【健康保険組合インタビュー】 【ダスキン健康保険組合】いたれりつくせりのサポートで、各事業所の健康経営を成功に導く

株式会社ダスキンさんは、多くの業態でフランチャイズビジネスを展開する企業。掃除・衛生用品のレンタルからミスタードーナツまで、私たちの生活に身近な存在です。そのうちの株式会社ダスキンおよびその関係会社等27の事業所で働く社員と扶養家族あわせて約1万人の健康をサポートしているのが、ダスキン健康保険組合(以下、ダスキン健保)さんです。そこで、ブライト500にも認定された実績のあるダスキン健保さんに、複数のグループにまたがるさまざまな会社の健康経営をどのようにサポートしているのか、お話を聞きました。(インタビュアー:健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表 熊倉利和)

石井善子さん(常務理事(取材当時))

永野修さん(事務長)

1.働く人たちの健康的で幸せな生活を支える

――ダスキンさんは、掃除用品のレンタルやミスタードーナツなどの外食産業など、多くの事業をフランチャイズで展開されている企業です。そこで働く方々の健康を支えるダスキン健保さんにインタビューをさせていただけるということで、非常に楽しみにまいりました。まず、ダスキン健保さんについて簡単に教えていただけますか?

石井:はい。ダスキン健保は、ダスキン本社に加え、関係会社の「働きさん」とその家族を支えるための健康保険組合です。ダスキンでは、従業員のことを「働きさん」と呼んでいます。働くには、「はた(傍)の人をらく(楽)にする」という意味があります。「どんな仕事であろうと他人の役に立つ働きをする時、それが「仕事」であると言える。すなわち「喜びのタネまきをする人。」と入社以来、教わってきました。

働きさんが安心して働き続けるには、ご自身が健康であること、そして家族も健康であることが重要です。ダスキン健保は、働きさんとその扶養家族が加入する健康保険組合であり、組合員の健康づくりの支援と、病気やケガなどのときの補助という、大きく2つの事業を行っています。

――ダスキン健保さんは、歴史が古いのですよね。

石井:そうなのです。創業者である鈴木清一が昭和49(1974)年に設立しました。ダスキンが健保の設立を早々に進めたのは、働きさんと家族の方々の幸せを、会社として支えたいという創業者の願いがあったからです。働きさんは、北海道から沖縄まで全国にいます。その方々の幸福な生活を支えていくには、健康保険組合をつくることが必要でした。

現在は、27事業所(会社)に勤める働きさん(被保険者)6493人と、そのご家族(被扶養者)3409人が加入する健康保険組合に成長しています。

永野:加入者数がもっとも多いのが、株式会社ダスキンです。一方、事業としては、クリーンサービスやケアサービス、イベントサポートやベビー用品のレンタルなどを行うレントオールなどの訪販グループと、ミスタードーナツなどのフードグループ、それからモップやマットなどの洗浄や製造を行う生産本部などがあり、それぞれに事業所や店舗があります。どの部門に勤務するかによって、働きさんの仕事内容は大きく違ってくることになります。ダスキン健保は、そうした方々すべての健康管理をしています。

――事業内容によって、働きさんの健康を支えていくうえでの課題が違ってくることもありますか?

石井:そうですね、少し変わってくるように感じます。たとえば、本社部門は情報の流れが速いので「喫煙をやめましょう」と発信すると禁煙率も上がります。一方、営業現場では、働きさんたちは個人で動くことが多く、疲れたときの一服で心を落ち着かせている部分があるのだと思います。ただ、喫煙量が増えて体を蝕むようなことはしてほしくないので、どうアプローチしていくかということも、課題の1つになっています。

――なるほど。現場の人たちに即した対応が必要ということですね。

石井:はい。一方で、生活習慣病に対するアプローチは、どこの事業所、あるいは店舗でも同じように必要になっています。今、日本では生活習慣病の患者数の増加が医療費を圧迫しています。これはダスキン健保でも同じです。いかに生活習慣病の人を減らしていくかは、重大問題です。

そこで私たちは、40歳未満の方々へも、40歳以上の方々と同じように、発症リスクのある場合にはアプローチしています。一般に、生活習慣病対策としては、メタボ健診(特定健診)が始まる40歳以降が注目されますが、40歳未満のときから生活習慣病を予防していくことで、治療が必要になる人の数を減らせると考えています。

――生活習慣病予防のために、具体的にどのようなことを行っていますか?

