【シー・システム】AIによって人は人らしい働き方ができる。テクノロジーと健康経営で人の可能性を広げていく

RPA、AI OCRといったテクノロジーを企業に提供することで業務改善のサポートを行っているシー・システム。健康経営に力を入れるとともに、会社の枠をこえたコミュニティづくりも積極的に推し進め、一人一人の可能性を広げていける働き方を支援しています。(インタビュアー:健康経営の広場/IKIGAI WORKS代表  熊倉 利和)

1.AIで働き方改革を支援。人は人にしかできない仕事を

――まずは御社の事業について改めて教えていただけますか?

深坂さん:はい。AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、システム開発によってお客様のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業です。設立は1983年で現在(2021年10月)、従業員は18名です。

――御社のホームページを拝見しますと、「働き方改革をAI技術で加速」と謳われていますね。

森下専務:そうですね。当社はこれまで、いかにしてお客様の業務を改善するかということに取り組んできました。例えば、お客様の業務の中でどのような作業が発生し、担当者はそれにどれくらいの時間をかけているのかといったことを愚直にヒアリングした上で、改善できるソリューションを提供。具体的に言えば、システム開発やRPAなどの自動化ツール、最近ではAI OCRをリリースしました。

――AI OCRについてもう少し詳しく聞かせていただけますか。

森下専務:はい。OCRとは、印刷された文字などをデジタル(テキスト)データに変換するものです。これまでもIT化できるところはIT化し、お客様の業務改善のサポートをしてきましたが、それでも紙を使った業務は依然として残り、人間が介在せざるを得ませんでした。それが今回のAI OCRによって、人の手を借りずとも、紙の文字をデジタル化することができるようになりました。

例えば、申込書などの定型帳票でもまだ手書きの書類が使われており、これまでは人が入力作業をする必要がありました。それがAI OCRなら、手書きの文書、QRコード、チェックボックスも一括して読み込むことができます。

――えっ、手書き文字も読み込めるんですか? それはすごい!

森下専務:はい。AI OCRは字の形を覚えさせるものです。ですから、癖字の方の字でも覚えて判別できるようになります。それと、今ある多くのOCRはクラウドでのサービスであり、大きなサーバで処理をし、クライアント側に戻ってくるというものです。一方、AI OCRのサービスは、クライアント側にダウンロードし、お客様のパソコンで動くというもの。そのため機密情報や個人情報を外部に出さずに処理することができます。

――御社のRPAは、定型作業などのデスクワークを大幅に効率化してきました。

今回、さらにAI OCRが登場。働き方を改善させる製品がどんどん増えていますね。

森下専務:そうですね。RPAにしても今後さらに伸びていくことが予想されています。というのも、RPAの大手企業への導入は進んでいますが、中小企業はまだまだこれからという段階。現在うまく使えている中小企業は1、2割程度ではないでしょうか。表計算などを紙で行なっている企業さんもまだありますし、RPAが本格導入されるのはこれからです。ただ、市場としてはとても大きいのですが、RPAを実際に運用できる人が足りていないという課題も残っています。

――私が以前、代表を務めていた会社でもRPAを導入しましたが、いざ運用しようとなると、社員は通常業務で手一杯ですし、RPAに移し替える作業は負担が大きそうだと二の足を踏んでしまう部分がありました。現状のやり方からRPAへの移行をうまく橋渡ししてくれる専門の人がいてくれるといいかもしれません。

森下専務:まさにご指摘の通りで、お客様ご自身でRPAを推進できるように人材育成のサポートにも力を入れ始めているところです。

――今は、社員さんには未来を担う重要な仕事に取り組んでもらい、すでに定型化されているような仕事は契約社員やパートさんにやってもらうという区別をしている企業も多い。それが、RPAやAI OCRなどの導入が進めば、全員にやりがいのある仕事に取り組んでもらえるようになるのではないでしょうか。

森下専務:おっしゃる通りです。自分がやらなくてもいい仕事はロボットにさせ、自分自身は未来に繋がるクリエイティブな仕事であったり、お客様の対応であったり、人間だからこそできる仕事に専念できるようになると思っています。

2. SIerは人が全て。だからこそ健康経営に力を入れる

――3年前に取材をさせていただいたときは、リレーマラソンやフットサルなどのクラブ活動も盛んでしたが、今は健康経営への取り組みはどうなっていますか?

