シリーズ:【健康経営はじめました】従業員の健康こそが企業発展の礎。未来を見据えた健康経営の実践(大同硝子興業②)

大同硝子興業さんへのシリーズ2回目のインタビュー。前号は、若き4代目が自ら陣頭指揮を執り、健康経営をスタートさせたお話を中心にお届けしました。今回のインタビューは、健康経営優良法人認定の申請を終えたところで実施。認定に向けてどんなことを行って、従業員を巻き込んでいったのでしょうか。平均年齢が50歳という大同硝子興業さんの健康経営。社員の高齢化が進む会社ならではの取り組みもお聞きしていきます(インタビュアー:健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役  熊倉 利和)

■鈴木聡さん(代表取締役社長)

■高松さん(総務部主任)

1.初めての申請を終えて

――優良法人認定の申請から1か月が過ぎました。申請は順調に進みましたか。

高松さん:はい。必要書類である「申請内容記載表」のシートを確認しながら、申請準備を行いました。大問ごとにいくつかの設問があり、実施できたところにチェックを入れていくのですが、多くの項目にチェックを入れられました。ただ、回答が先に進むにつれて、「これは難しいな」と感じることも多かったです。

――「こんなことも必要なの?」とシートを読みながら慌てたこともあったのではないですか。

高松さん:そうなのです。私自身、初めての経験でしたので、知らないことばかりでした。たとえば、健康保険組合の制度を全社に周知しておけばチェックできる項目があったのですが、申請時にそのことを初めて知りました。女性の健康増進に向けた取り組みも、京都工場には女性従業員が多いにもかかわらず、今回はチェックできませんでした。これを機に健康保険組合の制度を洗い出し、全社に発信していきたいです。

――全体的には、どのくらいの大問をクリアできました?

高松さん:優良法人認定のための項目で、クリアできなかったのは6つ。他の項目はすべてクリアできるようにがんばりました。

――すごい!取得できそうですね。

高松さん:取得できるように申請はしたのですが、ドキドキしています。

――お気持ちはよくわかります。でも、記入ミスでもしていない限り、大丈夫でしょう!

高松さん:ほっとしました。ありがとうございます。

――申請を行うなかで、社内に健康経営が浸透してきたなという実感はありましたか?

高松さん:実感というほどではないのですが、「健康経営の記事を見つけたから読んでみたら」とか、「あの会社も健康経営を始めたらしいよ」など、従業員から声をかけられることが増えました。従業員の意識が健康経営に向いてきているのかなと感じています。

――すごいじゃないですか。うれしいですね。応援されている証拠です。

2.「運動」が世代間の交流を深める

――優良法人認定の申請に向けて、新たに始めたことを教えてください。

高松さん:運動機会の増進に向けた取り組みを始めました。本社と京都工場に健康器具を設置しました。大勢の人が使いたいものを知るために、事前アンケートを行ったうえで、肩叩き器具、握力を鍛える器具など、座って簡単にできる器具を3つずつ設置しました。

――反応はどうでしたか? 

高松さん:残念ながら、まだあまり使われていないようです。今月上旬に全社イベントがあり、器具の使い方を改めて説明したので、今後に期待しています。

鈴木社長:運動に関してはいい変化もあるんですよ。昼休みに社員たちがバトミントンをするようになりました。60代のベテラン社員が「足がうまく動かへんわ」と笑いながら、若手社員と和気あいあいとラリーをしている。見ていて、うれしくなります。しかも今度は「みんなで大縄跳びをやりたい」という声があがってきたんです。インターネットで大繩を購入したので、今日届くはずです。

――運動は、楽しみながら世代間の交流を深めてくれますよね。従業員の方々が、どんどんアクティブになってきました。

鈴木社長:昼休みに行う短時間の運動が健康促進にどれだけつながっていくのか、実際のところはわかりません。ですが、健康へのイメージを社員たちが持ってきたように感じます。

――すばらしいですね。前回の取材では、従業員のケガが頻発していた時期があり、「なんとかしなければ」という鈴木社長の切実な思いから健康経営がスタートしたとの話をうかがいました。そこから着実に従業員を巻き込んでいらっしゃる。ケガや病気については、その後はいかかですか?

