【イベントレポート】IKIGAI企業と Z世代が一緒に考え創る「働き方のエシカル」(IKIGAI企業サミット in エシカルエキスポ2024)

『エシカルエキスポ』は、持続可能な社会を目指す様々な学生団体、起業家、クリエイター、企業が一堂に会する複合型フェスティバルです。2024年5月25日・26日開催『エシカルエキスポ2024 TOKYO』にはIKIGAI WORKSも参画。『IKIGAI企業とZ世代が一緒に考え創る「働き方のエシカル」』をテーマにIKIGAIサミットが開かれました。

〔主催企業〕

熊倉 利和(IKIGAI WOKRS株式会社 代表取締役)

塗野 直透(株式会社Lentree 代表取締役 /一般社団法人ETHICAL EXPO JAPAN 代表理事)

篠原 英良(一般社団法人 社会的健康戦略研究所 研究員)

〔ゲスト企業〕

坂本 憲史(株式会社ファイブグループ 代表取締役社長)

森川 孝司(ベイラインエクスプレス株式会社 代表取締役)

奥野 洋子(都築電気株式会社 総務人事統括部ヘルスマネジメントチーム チームマネージャー)

司会:今井 遵

1.人を幸せにする企業を全国に広めていく

まず主催者側から熊倉、塗野氏が登壇し、今回のイベントの趣旨や背景についての説明がありました。

今井: IKIGAI WORKSさんは、今、どんな活動をされていますか?

熊倉:はい。全国各地のIKIGAI企業、言い換えると人を幸せにする企業を学生などと一緒に取材し、当社が運営するメディアサイト『健康経営の広場』に記事を掲載しています。また、IKIGAI企業と学生が交流するイベント『スタディツアー』も開催。経営者が「どんな想いで会社を経営しているのか?」「なぜ起業したのか?」といったことを話し、学生がそれについて思い思い質問したり、意見交換することで「自分の生きがいは何か?」「生きがいを実現できる働き方や会社は?」といったことを経営者、学生ともに考えていくもの。ですから、この『スタディツアー』は、本日行う『公開リバースメンタリング』の原型とも言えるものとなっています。

今井:どうしてそういう活動を続けているのですか?

熊倉:私は以前、健保組合に対するコンサルなどを行う会社を経営していました。その関連で健康経営に取り組む経営者にインタビューも行いました。すると、売上や利益よりも社員の健康や働きがい、生きがい、幸せを大事にしている経営者や会社をたくさん知ることができ、「こんな会社があるんだ!」「こんな経営者がいるんだ!」と大変驚くとともに深い感銘を受けました。そういった企業や経営者をもっと広く紹介したい、IKIGAI企業をもっと全国に増やしていきたいという想いでIKIGAI WORKSを起業しました。今回このイベントに参画したのも同じ想いからです。

今井:それは素晴らしい計画ですね。取材する企業はどうやって選ぶのですか?

熊倉:一つの基準としてあるのは、ブライト500などの健康経営優良法人認定を受けている企業。やはり働きがい、生きがいの土台となるのは健康です。心身の健康というベースを築いた上に従業員の働きがいや幸せを大切にしている企業を対象にしています。また、働きがい、生きがいを大切にしたい企業を支援するための各種サービス『LifeWorkers』の提供も始めています。

今井:なるほど。私がいるスタートアップの世界ではなかなか従業員の健康や幸せのためにお金や時間をかける余裕がありません。人件費を抑えながらできるだけ頑張って働いてもらおうとなりがちです。

塗野:そうですね。確かにスタートアップだと従業員に我慢を強いる部分も出てきてしまいます。ただ、従業員のためにできることはお金だけではありません。一人一人、夢ややりたいことは違っています。その人が本当にやりたいこと、生きがいをサポートすることも会社ができることの一つなのではないでしょうか。

従業員の働きがい、生きがいを大切にするから、モチベーションも上がり、会社も利益を出せるのか。利益が出せるから従業員のためになることができるのか。ニワトリと卵のような部分もあるかもしれません。本日、IKIGAI企業の皆さんにそんなお話を聞けたらと楽しみにしています。

2.IKIGAI企業とホワイト企業の違いは?

今井:ホワイト企業という言葉はよく耳にしますが、IKIGAI企業とホワイト企業の違いは何ですか?

熊倉:ホワイト企業の特徴として「労働時間が短い」「休暇が取りやすい」「福利厚生制度が充実している」といったことが挙げられますが、本人はもっと働きたいのに残業を禁止してしまったりすることで、働きがいや成長の邪魔をしている部分も出ているのではないでしょうか。IKIGAI企業とは従業員の「働きやすさ」だけでなく、「働きがい」「生きがい」をとても大切にする会社のことを指します。

塗野:確かに、過度に優しく接する、無理をさせないというホワイト企業のやり方が本人の働きがい、生きがいに繋がっていないケースも多々見受けられますよね。

熊倉:おっしゃる通りです。IKIGAI WORKSでは生きがいを「働く人が幸せになり、組織を成長させ、社会を豊かにするための源泉」と定義しています。そもそも人は多くの時間を仕事に費やします。ならば生活のために仕方なく働くのではなく、自分のテーマを実現するために働きたい。ライスワークではなく、ライフワークです。組織の中で自分のやりたいことに挑戦できる。そのことで組織も成長する。これが働く人と組織の理想的な関係だと思っています。

3.ファーストキャリアの新しい選択肢

続いてIKIGAI企業3社の皆さんも加え、「ファーストキャリア」というテーマで話し合います。

熊倉:では、3人について簡単に紹介させてください。まず森川さんのベイラインエキスプレスは、高速路線バスの会社。従業員をとても大切にされていることで知られています。

