【ホワイト企業オンライン座談会②】「自分が〝喜ぶ〞ことを健康経営に!」 地道な声かけで社員を動かす

健康経営の広場のシリーズ企画「大学生×ホワイト企業インタビュー」に登場の33社にお声かけをし、実施したオンライン座談会。4回にわけて開催された座談会の2回目となる今回は、セクテック様、リップルネット様、エーオーエーアオバ様、伊豆義様、ワダカルシウム様の5社、計7名が参加されました。

〔ホワイト企業〕

矢野 明子(株式会社セクテック 総務課)

丸山 敏昭(リップルネット株式会社 代表取締役)

西沢 頼母(株式会社エーオーエーアオバ 専務取締役 健康経営推進 室長)

伊豆田 浩央(伊豆義株式会社 取締役副社長)

五阿彌(伊豆義株式会社 総務部 )

吉田 浩一(ワダカルシウム製薬株式会社 代表取締役社長)

寺尾 珠実(ワダカルシウム製薬株式会社 管理部部長)

〔司会進行〕

熊倉利和(健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役)

1.楽しいのがいちばん!

熊倉:本日は、ホワイト企業のみなさまにお集まりいただきました。最近はどのような健康経営を行っていますか? ぜひ情報交換をしていきましょう。

西沢:はい。エーオーエーアオバの西沢です。当社は東京都文京区にある社員数14名、社歴35年の会社で、主な事業はサプリメントなど健康食品の販売です。現在84歳の社長が創業当時から「お客様に健康食品をすすめるには、まず自分たちが健康でなければならない」と社員の健康促進に力を入れていて、今回のブライト500も継続して取得できました。

最近は、医学博士が開発した「Dr.セルフチェック」というプログラムを導入しました。病気の予防法などを学びながら、体内年齢や血流障害指数、体内崩壊指数などのヘルスチェックも行えるプログラムで、毎月7枚ほどのレポートが出てきます。当社は、予防医療診断士の資格を持つ社員が多く、そのレポートを見ながら互いにカウンセリングをするなど、一人ひとりが健康と向きあう形で健康経営を行っています。

寺尾:ワダカルシウム製薬の寺尾です。当社もこれまで連続してブライト500を取得してきたのですが、今回は選ばれませんでした。ブライト500という冠がつくことで、社員のみなさんの健康経営に対するとらえ方や意欲は違うと感じますか?

西沢:ブライト500に認定されたからがんばる! ということはないと感じています。社員たちが気になるのは、みな自身の健康状態です。各々、健診やDr.ヘルスチェックなどの数値を見て、どうやって自分の健康課題に取り組んでいこうかと考えていますね。当社は社員数が少ないですし、みんな健康に興味のある人たちなので、気がついたことがあれば、さっと集まって話しあいます。そんな社内環境ですので、健康経営を楽しく行えています。

寺尾:楽しいのがいちばんですよね。今の話をお聞きできて安心しました。ワダカルシウム製薬は創業が1911年、カルシウムの医薬品や健康食品などの製造販売を行っている製薬会社です。本社は大阪市、工場は滋賀県にあります。当社の企業理念は「人々の歩くと元気をささえます」であり、健康経営でも「歩く活動」をメインに行っています。具体的には社員全体でウォークラリーをする、歩数の結果によって寄付を行う、IKIGAI WORKSさんとコラボしてウォーキングイベントを行う、アプリを使ってメンタルヘルスを行うなど、社員たちと楽しみながら取り組んでいます。

矢野:すばらしいですね。全社でウォークラリーを行うのは大変かと思いますが、どんな方法で社員を巻き込んでいるのですか?

