シリーズ『健康経営はじめました』「健康」を軸に新たな時代を築く。若き4代目の挑戦(大同硝子興業①)

シリーズ『健康経営はじめました』の第2弾は大同硝子興業さん。若き4代目が自ら旗振り役となって、一歩一歩着実に健康経営を進めています。「工場で働く社員のケガなくしたい」「社員にいつまでも元気に働いてほしい」「心豊かに仕事をしてほしい」という社長の熱い思いを原動力に、健康経営優良法人認定に向けていよいよスタートします!(インタビュアー:健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役  熊倉 利和)

■鈴木聡さん(代表取締役社長)

■高松さん(総務部主任)

1.80年の歴史と健康経営への挑戦

――まずは大同硝子興業について教えてください。

鈴木社長:はい。弊社は1945年創業したプラスチック成型製品の製造を専門に行う会社です。製品は、食品用の容器、ギフト用のお菓子やチョコレートの仕切り、学校教材など。お客様から依頼をいただき、外部生産するというOEMの事業を中心に行っています。創業から80年近く、業界ではかなり歴史の長い会社になりました。拠点は大阪の本社と京都の工場の2か所です。

――「硝子興業」という社名がついていますが、ガラスは扱っているのですか?

鈴木社長:創業時にはガラスの卸しをしていたのですが、現在、ガラスはまったく扱っていません。ただ、そのときの社名のまま、現在に至っています。プラスチック製品のみを扱うようになって、もう60年以上になりました。

――歴史ある御社ですが、鈴木社長は何代目になられるのですか?

鈴木社長:私で4代目です。代表取締役になってちょうど1年です。

――若き社長がなぜ健康経営に興味を持ったのか、きっかけを教えてください。

鈴木社長:私は入社6年目になるのですが、最初の3年間は工場に勤務していました。その3年間は社員のケガが多かった。骨折をする、手を切るなど、ケガをする社員が次々に出て、悩んでしまうほどでした。社員が安全に働ける職場環境の重要性を切実に感じたのです。

――1人の社員として工場に勤務されていたときですね。

鈴木社長:はい。3年間工場で働き、次の2年間は本社と工場を行ったり来たりでした。そうしたなかでの3年前、健康経営につながっていくプロジェクトを工場にてスタートしました。発起人は私です。休日を増やし、有給休暇を取得しやすい環境を整え、NO残業を徹底していくなど、休養をしっかり取ることで安全に健康的に働ける土壌づくりを行ってきたのです。このプロジェクトは一定の成果を上げたと捉えています。最近、無事故記録が現時点で800日間突破しました。

――すばらしいですね!

鈴木社長:ありがとうございます。まだまだ十分とは思っていないのですが、最低限のベースは整ったと考えています。

2.会社の未来を支える健康経営

――その後、どのような経緯で健康経営を始めようと決意されたのですか?

鈴木社長:実は、以前から知人に「健康経営をやったほうがいい」とアドバイスを受けていたのですが、そのモチベーションはまだありませんでした。ただ、プロジェクトが軌道に乗り、ケガをする社員は減っていく一方、「休んで」と伝えてもがんばってしまう社員がまだ多く、休暇が有効活用されている、という実感を持てずにいました。そこで1年前に私が社長に就任し、年度目標を考えていたとき、「そうだ! 健康経営を始めよう」と決意したのです。

――それがいつになりますか?

鈴木社長:毎年、年度初めに経営方針の説明を全社員に行っていて、そのときに健康経営についても伝えました。当社の決算期は4月ですので、全社員に向けて健康経営の実施を発信したのは今年5月です。このときに全社目標として発表したのが「ムリ・ムダ・ムラの削減」です。その手段の一つとして健康経営の実施を全社員に伝えました。

――「ムリ・ムダ・ムラの削減」という経営戦略に、健康経営はどう関与するのでしょう。

鈴木社長:大きくかかわってくるのは、工場の運営です。たとえば、製造部門の成形部の目標の1つに「稼働率」があります。人がいてこそ成り立っている仕事が、工場には非常に多く、現実問題として1人が突然欠勤するだけで稼働率がかなり落ちます。そのぶんの業務は停滞し、他の社員にも負担がかかるためです。ケガの治療が長期にわたった場合には、その期間だけパートさんを雇うことになるとコストもかかってきます。しかし、健康経営によって社員の無理な働き方をなくし、急な欠勤や長期休業を減らしていくことができたら、無駄なコストや時間も減り、仕事のムラもなくなっていきます。

