【シリーズ:ホワイト企業インタビュー】〔健康経営編〕徹底した社員教育と健康経営で、〝警備業界のテーマパーク〟を目指す(リライアンス・セキュリティー株式会社)

「警備業界のテーマパークを目指しています!」というユニークなキャッチコピーで、新卒採用を行ったリライアンス・セキュリティー株式会社。テーマパークのキャストのように、お客さまを感動させる警備を日々追求しています。それを可能としているのは、業界でも評判になるほど熱心な社員教育と従業員にとことん寄りそう健康経営。その独自の取り組みをお聞きしました(インタビュアー:健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表 熊倉利和)

〔リライアンス・セキュリティー株式会社〕

田中敏也さん(代表取締役)

有田恭彰さん(執行役員採用教育研修部長)

1.お客さまの幸せを自分たちの幸せに

――まず、御社の仕事の内容を教えていただけますか。

有田さん:リライアンス・セキュリティー株式会社は、広島に本社を置く警備会社です。施設警備(1号業務)と交通・雑踏警備(2号業務)が主な仕事の内容となります。

――御社は、一風変わった経営理念を掲げていらっしゃいますね。

田中社長:そうですね。「リライアンス・セキュリティー株式会社とは、お客さま主義集団である。」この言葉1つで、経営理念に加えて、社是社訓、スローガンなどすべてを表しています。

サービス業では、お客さまの幸せをまず追求し、それが自分たちの幸せになる、と考えるのが基本です。われわれ警備会社もサービス業の一員です。業務の内容は、お客さまの生命・身体・財産というかけがえのないものをお守りすること。世の中には「顧客第一主義」や「超顧客主義」など、さまざまな言葉があふれています。しかし、われわれが目指す「お客さま主義集団」という言葉は、はやりすたりとは一線を画す、お客さま満足を徹底追及することを表しています。

――お客さまの幸せが先か、自分たちが先かは、「鶏が先か卵が先か」という言葉でもよく語られますね。

田中社長:ええ。当社では、お客さまの幸せを先に考えようと従業員に伝えています。そうであってこそ、自分たちも幸せになれる。これが警備の仕事です。

採用の際にも、「お客さまを主役と考えられる人物かどうか」を重点的に見ます。お客さまに寄りそえる資質こそが、警備員には必要です。

――それほどまでに「お客さま主義集団である」ことを重視するのは、なぜですか。

田中社長:従業員1人1人がお客さまの幸せを第一に仕事をしていると、警備サービスの品質が圧倒的に向上します。お客さまに喜んでもらえれば、新たな仕事が増えていきますし、単価も上がっていく。売上が向上すれば、従業員に還元できます。お客さまを大切にすることを起点に、幸せのサイクルが回っていくのです。

実際のところ、「警備の質が高い」と評判になり、依頼が途切れずに舞い込んでくる状況が当社にはあります。だからこそ、「売上はあなたたちに還元していくから、がんばろう」と従業員に約束できるのです。

――なるほど。「お客さま主義集団」の実現のために、具体的にどのようなことを行っていますか。

有田さん:もっとも大事にしているのは、社員教育です。

私たちは警備員である前に、1人の人間です。人から信頼されるためには、人間性を高めることが欠かせません。そこで社員には、厳しい規律と高い倫理観を求めています。

具体的には、挨拶、身だしなみ、表情、態度、言葉遣いなどを徹底的に教え込んでいきます。警備技術を教えることはもちろん必要ですが、「礼儀礼節を重んじ、人として当たり前のことができる」ということが、「お客さま主義集団」の基本です。

また、仕事にも生き方にも情熱を持てるような社会人に育てるための人財育成も行っています。「人材」から「人財」へ、つまり1人の人間を社会の宝に育てていくためには、教育が欠かせないのです。

田中社長:教育によって、1人1人が誘導技術、礼儀、パフォーマンス力を高めていくことで、警備の「最強部隊」を組むことができます。すると、現場で個々が能力以上の成果を発揮し、お客さまに「親切で頼もしい警備員さんに出会えて、幸せな気持ちになれた」と感動していただけます。警備業務の品質は、こうして向上するのです。

「最強部隊」を結成できるところまで人を育てるには、多大な費用と時間がかかります。ですが、警備員を「人財」に育て、現場に送り出すための苦労は惜しみません。その努力がお客さまの厚い信頼を勝ち得て、従業員の幸せにつながっていくのです。

2.警備業界の「テーマパーク」を目指す

――先ほどから、ポスターにある「警備業界のディズニーランドを目指しています!」という言葉が気になっているのですが、どのようなことか教えていただけますか?

