【IKIGAI企業インタビュー】事業そのもの、企業理念そのものが健康経営。民事再生を乗り越えたストーリーと新しい社名に込めた想い(ケンプリア)

大麦若葉の栄養を吸収しやすくする独自の技術で、青汁を作り続けてきたケンプリアさん。創業55周年の青汁のパイオニアとして、社員の方々の健康に対する意識も高く、健康経営の取り組みにも積極的です。「この青汁をお客さまに飲んでほしい」という想いで民事再生を乗り越えてきたストーリーと、新しい社名「ケンプリア」に込めた願いを伺いました。(インタビュアー:健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役  熊倉 利和)

〔ケンプリア株式会社〕

深田 秀樹さん(代表取締役社長 理学博士 日本臨床環境医学会評議員)

岡本 宗篤さん(常務取締役)

鈴木 薫さん(販売部部長)

濵 久哲さん(経営管理部 総務課課長 健康経営担当者)

1.独自の技術で製造する大麦若葉の青汁

ーー初めにケンプリアさんについて教えてください。

深田社長:1968年に当社を創業した萩原義秀は、伝統的な漢方薬を安定的に服用できるよう粉末化した「漢方エキス製剤」を開発した医学博士です。「戦後の栄養不足の状態を改善したい、そのためには皆さんにどういうものを食べてもらったらいいか」を研究した結果、大麦若葉が非常に栄養価が高いことがわかりました。ただし大麦若葉は生のままだと牛しか食べられず、人間の腸では消化できません。それを何とか吸収しやすい形にするために、大麦若葉を搾ってから粉末化するという技術を開発したわけです。その大麦若葉の青汁を、弊社は55年間製造しています。

ーー青汁というと「まずい!」というCMが印象に残っています。

深田社長:あれは他社製品ですが、非常にインパクトがある宣伝でしたね。あの青汁の原料はケール。本当にまずいですよ(笑)。でも当社の大麦若葉は、癖がなく美味しいです。あのCMで青汁は普及しましたが、当社の青汁もまずいと思われてしまってちょっと困りましたね。

ーー今は色々な青汁が出ていますね。

最近は大麦若葉の青汁も、1箱300~400円台の非常に安いものがドラッグストアにいっぱい置いてあります。ただ当社の青汁は巷で安く売られているものとは、原料は一緒でも製法が全然違います。

ほとんどの青汁は葉を乾燥させた後、刻んで、微粉末にしたものです。乾かして刻むだけなので、簡単でお値段も安くできます。しかしそれでは栄養価は繊維の中に含まれたままで、なかなか消化吸収できません。また加熱する際、温度に敏感な酵素やビタミンの活性がダウンしてしまいます。

当社では生搾りと言って、最初に生の若葉をぎゅっと搾り、乾燥もスプレードライヤーという装置で低温でしますので酵素がしっかり生きていますし、クロロフィルもきれいな色となり、他社製品よりぐっと緑が濃いものができます。当社ではそれを活性保存製法と呼んでおります。

いま世間には色々な青汁が出ていますが、本当に搾った青汁「生エキス青汁」は他社が真似できない特筆すべき製品です。

2.医薬品からの撤退と民事再生

ーーケンプリアさんは以前は日本薬品開発株式会社という社名でしたね。

深田社長:はい。当社の創業者はもともと医薬品、漢方薬を含め様々な治療薬を開発していきたいと考えていました。その息子さんも医学の研究に携わっていて、世界で初めて脳腫瘍に効くヒトモノクローナル抗体を作り、特許も取りました。当社ではその抗体の医薬品を製造するために薬事申請をしたのですが、残念ながら通りませんでした。専門家が少ない中小企業にはハードルが高かったのです。