――なるほど。社員の安全と健康が守られていけば、そのぶん稼働率が上がり、業績も安定して向上していく。社員の安全と健康があってこその工場というわけですね。

鈴木社長:ええ。とくに当社は歴史が古く、ありがたいことに離職がほぼありません。そのぶん高齢化も進んでいて、社員の平均年齢は50歳。70代のベテランさんも元気に仕事をしています。社員みんなに健康でケガなく働いてもらうため、健康経営をしっかり行っていきたいと考えています。

3.全社員を巻き込むためには

――今年に全社員に「健康経営を始めます」と発表され、実際に健康宣言をされたのはいつですか。

鈴木社長:今年の6月です。健康保険組合のサポートで行いました。現在が8月で、10月頃に優良法人認定の申請を行う予定です。

――健康経営の担当者は、総務部の高松さんになられるのですね。申請に向けて何が課題になっていますか?

高松さん:初めてのことばかりで、心配がたくさんあります。いちばんの課題は、「社員全員を巻き込んでいくためには、何からどのように取り組むとよいのか」です。認定を目指すことはお知らせしていますが、健康経営を自分事として落とし込んでもらうには、まだ弱いと感じています。自ら「やってみよう」と思ってもらえる仕組みづくりをしたいと考えつつ、まだ十分ではなく、そのあたりが不安です。

――健康宣言を行ったとき、反響はありました?

高松さん:当社では社内コミュニケーションにLINEを活用しているのですが、「健康宣言しました」と送信したときに、「いいね」という返信が数件ありました。ありがたかったのですが、反響といえるほどのものではなかったです。

鈴木社長:そうでしたね。ですが、健康経営を個人レベルでもやっていこう、という社員は確実に増えていると私は感じています。正社員にはそれぞれ個人目標を発表してもらっていますが、健康や休暇に対する思いを盛り込んでいる社員は結構います。

――健康経営を始めたばかりのときには、確かな手ごたえを感じにくいので、担当者の方は心配になってしまいますよね。ですが、御社のホームページを見ると、「残業時間0時間」「年間休日数126日」「有給消化率48% 年々上昇中」など、健康経営につながる取り組みがわかりやすく掲載されています。数字でああやって示すことは、全社員の意識改革にも必ず役立ちます。すばらしいことです。

4.社員の健康意識を高めていく

――現在、従業員の健康診断の受診率は何パーセントくらいですか?

鈴木社長:昨年度までは対象者がフルタイムの社員まででしたから、ほぼ100%です。ただ、要再検査となった人の受診率は、以前はかなり低かった。その数値が上昇してきています。70代のベテラン社員は「バリウム検査は絶対に受けない」と豪語していたのに、昨年から受診を始め、「悪いところが見つかって、治療できたよ」と喜んでいました。そんな身近な人の話を聞いていると、周りの社員も「ちゃんと再検査を受けよう」という気持ちになるようです。

高松さん:今年からはパートタイマーの方々も健康診断を受診できることになりました。受診率の結果が出るのはこれからですが、個別にフォローしていきたいと考えています。

――いいですね! 健康経営を着実に前進させていらっしゃる。さきほど高松さんが「どうやって自分事にしてもらえるか」と話されていました。社員の健康意識を高めるために会社として行っていることはありますか?

鈴木社長:直近のエピソードでいえば、誰でもいつでも血圧が測れるよう、食堂に血圧計を置きました。これは、夜勤のベテラン社員が「高血圧なので、血圧を下げる」と目標を掲げていたからです。「こういうことをしてほしい」と社員から声が上がってきたら、どんどん耳を傾けていきたいですね。社会人なので仕事の相談は周りにしていきますが、健康や病気の相談はしにくいものです。そこで、健康促進の動画を定期的に流すなどして、みんなで健康について話しあうきっかけづくりもしていきたいです。

――健康や病気の話をオープンにしていく環境づくりですね。ただ、オープンにしたくても、心の問題などは人になかなか話せないものです。従業員のメンタルケアは今後の課題ですか?