田中社長:数年前のことになりますが、利益還元ということで、社員旅行を大々的に行ったことがあります。独身者は2泊3日の温泉旅行を、家族持ちには、1日目に屋形船で夕食を楽しみ、2日目には千葉のテーマパークで遊ぶというイベント旅行をプレゼントしました。

実は、テーマパークは大の男が行く場所ではないと思い込んでいました。ところが実際に行ってみると、大変におもしろい。しかも、同じサービス業という視点で見ると、お客さまを楽しませる取り組みの1つ1つが勉強になるのです。現地では、キャストのみなさんが、お客さまを笑顔にすることをいちばんに考えています。遊園地ですからアトラクションがメインではありますが、キャストが一期一会の出会いを大切にして、挨拶1つとっても感動させてくれます。私たちもそういう気持ちで働くと、警備の品質がもうワンランク上がると感じました。

そうしたら、採用担当の有田が、いつのまにか「警備業界のディズニーランドを目指しています!」というキャッチコピーをつくっていたのです。最初は私も「こんなことを書いて、ちゃんと説明がつくのか?」と心配したのですが、思いのほか好評でした。

有田さん:私たち警備の仕事は、何も問題が起こらなくて当たり前。しかし、その当たり前は警備員がいるからこそ、守られています。そうした意味で、警備員とは、人々が外出先で安心して楽しむための縁の下の力持ちといえるでしょう。そのうえで、テーマパークのキャストのように、お客さまと一緒になって、自らの仕事を楽しみ、感動を与えられる存在になったら、最強と考えたのです。

このキャッチコピーは、人目を引くようです。就職活動の合同企業説明会で、われわれのブースにこのポスターを貼っていたら「これはなんですか?」と多くの学生がやってきてくれました。そのときには、「テーマパークでゲストをもてなすキャストと同じで、警備もお客さまの感動と幸せのための仕事です」と伝えました。

――なんて素敵な考え方でしょう。あのテーマパークにリピーターが多いのは、アトラクションもさることながら、キャストがくれる感動が大きいためです。リライアンス・セキュリティーにとっては、それぞれの現場がテーマパークであり、警備員がキャストということですね。一期一会といいますが、警備員が笑顔で礼儀正しく接してくれるテーマパークやショッピングモールには、「また行きたい」と感動するお客さまが必ず戻ってきます。

田中社長:本当にそうですね。だからこそ、教育が重要です。「人を感動させる」というのは、言葉だけではできない。業界内では「リライアンス・セキュリティーは、警備員の教育が厳しい」と知られています。われわれの社員教育には、厳しさとともに「『人材』から『人財』へ育てていく」ための情熱がたっぷりと込められています。「人財」へと育った警備員だからこそ、お客さまと感動と幸せを共有できる存在になれるのだと考えています。

3.従業員に寄りそう健康経営の実現

――リライアンス・セキュリティーさんは、健康経営の質の高さもすばらしく、今年も昨年に続いてブライト500の認定を受けました。それほどまでに健康経営を熱心に行われている理由を教えていただけますか。

田中社長:はい。警備員は、現場で汗をかいて仕事をしています。真夏の暑い日も、冬の寒い日も、現場に立ち続け、お客さまの安全をお守りしている。苦情を受けたり、時には危険な目に遭遇したりすることもあります。健康経営の取組は、「会社は、あなたがたを必ず守るから、安心して現場でがんばってください」と伝えるメッセージになります。

――なるほど。では、具体的にどのような健康経営を行われていますか?

田中社長:ブライト500を取得するために必要なことは、すべて行っています。やるべきことはまず絶対にやれと。従業員のために必要なことをするのは、会社として当たり前です。

そのうえで特に力を入れているのは、熱中症対策です。近年は、真夏に連日35度を超えるようになり、屋外での業務が過酷さを極めています。そのため、熱中症予防には気をつけてきましたが、数年前に、社員が救急搬送された事例がありました。熱中症とは、本当に死と近いものです。人を守る警備会社である私たちは、絶対に殉職者を出してはいけない。そこで、1トンのスポーツドリンクを警備員に配り歩くなど、とにかく現場に行って、注意喚起をしています。塩タブレットや凍らせた水の配布なども連日行っています。

有田さん:当社では、他社が真似できないくらい巡察を徹底して行っていて、社長自ら現場を回るほどです。各現場で頑張っている警備員の勤務状況を見に行くのは、私たちの大切な仕事の1つです。そのときにに、スポーツドリンクなどを持っていき、みなの体調を確認して回るのです。

田中社長:巡察時には、「何時に寝て、朝ご飯をきちんと食べたか」「あなたはお酒が好きだが、12時以降は飲んではいけないよ」などと話したりもします。生活のチェックシートの確認も行います。生活リズムを規則正しく整えるよう促していくことも、体が資本の警備員のためにはとても大事です。

「三現主義」という言葉がありますね。机上の空論になることなく、必ず「現場」に行って、「現物」を見て、「現実」を知ることが大切とする考え方のこと。我々も三現主義を徹底して実践しています。