深坂さん:コロナ禍ということで一旦休止になっているものもありますが、基本的な活動内容は変わっていません。新しい取り組みとしては、会社の冷蔵庫に無糖や低カロリーの飲料(コーヒー、お茶、水)を常に用意しており、従業員は無料で飲むことができます。

――それはいいですね。エンジニアの方の喫煙率は高い傾向にありますが、御社ではどうですか?

深坂さん:タバコを吸っているのは18名のうち、2名。ただ、このビル自体が全面禁煙ですから、吸う場合は建物の外に出てもらっていますので分煙はできていますね。

――なるほど。女性のエンジニアの割合はどれくらいですか? 

深坂さん:3人が女性です。そのうちの1人は子育て中ですので、出社は月に一度だけにし、テレワークで働いてもらっています。残り2人のうち、1人は社内で開発にあたり、もう1人はお客様の元で仕事をしています。

――私たちが作成したブライト500白書の中で、3社の事例(アップコン、大橋運輸、三共精機)を紹介しています。3社に共通するのが、まずしっかりとした経営理念、事業戦略があり、それらを実現するために組織デザインがあり、健康経営があるということ。御社もそのフレームワークにまさに当てはまると感じています。

森下専務:ありがとうございます。当社の理念に「一人ひとりのしあわせを追及する」があります。従業員はもちろんのこと、その家族も含め、みんなの幸福が何よりも大切であると考えており、人の幸せの土台となるのが健康です。ですから、当社の理念を実現させる手段として、健康経営はこれ以上ないものです。

――健康経営を推進していることを外部にもうまくアピールできていますね。3年前の取材時でも、求人への応募が130倍になったとお聞きしました。

森下専務:はい。私たちのいるITやSIerの業界では、健康経営を打ち出している企業は少ないので大きなアピールポイントになっています。ありがたいことに、こんな小さい会社にもかかわらず、たくさんのご応募をいただけています。

――確かにアプリやシステム開発の仕事は、人の力がとても大事ですね。全てと言ってもいい。

森下専務:そうなんです。特に私たちのいるSIerの業界は、人材不足が顕著。20万、30万人足りないと言われる中で、今後さらに人材が不足することが予想されています。ですから、人を大事にしない企業はどんどん廃れていくことでしょう。

――事業方針として「社会の不を解決することを事業とする」を掲げていらっしゃいますが、長時間労働、人使いの荒さといった業界全体の不の部分も無くそうとされていますね。

森下専務:はい。そこは強く意識して従業員には働いてもらっています。また、世の中の不満や不安を解決することが私たちの仕事であるべきですし、これからも社会の不を解決できるテクノロジーを提供していきたいと考えています。

3.最先端のAIと人間らしさで社会貢献

――今、CSR(企業の社会的責任)、CSV(共通価値の創造)、SDGsなどに注目が集まっていますが、御社は早い段階でそれらに取り組んでいます。

森下専務:ありがとうございます。社会貢献ということで言えば、まずはやはり本業、つまり、自分たちのソリューションを求められているところに提供することで社会に貢献していきたい。先ほども触れましたが、RPAやAI OCRによって機械ができるところは機械に任せれば、人間にしかできないことに専念できます。

また、AIを使うためには、まずAIに学習させる必要があります。例えば、「これはA、これはB」というふうに仕分けなどもする必要がある。今、その作業を障害のある方々にお願いしています。ですから、AIによって作業を効率化させると同時に、アナログの人間っぽい仕事も発生していますので、新たな雇用を生み出すことにも少し貢献できているのではないかと考えています。

4.会社の枠を越えたコミュニティづくり

――御社ではRPAコミュニティも運営されています。以前お聞きしたとき、メンバーは1,500人ほどでしたが、今は6,000人にもなっていますね。

森下専務:はい。それだけRPAの市場が大きくなり、ユーザーさんの数が増えてきているのだと思います。以前でしたら、使い方がわからない場合でも、社内には知っている人がいませんし、他社の成功事例を知ることも難しかった。それが、RPAコミュニティによって各企業のユーザーさん同士が繋がり、教えあったり、発信しあったりすることで多くの人に波及させていってくれています。

――『スポーツ法人エンジン』の活動も継続されていますか?

