【イベントレポート】IKIGAI企業×Z世代 「IKIGAI企業がZ世代に与える夢と希望」(IKIGAI企業サミットinエシカルエキスポ2024 OSAKA)」
2024年6月15日と16日、『IKIGAIサミットinエシカルエキスポ2024 OSAKA』がグランフロント大阪で開催されました。持続可能な社会を目指す学生団体、起業家、クリエイター、企業が集結し、会場は活気に満ちあふれました。特に、IKIGAI WORKSが主催した「〝IKIGAI企業〞とZ世代が一緒に考え創る『働き方のエシカル』」をテーマとしたIKIGAIサミットは、多くの参加者に新たな視点を提供し、大きな反響を呼びました。
〔ゲスト〕
平野治(NPO法人健康経営研究会の副理事長)
〔ゲスト企業〕
宮路浩貴(三幸土木株式会社 企画業務部部長)
木村識名(三幸土木株式会社 企画業務部主任)
西岡徳行(株式会社ハンナ 取締役)
米澤友海(株式会社ハンナ 経営管理部総務課)
〔主催企業〕
熊倉 利和(IKIGAI WOKRS株式会社 代表取締役)
〔第一部司会〕
飯田貴将(エシカルエキスポ2024 総合プロデューサー)
〔第二部司会〕
今井 遵(株式会社Headline Japan / IVS事務局 アライアンス担当 執行役員)
目次
1.「エシカル」×「IKIGAI企業」
まず、司会の飯田氏がIKIGAIサミットの目的とプログラムを発表。次にIKIGAI WORKSの熊倉が登壇し、イベントの背景について情熱的に語りました。
飯田:IKIGAIサミットは3つのセッションで構成されています。この第1セッションは『私たちは何のために働くのか』、そして『ファーストキャリアの新しい選択肢』をエシカルな視点から考えます。エシカルとは、社会や環境に配慮した行動や消費のこと。日本が大切にしてきた『おかげさま』『お互いさま』『もったいない』は、世界的にエシカルとして評価されています。働くこととエシカルを掛け合わせると、どんな新しい価値観が生まれるのか。熊倉社長にお話を伺いましょう。
熊倉:みなさん、こんにちは! 今日はよろしくお願いします。
飯田:まず、IKIGAI企業の定義についてお聞きしたいのですが、『IKIGAI企業』という言葉は熊倉さんの造語ですね?
熊倉:そうです。IKIGAI企業とは、社員一人ひとりのやりがいと企業の成長を両立させ、社会に貢献する企業のことです。社員の成長と幸福を大切にし、各人の価値観や人生の目的を尊重しつつ、持続可能で意義のある社会づくりに取り組んでいる企業が日本にはたくさんあります。
飯田:まさにエシカルな企業ですね。では、IKIGAI WORKSさんは具体的にどのような取り組みをされているのですか?
熊倉:当社は3年前に設立したスタートアップ企業で、日本全国のIKIGAI企業を取材し、彼らの声を広く伝えています。たとえば、学生さんたちと一緒に全国のIKIGAI企業を訪問して、社長や社員の方々の声をインタビュー形式で集め、それらを記事や動画にして、当社が運営するプラットホーム「健康経営の広場」で紹介しています。
飯田:「健康経営の広場」を見ましたが、未来に対する夢と希望に満ちていました。熊倉さんがこの活動を始めた背景を教えてください。
熊倉:私は現在52歳ですが、大卒後、社会人生活を銀行でスタートさせました。その数年後、父が経営していた会社を継ぐことになったんです。その会社では、健康保険組合向けのコンサルティングを行っていました。この仕事を通して社員を第一に考える経営者のみなさんと出会い、それがきっかけで人を幸せにする経営を日本中に広めたいと考え、IKIGAI WORKSを設立したのです。
飯田:まさに熊倉さんの経験から生まれた言葉なのですね。
熊倉:はい。最近は働きやすさを重視する企業が増えていますが、働きがいも同じくらい重要です。IKIGAI企業では、働きやすさと働きがいを両立させ、社員どうしがチームとして成し遂げることで、それぞれがIKIGAIを感じられる環境を作り出しています。このサミットを通じて、Z世代の皆さんがご自身のIKIGAIについて考えるきっかけになれば嬉しいです。
2.IKIGAIサミット第1部:自社農園で社員の健康を支える
IKIGAIサミットは、第1部と第2部に分かれて行われました。第1部の第2セッションでは、三幸土木株式会社の担当者が登壇。健康経営の生みの親ともいえるNPO法人健康経営研究会の副理事長、平野治さんにもお話を伺いました。
熊倉:健康経営研究会の平野さんは、2005年に「健康経営」の概念を提唱し、人の健康を企業の資本と捉える新しいマネジメントの仕組みを構築されました。2017年に経済産業省が健康経営優良法人認定制度をスタートさせた際は、中小規模法人の認定は約300社に過ぎませんでしたが、今では1万7000社を超える規模に拡大しています。
飯田:そんな健康経営の生みの親である平野さんに直接お話を伺えるとは、みなさん、楽しみですね!