鈴木社長:おかげさまで、今年度はケガだけでなく、大病をする社員もゼロです。高齢化の進んできた当社にとって、大変に喜ばしいことです。年末にさしかかってきましたが、それぞれ顔色がよく、疲弊している感じもないように思います。とくに工場の従業員たちが余力を持って働いてくれているという感覚があります。みんながんばってくれています。

3.「健康」を人事評価の対象に

――優良法人認定の申請に向けて動いていくなか、運動以外に従業員に変化はありましたか?

鈴木社長:はい。当社では正社員に個人目標を表明してもらっていますが、内容は健康経営に関することでもよいと伝えています。目標の達成度は、人事考課の評価につながります。すると、数名の社員が「健康のために歩きます」「運動をします」「食事に気をつけます」と個人目標を掲げてくれました。もちろん、どのくらい達成したのかは数値で報告してもらう約束です。

――健康促進に向けて自分のために取り組んだことが、人事考課の評価につながるとなれば、社員のやる気も高まります。

鈴木社長:そう思います。「個人の健康を人事考課の評価の対象にするとは、あまいのではないか」と感じる人もいるかもしれません。ですが、従業員の健康促進は、会社の成長のためでもあるのです。当社の全社目標は「ムリ・ムダ・ムラの削減」です。これは、社員の健康なくして達成できないのです。

――従業員のケガや病気をなくすためには有給取得率を上げることが必要と、前回のインタビューで話されていました。

鈴木社長:はい。有給取得率が悪かったワースト5位に入る社員には、「有給を取る」ということを個人目標にするよう伝えました。5人中3人が実際に目標にし、達成できています。若い人は「有給取得が目標になるなんて、どういうこと?」と驚くかもしれません。しかし、中高年が過半数を占める当社には、「休まない美学」を今も持ち続けている従業員が多いのです。休むことに後ろめたさを感じている社員もいる。でも、実際に有給をとってみると、自分のいない穴を周りの仲間が協力して埋めてくれることがわかります。それによって、「自分ががんばらなければ!」という肩の力が抜けるのでしょう。気持ちに余裕を持てるようになった従業員が増えてきたことも大きな成果です。

――実際のところ、有給取得率はどのくらい上がりましたか?

高松さん:去年が年間47%で、今年は半期の時点で36%。このままいくと70%まで上がるだろうと予測しています。

4.従業員の未来に備え、団体保険に加入

――御社は従業員の平均年齢が50歳とのことですが、社内の高齢化が進むなか、喫緊の課題は何になりますか。

鈴木社長:まずは、健康診断です。昨年度まで、健康診断は社会保険加入者のみ、つまり正社員が対象でした。今年度からは全従業員で行っていきます。受診者が増えれば、要再検査という結果になる人も増えるでしょう。ここのフォローアップが重要になってくると考えています。また、実際にどのくらい受診率が上がったのか、数値化にも取り組み、従業員の意識改革に役立てていきたいです。

――会社の高齢化対策として、実際に何か行っていることはありますか。

鈴木社長:人は加齢とともに大病を患う可能性が上がっていきます。そこで、4年前から三大疾病団体補償保険に会社が加入しています。がん、心筋梗塞、脳卒中という三大疾病を従業員が発症した際、金銭的なサポートをしていくためです。工場には単身者も多くて、自分では保険にあまり入りたがりません。ですが、以前、大病をして困ってしまった従業員を目の当たりにし、必要性を痛感しました。なお、今後は、働けなくなったときの給与を保障する所得補償保険なども検討していこうと考えています。

――病気になったあとのことまで会社が整えてくれているとあれば、従業員の方々も安心ですね。前回の取材ではストレスチェックを始める予定とも話されていましたが、こちらは進んでいますか。

鈴木社長:はい。来年の3月、健診と同じタイミングで、健診業者に実施してもらうことに決めました。一昨年から社内アンケートのような形で簡易的なものは行っていたのですが、来年からは本人がまだ気づいていないストレスの情報まで吸い上げていけるよう、本格的なストレスチェックを行います。