永野:生活習慣病のリスクが高い組合員を対象とした「生活習慣改善プログラム」を、事業所と連携して実施しています。健康リスクを軽減するため、目標設定から継続サポートまで、1人ひとりに最適な指導をしていきます。具体的には、まず面接をし、ご自身に適した栄養指導・運動指導を行いながら、3か月間かけて生活改善に取り組んでいきます。この間、専属の担当者がサポートを続けます。これは、40歳未満の人にも行っています。

石井:こうした保健指導を、ダスキン健保では、生活習慣病の治療を受けている服薬者にも行っています。国が求める特定保健指導では、服薬者を外しています。薬が処方されているということは、医師の指導が入ると判断されてのことと思います。しかし現実には、服薬者は「薬を飲んでいるのだから、生活習慣を改めなくても大丈夫」と思ってしまう人が多いのです。これが単身赴任者になると、さらに顕著になります。ご自身で食事の管理をするのが大変な面もあるからでしょう。そこでダスキン健保では、服薬者に対しても、主治医と連携して、メディカルスタッフが保健指導を行うことで、生活習慣の改善をサポートしています。

――なるほど。40歳未満の人も、服薬者も含めて、生活習慣改善プログラムを実施することで、現在の患者も未来の患者も減らしていくというわけですね。生活習慣病の患者を減らすには、健康診断が重要になりますが、こちらのほうはどうですか。

石井:通常の健康診断だけでは、健康状態についてわかることも限られますので、組合員が提携医療病院で健診を受ける場合は、大腸便潜血、加えて女性には子
宮がんや乳がんなどの対策として婦人科検診をセットにしています。また、40歳以上の方は3年に1度、人間ドックを健診として受けることができます。人間ドックを受けるためには、通常、高額な費用と時間が必要です。従来は、人間ドックを希望する方には費用援助をし、各自で受診してもらっていましたが、費用援助があったとしても自己負担額が高額であること、営業職など時間のコントロールが難しい現場の人たちは、制度はあっても受診が難しく、利用できる部署に偏りが出るなどの問題がありました。そこで、一人でも多くの人に自分の健康にもっと意識を働かせてほしいとの思いで、人間ドックの健診項目を通常の健康診断に組み入れました。事業所は安衛法の基本健診部分の費用を負担、人間ドック部分の費用は健保が負担しています。がん検診も人間ドックも、働きさんだけでなく、被扶養者の方々も同じように制度に従って受けることができます。

2.健保と事業主が連携して健康経営を実行

――ここまでお話をお聞きしているだけでも、組合員さんに対していたれりつくせりで、さすが働きさんを大切にするダスキンさんならではの取り組みと感じます。しかし、複数のグループに属するさまざまな会社の健康経営をサポートしていくのは、大変ではないでしょうか。

石井:ダスキン健保の組合員は、被保険者と被扶養者をあわせて約1万人います。1万人もの方々に、健保のほうから1対1でアプローチしていくのは、現実的に不可能です。そこで、各事業主さんと連携して、健康経営を行っています。つまり、事業主さんの主体的な健康経営への参画が重要なカギになっています。

特定保健指導の案内なども、事業主さんを通して行っています。また、再検査の受診率を高めるアプローチも、各事業主さんにお願いしています。そうすることで、検査や特定保健指導を受ける働きさんの意識を高めていっています。

――たしかに。事業主さんから直接いわれると、「やらないといけないな」と思いますね。

石井:ええ。健康診断も特定保健指導も、働きさんに健康でいてほしいという思いが重要で、その思いがあってこそ、事業所全体の健康意識が高まり、健康経営の成功につながっていきます。

これは、再雇用の人たちも同じです。現在、ダスキンの定年は60歳で、その後は1年ごとの契約更新になっています。契約更新の際にお渡しする契約書には、「健康診断で2次検査が必要となった場合には、必ず受診してください」という一文が入っています。仕事を長く続けていくには、自分の健康を第一に考える意識が欠かせないからです。しかも、高齢者の医療費の増加は、健保にとっても大きな問題になってきています。ですから、契約書の一文だけで終わらせずに、事業主からも直接アプローチをしてもらっています。それによって、実際に効果が上がっているように感じます。

――なるほど。事業主と協力しあうことで、健康経営を効果的に行われているのですね。もともと、ダスキン健保さんは、データヘルス(※)も熱心に行われていましたね。

※健診やレセプト(医療機関が健康保険組合に提出する月ごとの診療報酬明細書)などのデータを、医療保険者が分析して、加入者の健康状態に適した効果的な保健事業を行うこと。