4.コロナ対策で従業員の心をつかむ

――従業員への愛があふれていて、お話を聞いている私までうれしくなってきました。コロナ禍での対策も、相当に手厚くされたと聞いています。

有田さん:ええ。新型コロナウイルス感染症が発生したときには、いち早くマスクを3万枚と消毒液をあちこち探し回って集めました。価格が高騰していたため、マスク代だけで200万円以上もかかりましたが、1人当たり100枚を目安に配布しました。大勢の人と接する警備員を新型コロナウイルスから守るために必要なことでした。

田中社長:お金より、大事なのは従業員の命と安全です。2020年の4月末には、全国の警備会社で初めて慰労一時金を支給しました。不要不急の外出を控えるよう強く求められ、社会がいっきに不安に飲み込まれた時期です。一時金は、社員に3万円、パートには1万円、そして特定警戒都道府県の大阪府と兵庫県で働く社員には2万円を上乗せしました。また、外出機会を少しでも減らせるように、全従業員に冷凍食品も配布しています。大変な日々に少しでも喜びを感じて欲しくて、ホテルで出されるようなちょっと高級なものを選びました。我々としては、当たり前のことを行っただけですが、大きな反響を呼びました。中国新聞や広島経済レポート、警備保障タイムズなどでも取り上げられました。

有田さん:コロナ禍では、警備という対面での仕事への恐怖感は相当に強いものでした。ところが、それを理由に辞めた従業員は1人も出なかった。対策を手厚く行ったことで、安心感を与えることができたためでしょう。

田中社長:警備業界というのは、たとえば1年間に100人入ってきたら、99人が辞めていくといわれる世界です。離職率が非常に高い。ですが、コロナ禍という非常事態においても誰も辞めないどころか、「この会社で働きたい」という人が大勢やってきて、従業員数がわずか2年で40人も増えました。こんなにありがたいことはありません。

――さすが、従業員をとことん大切にするリライアンス・セキュリティーさんです。コロナ禍では、人流が著しく減ったため、同業他社が警備員を大勢手放しました。しかし、人流が復活して警備が必要になった今、人手不足になっている会社もあるそうですね。「走りたいのに走れない」という状況です。しかし、御社はいつでも全速力で走り出せる状況を整えてきた。それは、健康経営を親身になって行うことで、「従業員を大切にする会社」と名実ともに印象づけてきたからでしょう。

田中社長:そういっていただけると、ありがたいです。実のところ、ウィズコロナの真っ最中に、当社は過去最高売上を3期続けて更新できました。これには、私たち自身も驚いています。

有田さん:社長は、健康経営に関して「こんなことをしてほしい」と従業員にいわれると、すぐに動きます。その取り組みがまた「ここで働き続けたい」とみなを感動させるのでしょう。

たとえばコロナ禍で、一人暮らしの人たちから、「感染すれば、自分は誰にも助けてもらえずに死んでしまうのではないか」という不安の声が寄せらせました。そこで、緊急通報装置をすぐに手配して、希望者に配るということも行っています。

―一人暮らしの人にとって、それほど安心なことはありませんね。従業員への愛があふれている。それにしても、田中社長と有田さんはまさに夫唱婦随、阿吽の呼吸が、すばらしいとずっと感心しておりました。お二人のコンビネーションがあるからこそ、従業員に寄りそう健康経営が実現しているのでしょうね。

田中社長:有田とは、以前勤めていた警備会社からのつきあいなんですよ。私がリライアンス・セキュリティーを立ち上げると決めたとき、「力を貸してほしい」と頼み込みました。私がブルドーザーのように何もないところを切り開いていき、有田がていねいに舗装していく。健康経営でもなんでも、二人三脚で本当にうまくやってきた。この勢いで警備業界をもっとよりよく変えていくため、今後も突き進んでいたいですね。

【取材後記】

田中社長を一言で表現するならば、〝昭和のお父さん〟。厳しいながらも愛情たっぷりに従業員を育て、子どもが危険にさらされれば死に物狂いで守る。取材中、従業員の方々を「あの子たち」と話すときの優しい表情が印象的でした。一方の有田さんは、田中社長を献身的に支えつつ、その思いを着実に形にしていきながら、従業員をこまやかにケアしていく、社内の〝お母さん〟的存在。お二人のコンビネーションが、従業員によりそう健康経営を見事に成立させていました。それが従業員の安心となって、「テーマパークのキャストのように、警備する」というすばらしい「お客さま主義集団」を実現させていると深く感動した取材でした。なお、田中社長が、リライアンス・セキュリティーという唯一無二の警備会社を、なぜ、どのようにして築いたかについては、【シリーズ:私の生きがい組織】で詳しくお伝えしています。あわせてお読みください。

<企業データ>

会社名:リライアンス・セキュリティー株式会社

事業内容:施設警備・交通、雑踏警備・身辺警備・セキュリティコンサルティング

所在地:〒730-0845 広島県広島市中区舟入川口町14番22号

資本金:1,000万円

社員数:225名

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