【シリーズ:健康経営はじめました】若手を大きく成長させた、優良法人認定へのチャレンジ(アールエスエス②)

シリーズ『健康経営はじめました』の第2回目のインタビュー。前回は、健康経営を始められたアールエスエスさんが、優良法人認定の申請にチャレンジすると決めたところまでのお話をうかがいました。今回は、いざ健康宣言をしてから行ったこと、そして申請にあたってのリアルな実情をお聞きしていきます。このインタビューは、申請が終わり、認定されるかどうか、結果待ちという状況のなかで行われました。(インタビュアー:健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役  熊倉 利和) 

■石川拓彦さん(代表取締役社長)

■榎本司さん(専務取締役)

■大星恭子さん(総務部/経理部 部長)

■田中晴菜さん(第一営業部 販売促進担当 主任/健康経営推進プロジェクト リーダー)

■落合紗弓さん(総務部/健康経営推進プロジェクト 副リーダー)

1.全拠点に「健康経営コーナー」を設置

――健康経営優良法人認定の申請、お疲れさまでした。健康宣言をしてから、さまざまな取り組みを始められたと思います。まずは、どんなことから行ったかを教えてください。

田中さん:はい。当社は、本社の他に事業所と工場が関東に点在していますが、各拠点に「健康経営コーナー」という掲示板をつくって、全従業員と情報を共有する基盤づくりから始めました。コーナーで作業をしていると、「何をしているの?」と多くの人が声をかけてきてくれました。「みなさん、意外と健康経営に関心があるのかも?」と勇気づけられたのをよく覚えています。

――具体的に、どんな掲示をしていますか?

田中さん:たとえば「特定保健指導を受けましょう」というポスターです。また、休憩時に行ってほしいストレッチの方法なども掲示しています。工場では立ちっぱなしの仕事になりますので、今後も簡単にできる体操の紹介などを行って、従業員の健康向上に役に立つ情報を発信していこうと考えています。

落合さん:また、安全衛生委員会の議事録も掲示しています。以前は参加者にだけ議事録を配っていましたが、現在は「こうした健康経営を行うことになりました」など、話しあいの結果を掲示板に張り出し、全従業員と情報を共有するように努めています。

――とてもいい取り組みですね。他はどうでしょうか。以前、安全衛生のほうにもっと力を入れていきたいということで、産業医による健康経営クラウドサービス「Dr.CHECK」を紹介させていただきました。どうですか? 連携は始まっていますか?

落合さん:はい。産業医の先生には、奇数月に来ていただき、健康診断の結果やストレスチェック、勤務状況などすべてを見ていただいています。

――すばらしい。産業医との連携がうまく進んでいるということですね。それによって、変わったことはありますか?

田中さん:ええ。たとえば以前は、2次検査が必要との結果が届いても、「受けたほうがいいの?」「受けなきゃダメ?」という従業員が多く見られました。今は、産業医の先生のサポートもあることから、私たちも「必ず検査を受けてください」と伝えやすくなりましたし、本人たちも「受けたほうがいいよね」と前向きに考えるようになっています。

大星部長:何よりありがたいのは、産業医の先生が、2次検査の必要がある従業員を3つにレベルわけしてくださっていることです。「就業制限がかかりかねないレベル」「2次検査を必ず受けてほしいレベル」「数値がずば抜けて高いわけではないので、様子を見てもよいレベル」という3段階です。実は今、従業員が1人、入院しています。この人は、本当だったらリストのいちばん上にくる状況だったのに、産業医の先生との連携が始まる前に入院してしまい、間に合いませんでした。あと1年早く始めていればと後悔もしましたが、産業医の先生に、緊急性の高い人を明確にしていただけることで、同じことが起こらないよう予防が可能になったと感じています。

――お気持ち、よくわかります。「人生でも、仕事でも、健康が何より大事」と会社がいくら伝えたところで、従業員のなかには「自分の健康のことを、会社にいわれたくない」「放っておいてほしい」と思う人はいるものです。そうした人たちに健康診断を推奨するうえでも、産業医の力を借りるのは非常に有意義だということですね。

2.健康経営を全従業員に広げたい

――健康経営において、他に始められた施策はまだありますか?