森川:ありがとうございます。当社の特徴はお客様の7〜8割が女性であること。バスの車体をピンクのデザインにしたり、男性と女性とでゾーニングしたり、寝顔が見られないなどの工夫も施しています。

熊倉:飲食店を展開させているファイブグループの坂本さんは、実は私と幼馴染。プロントで働いていた頃から「お客様や働く人を幸せにしたいんだ」とずっと言い続けてきましたね。

坂本:はい。それで好きなことを続け、気づいたら33業態にもなっていました(笑)。

熊倉:都築電気さんは、90年以上の歴史があるICT企業。その中で奥野さんはトップも巻き込みながら健康経営やダイバーシティ&インクルージョン推進で中心的な役割を果たしています。

奥野:ご紹介ありがとうございます。当社はもともと戦後の焼け野原の中、電話のネットワークを張り巡らそうという熱い想いで事業を展開してきました。その影響も残り、男性中心の会社で以前は残業もとても多かった。そのことを他社の人に話したら「ウチも同じようなものだよ」「若手社員なんてそんなものだ」ということだったので、「どこも同じようなものなら、自分の会社を変えるしかない」とボトムアップで健康経営に取り組み始めたんです。

今井:では、テーマである「ファーストキャリアで何を大切にしてきたか?」について話しましょう。ご自身を振り返ってみてどうですか?

森川:私は最初からバスの運転手になりたいと思っていました。もともと祖父、父が経営陣を務め、当社の前身となるバス会社に就職したのですが、経営幹部としてではなく、バスの運転士としてでした。当時は今のように経営をする気はなく、意識したことさえありませんでしたね。色々なバス会社がある中、どうして当社を選んだかというと運転手の人柄や社風を近くで見ていると結局ウチが一番いいなと入社を決めました。

坂本:私の場合、いずれ独立したいと思っていました。それで独立するにはどの業界がいいかと考えた時、飲食だなとプロントに入社しました。

今井:たくさんある飲食の会社の中からプロントを選んだのは?

坂本:昼はカフェ、夜はバーというスタイルのお店を展開し、両方学ぶことができるからです。特にプロントはサントリーさんの子会社だけあって仕組みがきちんとしていますので、店舗運営などのノウハウもしっかり身につけることができました。

今井:ただ飲食などのサービス業は土日やゴールデンウィークに休めなかったりしますね。それは嫌ではありませんでしたか?

坂本:私は全く気にしませんでした。むしろみんなが働いている時に休むほうが嬉しかったくらいでしたね。

奥野:そうだったのですね。私の場合、法律には社会を良くする力がある。法律を作る人になろうと志したのですが、向いていませんでした。「もの」より「こと」を作る人がいいとなり、IT関連に決めたのですが、なかなか合う企業を見つけられず、面接でも自分を出せないことが続きました。その中で都築電気だけは、素の自分でいられたんです。つまり私はファーストキャリアを「この人たちと一緒に働きたい」と人で選んだことになりますね。

熊倉:おお、いいですね。私は新卒で銀行に入りました。理由は生活が安定するし、親も喜ぶから。自分の気持ちではなく、周りからどう見られるかで選んでしまいました。

今井:じゃあ、銀行に入ってから後悔しましたか?

熊倉:いや、意外と楽しかった(笑)。でも、常に周りからどう見られるか考えながら働いていたので、次第に疲れ果ててしまいました。

今井:なるほど。自分が何をやりたいかという軸がないと続きませんよね。働きがいを感じられるかどうかは企業の規模でも違ってくるのでしょうか?

熊倉:規模と言うより、会社のパーパスやビジョンに従業員が共感し、同じ方向で働けるかどうかが大きいのだと思います。ファーストキャリアの選択においてこれが正解というのはないのかもしれませんが、しっかりとした自分の軸を持ち、周りの言葉に影響され過ぎないことが大事なのではないでしょうか。

【取材後記】

エシカルは、本来「道徳・倫理」という意味。「エコ」や「ロハス」などの範囲を広げ、環境や労働など各種社会問題を表す言葉として使用されています。今回のIKIGAI企業サミットでは、企業経営者やアーティスト、インフルエンサー、学生など様々な立場の人たちが参加してくれ、これからのあるべき働き方、生き方といったことを考える絶好の機会となりました。イベント終了後も熱は冷めやらず。懇親会も大いに盛り上がりを見せました。2024年6月15日には大阪でも同じイベントが開かれ、8月のIKIGAI夏フェス、10月の社会的健康ピッチコンペと続いていきます。なお、今回の『IKIGAI企業サミット in エシカルエキスポ2024』のメインとも言える『IKIGAI企業×Z世代 公開リバースメンタリング』の様子は別記事にまとめてありますので併せてお読みください。

<企業データ>

会社名:株式会社ファイブグループ

事業内容:飲食事業(居酒屋・ダイニング等)の経営・企画・運営店舗プロデュース事業

所在地:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-5-10 いちご吉祥寺ビル 7階

資本金:1,000万円

社員数:3,040人(正社員473名・アルバイト2,567名)※グループ連結

<企業データ>

会社名:ベイラインエクスプレス株式会社

事業内容:高速バス・夜行バスの運行/企業送迎バスの運行/人材紹介

所在地:神奈川県川崎市川崎区塩浜2-10-1

資本金:2,000万円​​​​​​​

社員数:42名

<企業データ>

会社名:都築電気株式会社

事業内容:ネットワークシステムおよび情報システムの設計、開発、施工、保守

所在地:東京都港区新橋6丁目19番15号(東京美術倶楽部ビル)

資本金:98億1,293万円

社員数:1,295名(2023年3月)

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