石井:そうですね。ダスキン健保の場合、データヘルスを本人のためだけに利用するのではなく、健診やレセプトなどのデータを分析して、「あなたの事業所はこのような状態ですよ」という資料を作成し、事業主さんに送るようにしています。それによって事業主さんに事業所全体の問題点を自覚していただき、働きさんたちの健康維持に活かしてもらっています。

永野:そのデータに基づいて、事業所ごとに、項目ごとの成績や課題数を一覧にし、他の事業所との比較ができるようにしています。こうすると、事業主の方々の会議の際に、「自分のところは何の項目が何位だった」、「課題がいくつあった」と話題にもなります。順位が低ければ、「このままではいけない」と改善策を考える機会となります。また、順位の高い事業所にとっては、健康への取り組みに対する一層の励みにもなりますし、健保の広報誌で成功例として水平展開してもらえるよう紹介したこともあります。健康経営を実行するためには、自らの位置づけを知ってもらうことは大変に効果的です。

――おもしろいですね。他事業所との比較を示すことで、健康経営を推し進めていくというのは、ダスキンさんのように多くの事業所を持つ企業だからこそできることですね。

石井:はい、そうだと思います。「自分の事業所は順位が低いが、他はどんなことをして順位を上げているのだろう」と情報を得るために、会合に出ていく事業主さんもあるそうです。以前は、同業の会合にも行かなかった事業主さんたちが、異業種間の会合にまで参加して、健康経営の情報収集に努めている、という話も聞きます。

――それはすごい! 現在、いくつの事業所が健康宣言をし、そのうち健康経営優良法人に認定されている事業所はどのくらいありますか。

永野:健康宣言しているのは26事業所です。このうち、2022年に健康経営優良法人に認定されているのは、22事業所です。株式会社ダスキンは、大規模法人部門でホワイト500に認定され、私たちのダスキン健保は中小規模法人部門でブライト500に認定されています。

健康優良法人認定を受ける事業所は年々増えています。2018年は9事業所、2019年は14事業所、2020年は18事業所、2021年は21事業所でした。

石井:健康経営優良法人認定を申請するのは、たとえるならば、車の法定点検と同じと思います。車も正常に運転できるか検査するように、企業も従業員の健康への配慮が適切かを定期的に調べることが重要です。認定の申請書には、健康経営に必要な項目がしっかり盛り込まれています。それを1つ1つ確認することで、従業員の健康が維持されているか、事業主は自ずと確認していくことができます

――ただ一方で、申請が面倒だという話もよく聞きます。ダスキン健保さんでは、各事業所の認定申請の手伝いをされているそうですね。

永野:はい。可能な限りサポートしています。事業所に「すべて自分でやってください」と言っても、そんな余裕はなかなかありません。とくに中小企業にとって健康経営はコストもかかり、「主体的にがんばります」とまで行きにくいのが現実です。

しかも、健康経営優良法人認定に向けて求められているレベルも高いものがあります。ダスキン健保と、各事業所はコラボヘルスの覚書を結び、一緒に健康経営に取り組むことにしています。健康経営を始めたばかりのころは、いずれの事業所も支援が必要な状態でした。しかし、みなさん、だんだんと申請書の内容の理解が進み、作成に慣れてきて、今では自分たちで申請書をほぼ完成させられる事業所が多くなり、申請前に共有し、気づいた点を確認しあう形になっています。

――健保のほうで、申請のサポートをするというのは、まだまだ珍しいですよね。最近では、そうした健保さんも少しずつ現れてきましたが、ダスキン健保さんはその走りだと思います。

永野:たしかに、そうかもしれません。先日、他の健保の担当者にお会いしたときに、「申請のサポートをされていますか」と質問をしたら、「そこまではできていない」と話されていました。

石井:日本経済が低迷しているなか、大企業さんにももちろんがんばってもらわなければいけませんが、中小企業が元気でなければ、国民の生活レベルは上がっていきません。健康経営の取り組みまで手が回らない中小企業を、健保がしっかりサポートしていければ、働く人が元気になり、その企業も元気になり、やがて社会全体が元気になっていくようにも思います。

厚生労働省が今、コラボヘルスを推進していますね。健保などの保険者と事業主が積極的に連携していくことで、従業員の病気予防と健康づくりを積極的に行っていくことができます。そうした意味でも、健保が健康経営のサポートをしていくことは、コラボヘルスの重要な一環となるのでしょう。