その際に作った薬品開発関連の工場などで多額の借金ができ、創業者が亡くなったこともあり、民事再生をすることになりました。

ーーそうだったのですね。民事再生の時、みなさんは会社の継続についてはどのように考えたのですか。

岡本常務:あのとき私は、創業者の想いを継いでどんなことがあっても続けていかなければと思いました。

と言うのも、私は以前、潰瘍性大腸炎を患って仕事をしていなかった時期があったのですが、少し体調が回復して仕事を探していたときに、面接で創業者の萩原に出会いました。「この人は面白そうだな」と直感したところ、あちらからも「お前、暇そうだから明日から来い」と言われ、すぐに入社を決めたのです。よく一緒に出かけたり、ご飯を食べたりしましたが、全く気を遣わずにお付き合いできるざっくばらんな方でした。青汁のおかげで体調も良くなり、本当にこの会社が好きになりましたし、感謝していましたから。

濵課長:私も民事再生の時点で転職する選択肢はありませんでした。「会社は民事再生しますが、皆さんの雇用は守ります」というアナウンスもありましたし、社員のほとんどは残ったと思います。

岡本常務:みんなこの会社に愛着がありましたし、生のエキスの、世界で唯一の青汁を製造しているという誇りもありました。

ーー皆さん本当に、この製品が大好きなのですね。

3.健康をサポートする企業としての健康経営

ーー健康経営についてはどんな取り組みをなさっていますか。

濵課長:まず青汁については、社員がいつでも飲めるように社内にたくさん用意しています。社内の消費量は本当に多いです(笑)。

当社の企業理念は「私たちは、みなさまの健康と幸せな暮らしを実現します」。この「みなさま」の中には従業員も含まれ、従業員の健康増進が経営のベースになっており、「定期健康診断受診率100%」「月平均残業時間3時間程度」も実現しています。

ーーそれはいいですね。

濵課長:それと毎年、健康経営のテーマを決めて実施しています。2023年にブライト500に認定されましたが、その年のテーマは「社内の禁煙制度」。協会けんぽの禁煙セミナーを社内で開催したり、灰皿を全て撤去して「会社内での終日禁煙」を実行すると、徐々に喫煙者が減っていきました。おそらくそういう取り組みが評価されて認定も受けられたのではないかと思います。

ーーすごいですね。社員の健康に対するリテラシーはもともと高いのでしょうか。

濵課長:そうですね。当社は社員にも、健康に役立つ製品を扱っている会社としての自覚があり、「当然だよね」という空気で積極的に取り組んでくれた人が多かったと思います。

翌年はワークライフバランスをテーマにして時間単位の有休制度を実施しました。当社は有休取得率も63%と中小企業としては高く、働きやすい環境づくりにかなり力を入れています。離職率も業界の中で低く、3~6%ぐらいです。

ーーそれは素晴らしいですね。

4.次世代の子どもたちや地域とのつながり

ーー新卒の採用もしていますか。

濵課長:大分工場では若手の人財が必要なので、地元の高校2校と提携して定期的に新卒の方を採用しています。

ーーそういった次世代の方たちや、地域の方々とどのようにつながっていこうと考えていますか。

鈴木部長:大分では近隣の小学生や高校生に工場見学に来てもらっています。見学にきてもらったお子さんに感想や絵をかいてもらって、工場に掲示することも検討中です。

また、昨年は大分県で取り組んでいる「おもてなし宣言」に登録しました。工場のある宇佐市を訪れる方が気持ちよく過ごせるように、大分工場の社員全員で地域の清掃活動をしています。

今後は、本社のある兵庫県伊丹市でも地域密着型イベントに参加しようと考えています。イベントは楽しいだけではなく、来場者の方が健康に一歩近づいてもらえるものにしていきたいと考えています。

5.女性が当たり前に活躍できる職場

ーー鈴木さんは初の女性部長と伺いました。これまでどのようなお仕事をなさってきましたか。

鈴木部長:はい。入社後、受注や生産数の調整、商品開発、研究開発のサポートなどを行なった後、2023年11月に販売部部長になりました。

ーーやりがいを感じるのはどんな時ですか。

鈴木部長:私は「考える癖をつけましょう」とよく言うのですが、販売部のみんながそれを真摯に受け止め、仕事に打ち込んでくれる姿を見ると嬉しくなります。そして些細なことですが、みんなが出かける時の「行ってきます!」という明るい声を聞くと「今日も元気に頑張ってくれているな」とちょっとお母さんのような気持ちにもなります。

それと、みんな本当に青汁が大好きです(笑)。青汁を飲んでリフレッシュして、その勢いでお客様のところに行きますので「本当に飲んでほしい」という気持ちが伝わっているのだと思います。今のように販売部のみんなが楽しく、やりがいを持って働けるようにサポートしていきたいと考えています。

ーーこれからの目標は?

