉しいですね。

飯田:Z世代の女性代表としては、どうですか?

夏井:確かに気まずさもありますが、若い人の出会いを上司の方々が真剣に悩まれているなんて、温かくて大きな愛を感じます。

安井:実際のところ、社員の婚活を会社がサポートすることになったとしたら、どんな方法で行おうか、というアイデアは会議で出たんですか?

宮路:ええ。たとえば、女性ばかりの会社に営業に行くことがありますので、「若手社員どうしの合コンをやりませんか?」と頼んだらどうだろう、という意見が出ました。でも、先方の会社に嫌がられてしまうだろうと、やめました。

安井:「合コン」とか「婚活」って、言葉選びの問題ですよね。言葉を変えて、カジュアルに考えてはどうですか。

夏井:確かに合コンといわれると身構えてしまいますね。

熊倉:三幸土木さんの社屋には、アイランドキッチンを備えた素敵なキッチンスタジオがあるんですよ。しかも、「三幸ファーム」という自社農園で野菜をつくっている。その農園でとった野菜を参加者みんなで調理し、一緒に食べるというイベントを開催するのはどうでしょうか?

安井:最高ですね! しかもその実行は、会社のブランディングに必ずなります。

飯田:では、木村さんは、三幸土木の女性社員として、この問題をどう考えますか?

木村:会社が婚活をサポートしてくれるのは、弊社の男性陣からしたら嬉しいかもしれません。でも、女性の立場から考えると、営業に来た他社の人に「合コンをしませんか?」と頼まれたら、「大丈夫かな、この会社」と思ってしまいそうです。熊倉さんが話されたように、イベントを開催するならば、婚活や恋愛の縛りで考えず、「若手が交流するイベント」という形にすると、ハードルが下がっていいと思います。

夏井:それ、いいですね。私は大学生ですが、「合コン」といわれると参加をためらいます。でも、「バーベキューをする」といわれると参加したくなる。「みんなで楽しくバーベキューをしましょう」というイベントならば、参加したい女性は多いのではないでしょうか。まずは友達づくりから。これは大切なポイントだと思います。

2.社員のために調理実習を行う

安井:土木業というと、もっと骨太な相談が来るかと思っていました。経営陣が若手の出会いを心配するなんて、めちゃくちゃいい会社ですね。しかも驚いたことには、社屋にキッチンスタジオがあるなんて。それはいったいどういうことなんですか?

熊倉:三幸土木さんの社屋は、斬新で美しいデザインなんですよ。以前、三幸土木さんの社長に「どうしてこんなに素敵な本社ビルを建てたのですか?」と質問しました。すると、「建設業界は『3K』や『ドカチン』といわれたりして、社会的イメージが悪いが、『俺たちは誇りを持って働いているんだ』と伝えたいんよ」と話してくれました。三幸土木さんのあの素晴らしい社屋は、社長や社員さんたちの誇りの表れなんです。

しかも、庭も芝生がとっても美しい。去年、IKIGAI WORKSもその庭でイベントを開催させてもらい、バーベキューと焚火をやりました。三幸土木さんの専務はイタリアンの元シェフで、料理のプロなんですよ。

安井:それはすごい! 専務がイタリアンの元シェフだという会社は初めて聞きました。さらに大きな興味がわいてきました。

宮路:専務は、シェフの経験を活かして、社員たちに調理実習をしてくれています。弊社では、一人暮らしの若い社員が大勢働いています。親御さんとしては「ちゃんと食事をしているのか」と心配でしょう。その心配を、経営陣も持っています。そこで、みんなで調理する機会をつくることで、食の大切さを伝えています。

飯田:調理実習を行う会社なんて、初めて聞きました。

宮路:他にも、多くの社内イベントを行っています。リーダーは社員です。社内に目を向けると、個性的なスキルを持っている人たちが大勢います。元イタリアンシェフの専務には調理実習をしてもらうほか、体育学部出身の社員にはストレッチ講習の先生を、家庭菜園が好きな社員には三幸ファームの管理をお願いしています。

飯田:こうした三幸土木さんの取り組みは、インフルエンサーの視点からはどのように映るものですか?

夏井:仕事だけでなく、自分が持つスキルが活かせるって、とてもいいですね! こういう話を聞いたら、入りたい人が大勢押しかけてきちゃいそうです。

安井:僕たちは、多くのことを固定観念で捉えて、勝手に相手のイメージをダウンさせていることがあります。そのイメージを変えるには、こうやってお互いにかかわっていくことが大事だと、今、痛感しています。

3.Z世代が考えるブルーカラーの魅力

飯田:宮路さん、他にZ世代に聞いてみたいことはありますか?

