シリーズ『健康経営はじめました』若手と幹部が一体となり健康経営を推進。会社に新しい風を吹き込む【アールエスエス①】
健康経営に取り組み始めた企業を紹介する『健康経営はじめました』。記念すべき第一回目はアールエスエスさん。「人生でも、仕事でも、健康が何よりも大事」という経営者の想いを汲み、若手社員が健康経営を牽引。幹部のサポートを受けながら、健康経営優良法人認定にチャレンジしていきます。(インタビュアー:健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役 熊倉 利和)
■石川拓彦さん(代表取締役社長)
■榎本司さん(専務取締役)
■大星恭子さん(総務部/経理部 部長)
■田中晴菜さん(第一営業部 販売促進担当 主任/健康経営推進プロジェクト リーダー)
■落合紗弓さん(総務部/健康経営推進プロジェクト 副リーダー)
目次
1.自分の体験から健康の大切さを実感
――まずはアールエスエスさんについて教えてください。
石川社長:はい。首都圏を中心に飲食店やエステ店に様々なサービスを提供している企業です。おしぼりレンタルが半分を占め、玄関マット、フェイス・バスタオルのレンタル、消耗品・雑貨の販売、最近ではクリーニング事業もスタートさせました。従業員はグループ全体で約400名。パートの方の年齢が高いこともあり、平均年齢は50歳です。
――先日、御社のグループ会社である東京すずらんさんを取材させていただき、おしぼりの製造現場を拝見しました。おしぼりが高速で出来上がっていく様子や、パートさんのスキルの高さに驚かされました。80歳くらいの方も活躍されていましたね。
大星部長:そうでしたか。当社でも年齢の高い人が元気に働いてくれています。
――その一方、若い男性も多く、社内にとても活気がありますね。新卒採用も積極的になされているのですか?
石川社長:はい。この10年間は、毎年3~5人ほど新卒を採用しています。
――そんな御社が健康経営を始めようと思ったきっかけはなんですか?
石川社長:やはり、健康は人にとって一番大事なことです。健康でないと人生も楽しめませんし、お金があっても不健康だと幸せとは言えません。仕事においても健康でないとその人の能力を発揮できず、生産性も上がりません。そういう意味でも、健康がとても重要であると考えたからです。
――そう考えるようになったのには何か理由はありますか?
石川社長:はい。実は私自身、あまり体が強くありません。仕事に影響が出るほどではありませんが、それでもたまに体調を崩して休んだり、遅刻したりすることもあります。また、私は現在57歳ですが、私の父である先代の社長は58歳で亡くなっています。先代は私とは違い、病院に行ったこともないくらい健康でしたが、急にがんになってしまいました。
そういった背景もあり、私自身、健康には常日頃から気をつけています。また、冬には趣味であるスキーに行くのですが、スキーを楽しむためにも体力を維持しなければいけません。そのため、冬以外の季節もプールで泳いだり、アスレチックをしたりして体を鍛えています。
――なるほど。ご自身の体験に基づいて健康の大切さを痛感されているのですね。大星部長はそのことをご存知でしたか?
大星部長:はい。石川は実の兄なので知っていました。石川は子どもの頃は喘息もありましたね。
石川社長:自分ではあまり覚えていないのですが、親に聞くとそうだったようです。
――従業員の皆さんは、石川社長がそんなふうに健康づくりに取り組んでいることはご存じでしたか?
田中さん:いえ、知りませんでした。体が弱いということ自体、気づいていませんでした。
――年齢の高めの従業員は、健康の大切さを自分事として受け止めてくれるでしょうし、若い世代の人にも「健康づくりに取り組んでほしい」という石川社長の想いは伝わるのではないでしょうか。新卒で入社される方の親御さんは、ちょうど石川社長のお子さんくらいの年齢ですか?
石川社長:そうですね。採用を始めた頃は、新入社員のご両親は私より年上でしたが、最近では年下になってきました(笑)。
2.職種やその人に合った健康施策を
――従業員の健康づくりを健康経営という形で取り組もうと思ったのはなぜですか?