熊倉:そして今回、ゲストとして登壇いただく三幸土木さんは、健康経営のトップランナーです。
飯田:それはすごい! ますますセッションが楽しみです。ではまず、三幸土木の企画業務部部長、宮路浩貴さんにお話を伺いましょう。三幸土木さんについて簡単に教えてください。
宮路:はい。当社は愛知県を中心に土木工事を行う企業です。健康経営優良法人の認定を8年連続で取得し、そのうち上位500社が選ばれるブライト500には2021年から4年連続で選定されています。
熊倉:三幸土木さんは、認定制度が始まる以前から、もう10年も健康経営に取り組まれているんですよね。
平野:約10年前、私が東京ビッグサイトで講演したとき、一番前で熱心に聞いてくれていたのが、三幸土木の木下社長でした。講演後、社長が名刺を渡してくれ、「社員がイキイキと働ける会社にしたい」と熱く語ったのを今でも覚えています。それがきっかけで、三幸土木さんとのご縁が始まりました。
飯田:健康経営の認定制度が始まる前に、そんなドラマチックな出会いがあったんですね。
平野:そうなんです。健康経営の概念が誕生してから約20年になりますが、最初の10年はほとんど注目されませんでした。それがようやく変わり始めたのが2012年頃からで、2017年に経済産業省が認定制度をスタートさせたことで、多くの企業が積極的に取り組むようになりました。
飯田:なるほど。三幸土木の社長さんはどうしてそんなに早くから健康経営に興味を持たれたのですか?
宮路:当時、社内で健康に関する講演会を開催した際に社員の健康状態を調べたところ、喫煙率やメタボ率が高かったんです。これが当社の健康経営のスタートでした。最初は野菜をもっと食べるように社員に勧めたのですが、若い社員は「肉より野菜のほうが、価格が高い」と言う。そこで会社の敷地に「三幸ファーム」をつくり、収穫した野菜を社員に配ったり調理実習をしたりする活動を始めました。現在は、ウォーキング大会や「夢眠(ムーミン)」という睡眠に関するイベントも行っています。
飯田:Z世代の社員である木村識名さんは、健康経営についてどう感じていますか?
木村:私は入社して初めて健康経営を知りました。社会人になって一人暮らしを始めていますが、三幸ファームの新鮮な野菜をもらえることが、どれほどありがたいことか。新鮮な野菜と日常的に触れ合うことで、健康経営の素晴らしさを日々実感しています。
飯田:健康経営は難しそうに見えがちですが、生活に根づかせることで社員にとって魅力的な活動になる。とても素晴らしいお話でした。
3.IKIGAIサミット第2部:奈良県で初めての健康経営をスタート
第2部の第2セッションには、奈良県で初めて健康経営優良法人認定を取得された株式会社ハンナが登壇。NPO法人健康経営研究会の平野さんにも引き続きお話いただきました。司会は今井遵さんにバトンタッチしています。
今井:それでは、本セッションは健康経営の生みの親の平野さんと一緒に、株式会社ハンナの取締役である西岡さんと、経営管理部総務課の米澤さんにお話を伺います。まずは西岡さん、ハンナさんについて教えてください。
西岡:私たちは奈良県を拠点にした運送会社で、社名『ハンナ』は主に阪神と奈良をトラックでつなぐという意味を込めています。トラック輸送を中心に、社員の教育や働きがい、働きやすさを真剣に考えています。
今井:米澤さんは総務課なのですね。こうしたイベントに総務の方が参加されるのは珍しいですが、どのような経緯ですか?
米澤:当社の健康経営を担当しているためです。私は入社5年目でZ世代でもあり、若い視点から当社の健康経営を伝えたいと思っています。
今井:それは頼もしい! では、ハンナさんのIKIGAIとは?
西岡:当社では、社員を大切にし、社員とともに成長することをコンセプトにしています。一般的にトラックドライバーは走行距離に応じて給料が決まりますが、当社ではそれに加えて、品質やコミュニケーション能力なども重視しています。結果、社員がやりがいを持ち、お客様にはより高いサービスを提供できる環境を整えています。
今井:健康経営についてはどうですか。
米澤:当社は健康管理のDX化を推進しています。自ら健康を意識し、会社全体で働きやすい環境を作ることで、8年連続で健康経営優良法人の認定を取得してきました。
今井:ハンナさんの健康経営を平野さんは、どの見ていますか。
平野:ハンナさんは奈良県で初めて認定を受け、地域全体に変革をもたらしました。健康経営でも社会に貢献し、それとともに会社の発展にもつなげていっている点が素晴らしいと感じています。
今井:健康経営は、社内に浸透しないと取り組みは形骸化しやすいですが、ハンナさんはここをどう乗り越えたのですか?