鈴木部長:私自身、結婚し、二人の子供がいます。産休後は職場にスムーズに復帰できましたし、当社は女性が働きやすい環境が整っています。「女性だからダメ」ということは一切ありません。女性が当たり前に活躍できる職場だからこそ、様々なことに挑戦していきたい。いまの時代はトレンドもコロコロ変わりますし、スピードが大切です。当社は青汁一筋で来ましたが、今後どういう展開をするのかといったことも含め、スピード感を持って進めていけたらと思っています。

ーー深田社長はなぜ女性である鈴木さんを販売部部長に抜擢なさったのですか。

深田社長:それは鈴木がたまたま女性だっただけ。鈴木は営業経験こそありませんでしたが、逆に新しい発想をしっかり打ち出してくれる人だということで選びました。期待以上の活躍をしてくれています。

6.健康を一番に深く考える会社でありたい

ーー社名をケンプリアになさった背景や想いを改めてお聞かせください。

深田社長:民事再生から10数年経ち会社の今後を考えて、商品のブランド名として親しまれてきた「ケンプリア」を社名としました。「KEN」は健康の“健”、「PRI」は“一番”という意味、「IA」はアジア、ユートピアなど場を差す言葉で、「健康を一番に深く考える会社でいたい」という想いが込められています。

その想いを大切にしながら、大地・自然の恵みを活かした食の分野で力を発揮し、生活の中における健康のトータルケア企業でありたいと考えています。

ーーケンプリアとしての今後についてどうお考えですか。

深田社長:55年の歴史があるということは、逆に言うと55年間のしきたり、風習、考え方が染みついているとも言えます。現状を維持しようと考える傾向がどうしても強くなってしまいがち。去年の売り上げが今年も同じようにある、という前提で計画してもそうはいかないですし、常に新しいプランを立てていく必要があります。そのためには、これまでのしきたりに囚われず、一人ひとりの考えを出していける組織であり続けたいですね。

岡本常務:なにしろ我々はどん底を味わっていますから、苦しいときがあっても、あの頃と比べたらまだまだ大丈夫だと前向きになれます。それにケンプリアには、「生のエキスで有機、農薬不使用、吸収性が良い上にもちろんおいしい」という素晴らしい青汁があります。他社には真似できない技術と数々の製品を活かして、これからも社会に“健康”を広めていきたいと考えています。

【取材後記】

「ブライト500のために取り組んでいるのではなく、当社の事業そのもの、企業理念そのものが健康経営だと思っています」という言葉通り、社員のみなさんの健康に対する意識が高く、当たり前のように健康経営を実現しているケンプリアさん。今回は紹介できませんでしたが、近畿大学の学生さんと「みかんええやん!近大みかん青汁」を共同開発するなど、製品開発や若い世代へのアプローチも積極的に行っています。健康に対する想い、製品への誇りと愛情、そして創業55周年の歴史がありながら、ベンチャースピリットを持ち続ける姿勢に胸が熱くなる取材でした。

<企業データ>

会社名:ケンプリア株式会社

事業内容:医薬品の開発製造並びに販売、医薬部外品・化粧品の製造並びに販売、食品・飲料水の製造並びに販売、工業用化学原料の製造並びに販売、獣医薬動物用医薬の製造並びに販売、飼料・肥料の製造並びに販売、酒類の販売、農産物の生産並びに販売

所在地:〒664‐0831 兵庫県伊丹市北伊丹7丁目98番地

資本金:3,000万円

社員数:101名

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