石川社長:きっかけは全経連の方に健康経営について教えてもらい、興味を持ったこと。それが今年(2022年)の初めです。何人か社内の人間に健康経営に取り組んでみたいと相談したところ、反対意見は出ませんでした。
榎本常務:そうでしたね。私も賛成しました。正直、健康経営のことは知りませんでしたが、グループ会社である東京すずらんも、健康経営優良法人「ブライト500」の認定をすでに受けていると聞き、それなら当社でもできるのではないかと思いました。
――なるほど。具体的にはどんな施策をしていくご予定ですか?
石川社長:そうですね。ルート営業や工場で働いている人は、仕事柄、体を使いますので運動不足になる心配はあまりないかもしれません。一方、ルートではない営業や内勤は体をあまり動かさないので、運動をしてもらいたいですね。
また、ルート営業は車にずっと乗っていますし、重い荷物を扱いますので腰に負担がかかり、腰痛を抱えている人も多いのでストレッチなどを取り入れるのがいいのではないかと考えています。それと少しずつ減っているとはいえ、タバコを吸う人がまだ多いので禁煙にも取り組みたい。職種やその人に合った施策を行い、みんなに健康になってほしいと考えています。
――御社は健康診断の受診率が高いと聞いていますが、再検査など健診結果のフォローはしていますか?
大星部長:今は、対象となった人に対し、「再検査を受けてくださいね」と促すくらいしかできていませんが、健康づくりは健診時だけでなく、1年を通して取り組んでいくべきこと。ですので、通年で効果的な健康対策をしていきたいですね。
3.若手が中心となり、幹部がサポート
――健康経営の推進チームのメンバーに若手の田中さん、落合さんが選ばれていますね。チームの人選はどのようにされましたか?
石川社長:はい。今年の1月に東京ビッグサイトでエステ関連の展示会があり、当社も初出展しました。その際、田中はリーダーとして素晴らしい仕事ぶりを見せてくれましたので、健康経営の推進メンバーにもなってもらいました。落合に関しても、同じように実行力があるタイプ。新しいことには取り組みたくないという人も多い中、彼女たちは好奇心旺盛で、新しいことに挑戦する時にパワーを発揮してくれるからです。
それに、経営陣や部長クラスの人間がおこなうと、「上の人たちが何かやっているな」という感じで他人事になってしまうかもしれませんが、この二人が中心になれば従業員も身近に感じ、健康経営が浸透しやすいのではと考えたからです。
実際、田中は入社5年目、落合は2年目と社歴はまだ浅いのですが、本社だけでなく、営業所・工場のベテラン従業員にも指示を出しながら、しっかり進めてくれています。
田中さん:いえ、いえ、皆さんにひたすらお願いをしてご協力いただいているという感じです(笑)。
――その田中さん、落合さんをサポートするのが榎本常務と大星部長ということですね。若い二人をお父さん、お母さんみたいに支えていて、チームの雰囲気もとてもいいですね。健康経営の滑り出しとしては100点ではないでしょうか。
石川社長:ありがとうございます。このメンバーのお陰で当社の健康経営は良い方向に進んでいます。
4.健康経営は人財育成にも役立つ
――健康経営は社内でおこなうものですので、仮に失敗してもお客様に迷惑はかかりません。そういった意味でも思いっきり挑戦することができますし、健康経営を推進する経験は、本業でも役に立つはず。人財育成にもなりますね。お二人は社長から担当者に指名された時、どんなお気持ちでしたか?
田中さん:実は社長から指名を受けたのは2回目です。1回目はホームページ関連の仕事でした。その時も面白そうだと思い、やらせていただきました。今回の健康経営のお話をもらった時も、健康経営のことは知らなかったのですが、逆に興味を持ちました。それに私は何か言われた時はとにかく、はい、と答え、やってみるタイプですのでお受けしました。
ですが、実際に健康経営に取り組んでみると、思っていたより内容が深く、大変なこともあります。でも、パートさんなど今まであまりお付き合いのなかった人たちと関わりを持てますし、皆さん健康そうに見えても案外メタボ予備軍が多くいるなど気づきも多く、今は大変さより面白さのほうが勝っています。
落合さん:私は副リーダーとして田中のサポートをしています。私も健康経営については知りませんでしたが、健康は誰にとっても大切なことなので、皆さんの賛同は得られるだろうと思いました。それと、田中とはいつも仲良くさせてもらっており、一緒にできるなら楽しそうだ。じゃあ、やってみようという軽いノリでした(笑)。
――榎本常務、大星部長がサポートしてくれることは知っていましたか?