宮路:はい。Z世代の多くは、1つの会社に留まるより、やはりいろいろな会社を見て、自分のキャリアを定めていきたいと考えるものなのでしょうか。

安井:そうですね。ただ、「いろいろな会社を見てみたい」というと積極的なイメージですが、実際のところ、現在は受け身の子も多いです。少子化の影響で、企業が若い世代を求める人数に対して、若い世代の人数が少ないため、選ぶことができる。その結果、受け身になりやすいのです。僕は、Z世代と企業の共創を起こすブランディングの会社を起業していますが、会社のほうもブランディングをしっかり行って、選ばれる会社になっていくことが大事だと考えています。

夏井:Z世代の採用には、SNSの活用が大事になってくるのではないでしょうか。私たちはSNSを使って調べ物をします。調べようとしなくても、多くの情報が流れてきます。Z世代に印象を残すには、発信する量も大事です。目につけばつくほど印象を残すことができます。

宮路:なるほど。よくわかりました。ありがとうございます。

飯田: SNSを活用したイメージ戦略の重要性ということですね

木村:私からも質問をいいですか? 私はインスタとX(旧Twitter)の担当をしています。最近、Xのフォロワーさんが1万人を突破しました! そのため、ちょっとした発言でバズる可能性もあると思っています。では、どうすればZ世代の心に刺さるような発信ができるのか。私自身、発信の仕方を学んでいる最中で、そのことを教えていただきたいです。

飯田:フォロワー1万人とはすごい! Z世代のバズらせ方。どうするとよいのでしょうか。

安井:Z世代に認知してもらう方法を変えたらいいと思います。ホームページも拝見しましたが、先ほどのお話で聞いたイベントなどを、「会社の色」としてビジュアルでもっと出していってはどうでしょうか。画像が目に飛び込んでくることで、「めちゃくちゃおもしろい会社だな」と若い人の興味をひきつけることができます。インスタなどのSNSでも写真を使って、三幸土木さんが社員さんのために行っていることをどんどん発信すると、これから就職を考える人たちの建設業のイメージを変えていけると考えます。

木村:ありがとうございます。私も年齢的にZ世代に入りますが、今日、2人と話せたことで新しい価値観を得られました。SNSを通して、若い人たちにどんどんアピールしていきます。

飯田:では最後に、私からも質問をさせてください。Z世代の2人は、ブルーカラーと呼ばれる業界の未来の可能性をどのように捉えていますか?

安井:可能性は、おおいにあると思います。どんなことでも、マイナスイメージから入る物事って、それがプラスに転換されたとき、人々に大きな驚きや感動を与えるものです。会社の指導法を少し変えるだけで、イメージが大きく改善することもあります。

「ブルーカラー」というマイナスイメージを、三幸土木さんのように見事にプラスに転換していく。それによって、今の私たちのようにおおいに感動し、イメージを改める人は増えるでしょう。そのイメージ戦略は、会社だけでなく、業界全体を変えていくはずです。

今は建設業にかかわらず、多くの業界で人手不足です。こんなにも若手に向きあってくれる会社はまだまだ少ない。上手に発信し、若い世代に希望を与えれば、「この会社で働きたい」という人は自ずと増えていくのではないでしょうか。

夏井:私も、三幸土木さんのお話を聞けたことで、「就職」のイメージが変わりました。これまでは、「がんばって働かないと、お金をもらえない」というのが就職の意義でした。今は、就職することが「楽しい」に変わったら最高じゃないか、というワクワクした気持ちでいます

飯田:ありがとうございました。Z世代×ブルーカラー×健康経営という3つの掛け算で、アイデアあふれる有意義なパネルディスカッションとなりました。最後に宮路さんから感想をいただけますか?

宮路:Z世代の方々に真剣に相談にのっていただけたこと、嬉しく思います。率直な意見は、大変に参考になりました。今日いただいたアイデアを持ち帰り、若い社員がIKIGAIを持って働ける職場にますますなるよう、改善していきます。ありがとうございました!

【取材後記】

今回の公開リバースメンタリングは、IKIGAI企業である三幸土木がZ世代の新たな視点を積極的に取り入れることで、さらなる進化を目指す挑戦的な場となりました。「社員の婚活を会社がサポートする」という一見突飛なテーマをZ世代にぶつけることで、従来の発想では見えなかった解決策が浮かび上がりました。Z世代の柔軟で斬新なアイデアは、会社の現状打破にとどまらず、業界全体のイメージを一新する可能性をも示したのです。

今回のリバースメンタリングでは、若手社員の幸せを最優先に考える企業と、Z世代の斬新な価値観が融合し、新たな可能性が広がったことが実感できました。リバースメンタリングの効果がIKIGAI企業の未来をどのように変えていくか、今後の展開が期待されます。

〈企業データ〉

会社名:三幸土木株式会社

事業内容:土木建築一式工事/建築資材の販売/砕石、砂利の採取及び販売/産業廃棄物収集運搬業/前各号に付帯関連する一切の業務

所在地:(日進本店)〒470-0103 愛知県日進市北新町北鶯91-5

資本金:3,000万円

社員数:103名

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