寺尾:当社では、ウォーキングアプリを活用しています。全社員みんなでいっせいに歩くとなると実施のハードルが上がってしまいますが、アプリを使うと、それぞれの時間のなかで歩いた歩数を競いあうことができます。ランキングを実名で公表していたときには、参加率はほぼ100%でした。その後、アプリの内容を変更し、匿名にしたところ、1割未満の社員が実施しなくなってしまった。そこで、横の連携を活用してみんなで声をかけあうようにしています。声をかけられると「じゃあ、がんばろうか」と気持ちが動く人も多いと感じます。

2.地道な声かけが社員を動かす

熊倉:従業員を健康経営に巻き込んでいくには、工夫が必要ですね。みなさんは、どのような工夫をされていますか。

矢野:はい。セクテックは岐阜県にある警備会社です。警備業は夜間勤務がありますし、食生活も乱れやすく、運動不足にもなりがちです。そのため、以前は健康診断の結果がかなり悪いという状態にありました。ここを改善していくために、月に1回、健康情報をお便りで発信して、社員の健康意識を高める取り組みを行っています。現在は、「今、こんな不調があるのだけれど、何を食べたらいいかな」と従業員のほうから相談されることも多くなりました。健康診断の結果もよくなり、昨年度は特定保健指導を必要とする社員がゼロになりました。みなの生活が少しずつ改善され、健康が促進されてきていると実感しているところです。

丸山:すごいですね。社員に食生活の改善を促すのは、なかなか難しいことです。具体的にどのような指導をされているのか、秘訣を教えていただけますか。

矢野:従業員の健康診断の結果を把握しておき、顔を見るたびに、「最近、食生活に気をつけている?」「こういう食材をとったほうがいいよ」などと地道に声をかけています。

熊倉:いいですね! 先ほど、寺尾さんも話されていましたが、声をかけられることで「やってみようか」と感じる従業員は多いのですね。リップルネットさんはどうでしょうか。

丸山:はい、リップルネットは岐阜県にあるホームページの制作会社です。当社では、就業時間中の朝の30分間、全員でウォーキングをして朝日を浴びるようにしています。これは業務として、いわば強制的に行っています。朝、みんなで歩いてから仕事に向かうと、集中力が違います。当社はママさんも多いのですが、家庭モードから仕事モードに切り替えるのにも役立っているようです。実は、朝のウォーキングを始めたのは、ある社員がうつ状態になったことがきっかけでした。業種柄、仕事を始めると誰とも話さず、室内でひたすらパソコンに向き合う生活になりがちです。「これではいけない」と社員の健康づくりについて真剣に考え、朝のウォーキングを業務の一環として行うことにしたのです。

五阿彌:そうなのですね。ただ、業務とはいえ、みんなで歩くとなると、本気でがんばる人とそうでない人が出てくると思います。どうやってみなをやる気にさせているのですか?

丸山:私が社員たちと一緒に歩いていて感じることですが、ウォーキングに対する姿勢は仕事にも共通しているように思います。ウォーキングの効率を高めようと意欲的に取り組む社員は、仕事の効率もよい。ですから、「この時間を有効活用するには、どう歩く?」などと、社員の意欲を高める声かけを心がけながら、ともに歩いています。

熊倉:なるほど。健康促進と仕事の意欲は通じるものがある。興味深い発見ですね。では、伊豆義さんはいかかですか。

五阿彌:伊豆義は広島県の会社で、ボタンやファスナーなどのアパレルパーツの卸売業をしています。実は、社長から「健康経営を始めるからよろしく」といわれたときには、正直なところ、「また仕事が降ってきた」と感じました(笑)。ですが、一社員として気づいたのは「自分にメリットのあることを中心に健康経営の施策を考えれば、みんなも喜んでくれるはず」ということです。こう発想を転換してからは「自分が〝喜ぶ〞こと」を中心に健康経営の施策を考えています。現在は、会社に費用を負担してもらうことで、再検査の受診率100%を目指して取り組んでいます。また、ウォーキング大会を開催した際には、社長にお願いして健康器具を景品に準備しました。

西沢:再検査の受診率100%を目指して、結論として「よかった」と喜べたことはありますか。

五阿彌:はい。今まで2名の早期がんを発見できました。早期に治療を始められたので、回復も復帰も早かった。また、「早期がんを発見する重要さ」を社員たちに伝えていくことで、自信を持って再検査を促すことができています。

3.業種を超えた交流はヒントの源泉

熊倉:ワダカルシウム製薬さんも、健康診断の声かけを熱心に行われていますよね。

寺尾:はい。健康経営を始める以前から健康診断は100%の受診率でした。二次検診もみな受けてくれています。また、当社は平均年齢が45歳くらいで、ほぼ特定健診の対象者です。コロナ禍以降、ZOOMでも特定保健指導を受けられるようになりました。担当者が熱心に日程を調整することで、現在はこちらも100%の受診率になっています。