西岡:当社では全社挙げての行事を通じて、社員みんなで情報を共有しています。それによって、浸透率を上げています
平野:健康経営を社内に浸透させるポイントは、「インナープロモーション」です。通常、広報というと外に向かって発信していきますが、健康経営に関しては社内報を使うなどして、社内に向けて発信していくことが大事です。
今井:なるほど。ハンナさんは、インナープロモーションを徹底しているということですね。そうなると、総務の今井さんの仕事って、幅広すぎませんか?
熊倉:米澤さんはまだ入社5年目ですが、約150人もの社員の方々の健康経営をしっかりと行われています。それほど、ハンナさんは社員一人ひとりがやりがいと働きやすさを両立しながら、キャリアアップしていく仕組みがきちんとつくられているんです。
米澤:ありがたいことに、1年また1年、プロジェクトを推進する中で知識や経験を積み重ね、今に繋がっていると実感しています。
今井:素晴らしい! キャリアアップの道筋が明確な会社なのですね。僕は今32歳ですが、キャリアプランがこれほど明確化されている会社さんとは初めて出会いました。
4.「働く」ことの価値を再定義する
最後は、IKIGAIサミットの参加者全員がステージに集結。熊倉が総括を述べ、会場の全員で力強く「IKIGAI!」のエールを送り、華やかに幕を閉じました。
今井:サミットの進行中、どんどん聴衆が増えてきて、とてもいい意味で緊張感を覚えながら進行できました。みなさん、本当にありがとうございました。
熊倉:社会人になる前は『働くって大変だろうな』という思いを多くの人が持っていると思います。しかし、仕事のやりがいが生きがいに繋がる働き方があります。それを叶え、人を幸せにするのがIKIGAI企業です。私たちはこれからもこの活動をパワフルに広めていきます。
壇上のパネルをご覧ください。本日の登壇者のみなさんに、ご自身のIKIGAIを書いていただきます。10人いれば10通りのIKIGAIがある。今回のIKIGAIサミットで、Z世代のみなさんには「給料や条件、環境だけでない働き方があるのか!」と大発見していただけたと信じています。
今井:ありがとうございました。では、これから就職活動を始めるZ世代のみなさんがIKIGAI企業を探すためには、どうすればよいですか?
熊倉:そうですね。IKIGAI WORKSでは、『Life Workers(ライフワーカーズ)』というIKIGAI企業を応援する取り組みをスタートさせました。その企業を、当社のプラットホーム「健康経営の広場」やInstagramでどんどん発信していきます。ぜひチェックしてみてください。
今井:最後に、平野さんからも一言お願いします。
平野:私たちが直面する人口減少という大きな課題の中で、健康経営は企業の未来を切り開く力となります。健康で能力を存分に発揮し続けられる人を増やすことこそ、企業にとって最大の資本である『人財』を輝かせる道です。三幸土木さんやハンナさんのように、社員一人ひとりが自分の可能性を2倍、3倍と広げられる環境を会社が築くことで、企業も社会も、より豊かで持続可能な未来を創り上げていけるのです。それこそが健康経営の真の力です。
今井:それでは、これにてIKIGAIサミットを終了します。ありがとうございました!
【取材後記】
私たちはなんのために働くのか。その意義を「エシカル」そして「IKIGAI」という切り口で深掘りしていったIKIGAIサミット。お金や条件、環境だけではなく、社員一人ひとりのやりがいと働きやすさを会社が守ることで、未来を描く働き方が示されました。
特に三幸土木とハンナの取り組みは、Z世代にとって大きなインパクトを与えました。三幸土木は、自社農園を通じて社員の健康を支え、健康経営の最前線を走る企業として、社員の可能性を引き出す環境を提供しています。一方、ハンナはDX化を活用した柔軟な健康経営を推進し、Z世代の社員が自らの手で会社の健康経営を担う姿が描かれました。
これらの企業が示したのは、単なる労働の枠を超え、働くことそのものが人生を豊かにする可能性に満ちているということ。IKIGAIサミットは、Z世代に新たな希望と挑戦の機会を広げる場となりました。
〈企業データ〉
会社名:三幸土木株式会社
事業内容:土木建築一式工事/建築資材の販売/砕石、砂利の採取及び販売/産業廃棄物収集運搬業/前各号に付帯関連する一切の業務
所在地:(日進本店)〒470-0103 愛知県日進市北新町北鶯91-5
資本金:3,000万円
社員数:103名
〈企業データ〉
会社名:株式会社ハンナ
事業内容:一般貨物自動車運送事業・貨物利用運送・通過型倉庫・車輌整備
所在地:〒630-8442 奈良県奈良市北永井町372番地
資本金:1,000万円
社員数: 183名