田中さん:社内報の発行を始めました。A3の紙を2つ折りにした、わずか4ページの社内報ですが、「健康経営優良法人を目指して、こんな取り組みをしています」と全従業員に向けて情報を発信しています。また、より関心を持って社内報を読んでもらえるよう、社員紹介、会社のイベント情報、そして社長のコメントも載せています。つくるのは大変ですが、みなさんの反応はよく、「次はいつできるの?」と声がかかります。3か月に1回のペースを目指して発行し、全従業員に健康経営の取り組みを浸透させていく作戦です。

これによって、掲示コーナーと社内報で、情報を広く伝えていくという流れができあがってきたと考えています。

石川社長:検討中の施策もあります。その1つが禁煙対策です。当社も喫煙スペースは設けていますが、人の通り道にあったりするので、さらに完全に分煙できるよう、設置場所を変える予定です。喫煙所の環境がよすぎると吸いに行きたくなるので、「わざわざ吸いにいくのは面倒だな」と思わせるくらいの場所がよいだろうとも話しているところです。

田中さん:こうした喫煙率を下げていくための取り組みは、4年くらいかけて行っていこうと計画をしています。禁煙に成功した人の事例紹介や、たばこを吸うことで年間どのくらいのお金がかかるのかなどの情報を、社内報に掲載したり、ポスターにして掲示したりしていくのもおもしろいかなと考えています。

――なるほど。喫煙率を下げるためには、地道な取り組みが必要ですよね。私が知っている会社では、年間の喫煙状況を、毎年クリスマスカードの中に書き添えて家族に送る、ということをしています。家族の協力を仰ぐわけです。夫に禁煙してほしいと思っている奥さんは多いので、非常に好評とのこと。年賀状で、奥さんから「来年もよろしくお願いします」とお返事が来るそうですよ。

石川社長:それはすごくいい。各社、いろいろなスタイルで健康経営を進めているのですね。とてもおもしろいと感じました。

――御社も、第1回目のインタビューから、非常にすばらしい形で健康経営を進めてこられていますが、施策などを考えるのも実行するのも、推進チームの2人の役割ですか?

田中さん:いいえ。私たちだけということはなく、みなさんの協力があって成り立っています。実際に、協力体制はだいぶ整ってきました。各拠点には、健康づくり担当者もいます。たとえば掲示物なども、本社から近い工場には自分たちで貼りに行きますが、遠い工場には送らせてもらっています。すると後日、どのように掲示したのか、健康づくり担当者が写真データを送ってくれます。自分たちだけでは手の届かないところは、できるだけ協力をお願いしています。

――それはいいですね。健康経営を成功させるためには、社内の協力体制は欠かせません。健康づくり担当者は、どのように決めたのですか?

田中さん:榎本専務と大星部長に相談して決めました。毎月の初めに行っている安全衛生会議には、各拠点のトップたちが集まっています。そこに出席する人を健康づくり担当者に任命してはどうかとアドバイスしてもらい、実際にお願いもしてくれました。各拠点のトップが協力してくれることで、健康経営をさらに行いやすくなりました。

――さすがです。最前線で動く推進チームの若手2人が気持ちよく打席に立てるように、榎本専務と大星部長がしっかりバックアップしている。この体制が築かれているからこそ、全従業員を巻き込んだ健康経営が行えるのですね。

3.「今あきらめてはもったいない」の言葉が励みに

――では、いよいよ、健康経営優良法人認定の申請についてお話いただきましょう。実は、今回のインタビューは、もっと早くに行う予定でした。ところが、田中さんにメールをすると、「少し先にしてもらえますか?」というお返事が落合さんから来た。着実に役割分担ができてきているんだなと喜ばしく感じていたのですが、反面、申請に向けて大変な思いをされているのではないか、と心配もしていました。

田中さん:その節は、すみませんでした。本当に大変で……。申請においては、いろいろなドラマがありました。まず直面したのが、期限の問題です。そもそも、申請にあたっては、健康経営を半年間以上継続しているという条件があります。ところが昨年は、申請の期限が少し早まったという話を聞き、そうなると計算上、継続期間が不足することになってしまい、「もう、申請はできない」と落ち込んだところからのスタートでした。ただ、これは私の勘違いでした。協会けんぽさんに相談すると、「半年間、ちゃんと継続できています。申請できますよ」と教えてくれました。そこから慌てて準備を始めたので、時間的にギリギリになってしまいました。

次に直面したのが、提出する資料の多さです。何から手をつければよいのか「もうわからない!」とパニックになりました。ネットでたくさんの情報をかき集め、申請のチェック項目を片手に、わかるところから1つ1つ進めていくような感じでした。

ところが申請が終わってから、何をどう準備すればよいのかをまとめてある資料を見つけたのです。これがあれば、あんなに大変なことにはならなかったと気づきました。完全に私の確認不足でした。

――それは大変でしたね。健康経営優良法人の認定は、中小規模法人部門の場合、まず協会けんぽに「健康経営宣言」をします。その約半年後に「どこまで具体的な内容を実行できたか」という結果を示した書類を取りそろえて、協会けんぽに提出します。その次に日本健康会議認定事務局へ申請して、審査を受けた結果、認定されるかどうか決まります。

ところが実は、47都道府県のなかで東京だけが申請のやり方が少し違っています。他の道府県の協会けんぽは「届け出制」で、東京だけが「認可制」になっているのです。届け出制は、申請書を届ければよいのですが、認可制となると、申請しても場合によっては認められないことがあります。書類の不備が少しでもあると認可されないのです。このため、初めて健康経営優良法人の申請をする際、東京の方々は大変な思いをしてしまうことがあるわけです。