熊倉:すばらしいですね。ここ数年、ブライト500の入れ替わりが非常に激しくなっていて、健康経営の取り組みがトップクラスであるワダカルシウム製薬さんやリップルネットさんが、なぜ認定されなかったのか、私たちもわからずにいます。今、IKIGAI WORKSで調査を行っていますので、結果が出次第、みなさまにご報告させていただきますね。

吉田:ありがとうございます。当社は今回、ブライト500を取得できませんでしたが、やるべきことはきちんとできていると考えています。健康経営の目的はブライト500の取得ではなく、社員の健康増進です。これからも自分たちの課題にしっかり向きあっていけばよい、と割り切って考えています。

寺尾:今後の健康経営を考えていくうえで、五阿彌さんがいわれた「健康経営は、自分が〝喜ぶ〞ことを考えて取り組む」という視点の大切さに、今日、気づかされました。健康経営の施策を考えるとき、つい「コストをかけないように」「申請でいい点数を取れるように」と、経営者目線になってしまいます。今、吉田も申しましたが、大事なのは社員の健康増進。社員が喜んでくれる取り組みを今後も考えていきたいです。

五阿彌:うれしいご意見をありがとうございます。私は、健康経営に取り組まれている企業の方々から、お話を直接うかがうのが初めてでした。みなさまの熱量はすばらしく、大変に参考になりました。

伊豆田:本当に、みなさんのお話は、非常によい刺激になりました。それぞれに工夫しながら、自社に最適な健康経営の施策を行い、ブライト500認定の取得につなげている。我々も引き続きがんばっていこうと思いを新たにできました。

丸山:私もみなさんの話を聞き、健康経営では社員をいかに巻き込んでいくかが、実際のところ、もっとも重要と改めて感じているところです。「今後は何をしていこうか」というヒントもたくさんいただきました。

矢野:座談会に参加する前、「次はどんなことをしたらいいのだろう」と悩んでいるところが、実はありました。このような機会をいただけると、とても勉強になって、助かります。ありがとうございました。

西沢:本当にすばらしい機会でした。みなさんと交流させていただいた今日のお話を、社員たちにフィードバックしながら、社員が健康で楽しく働けることに視点をあわせて、これからも健康経営を進めていこうと思います。

熊倉:業種や地域を超えて行うホワイト企業間の交流は、私たちにたくさんの発見を与えてくれますね。今後も交流会を行っていきますので、そのときにはまたぜひご参加ください。

【取材後記】

今回、ブライト500の入れ替わりは200社以上。ブライト500の取得は年々厳しさを増しています。ただ、大切なのは、社員の健康と働きがいを高めるために、いかに最適な健康経営を行っていくか。それぞれの活動を語り、忌憚のない意見交換ができたこの座談会は、次なる健康経営のヒントをみんなでわかちあい、未来につなげていけるすばらしい機会となりました。

 

会社名:株式会社セクテック

事業内容:オンラインによるセキュリティサービス、防犯・防災機器の販売

所在地:岐阜県多治見市音羽町4-85

資本金:1100万円

社員数:25名

 

会社名:リップルネット株式会社

事業内容:ホームぺージ制作・運営/SEO対策/インターネット広告など

所在地:岐阜県中津川市茄子川207-6

資本金:500万円

社員数:5名

 

会社名:株式会社エーオーエーアオバ

事業内容: 健康食品、自然食品の販売

所在地:東京都文京区目白台3−4−11 ジーエフビル

資本金: 1億円

社員数: 14名

 

会社名:伊豆義株式会社

事業内容:アパレルパーツ(服飾資材)の卸売販売及び輸出入

所在地:広島県福山市新市町新市452

資本金: 4500万円

社員数:100名

 

会社名:ワダカルシウム製薬株式会社

事業内容:医薬品の開発、販売/健康食品の開発、販売他

所在地:大阪市都島区東野田町4丁目1-17

資本金:9800万円

社員数:45名

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