森下専務:はい。スポーツ法人エンジンは、健康経営の一環として行っており、毎回20社、30社ほどの企業の方に集まっていただき、フットサルをやっています。単にスポーツをするだけでなく、活動の中で輪が生まれ、それが広がっていくことも期待しています。スポーツ法人エンジンのエンジンは、円陣にもかかっていまして、「みんなが円陣を組むことでエンジンがかかる」という意味なんです。コロナ禍であまり活動ができていませんでしたが、先週も行いましたし、そろそろ本格的に再開するつもりです。

――RPAにしてもセミナーではなく、コミュニティという形にし、参加者の主体性を大切にされているように感じています。

森下専務:はい。セミナーという形にしてしまうと、参加者は聞くだけという一方的な関係になってしまいます。コミュニティならその場で誰かと繋がってもいいですし、みんなに発信してもいい。自分の望む距離感で関わることができます。

RPAにしろ、スポーツ法人エンジンにしろ、みんなのためにもなるし、自分のためにもなるコミュニティづくりを目指しています。そういう意味では、会社もコミュニティですし、会社の枠に止まらず、他のコミュニティに参加することにも意味があると思っています。

――これからの時代、自分がどのコミュニティに所属しているかも大事になってきそうですね。

森下専務:はい。まさしくコミュニティは私のキーワードになっていますし、健康経営にも繋がると思います。自分の居場所をつくることは、人の社会的な健康にとって重要なことですから。

5.最後は会社の魅力で勝負

――御社では副業も認めているそうですね。ただ、心配なのがせっかく健康経営に力を入れているのに、副業先でブラックな働き方をされてしまったら台無しになりませんか?

森下専務:本業をした上で余裕があればというのが基本スタンスですが、確かに副業をすることで無理をしてしまう恐れはありますので、そこは気をつけないといけません。副業をすることで体調を崩すようなメンバーが出ないように、しっかりフォローしていく必要があります。現在も、私とメンバーが定期的に面談を行い、健康管理も含め、一人一人と向き合って話を聞くようにしています。

逆に副業によって得られるメリットも大きいのではないかと考えています。というのも、会社という単一のコミュニティに所属していると、その会社の色には染まるかもしれませんが、視野や知識の幅が広がらず、人生の選択肢が狭まってしまいます。副業をすることによって別のコミュニティに所属すると、違った価値にも触れられ、その人の成長に繋がりますし、それを会社に還元してくれたら両方にとっていいことです。

――素晴らしいですね。しかし、一度、他社の魅力を知ってしまうと辞めていく人も出てきそうですね。

森下専務:そうですね。業界的にも自分の技術、自分の力で勝負する世界ですから、流動性があるのは当然のこと。もし、その人が他の会社で働くことを経験し、自分にはこっちの方が合っていると感じたなら辞めるのも仕方がありませんし、当社の魅力がそこまでしかなかったと思わざるを得ません。

それと、会社を辞めてまた戻ってくるということもありだと思っています。一度外に出て様々な経験をした人のほうが、会社とも良い関係性を築ける場合も多いですし、実は当社には出戻り3回目のメンバーもいます。これからさらに人材の流動化が進んでいくと思いますし、最後は会社の魅力を高めていくことで勝負しないといけないと思っています。

【取材後記】

AIなどの技術によって業務を効率化し、健康な働き方、人間らしい働き方をサポートするシー・システムさん。「機械ができるところは機械に任せれば、人は人にしかできない仕事に専念できる」という言葉に大変感銘を受けました。そして、企業や自治体のストレスチェックの実施をサポートしたり、スポーツの交流の場を設けるなど、自社内だけでなく、健康経営の普及にも一役買ってくれています。シー・システムさんは、AIと人同士の繋がりによって、一人一人がより生きがいを持って働ける社会づくりにこれからも貢献してくれることでしょう。

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