田中さん:そうなんです。協会けんぽに提出する申請書類の作成で、私たちも苦労しました。優良法人認定を受けている取引先の方に電話をし、いろいろと教えも乞いました。書類ができあがったのは、締め切り前日の夜6時過ぎです。翌朝、最後の確認をして、午前中に直接協会けんぽに提出に行きました。ところが後日、「資料が足りない」と連絡が入って、びっくりしてしまいました。

大星部長:田中も落合も、書類づくりに苦労していました。先ほど、田中は、「自分の確認不足」といいましたが、実際に何が必要なのかわかりにくいのは事実です。田中が協会けんぽの担当者さんと電話で話しているのを横で聞いていても、初心者には理解が難しい。私自身、申請をしようとして挫折した経験があるので、田中と落合の心が折れていくのが痛いほどわかりました。

田中さん:「もう無理!」と思い込み、「今年はあきらめます」と協会けんぽの担当者さんに泣きながら電話をしました。そうしたら、「今、あきらめるのは絶対にもったいないですよ」と励ましてくれ、何の書類をどのように用意するとよいのか、とても親切に教えてくれました。敵と思い込んでしまっていた人が、実は味方だったとわかり、また泣いてしまいました。そんな紆余曲折を経て、なんとか申請書類を提出できました。ですから、協会けんぽの認定が通ったときには、実際に飛び上がってしまうほどうれしかったです。

――落合さんからインタビューの日にちをのばしてほしいとメールがあったのは、みなさんの心が折れかかっているときだったのですね。でも、そんなに大変な思いをしていたならば、私に相談してほしかった。何をどうするとよいか、具体的に教えることができたはずです。でも、田中さんと落合さんががんばって申請を乗り越えたことに、大きな意義がありますね。

落合さん:ありがとうございます。必死でがんばりました。協会けんぽから申請が通ったと通知が届いたのは9月26日。この日のことは忘れもしません。そこから、日本健康会議認定事務局への締め切りまで約1か月。ここは協会けんぽへの申請でベースができていたので、足りない物を揃えていく程度でよかったのは助かりした。

――どうですか。無事に申請を終えてみて、認定を取れる自信はありますか?

田中さん:はい。実際のところ、取れると思っています。ただ、万が一、今年はだめだったとしても、今回の経験は大きかったと捉えています。一通りやってみて、自分なりに問題点も明確になりました。その問題点を今後に生かすためにはどうするとよいのか、記憶が新しいうちに相談したいと考え、社長にお願いをして、ここにいる5人のメンバーで、約2時間、反省会を行いました。

榎本専務:そのときに田中から提出された「振り返りレポート」がすばらしくよくできていたんですよ。「今回できたこと、できなかったこと、来期にむけての改善点」が明確に示されていました。そのため、反省会では「次は、あんなこともやってみたらいいんじゃないか」などと意義のある話し合いができました。

石川社長:申請に向けて動いているときには、「あれがない、これをまだつくっていない」とてんやわんやでしたが、申請を終えてみたら、「P(計画)D(実行)C(評価)A(改善)サイクル」のCもDも自主的に行うほど、2人は成長していました。グループ企業も入れると全400名の人間に働きかけ、結果を残し、次につなげるアクションを起こすというのは、簡単にできることではないと思います。

――社長や上司にそんなふうにいってもらえると、がんばったかいがあって、うれしいですね。健康経営は、社員の健康維持や働きやすい職場環境の整備のために重要な施策ですが、実は、若手社員が成長する登竜門になる、というすばらしいお話を聞けました。あとは、認定を取得できたという連絡を待つだけですね。すばらしい報告をいただけることを、私もワクワクした気持ちでお待ちしています。

【取材後記】

健康経営優良法人の認定に向けて、全従業員との情報の共有から始めたアールエスエスさん。全拠点に掲示板をつくり、社内報の発行を始め、産業医と連携し、安全衛生委員会を立ち上げるなど、1つ1つステップを上るようにして、健康経営を進めていきました。そして最後に立ちはだかった申請に向けた書類づくり。心が折れそうになりながらも、申請にたどりついた先に待っていたのは、一回りも二回りも成長している若き社員の姿でした。では、結果はいかに。その模様については、第3回インタビューにてお届けします。

<企業データ>

会社名:株式会社アールエスエス

事業内容:おしぼりのレンタルサービス/玄関マットのレンタル/使いきりおしぼりの製造と販売/タオルのレンタル/雑貨・消耗品の販売

所在地:(本社)〒121-0075 東京都足立区一ツ家4-6-4

資本金:7,000万円

社員数:400名(グループ合計)

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