鈴木社長:いいえ、その対応もすでに進行中です。実は、ストレスチェックを来年から始めようと計画しています。しんどいと感じている人をいち早く見つけ出すためです。これは、正社員、パートタイマー関係なく、全従業員に行うことに価値があります。

――そこまで、すでに考えているのですね! 本当にすばらしい。ただ、ストレスチェックはパンドラの箱のようだとも私は感じています。ストレスチェックを行うと、1~2割の確率で問題が浮上します。今は見えていない問題が明らかになるという感覚です。開けたほうが社員のためにも会社のためにもいい。ただ、開けるのならば、相談場所の確保と現場の対応をセットで行うなど、用意周到に始めなければいけない。それができてこそ、真の意味でのストレス対応になるのでしょう。

鈴木社長:本当にそうですね。上司との「1on1ミーティング」や私との「TOPミーティング」など、社員の思いを拾い上げる体制はこれまでも築いてきました。ですが、メンタル的な問題に対応できる体制づくりも重要ですね。私自身、各部門の技術など、まだまだわからないことばかりです。だからこそ、社員たちの働きやすい環境を築いていくことが、社長としての私の当面の仕事だと考えています。

5.中小企業の採用戦略に健康経営を

――鈴木社長は、優良法人の認定に期待されていることはありますか。

鈴木社長:社員の健康を守り、ケガを防ぐことが1つ。もう1つが採用です。我々のような中小企業が求職者にアピールしていくところでも、健康経営に期待しています。当社の工場がある地域は、大企業の工場も集まっていて、給与面では闘いにくい。しかし、優良法人認定を取得することで、福利厚生の手厚い会社だと広く知ってもらえるのではないでしょうか。

――そう思います。安全第一で、社員に無理な働き方をさせない、残業がゼロ、有給が取りやすいなど、求職者が希望する内容は確実にそろっています。

鈴木社長:ありがとうございます。現在も福利厚生のいっそうの充実化に取り組んでいますが、採用につながっているという感覚がまだ弱い。そこで今、私たちは社会人学生として、大学生との交流イベントに出かけたり、リモート授業に参加したりして、何をすれば新卒生や求職者の方々に「この会社で働きたい」と希望してもらえるのか、探っているところです。やるべきことは、おおいにあります。

――そこまでの採用活動を社長自ら行うとは、なかなかないことです。ここまで多くのお話をうかがってきましたが、採用活動を熱心に行われ、離職率も低い。経営上の今後の課題としては、工場の稼働率をさらに上げていく、というところですか。

鈴木社長:ええ。無事故記録が現時点で800日間突破していますが、これを今後も継続していきたいです。また、感染症の流行などによって一度に数人が休む事態になることが、今後も起こり得る。そこにいかに対応していくかも必要でしょう。そのためにも、社員に健康で安心して働いてもらえる環境づくりを、今後、優良法人認定の申請とあわせて行っていくことが、非常に重要と考えています。

――1つずつ問題点を洗い出し、解決策を練っていく鈴木社長の経営姿勢には心から感動しました。まだまだお話を聞きたいところですが、本日はここまでとさせてください。次回は10月、優良法人認定の申請が終わったころにインタビューにうかがいます。

【取材後記】

これまで大勢の経営者にインタビューし、2代目、3代目の声も聞くなかで、「後継者は健康経営から始めることこそ王道」と私は考えるようになりました。後継者が売上目標や新規事業の提示から始めると社員との間にハレーションが起こりやすくなりますが、健康経営から入っていくと、ベテランも中堅社員も心を開いてくれます。鈴木社長のすばらしい健康経営のスタートに触れ、次回のインタビューがますます心待ちになりました。次号をお楽しみに!

〈企業データ〉

会社名:大同硝子興業株式会社

事業内容:プラスチック製品の射出成形、中空成形、真空成形、2次加工など

所在地:〒530-0047 大阪府大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング3F

資本金:90,000千円

従業員数:61人

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