田中さん:榎本は直属の上司ですので、私とは運命共同体。ですから、健康経営も当然一緒にやってくれると信じていました。大星は元々人事の仕事をしており、健診の手続きなども担当していました。私と榎本、落合の3人ではどうしてもわからないところがあるので、大星も巻き込み、参加してもらいました。
大星部長:そうでしたね。最初のうちは「あれはどうすればいいですか?」と色々と聞きにきていたのですが、そのうち「打ち合わせに一緒に出てもらえませんか?」と誘われるようになって、自然とプロジェクトのメンバーになっていきました。3人はそれまで健康に関することはしてこなかったので、難しい部分もあるのではないかと心配していました。ですから、ぜひ力になりたいと思ったんです。
――榎本常務、大星部長という幹部が、若手社員の気持ちをしっかり察知しながら動いていく。本当に素晴らしいですね。
5.今後に向けての不安と希望
――今回、健康経営の取り組みを始めてみて、心配なこと、わからないことなどはありますか?
田中さん:はい。本社だけならやりやすいのですが、7ヶ所ある営業所・工場全部で取り組まないといけないところです。できていると思いつつも、何か抜け落ちていて、認定が受けられなかったらどうしようという不安はあります。申請も初めてのことなので、当社の取り組みをどうやったらうまく伝えることができるのだろうかという点も心配です。
落合さん:そうですね。田中が言った通り、本社だけなら確実にやれる自信はあるのですが、営業所・工場もとなると目が届かず、どこまでやってくれるのだろうかという不安はありますね。
田中さん:確かに、本社と営業所・工場では、少しタイムラグがあります。こちらからの発信が追いつかないこともありますし、本社ですでに始めていることでも、営業所・工場ではまだ取り組めていないというケースも見受けられます。それと健康経営そのものの理解が、営業所・工場ではまだ深まっていない部分もあるかもしれません。
――昨年の優良法人認定の申請書などはご覧になっていますか?
田中さん:はい。それとグループ会社の東京すずらんが健康経営に関する資料をたくさん持っており、見せてもらっていますのでおおよそのところは理解できています。ですが、それをどう自分たちに合わせてアレンジしていけばいいのかがまだイメージできていません。一番恐れているのは、営業所・工場は認定されて、本社だけ認定されないという最悪のケース。それを考えると不健康になってしまいます(笑)
大星部長:東京すずらんには、推進チームのメンバー全員でお話を聞きに行きました。親身になって相談に乗ってくれますし、本当に助かっています。
――石川社長にも大きく期待され、モチベーションが上がる一方、いざやってみると大変で心が折れるということもあるのでは?
田中さん:そうですね。ただ、今回、健康経営を始めるにあたり、嬉しいこともありました。社長が朝礼で「健康経営を始めます」と話してもあまり興味を持ってもらえていない雰囲気があったのですが、健康経営についてのアンケートを採ると、ほぼ全員が答えてくれました。こちらが発信をすれば、しっかり受け止めてくれるのだなと自信にもなりました。
大星部長:経営者や幹部からの発信ではなく、若い二人の発信なので従業員も身構えず、素直に受けいれてくれたのではないでしょうか。
石川社長:本当にそうですね。二人が健康経営の担当となり、頑張ってくれているお陰で、会社自体も変わってきていると思います。
【取材後記】
いよいよアールエスエスさんの健康経営がスタート。大星部長が「以前、健康経営優良法人認定にチャレンジしたことがあるのですが、資料の準備などが大変で断念しました。それもあり、今回、田中、落合たちが認定取得にチャレンジしてくれると聞いてぜひ応援したいと思ったんです」と話すなど、幹部と若手社員が阿吽の呼吸で取り組んでいる姿に感銘を受けました。今後も引き続きアールエスエスさんの健康経営を取材していく予定です。お楽しみに!
<企業データ>
会社名:株式会社アールエスエス
事業内容:おしぼりのレンタルサービス/玄関マットのレンタル/使いきりおしぼりの製造と販売/タオルのレンタル/雑貨・消耗品の販売
観葉植物のレンタル
所在地:(本社)〒121-0075 東京都足立区一ツ家4-6-4
資本金:7,000万円 (グループ合計)従業員数:400名