――前回、ストレスチェックはパンドラの箱のようなもので、開けてからの対策が重要との話をしましたが、その部分はどうでしょうか。

高松さん:まず、ストレスチェックの分析結果のレポートを健診業者に出してもらいます。高ストレス者に対しては、自治体の産業保健総合支援センター(さんぽセンター)に面談を依頼しようと予定しています。

――さんぽセンターは、メンタルヘルス対策などの産業保健を支援する専門機関で、経験豊富な専門スタッフがそろっていますし、費用もかからないですから、心強いですね。

5.健康経営を次のステージへ

――健診結果やストレスチェックの後追いフォローに関して、さらにもう一方踏み込んでお尋ねしたいのですが、産業医との連携は考えていますか。

鈴木社長:当社には50人を超える事業所はなく、産業医は置かなくてよいことになっていますので、今のところは考えていないです。

――そうすると、たとえば要再検査となる人がいた場合、担当者の高松さんが「再検査を受けてください」と伝えることになると思います。これはけっこう大変な仕事です。「どこまでフォローしていけばいいの?」という担当者の思いと、「同僚にそこまでいわれたくない」といった従業員の間で、ハレーションを起こしやすい部分でもあります。何より、ベテラン社員の意識を変えていくのは、業務とはいえ困ってしまうこともあるでしょう。

鈴木社長:産業医と契約すると、その部分のフォローもしてくれるのですか? 

――やってくれます。労働安全衛生委員会にも参加してくれます。委員会当日に、今月は本社、翌月は京都工業、というように輪番で従業員と面談を行ってもらうこともできます。オンラインで従業員との面談をしてくれる産業医もいます。ベテラン社員も「医者にいわれたら、再検査を受けなきゃな」と素直に受け入れやすい。このことは優良法人認定を取得するタイミングで検討してもよいかもしれませんね。そうすることで、労働安全衛生委員会をより充実させることもできるでしょう。

鈴木社長:なるほど。ストレスチェックの情報を集めていた際に、産業医のサービスなどもよく目にしていました。そういう形で産業医の支援をあおぐという手段があるのですね。健康診断もストレスチェックも、後追いフォローをきちんとできなければ、片手落ちになってしまいます。参考になりました。

――では、いよいよ最後の質問です。優良法人認定の申請を終え、大同硝子興業さんの健康経営は次のステージに入っていくと思いますが、今後はまず何を行っていきますか。

鈴木社長:今考えているのは、健康経営推進の体制づくりです。今年は総務部の活動の一環として、高松やその上長が職務として健康経営の推進を行ってくれました。今後、従業員にさらに浸透させていくためには、おもしろくて楽しいことをどんどん実施していく必要があります。そこで、健康促進に向けての活動グループをつくったらどうかと考えています。そのためには、各拠点に推進者が必要。本社は高松がやってくれていますから、京都工場で陣頭指揮を執ってくれそうな人を探している最中です。

――それが実現すると、大同硝子興業さんの健康経営はますます充実し、アクティブになっていきますね。次は最終回!優良法人認定の発表後、「無事に取得できました!」というお話をぜひ聞かせてください。

鈴木社長:そうしたら次回は、京都工場で取材を行いましょう。昼休み、みんなで大縄跳びをやっている写真を撮ってもらいたいです(笑)。

――いいですね!次回は京都でお会いしましょう!

【編集後記】

社員のために何が必要か、「今」と「未来」という2つの視点から健康経営を前進させていく鈴木社長。「社員から大繩をやりたいといってきたんですよ」とうれしそうな表情が印象的でした。健康経営は世代間のコミュニケーションも活性化し、全体のワークエンゲージメント(仕事への意欲)を自然と高めてくれることを改めて実感しました。次回はいよいよ最終回です!

〈企業データ〉

会社名:大同硝子興業株式会社

事業内容:プラスチック製品の射出成形、中空成形、真空成形、2次加工など

所在地:〒530-0047 大阪府大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング3F

資本金:90,000千円

従業員数:61人

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