――2018年度からは健康スコアリングレポート(※)も行われていますが、これについてはどうでしょうか。

※日本健康会議が、厚生労働省と経済産業省と連携して、健康づくりへの取り組み状況などをスコアリングして経営者に通知するもの。保険者のデータヘルスの強化と、企業の健康経営の促進が目的。

石井:健康スコアリングレポートは、50人以上の事業所にはそれぞれ出してもらえます。

日本人は、成績表が好きなところがありますよね。健康スコアリングレポートは、1つの成績表のようなものです。これを出してもらうことで、経営トップは健康経営を行いやすくなると思います。

3.1人ひとりの意識のあり方を変えていきたい

――健保の立場から、今後、健康経営の必要性を周知していくために、どんなことが必要と考えますか。

永野:「健康経営は、あなたのための取り組みですよ」ということを、国や保険者がもっと広めていくことではないでしょうか。経産省は、従業員の健康保持増進が生産性の向上につながっていく、と健康経営の目的を掲げていますが、そのためには従業員の意識改革も必要です。従業員の方々にしたら、「健康経営は、トップの人たちがやっていること」ととらえているところがまだまだ強いように感じます。

石井:本当にそうですね。健康経営は、事業主の思いだけでは成り立ちません。「従業員の健康的で幸福な生活が守られてこそ、企業は業績を高めていける」と事業主が考える一方で、「会社の健康度は自分たち1人ひとりが高めていくんだ」という従業員の意識があってこそ、健康経営は成功します。その両輪の意識を、国主導で高めていくことができれば、健康経営に取り組む企業はさらに増えていくのではないでしょうか。

――では、最後になりますが、ダスキン健保としての今後の課題を教えてください。

永野:被扶養者の方々の健診受診率を上げていくことが課題の1つになっています。働きさんであれば、事業主の方から健診を受けるようにアプローチをしてもらえます。しかし、被扶養者になると、本人が健診を受けようと思わない限り、受診されません。働きさんを支えている家族の健康も、私たち健保にとっては大切なことです。ここをどうサポートして受診率を高めていくかが課題ですね。

石井:健診や再検査の受診率を上げるということは、医療費を適正化することにもつながっていきます。病気が重くなれば、医療費もそのぶんかかります。医療費の適正化のためには、組合員1人ひとりが、病気はなるべく早期に発見し、早期に治療していくという意識を持つことが重要です。

だからこそ、組合員の方々には、健康保険の仕組みや自分が受けられる支援について、もっと関心を持ってほしいです。健保とは、「病気になって困ったときに申請すればお金を出してくれるところ」と思っている人たちも多いように感じます。また、健保の組合員になれば、健康保険証がもらえます。それを「医療費が割引になるカード」という程度に考えている人もいます。また、自己負担分を差し引いた残りの医療費は、実は自分達組合員が納めた保険料の中から出ている、ということを知らない人もいます。

しかし、健康保険とは、誰もが安心して医療を受けるための支え合いの制度です。組合員が収入に応じて保険料を出しあい、事業主も負担します。医療費の増大が社会問題になっていますが、医療費をいかに適正化していくかは、1人ひとりの問題でもあるのです。

そのためには、国民みんなが自分の健康にいかに責任を持ち、病気の予防と早期改善に努めるかが重要です。健保はそれを全面的にサポートしていく組織です。そうした意味では、健保も組合員との距離を縮めていくさらなる工夫が必要と考えています。

【取材後記】

「従業員の健康増進をサポートすることで能力を存分に発揮してもらい、会社と従業員がともに発展していきましょう」というのが健康経営の目的の1つです。では、どのように実行していくとよいかと考えたとき、通常業務の多忙さから足踏みしてしまう企業が多くあります。ダスキン健保さんは、豊富な知識と経験を活かし、多角的な視点からサポートを手厚く準備しています。それによって、働きさんと扶養家族の方々の健康を支え、各事業所の健康経営を成功に導いています。ダスキンで働く人たちの明るい笑顔は、そうしたダスキン健保さんの献身に支えられている、と深い感銘を受けた取材となりました。

<組合データ>

会社名:ダスキン健康保険組合

所在地:〒564-0051 大阪府吹田市豊津町9番1号ビーロット江坂ビル10階

加入事業所数:株式会社ダスキングループ27事業所

被保険者数:6,493人(男性3,256人 女性3,237人)

被扶養者数:3,409人(男性1,165人 女性2,244人)


(令和4年3月31日現在)

担当者の課題や手間をファンマーケティングで支援!